ウクライナ戦争の長期化狙うプーチンへの西側の対応策

ウクライナ戦争の長期化狙うプーチンへの西側の対応策
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/32261

『ワシントンポスト紙が「ウクライナはどのように膠着状態を打破できるか」(How Ukraine can break the stalemate)と題する社説を11月12日付けで掲載している。その主要点は次の通り。
(Zeki035/gettyimages)

 ウクライナの最高位の将軍ザルジニーはEconomist誌とのインタビューで、ウクライナはロシアと膠着状態にあり、「深く美しい突破はありそうにない」と明言した。この発言は、ロシアの侵攻に対するウクライナの戦闘を米欧の同盟国からの支援で強める新たな努力の引き金になるべきである。

 将軍の分析は冷静である。彼はウクライナとロシアは第一次世界大戦のようにどちらも相手に勝てない塹壕戦の「茫然自失」に到達していると言う。彼は、ウクライナは技術的な飛躍を必要とすると述べ、新しい航空戦力、電子戦能力、対砲兵能力、地雷除去技術の提供を求めた。

 軍事的に全てが失われたわけではないが、戦争は失速したとの感覚がある。

 安定的だが慎重な西側の武器の供与は、ゼレンスキーを失望させている。ウクライナは生き残るには十分な武器の供与を受けているが、勝つには十分でない。バイデンはロシアによるエスカレーションを懸念している。

 プーチンは長期戦に備えているが、これは外部からの供与と支持に依存しているウクライナにとって現実的な危険である。今月議会に出されたロシアの予算は来年の防衛支出を70%増やすとしている。プーチンは明らかに西側の忍耐とウクライナの物的・人的備えを消耗させることを希望し、トランプが再選され米国のウクライナ支援を続ける意思が弱まることを望んでいる。

 最終的にはウクライナは、戦場でお金と人命を犠牲にする意思のある敵、ロシアと交渉する必要があるとの現実に向き合わなければならないかもしれない。その時はまだ来ていないが、西側はもしその時が来れば、最善の取引を行えるような梃子をウクライナに与えるべきだろう。

 この梃子は、ウクライナが生き残り、ロシアの属国ではなく、欧州の繫栄する民主主義国として成長する機会を残すことを意味する。

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 この社説は、時宜を得た良い社説である。ザルジニー総司令官の率直なウクライナ戦争の膠着に関する発言が、この社説が言うように米国のウクライナ支援の強化につながることが望まれる。』

『ウクライナの反転攻勢がウクライナ南部でロシア軍を分断すると期待されていたが、これは簡単には現実化しないことが明らかになった。ザルジニーの発言は戦果を誇大に言いがちな大本営発表とは異なり、率直に苦境を認めている。

 ザルジニーは技術面でロシアを凌駕する電子戦能力の強化など、技術面での飛躍が必要であると指摘している。電子戦能力は無人機攻撃実施と敵の無人機攻撃に対する防御のために必要であり、米国としてはできるだけの支援をするべきだろう。

 米国の軍事関係者はウクライナ側のニーズについて、率直な話をしていると思われるが、バイデンがロシアによるエスカレーションを心配し過ぎることと議会共和党がイスラエル支援をウクライナ支援に優先させていることの二つの問題がある。この二つの問題を乗り越える方策を考える必要がある。

変わるロシアが戦争する理由

 ロシアは来年度予算で国防費を70%増にし、国内総生産(GDP)の6%にするとしている。ロシアのGDPは国際通貨基金(IMF)統計で日本の約半分であるが、こういう資源配分はロシアが長期戦に備えようとしていることの証左であり、西側としてもそれに対応する必要がある。

 ただ、ロシア国内においても、この資源配分には、不満が出てくることが考えられる。ロシア人の多くはウクライナの非ナチ化などといった特別軍事作戦の目的をよく理解していないと思われるからである。プーチン政権はウクライナ戦争の目的を、ウクライナの非ナチ化から西側が仕掛けてきたことに対する戦争とするなど、プロパガンダの方向性を変えてきている。

 『戦争論』で有名な戦略家のクラウゼビッツは戦争における意志の重要性を指摘しているが、まさしくこれが当てはまる。西側は、ロシアをこの戦争の勝利者にはしないという意志をさらに強固にする必要がある。 』