ウクライナメディア、ゼレンスキーとザルジニーの関係は冷え込んでいる
https://grandfleet.info/european-region/ukrainian-media-relations-between-zelensky-and-zarzhiny-have-cooled/
『ウクライナメディアのRBC Ukraineは20日「大統領周りの関係者はゼレンスキーとザルジニーの関係が冷え込んでいると認めた」「ゼレンスキーの型破りで攻撃的な外交手法も今年はマイナスにしか作用していない」と報じている。
ゼレンスキーとザルジニーの間に対立は存在するのか?
RBC Ukraineの政治アナリスト(ミラン・レリック氏)は20日「大統領側近と大統領府の関係者はゼレンスキーとザルジニーの関係が冷え込んでいると認めた」「昨年よく機能した型破りで攻撃的な外交手法も今年はマイナスにしか作用していない」と報じており、非常に長い記事の主要ポイントを要約すると以下の通りになる。
出典:Командування Сил спеціальних операцій ЗС України ヴィクトル・ホレンコ少将
“ゼレンスキー大統領の周りは「政権内部の問題点に言及したTIME誌の記事」や「ロシアとの戦争や反攻作戦の問題点に言及したThe Economist紙の記事」によって慌ただしくなっており、特にザルジニー総司令官はEconomist紙の記事の件でジョフクヴァ大統領府副長官から激しく非難され、ホレンコ少将は何の前触れもなく特殊作戦軍司令官の地位を失った”
“RBC Ukraineによればザルジニー総司令官はホレンコ少将の解任を知らされておらず、解任理由についても複数の情報筋は「イエルマーク大統領府長官の下で軍事分野を担当するマショベツ副長官とホレンコ少将の間の対立が原因だ」と述べており、マショベツ副長官は我々のインタビューに応じなかったものの同氏が特殊作戦軍の創設メンバーだったことは注目に値する”
出典:ПРЕЗИДЕНТ УКРАЇНИ 軍の医療問題を米医療法人と協議するマショベツ副長官
“大統領の側近と大統領府の関係者はゼレンスキーとザルジニーの関係が冷え込んでいると認めている(その程度は西側メディアが報じるほどではない)。大統領の側近は「Economist紙への寄稿は純粋に『ウクライナの問題を西側諸国に説明して解決策を提示する』という意図から来ているが、ザルジニーは西側高官とのコミュニケーションが乏しく、そこでの意志決定プロセスがどのようなものなのか理解していない」と強調した”
“結局のところザルジニーの指摘は裏目に出た可能性が高く、ウクライナへの軍事支援に懐疑的な人々は「最高司令官のザルジニーまで戦争が膠着状態だと認めている」と新たな議論を巻き起こした。この寄稿の内容が大統領府と調整されたものかは不明だが、RBC Ukraineによれば大統領府は「ザルジニーがEconomist紙に寄稿する」と把握していたものの内容について認識していなかったらしい”
出典:PRESIDENT OF UKRAINE
“大統領府の関係者は「Economist紙の記事についてゼレンスキーは何らかの反応を示すべきだったが、政治的な理由でそれが出来なかった」と考えており、大統領選挙という背景がなければ「政権と軍部の分裂」について語る理由はもっと少なかっただろう”
“政権内の矛盾を積極的に攻撃すること自体はどの野党でも行うことだが、与党は野党の狙いについて「もっと別の計画がある=ザルジニーを政治の舞台に引っ張り出してゼレンスキーの対抗馬に仕立てるという意味」と考えており、同氏への国民人気を考えると「ザルジニーが選挙に参加するという可能性」は全ての計画を狂わせるだけのインパクトがある。本人は政治に興味はないと述べているが「擁立に動く者」も「排除に動く者」もいるはずだ”
出典:Головнокомандувач ЗСУ
“大統領の側近も「軍事的指導者としてのザルジニーの手腕は優れている」と認めており、今直ぐザルジニーを解任すると国民人気に加えて「潜在的な政治家としてのキャリアに大きなボーナス=ウクライナ軍の問題を指摘して解任されたという反ゼレンスキーの色」がつくだろう”
“どの組織でも設定目標に到達しなかった場合、非難、口論、犯人探しが始まるものだが、ウクライナの状況を客観的に見ると「2023年に設定された目標」を達成したとは言い難く、到底「勝利の年」とは呼べないものだった。政権の積極的過ぎる立場は侵攻初期の国民団結に役立ったものの今では逆効果になっている。結局のところ1年以上も叫び続けた「勝利は目前」というテーゼも「戦場での勝利」が伴っていないため、叫べば叫ぶほど政権への信頼が低下するだけだで、今直ぐにでも国民に対して誠実な対話を始めるべきだ”
出典:Сухопутні війська ЗС України
“さらに問題なのは敵であるロシアがこうした状況の矛盾を積極的に利用しようとしている点で、ゼレンスキーも最近「ウクライナ政権の転覆を狙ったマイダン3をロシアが準備している」と公の場で公言した。この計画が事実かどうかは不明だが、ウクライナの対外情勢はかつて無いほど厳しく団結の必要性が今ほど求められたことはない”
“深刻な対外状況を考えれば国内の争いは一刻も早く停戦(政治的もしくは国民間の対立を収めるという意味)しなければならない”
欧米の同盟国に何が期待できるのか
“ここ数ヶ月間の世界情勢が概ね「ウクライナにとって不利な状況にある」ということは容易に想像でき、慢性的な米下院の危機的状況、中東での大規模な戦争勃発、スロバキアで誕生した反ウクライナ政権などはウクライナの関与が及ばない範囲の問題だ。さらに脅威なのはトランプ前大統領の勢いが増して2024年にホワイトハウスへ戻ってくる可能性が高まっている点だろう”
