メキシコで観光鉄道開業 総額4.1兆円、大統領が強行

メキシコで観光鉄道開業 総額4.1兆円、大統領が強行
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN15DDY0V11C23A2000000/

『【カンペチェ(メキシコ南部)=市原朋大】メキシコ政府が総額5000億ペソ(約4兆1300億円)をかけて建設している鉄道新規路線「マヤ鉄道」が15日、一部開業した。2024年に任期満了で退任するロペスオブラドール大統領は軍隊も大量に動員し、自身の看板政策だった巨大インフラを駆け込みで仕上げている。

メキシコ湾に面したカンペチェと同国有数のリゾート地であるカンクン間で運行を始めた。ロペスオブラドール…

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『ロペスオブラドール大統領は約470キロメートルを約6時間で結ぶ一番列車に乗り込むのを前に「この規模のプロジェクトをこのスピードで進めた例はない。10万人の雇用を創出した」と胸を張った。

当面は1日2往復を同区間で運行する。同区間の運賃はカテゴリー別に1100〜1800ペソ程度に設定している。マヤ鉄道は全線開業すればユカタン半島を周回するように路線が配置される予定で、総延長は1500キロメートルを超える。

国際リゾートのカンクンと、マヤ文明の遺跡で知られる「チチェンイツァ」や「パレンケ」が鉄路で結ばれ、観光周遊目的の需要を見込む。発売された初日の乗車券が早々に完売するなど、国内で注目度は高い。

建設コストは、すでに計画当初の3倍超に膨張している。新型コロナウイルス禍後に急速に進んだ物価上昇も一因で、計画未達を懸念したロペスオブラドール氏は建設に軍隊も動員。半ば採算を度外視した突貫工事でこの日の一部開業にこぎつけた。12月末にはさらに、カンペチェ―パレンケも延伸開業させる構えだ。

建設コストは計画当初の3倍超に膨張している(15日、カンペチェ)=ロイター
南部では1日、カンペチェ州に隣接するキンタナ・ロー州にトゥルム国際空港が開業したばかり。ロペスオブラドール氏の出身地でもあるタバスコ州を含む南部の州は米国と国境を接する北部の州に比べて経済発展で後れを取っており、巨大インフラの建設をテコに資本の流入を図りたい思惑は鮮明だ。

新空港はキンタナ・ロー州内だけで4カ所目の空港となった。カンクンが国際リゾートとして成長する一方、同じ州内の他地域は経済発展で取り残されている。森林破壊や「セノーテ」と呼ばれる泉の水質への影響への懸念などの反対意見も押し切り、大統領はトップダウンで偏重投資を形にした。

コロナ一過の回基調が続くメキシコ経済にとって、こうした政権の姿勢は実質国内総生産(GDP)の押し上げにつながっている側面がある。23年7〜9月のGDPをみると、建設の伸び率は24%に達した。メキシコ銀行(中央銀行)は23年通年のGDP成長率を3.3%(8月時点では3.0%)に上方修正している。

一方、ハコモノ偏重も響いて24年歳出予算の財政赤字が過去30年で最悪の水準に達するなど、投資のツケを次世代に先送りする姿勢も目立ち始めている。空港や鉄道などは初期投資だけでなく、維持コストも膨大だ。24年6月の大統領選挙を経て発足する新政権は、現政権による駆け込み開業で重い荷物を引き継ぐことになる。 』