Economist紙、反攻作戦の失敗を認めないと同じ結果を繰り返すだけ

Economist紙、反攻作戦の失敗を認めないと同じ結果を繰り返すだけ
https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/economist-newspaper-if-we-dont-admit-the-failure-of-the-counterattack-we-will-just-repeat-the-same-result/

『ザルジニー総司令官の記事を掲載したThe Economist紙はウクライナ・プラウダ紙の取材に応じ、反攻作戦が失敗したと認めなければ「同じ結果」を繰り返すだけで、次回の反攻作戦で「異なる可能性」を期待できないと指摘した。

参考:Военный обозреватель “The Economist” Шашанк Джоши: Бахмутская кампания стоила Украине больше, чем она получила

どうすれば現状を打開できるかを理解するには現状を認めることが最も重要だ

ウクライナ・プラウダ紙は「ザルジニー総司令官のインタビュー記事」を掲載したThe Economist紙に取材を行い、同紙の軍事コラムニストを務めるシャシャンク・ジョシ氏は興味深い視点を幾つも提供しており、2万文字を越える記事の主要ポイントを要約すると以下にようになる。

出典:ArmyInform/CC BY 4.0

これまで議論されてきた話題にザルジニー総司令官は一定の見解を示したが、社会にとっては冷や水を浴びせられた格好だ。貴方にとって「ウクライナ軍の問題を公の場で議論する」という司令官の決断はどの程度時勢を捉えたものだったのか?

“反攻作戦の問題点を公にするのは非常に難しい選択だったと思う。なぜなら本件は非常にデリケートなテーマなので彼が大統領から批判を浴びているのを目撃した。彼が指摘した内容の殆どは人々の期待を裏切る内容だったが、人々は反攻作戦が直面した困難さ、特に南部戦線での困難な状況を理解していない。恐らく『ロシア軍は予備戦力、弾薬、ミサイルが不足して多くの困難を抱えている』と考えていたため『何かセンセーショナルな突破口が目前に迫っている』と錯覚していたのだろう”

“最も重要な点は今後も消耗戦が長期に渡って継続し、この問題が短期的に解決される可能性がないと指摘している点だ”

出典:Photo by John Hamilton

昨年、ザルジニー総司令官は2023年の見通しをウクライナメディアを通じて発表したが、今年は西側メディアを通じて発表した。これは彼の主な関心がウクライナの支援国に向いている証拠ではないか?

“彼が重視している対象は複数存在し、その中に英国、米国、欧州諸国が含まれているのは間違いない。ザルジニー総司令官はウクライナが何を必要としているかを理解してもらいたいのだ。彼は我々のインタビューに答え、我々の記事とは別に4000文字に及ぶ寄稿文も書いてくれた。この中でウクライナが必要としている装備の種類について技術的な観点から詳細に言及した”

“彼は砲弾や防弾ベストなど基本的な装備が必要不可欠であると述べたが、電子戦、FPVドローン、地雷除去装置、対砲兵レーダー、敵の砲兵装備を探知する技術にも言及し、これらの装備はATACMS、F-16、レオパルトほど世間に注目をされない分野で、ザルジニー総司令官は『ウクライナが本当に必要としている支援は何なのか』について我々の認識を変えたかったのだろう。何故なら貴方やウクライナの指導者たちも私達と同じように新聞や雑誌に目を通しているからだ”

“ザルジニー総司令官は第1次大戦の将軍が直面した問題、つまり塹壕戦から機動戦に移行するための方法を提示したかったのだ。我々は彼の分析や結論について完全に同意しておらず、特に第1次大戦に関する描写については全く同意できないが、彼の深い知識と歴史を理解する能力については高く評価している”

出典:Сухопутні війська ЗС України

ザルジニー総司令官の言葉は西側諸国にどのような影響を与えたのか?

