砲兵の優位性を揺るがすFPVの大量投入、兵士1人であっても攻撃対象に

砲兵の優位性を揺るがすFPVの大量投入、兵士1人であっても攻撃対象に
https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/massive-introduction-of-fpv-that-shakes-the-superiority-of-artillery-making-even-a-single-soldier-a-target-of-attack/

『Kyiv Independent紙は5日「ロシア軍に包囲され不利な立場に追い込まれたバフムートと現在のアウディーイウカの比較は妥当なものになりつつある。戦場を支配する砲兵の伝統的な優位性もFPVの大量投入によって覆されつつある」と報じている。

参考:Ukraine holds back Russian assault on Avdiivka as long winter battle looms
FPVの登場と大量投入で「戦場のあらゆる標的とリスクなく遠隔交戦」できるという状況が成立しつつある

Kyiv Independent紙はアウディーイウカに状況ついて「ロシア軍はヴーレダーと同じように機械化部隊を投入してきたが、ウクライナ軍の砲撃やFPVに翻弄されて大きな損失を被ったものの、直ぐにロシア軍は見慣れた戦術に変更してきた。包囲されてバフムートを失うに至った『ゆっくりとした組織的な歩兵攻撃』のことで、ロシア人はワグナーの時と同じようにストームZの兵士の命について関心がない。10人から20人の分隊を攻撃に送り込み、これをドローンで監視してウクライナ軍の射点を特定するお馴染みの戦術だ。バフムートと現在のアウディーイウカの比較はますます妥当なものになりつつある」と指摘。

出典:GoogleMap アウディーイウカ周辺の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

ウクライナ軍は毎日発表する戦況報告の中で「アウディーイウカへの攻撃を撃退し続けている(小さな変化に毎日言及しないのは元からでロシア軍も同じ)」と主張しているが、幾つかは現地メディアはウクライナ人が運営するDEEP STATEの情報などを参考に「公式発表とは異なる戦況」を伝え始めており、Kyiv Independent紙も「オープンソースの評価によればロシア軍はアウディーイウカの北側で線路を越え、ステポヴェと呼ばれる小さな集落に入った」と伝えている。

さらに興味深いのは「戦場を支配する砲兵の伝統的な優位性もFPVの大量投入によって覆されつつある」という言及だろう。

出典:Сухопутні війська ЗС України

Kyiv Independent紙は「ウクライナはドローン分野の技術革新でロシアをリードしていたが、現在のロシアはどう見てもウクライナに追いついており、中国から関連部品を大量に輸入してFPVの大量生産に取り組んでいる。双方とも数ヶ月前まではFPVで装甲車輌を優先的に攻撃してきたが、供給量の増加に伴い兵士1人であってもFPVの攻撃対象になってきた。ドローン生産の大規模化は急速に進んでおり、多くの専門家は『FPV登場後も砲兵の伝統的な優位性は揺るがない』と主張したものの、その常識も深刻な挑戦を受けている最中だ」と指摘し、どうやらアウディーイウカにおける砲撃とFPVによる負傷者の数は半々らしい。

砲兵はドローンによる認識力拡張の恩恵を最も受けている存在だが、FPVの登場と大量投入で「戦場のあらゆる標的とリスクなく遠隔交戦」できるという状況が成立しつつあり、この様な戦場で生身の兵士が戦うのは生存性において著しく不利だろう。

Duel: Russian with a stick vs Ukrainian FPV drone.https://t.co/GX8NPBZ8tC pic.twitter.com/BcS0bfWe1D

— Special Kherson Cat 🐈🇺🇦 (@bayraktar_1love) November 29, 2023

因みにワシントン・ポスト紙も「第47機械化旅団に所属する小隊長が現在は地雷よりもFPVの方が問題だと指摘した」「ウクライナ側は双方がドローンを大量投入したため戦場における装備品の寿命は長くても1分だと述べた」と報じている。

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※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ
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投稿者: 航空万能論GF管理人 ウクライナ戦況 コメント: 64 』

