バイデン政権強まる逆風 親イスラエル路線、内外で批判

バイデン政権強まる逆風 親イスラエル路線、内外で批判
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『パレスチナ自治区ガザを支配するイスラム組織ハマスがイスラエルを襲撃した事件から2カ月が過ぎ、国際世論の潮目はイスラエルへの連帯から人道危機が深まるガザへの同情へと変わった。強まったのはイスラエル支援を続けるバイデン米政権に吹く逆風だ。

「ガザに安全な場所はない」。国連のグテレス事務総長は6日、安全保障理事会に対して人道的な停戦を求めるよう要請した。7日間におよんだ戦闘休止が1日に終わり、ガザでの…

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『7日間におよんだ戦闘休止が1日に終わり、ガザでの民間人の犠牲が膨らむにつれて攻勢を強めるイスラエルへの批判が広がった。

アラブ首長国連邦(UAE)で開催中の第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)でもフランスのマクロン大統領が2日、「ハマスの完全破壊」を目的とするなら「戦争は10年続く」と述べてイスラエルに再考を促した。

10月7日にハマスがイスラエルを越境攻撃しておよそ1200人を殺害し200人以上を人質にした衝撃は重く、バイデン大統領はすぐにイスラエルを訪れて「疑いの余地なく支援する」姿勢を鮮明にした。ユダヤ人の苦難の歴史と重ね、欧州にも同調する声が広がった。

ところがイスラエルの反撃によってガザ住民の犠牲が膨らみ続け、人道支援を求める世論が世界を覆った。すでにガザの死者は1万7000人を超えた。イスラエルの反撃は正当性のない「集団的懲罰」だと批判する声も出ている。

批判の矛先はイスラエルとの「特別な関係」をうたう米国にも向かう。

もともと中東やアジア、アフリカの新興・途上国はイスラム教徒が多く、米国の親イスラエル路線は孤立に陥りやすい。10月末の国連総会では「人道的休戦」を求める採決に121カ国が賛成したのに対し、反対は米国、イスラエルなど14カ国にとどまった。

「米国はアラブ世界で信頼を大きく失っている。法の支配に基づく安定した国際秩序を支持したいなら、敵味方を問わず、すべての人に国際法の尊重を要求すべきだ」。エジプトのファハミ元外相は米メディアに指摘した。

バイデン政権の苦境がより深いのは、ガザの人道危機を巡る批判が海外にとどまらず、米国内でも政権の想定を超える勢いで強まっていることにある。

ホワイトハウスのすぐそばでもパレスチナ擁護派のデモが頻発している=ロイター

「大虐殺ジョー」。11月末、ガザでの即時停戦を求めてホワイトハウス前に集まった若者たちはバイデン大統領を批判することをためらわなかった。2024年11月の大統領選を控え、いまや「停戦なければ投票なし」が合言葉となった。

米紙ニューヨーク・タイムズなどが10月に激戦6州を対象にした調査によると、民主党が支持基盤と見込む29歳以下の若年世代でバイデン氏と共和党の大統領候補指名をめざすトランプ前大統領の支持率は47%対46%と拮抗した。前回大統領選前の20年10月の全国調査で同世代のバイデン氏の支持率が前大統領に28ポイントの大差をつけた優位が消えた。

米国人のイスラエルに対する意識も変化している。米公共ラジオ放送NPRなどが10月に公表した調査によると、45歳以上のイスラエルに対する支持が8割近いのに対し、イスラム教徒の移民も多い45歳未満は5割に満たなかった。

上院議員になりたての1973年以来、イスラエル訪問が2桁に達するバイデン大統領は、イスラエル建国の父ベングリオンがユダヤ人国家の独立を宣言した48年、当時のトルーマン米大統領が真っ先に国家承認した逸話をよく口にする。

「反ユダヤ主義、イスラム嫌悪、あらゆる憎悪と偏見を非難する」というバイデン氏にとって、イスラエル支援は議論の余地のない米外交の伝統なのだろう。「大統領は米国内の意識の変化を実感としてとらえられなかったのかもしれない」(米政府関係者)との声も漏れる。

(ワシントン支局長 大越匡洋)

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