“もしトランプ前大統領が政権に復帰すれば米国やウクライナだけでなく世界中に予測不可能な結果をもたらすだろう。このプロセスにウクライナが影響力を行使するのはほぼ不可能だが、それでも外交戦略やレトリックの調整は必要だ”
出典:U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Monica Roybal
“昨年上手く機能した「型破りで攻撃的な外交手法」は明らかに効果を失っている。昨年に本手法で支援に消極的だったドイツを焚き付けることに成功したものの、この夏のNATO首脳会議では「ゼレンスキー大統領の攻撃的な口調」が裏目に出てしまった”
“RBC Ukraineは欧米当局者に取材し「政治的意志と国民の支持が失われていないためウクライナ支援を打ち切る国はない」という結論を得たが、まもなくEU加盟交渉が開始される可能性が高いという以外に明るい話題がなく、これもロシアとの戦争に直接的かつ即時的に影響を与えるものではない。逆にロシアは北朝鮮から100万発以上の砲弾を入手した可能性が高く、欧州は約束した100万発の砲弾供給が期日内に間に合わないと認めている”
出典:President.gov.ua/CC BY 4.0
“RBC Ukraineが取材した全ての欧米当局者は「ウクライナにとって2024年は今年よりも厳しい年になる」と認めており、その主な原因は米国の政治的混乱で、ゼレンスキー政権もバイデン政権との協力だけに集中するのはリスクが高いと気づき、現在は共和党の様々なグループとも積極的な接触を図っている”
“欧米諸国は「ウクライナとロシアの戦争を如何にして終わらせるのか」というビジョンを持っていないため「ウクライナが必要とするだけ支援を継続する」というチープなフレーズは依然として有効だが、トランプ前大統領の政権復帰によって全てがひっくり返らない限り、この戦争は長期化する可能性が高く、これを回避するため西側諸国は現在のアプローチを変更しなければならない”
出典:Генеральний штаб ЗСУ
“ウクライナ軍がどの方向に何キロ進んだかという大げさな注目から、西側諸国の利益に繋がる無条件で長期的な支援に目先を変える必要があり、このことは欧州の外交界やメディアでも注目され始めている。カーネギー国際平和基金はWSJ紙に寄稿した記事(ロシアの敗北に関する魔術的思考を終わらせる時がきた)の中で「西側の指導者達は経済制裁、反攻作戦の成功、新兵器の供給などのアプローチがプーチンを交渉テーブルに着かせることを強制するか、クーデターが発生して権力の座からプーチンが追放されると信じすぎている」と指摘した”
“この記事は冒頭部分で「消耗戦にロシアは耐えられる」「クーデター未遂はプーチンの権力掌握に寄与しただけだった」「制裁はロシア経済や防衛産業に決定的なダメージを与えていない」と指摘し、多くの読者はこの部分に注目したが、この記事が指摘した「NATOと対決するロシアの立場は旧ソ連時代よりも遥かに脆弱だ」という言及は注目されていない”
出典:PHOTO BY Senior Airman Duncan Bevan
“現在のロシアはソ連時代のようなイデオロギーモデルを提示できておらず、欧州は第二次大戦後のように荒廃していないし、NATOは新しい加盟国を受けいれて拡大し続けており、最も重要なのはウクライナが予想に反してロシアの攻撃に耐えていることだ。要するにウクライナ支援は西側諸国にとって「ロシア封じ込め戦略」の重要な要素になりえるこということで、カーネギー国際平和基金は記事の中で「この戦略について欧米諸国は長期的ものであると明確に理解しなければならない」と指摘している”
“もしウクライナに残された選択肢が「長期的なロシア封じ込め戦略における重要な要素」であった場合、このような考え方を西側政界に訴求していく以外に何が出来るのだろうか?”
出典:pixabay
“勿論、戦い続け、国を強化し続け、チャンスを待ち続けることだけだ。ある大統領府の関係者はRBC Ukraineの取材に「恐らくウクライナの国内情勢も、前線の状況も、西側諸国の政治情勢も春まで現状維持が続くだろう。我々は敵を撃退しながら米国の政策を監視するだけだ。何故なら米国の政策が我々の国内政治よりも重要だからだ」と述べている”
以上がウクライナ人政治アナリスト(ミラン・レリック氏)が主張した内容の主要ポイントで、特にザルジニー総司令官を取り巻く環境は「ゼレンスキー大統領がTIME誌の記事中で言及した内容=侵攻初期の危機を切り抜け前線が東部や南部に限定されたことでキーウに政治闘争が戻ってきたこと」という主張を裏付けている格好だ。
出典:PRESIDENT OF UKRAINE
さらに強気なゼレンスキー大統領の対外発言も「型破りで攻撃的な外交手法」と呼び「この手法がもう効果を失ってマイナスにしか働かない」という指摘も興味深く、何よりも海外メディアではなく現地メディア、ウクライナ人から見た国内状況の評価という点が目新しい。
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※アイキャッチ画像の出典:左 PRESIDENT OF UKRAINE/右 Головнокомандувач ЗСУ
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投稿者: 航空万能論GF管理人 欧州関連 コメント: 25
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