“現状について正直に話すことが重要だ。欧米の政治家達は「膠着状態」というワードの使用を避けていた。何故なら膠着状態と認めると「ウクライナの状況が絶望的」で「この消耗戦においてロシアが有利だ」という印象を世論に植え付けるリスクがあるからだ。戦争の膠着状態は「反攻作戦の失敗」を意味し、西側諸国はウクライナへの支援を撤回せざるを得なくなるかもしれない”

“サリバン補佐官は8月「この戦争は膠着状態ではない」と述べたものの9月や10月にはより悲観的な見方を示し、我々だけでなくウクライナ人アナリストも同様の見方をしていた。しかし「ウクライナ政府や軍が発表する見通しを支持する人々」から大いに批判され、彼らは我々のこと宿命論者、敗北主義、悲観主義と呼んでいたが間違っていたと思う”

出典:Office of Speaker Mike Johnson Public Domain

“どうすれば現状を打開できるかを理解するには現状を認めることが最も重要だ。私はウクライナに対して宿命論者であったことはなく、長い戦いの中で困難に直面しても最終的には勝利すると信じているし、国力の大きなロシアの長期戦に必ず勝利する保証もない”
“しかしウクライナを見捨てようとする政治家、特に米国の共和党は自分達の主張を押し広げるためザルジニー総司令官の発言を利用するリスクがある”

“楽観的な見方としては今回の評価に耳を傾けて何が間違っていたのかを反省するかもしれない。その場合は「反攻作戦が失敗した」と認めることから始めなければならず、2024年や2025年に想定される反攻作戦をどう戦うのか、これを欧米諸国はどう支援するのかをよく考えなければならない。そうでなければ今回の反攻作戦と同じ結果を繰り返すだけで「異なる可能性」は期待できないだろう”

出典:PHOTO BY Senior Airman Duncan Bevan

ザルジニー総司令官はロシアが損失を被ったにも関わらず制空権を維持していると言及した。仮に数個中隊分のF-16を受け取っても決定的な変化はないと述べたが、そのような敵とどう戦えばいいのか?

“ザルジニー総司令官は4000文字に及ぶ寄稿文中で制空権の重要性を説いたがF-16については一切触れなかった。このことはF-16の役割が非常に限定的になるだろうという見方を反映していると思う。多くの人々はF-16が戦況に大きな変化をもたらすと重視しすぎているのだ。勿論、AIM-120を搭載するF-16がロシア軍機を前線から遠ざけ「空からの脅威」を減らすことが出来るかもしれない。さらに他の任務でも役にたつかもしれないが制空権を確保することはないだろう。何故ならロシア軍の防空システムに直面するという事実に変わりがないからだ”

“ウクライナはF-16をフル活用するのに必要なAWACS、航空司令部、電子戦機、西側諸国並の支援能力がないため、F-16への期待値は引き下げるべきだろう。さらにザルジニー総司令官は今後の戦いについて「UAVのスウォーム能力」に焦点を当てている。ウクライナが砲弾の量と質で不利な立場にあるのなら他の技術的手段でカバーしなければならない。例えば安価な自爆型ドローンを大量生産すれば大砲の代わりにならなくても、ある程度の火力を再現できるようになるかもしれない”

出典:Генеральний штаб ЗСУ

“欧米諸国は砲弾の増産に取り組んでいるものの依然としてウクライナのニーズを満たせていない。ロシアの砲弾供給に追いつくのは早くても2025年頃なので来年は非常に厳しい年になるだろう。人々は「2025年には状況が改善する可能性がある」と理解する必要があり、そうでなければ来年の夏頃に「ウクライナが負ける」という見出しが紙面を飾ることになる”

“ウクライナの主な課題は「如何に効率よく戦って火力と質量を生み出すか」で第一に電子戦、第二に対砲兵レーダー、つまりロシア軍の砲兵の位置を特定して攻撃する能力が最も重要で、その次が地雷除去装置だが、ここで重要になるのが兵士の質だ。ウクライナには前線から兵士を引き抜いて必要な訓練を施すことが困難で、十分な数と能力を備えた予備戦力を用意することが難しい。ザルジニー総司令官も近代的な動員システムと訓練システムの必要性を訴えている”

“欧米諸国はウクライナ軍の訓練規模を拡大させなければならず、兵士の質は今年の反攻作戦でも見受けられた課題の1つだ。来年、ウクライナ軍がロシア軍に対抗できるようになるためには同分野に注目すべきだと考えている”

出典:Генеральний штаб ЗСУ

西側諸国でウクライナ軍の訓練を拡大させる機会はあるのか?

