[FT]NVIDIA、ゲームで開花 強さは画像処理と計算力

[FT]NVIDIA、ゲームで開花 強さは画像処理と計算力
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB060KB0W3A201C2000000/

『簡潔な話し方と革ジャンスタイルで知られる米エヌビディアの共同創業者で最高経営責任者(CEO)のジェンスン・ファン氏は、数々の栄光を手にしている。

エヌビディアは今や時価総額で世界6位。その半導体とソフトウエアで現在の人工知能(AI)革命をけん引する存在だ。今期(今年2月〜来年1月)の売上高は、米ビデオゲーム業界全体の合計額を上回る勢いだ。

その変貌ぶり織機メーカーだったトヨタと同じ

創業当初はパ…

この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。』

『創業当初はパソコンや米マイクロソフトのゲーム機「Xbox」向けの画像処理半導体(GPU)を製造していたが、10年ほど前にAIへと舵(かじ)を切った。それでも同社にとって昨年まではゲーム業界が依然として最大の収益源だった。

エヌビディアの変貌ぶりは古今東西の例の中でもすさまじく、トランプからゲーム機メーカーに転じた任天堂や織機から車のメーカーに発展したトヨタ自動車に匹敵する。

それだけにファン氏は当然、この数年、必死だった。同氏は11月下旬、米ニューヨーク・タイムズの金融ブログ「ディールブック」主催のイベントで「死ぬか生きるかの瀬戸際のような状況に身を置くのが好きだ。逆境こそ楽しい」と発言している。

パソコン技術の最先端を担ってきたゲーム
だがエヌビディアの方向転換は思うほどとっぴではない。ビデオゲームとAIには多くの共通点がある。ゲームにはパソコン技術の最先端を担ってきた長い歴史がある。

それは、任天堂のある幹部が1980年代に家庭用ゲーム機「ファミリーコンピュータ」を発売した直後、フィナンシャル・タイムズ(FT)に対し「自社のコンピューターがゲーム以外は何もできないと認めたのは我々が初めてだ」と語った言葉にも表れている。

任天堂はその後ファミコン用ゲームソフト「スーパーマリオブラザーズ」や携帯型ゲーム機「ゲームボーイ」などのヒットを飛ばした。ファン氏が仲間とエヌビディアを設立した93年は、ソニーが最初の家庭用ゲーム機「プレイステーション」を発売する前年で、当時のゲームにはコンピューターの画像処理技術の粋が集められていた。

従って、ファン氏自身がゲーマーでなかったとしても、エヌビディアにとってゲーム関連市場は自社のGPUにはうってつけの市場だった。

事業転換には2種類ある。自然の成り行きによるものと偶然のいたずらによるものだ。DVDレンタル事業を展開していた米ネットフリックスが、動画配信へとシフトしたのは当然の進化だった。

一方、フィンランドで1865年に製紙会社として創業したノキアは、最終的に通信機器メーカーになるとは想像もしていなかった。エヌビディアのゲーム用GPUからAI向けスパコンへの転換は、この2つの間に位置するといえる。

機械学習が停滞するなか画像認識力で世界を驚かす
GPUは単純計算を同時に多数こなす並列処理が可能なため、並列処理数を増やせば処理速度が飛躍的に高まる。よってエヌビディアが1999年に初のGPUを市場に投入した直後から、ゲーム以外にも幅広い用途があることは明らかだった。

ただ、ゲーム以外に具体的にどんな用途があるかはまだよくわかっていなかった。当時、機械学習は技術の進歩が停滞しており、エヌビディアはモバイルコンピューティングや大規模なビジュアルシミュレーション(編集注、様々な現象を目に見える形にし、リアルに表現すること)に力を入れていた。

ファン氏がAI市場にGPUの商機があると気づいたのは2012年だ。オープンAIのチーフサイエンティストを務めるイリヤ・サツキバー氏(編集注、理事は既に退任している)を含むグループがエヌビディアの技術を使い、「アレックスネット」というニューラルネットワークを鍛え、その画像認識能力が世界に衝撃を与えたのだった。

4年後、ファン氏は初のAI向けスパコンをオープンAIに納入した。同AIスパコンの最新版は3万5000個にも及ぶ部品で構成され、価格は25万ドル(約3700万円)を上回るが、これらのAIスパコンこそがエヌビディアの近年の成長を支えてきた。

すては計算能力、それで「AIの冬」は目覚めた
ゲームとAIは計算力がものをいう点が似ている。ゲームの画面はGPUの情報処理速度の向上で着実に進化してきた。本物のようなバーチャル世界でプレーヤー同士のアクションや絡み合いを実現するには、画像に緻密な陰影処理が必要で、それには膨大な計算を同時に多数こなす能力が必要とされる。

これはまさにAI開発の「苦い教訓」だ。ニューラルネットワークの専門的な設計は重要だが、情報をいかに高速で処理し的確な画像を生成できるかを決めるのは結局は計算速度だ。ニューラルネットワークは2000年代前半にゲーム向けに設計されたGPUによるトレーニングを受け、「AIの冬」から目覚めたと言われる。

エヌビディアのディープラーニング応用研究担当バイスプレジデント、ブライアン・カタンザロ氏は「画像処理とAIには重要な共通点がある。計算能力が高いほどよい結果が得られることだ」と指摘する。

同社の最新技術は最初期のGPUに比べ数千倍(測定基準によっては数百万倍)も能力が高いため、AIは人間が恐怖を感じるほど雄弁になった。

ゲームとAIでは予算がケタ違い
ゲームとAIの間にはエヌビディアにとって有利な相違点が1つある。どんな熱心なゲーマーも自分のパソコンの情報処理速度を上げる最新のグラフィックス機材に払える金額には限界があるが、オープンAIを超えようとする企業は最新のスパコンに何億ドルでも払う点だ。

エヌビディアはこうした企業に対し極めて優越的な立場にある。その状況がいつまでも続かないとしてもだ。

ゲームとAIを動かす技術は再び交わるかもしれない。人間は近い将来、「AIエージェント」と頻繁に接触しなければならなくなりそうだが、その場合キーボードで文字入力する以外の方法で接する道をみつける必要がある。そこではゲームやバーチャル世界にも似た、もっと円滑なやりとりが必要となる。

ゲームが「子どもだまし」の技術であったことはない。エヌビディアの隆盛がそれを物語っている。米IBMは当時のチェス世界王者ガルリ・カスパロフ氏を破るためスパコン「ディープ・ブルー」を開発し、97年にその目的を達成した。

それと同じようにエヌビディアはゲームの性能を上げるためGPUを進化させてきた。ゲームはその時代の技術的要求が最も高い分野だったが、そのことでGPUは他でも用途を広げることになった。たかがゲームなどと決して侮ってはならないということだ。

By John Gapper

(2023年12月2日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2023. All Rights Reserved. FT and Financial Times are trademarks of the Financial Times Ltd. Not to be redistributed, copied, or modified in any way. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translation and the Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

【関連記事】

・岸田首相、エヌビディアCEOと面会 半導体供給増を要請
・最高益NVIDIA、時価総額1年で3倍 日米株式市場に波及 』