『 たむごん
2023年 12月 06日

返信 引用 

中国が世界シェア7割、ドローン製造では圧勝ですから、どうにもならないですね。
昔の強い米軍のような供給力が、ドローンに限って言えばあります。

ドローン専用部品だけでなく、GPSなど衛星測位システムモジュール・カメラレンズ・小型無線端子など、中国が安価に製造しています。
安価な製造業は、20世紀末~21世紀初頭にかけて見捨てられてきましたが、ウクライナ戦争をきっかけに、安全保障上かなり重要だった事が見直されているような気がしますね…。

兵士1人に、FPVを使う戦場になるとは…安価に大量生産できる新兵器は、現場の戦闘を繰り返し変えていきますね。
17

    Easy
    2023年 12月 06日
    返信 引用 

見過ごされている点として。
アメリカが禁輸制裁をかけている中国のHuaweiの5G通信技術とチップがごっそりロシアに流れているという話がありますね。あれはジャミングに強いので戦域レベルの通信需要と非常に相性がいいのだとか。Huaweiの半導体技術とデジタル通信技術が、ロシアの得意とするアナログ電波領域と組み合わさることで、ロシアが急速にEW領域で進歩を遂げる原動力になってしまっているようです。
これもアメリカが制裁したつもりで追い出したら、より都合の悪い方向に行ってしまった実例かなと。
最近のアメリカはこんな失敗ばかりですね。
25
        たむごん
        2023年 12月 06日
        返信 引用 

    情報ありがとうございます、勉強になります。

    Huaweiの5G通信技術・各種通信技術は、5G特許数だけ見ても世界トップですからね。
    チップレット(半導体の最先端トレンド)の特許すら大量に持っているのには、かなり驚いています。

    仰る通り、中国国内でも半導体製造は完結しますから(最先端iPhone・macなどのチップを除く)、ロシアのEW製造技術進歩を助けていると考えるのは妥当と思います。
    思考を先に進めれば、中国軍の電子戦能力も、著しく向上していると考えるべきですね。

    アメリカの失敗は、仰る通りです。
    日本の電子技術・製造業を潰して、中国を育てた事が、アメリカにとって大打撃だったと感じています(日本ならば手綱を握れていたため)。

    キッシンジャーが、最近死んで、中国で大量の哀悼の意があったようですね。
    15
            名無し
            2023年 12月 06日
            返信 引用 

        アメリカに言われてホイホイ自国の産業を差し出す日本政府も日本政府だ
        IT黎明期に外圧で流出、あるいは開発が潰されたハードウェア、ソフトウェア、半導体がどれだけあると思っているのか
        バブル崩壊後にこれまた外圧でインフレなき経済成長なんて眉唾経済理論を掲げて引き締めした財務省といいわざと国力を削ぎ落とす政策をやってるのかと疑うほどだよ
        これだけ好き放題やられていて、マスコミや国民でさえも理不尽な外圧ではなく自国叩きを展開するのだから始末に負えない
        15
                たむごん
                2023年 12月 06日
                返信 引用 

            仰る通りです。
            安全保障面・核の傘(核武装していない)の弱みがでましたね。

            トロンなどのソフトウェア、各種ハードウェアの痛みが、本当に物凄いですよね…
            海外に売るものがなくなれば(部品が売れたくらいでは)、国内の底辺層にお金が落ちずドンドン貧しくなっており、株や不動産なども外資に買われていく事になります。

            適度なインフレは経済成長に不可欠ですから、デフレ政策(インフレなき経済成長)は経済の素人政策ですね。
            老人(貯金過多)・公務員(給料一定)にとっては、その方がメリットあるのでしょう。
            7
            kitty
            2023年 12月 07日
            返信 引用 

        >日本の電子技術・製造業を潰して、中国を育てた

        日本を潰さなくても、OEM/ODM元が日本企業や台湾になるだけで変わらなかったとは思いますけどね。