“欧米が取り組むなら訓練を拡大できない理由がない。もっと多くのウクライナ人を海外に連れ出し、もっと長期に渡って質の高い訓練を受けさせない理由がない。5週間程度の諸兵科連合訓練では信じられないほど複雑で密集した地雷原を突破するに十分ではないと証明されている。今必要なのは小銃を撃てる人間ではなく「より複雑な任務」を遂行できる人間で、旅団レベルの作戦を指揮して部隊を動かせる人間だ”

“現在のウクライナ軍で攻撃任務を遂行できる旅団はほんの一握りだ。殆どのウクライナ人兵士は攻撃任務に対応できていない。この問題は「大量のドローンと砲撃に晒された環境下で航空支援なしに十分保護された陣地を襲撃する」という能力が求められているためで、過去70年間、このような能力を西側諸国の兵士ですら要求されたことがない”

出典:Генеральний штаб ЗСУ

“第2の課題は部隊を前線から引き抜いて訓練に必要な時間を与えることだ。ドネツク方面で大規模なロシア軍の攻撃が続いていることからも分かるように、これは大きな挑戦になるだろう。ロシア軍の攻撃は失敗することもあれば効果がないこともある。莫大な損失を被って極めて自滅的なものになることさえあるが、それでもロシア軍は余裕を与えないようウクライナ軍部隊を前線に釘付けにすることできる”

“だからこそ我々は前線部隊に訓練を行う時間と空間を与える方法を見つけなければならない”

“来年のウクライナ軍は基本的に現在の領土を守るだけになると思う。ウクライナ軍の快進撃や活躍を見たい欧米人にとっては魅力的ではないかもしれないが、来年は直面する課題を解決方法を学び、次の攻勢を準備するため防御に集中する必要がある”

出典:Генеральний штаб ЗСУ

貴方は70年間誰もやったことがない仰ったが、反攻作戦が始まる前から西側のアナリストの中には「これほどの攻撃を航空支援なしで行うNATO加盟国はない」と指摘する者もいた。ウクライナの反攻作戦がどのような結果をもたらす分かっていたはずなのに、なぜパートナー達はこれほど批判的なのか?

“ウクライナを批判する理由のひとつは両者の間で責任のなすり合いが見られるからだと思う。しかし反攻作戦の失敗は双方に責任がある。ウクライナの戦術に対する批判の一部は正当なものだ。私が尊敬する専門家の発表した報告書、論文、記事を読めばウクライナ軍にもミスを含む過ちがあったことが分かるだろう。私は全ての証拠を持っておらず、現在進行系の戦争なので歴史家のようにじっくり推測するのも難しいが、私がアナリストから繰り返し聞いた不満の1つは「バフムートでの防戦が反攻作戦に大きな影響を及ぼした」というものだった”

“この問題に詳しいコンラッド・ムジカ氏は「バフムートの戦いでウクライナ軍は砲弾の備蓄を使い果たしたのに対し、ロシアはスロヴィキン・ラインを強化する時間を得ることができた」と指摘、さらにウクライナ軍は経験豊富な旅団を東部戦線に残し、経験の浅い旅団に最新装備を与えて南部戦線に移動させた。この選択が異なっていれば南部での反攻作戦はもう少し違った様相になっていたかもしれないが突破が約束されていたとは断言できない。成功を保証するとも言っていない。この結果は誰にも予想できない。しかしこのような過ちに対する非難は当然だろう”

出典:Telegram経由

“その後、ウクライナ軍や政府高官達は幾つかの問題について西側諸国を非難し始めたが、この中にはウクライナ側の過ちを隠す目的の不当な非難が含まれている。しかし中には非常に合理的で公平な非難も含まれている”

