米国防長官「複数戦域に対処可能」 中東と中ロが課題
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN0247W0S3A201C2000000/
『【ワシントン=坂口幸裕】オースティン米国防長官は2日、米西部カリフォルニア州で開いた国防関連の会合で演説した。緊迫する中東情勢、ウクライナ侵攻を続けるロシア、「国際秩序を再構築する意志を持つ」中国への対処が国際秩序を守る「3つの課題」と位置づけた。米国は「複数の戦域に軍事資源を投入できる」と断言した。
演説は同州ロサンゼルス郊外シミバレーのレーガン大統領図書館で実施した。オースティン氏は「我々は…
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。』
『オースティン氏は「我々は困難な時代を生きている」と指摘。「イスラエル、ウクライナという民主主義国家が直面する大きな紛争、自己主張を強める中国による脅しや威圧、民主主義と独裁主義の世界的な戦い」のさなかにあると唱えた。
「世界の安全保障が米国の団結と強さに依存している時だ」と力説。ロシアのプーチン大統領や中国、イスラエルを奇襲攻撃したイスラム組織ハマス、その後ろ盾であるイランに言及し「ライバルや敵は米国を分裂させ、弱体化させようとしている」と危機感を示した。
オースティン氏は「歴史の岐路で米国が揺らいではならない」と指摘。戦後、米主導で築いたルールに基づく国際秩序を維持する重要性を説き「我々が責任ある立場を放棄すれば、ライバルや敵は喜んでその空白を埋めるだろう」と語った。
演説では「独裁者やテロリストが大規模な侵攻や大量殺りくから逃れられると信じれば、世界はより危険になる」と提起。「民主主義国家を地図から消去できると信じれば米国は安全でなくなる」と発言した。
現在直面する「中東の危機、ロシア危機、中国による戦略的挑戦」という3つの課題を通じ、国際秩序への脅威に対処する必要性を訴えた。核・ミサイル開発を続ける北朝鮮を巡っては、ロシアがイランと北朝鮮から軍事支援を受けていると触れるにとどめた。
オースティン氏は「イスラエルへの支援を増やしてもウクライナに集中し続ける。米国は地球上で最も強力な国だ」と話した。ウクライナ紛争の結果は「今後数十年間の世界の安全保障を規定する。見過ごす選択肢はない」と述べた。
中国については「国際秩序を再構築する能力を高めている唯一のライバルだ」と言及し、同盟・有志国と対中抑止力を強化する必要性を説いた。
米政府は10月下旬、ウクライナやイスラエルなどを支援する総額1059億ドル(およそ16兆円)の緊急予算を連邦議会に要請した。中国を含む「3正面」の脅威に備える狙いがあるものの、与野党対立で成立のメドは立っていない。
すでに確保した対ウクライナ予算は年内に枯渇する可能性が高く、オースティン氏は予算の早期成立を議会に要請した。追加のウクライナ予算に慎重論がある共和支持層を念頭に「どの世代でも一部米国人は関与より孤立を好み、大国間の戦争なしに何十年も繁栄をもたらしてきた安全保障体制を台無しにしようとする」と警告した。
【関連記事】
・米英豪、海上・海中無人機の共同実験実施へ 中国抑止で
・米中、水と油の戦争防止策 共存妨げる習政権の大国意識
・米国、フィリピン艦船の修理支援 南シナ海対立の象徴 』