“例えば、今回の攻撃計画は時代遅れの仮定や数値に基づいていたと言っても過言ではない。パートナーがウクライナ軍に教え込もうとした戦術データの多くは20世紀の作戦分析に基づいており、ウクライナで行使されている現代技術を反映していない。この事についてはザルジニー総司令官も言及していると思う。彼はこれについて技術の問題だと表現し、我々の教本、シミュレーション、ウォーゲームではカバーされていない問題だ”

出典:53 окрема механізована бригада імені князя Володимира Мономаха

反攻作戦は防衛ラインを突破するはずだった機械化部隊の戦術が機能しないことを示している。多くの地域で小規模部隊による突撃戦術に切り替わりつつあるが、この急速な突破をもたらしていない。ドローンによる認識力の拡張が戦場を丸裸にしてしまった。この戦争で戦車の役割は失われてしまったのだろうか?

“この戦争において装甲車輌を集中運用する部隊の役割は限定されているし、私もそれを否定するつもりはない。但し戦車が時代遅れの兵器に成り下がったとは考えていない。戦車の有効性はドローンの目を如何に誤魔化すか、砲兵部隊の攻撃を如何に避けるかに掛かっており、これは敵センサーの妨害能力、ドローンを制圧する電子戦能力、敵砲兵の事前制圧などで対処でき、この種の問題は1916年に欧州が直面した課題、1973年にイスラエル軍が直面した課題と同じで、新しい技術によって生じるお馴染みの問題なのだ”

“もし上記の問題内、幾つかだけでも解決できれば戦場で戦車が活躍するためのスペースが確保できるだろう。戦争において永続的なものは何もない。技術は戦場を形作るかもしれないが戦場を定義するものではない。この点において第1次大戦が技術のせいで行き詰まったと考えるザルジニー総司令官と私の意見は合わない。1916年から1917年にかけて戦車が登場したが戦場を突破することは出来なかった。これは戦車が間違った手段だったのではなく、適切な戦術と諸兵科連合軍が存在していなかったからだ”

“1940年にフランスでドイツ軍が電撃作戦を成功させたのは航空機、装甲車輌、無線通信など、様々な技術が適切な戦術に統合されたからで、技術の進歩だけで戦車の活躍が成立したのではない。信じられないほどリスクが高い開けた地域で戦車が機動できるスペースを作り出すためには長い時間が必要になるかもしれない”

出典:Telegram経由

ウクライナ南部で見られる地雷原は攻撃側にとって大きな脅威だ。ウクライナもパートナーも地雷除去装置が不足していることが判明した。これほど大規模な地雷原を想定していなかったのか?

“とても良い質問だ。ロシア軍のドクトリンは塹壕を掘って地雷を敷設することなので6月時点で非常に密集した大規模な地雷原があると分かっていた。地雷の目的は単に敵車輌を破壊するのではなく、敵軍の進軍スピードを鈍らせて他の攻撃手段の標的にすることだ。西側諸国は地雷処理について多くの経験を有していたものの「敵の砲弾が降り注ぐ中」で地雷処理を行った経験がなく、これが決定的な問題になった”

“この問題は地雷処理装備を増やしただけで解決しない。この問題でもザルジニー総司令官の指摘は非常に合理的で正しい。我々は新しい地雷処理技術、特に「敵の砲弾が降り注ぐ中」で役立つ遠隔操作が可能なロボット技術に焦点を当てるべきだが、仮に100台のロボットを地雷処理に向かわせてもロシア軍に破壊されるだけだろう”

“つまり地雷を処理をするにはロシア軍のドローンや大砲を制圧する能力と組み合わさなければ意味がなく、前線で機械化部隊を運用するための技術的課題を解決しない限り、地雷の問題も解決できないことになる”

以上がシャシャンク・ジョシ氏が披露した主張の主要ポイントで、ATACMS、F-16、レオパルトが膠着した戦場状況を打開するのではなく、敵の認識力拡張を阻害して「戦場で装甲車輌が機動できるスペースを作り出す技術」が戦争の行方を左右するのかもしれない。

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※アイキャッチ画像の出典:Ministry of Defence of Ukraine
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投稿者: 航空万能論GF管理人 ウクライナ戦況 コメント: 41 』