第4章 イスラエルの調査報告
4-1 イスラエルの農業・食料分野の現況
4-1-I農業事情
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/attach/pdf/230728-7.pdf
(1)イスラエルの概要
イスラエルは地中海に面し、人口約1,00〇万人のうち、7割以上がユダヤ人で自国民人口
の割合が高く、1人あたりGDPは5万ドル超と高い国である。
ユダヤ教徒が多数派を占めるが、イスラム教徒やキリスト教徒のアラブ人、エチオピアや
ロシアからの移民など、多様なコミュニティが存在する。
外交においては、もともと米国を中心とする欧米諸国との協力関係を築いているが、2020
年に米国の仲介でUAEとの間で「アブラハム合意」がなされるなど、UAE、バーレーン、
モロッコ、スーダンと国交正常化が進み、UAEとは2022年5月に包括的経済連携協定に
署名するなど協力拡大を進めている。
図4-1-1-1:イスラエルの基本情報
【人口】 937万人(2021年)
【面積】 22,072Krri (東エルサレム及びゴラン高原を含むが、併合は日本含め国際社会の大多数は承認せず)
【首都】 エルサレム(日本をはじめ、多くの国は首都と認めず)
【言語】 ヘブライ語(公用語)、アラビア語(特別な地位を有する)
【民族】 ユダヤ人(約74%)、アラブ人(約21%)その他(約5%)
【宗教】 ユダヤ教(約74%)、イスラム教(約18%)他
【通貨】 新シェケル(ILS)
【政治】 共和制
【GD P】 名目:4,885億ドル(1人あたりGDP:52,152ドル)(2021年)
【GD P成長率】8.6% (2021年)
出所:外務省、IMF、CIAよりみずほ銀行国際戦略,情報部作成
83
イスラエルにおける産業構造をみると、サービス業、情報•通信、卸小売•宿泊・飲食、
教育、医療・社会福祉を含めたサービス関連事業がGDP全体の7割を占めていることがわ
かる。
図4-1-1-2:産業名目GDP内訳(2020年)
その他
医療・社会福祉 14.8%
6.6%
教育
6.8%
卸小売•宿泊・飲食
10.6%
情報•通信
12%
出所:イスラエル中央統計局よりみずほ銀行国際戦略情報部作成
イスラエル政府は、インダストリー4.0、フードテック産業育成計画、再生エネルギー産
業成長計画などを通じて多様な産業の開発を進めている。
2022年、日本とイスラエルは、外交関係樹立70周年となる節目の年を迎えており、イス
ラエルへの日系企業の進出は直近10年で3倍以上に増加するなど、近年特に経済関係が大
きく進展している。
(2)イスラエルの日系企業進出状況
イスラエルに進出している日本企業の多くは製造業であり、半導体関係、電子部品、自動
車部品等のメーカーが駐在員を配置している。また次いで、メディア関係、商社等の卸売業・
小売業が進出しており、3業種で全体の約76%を占める。
駐在員を配置する主要な目的は、投資•技術探索、R&D、イスラエル企業への営業•マ
ーケティング、製造等であり、先端技術等への関心が高い。他方、農業•食品関係企業の進
出数は少ないが、先進的な農業国であり、フードテック産業も盛んであるため、フードテッ
クへの投資に関心があると考えられる。
84
図4-1-1-3イスラエルの日系企業拠点数(2021年10月1日現在)
出所:外務省よりみずほ銀行国際戦略情報部作成
⑶イスラエルの人口状況
イスラエルの人口構成は、〇歳〜14歳の年少人口の割合が一番高い富士山型であり、出
生率3.。 (2020年)は先進国最高である。民族別人口をみると、ユダヤ人が74%、アラブ
人が21%を占めている。
現在、総人口の約1割と推定される超正統派ユダヤ教において、出生率が19年次基準
6.5%と人口増加が著しいなど、民族的•宗教的な要因に加え、経済的に豊かになったこと
が高出生率を後押ししていると考えられ、今後も人口増加が見込まれる。
イスラエルの人口は、1948年から1967年の間にイスラム教徒の支配下にある国々から
追放された又は逃亡したユダヤ人の子孫(ミズラヒム)に加え、主にドイツや東欧にいたユ
ダヤ人の子孫(アシュケナジム)、イベリア半島出身のユダヤ人の子孫(セファラディム)、
ロシア系の移民等から構成され、多様性を有している。
国家が定める「ユダヤ人」の要件は、①ユダヤ教徒かつ②母親がユダヤ人である。ただ、
ユダヤ人の中には、厳格な規律に則して生活をする超正統派から、食物規定(コーシャ)に
沿わず、豚肉食なども行うこともある世俗派まで多様である。世俗派は宗教面でも比較的寛
容であるため、海外の食品やコーシャ食品以外にも寛容であると想定される。他方、超正統
派はコーシャ認証の中でも最も厳しい認証基準を満たした食品のみ口にするなど、外国産
食品の提供先としては敷居が高い。また、ユダヤ教徒以外のイスラエル人はコーシャ以外の
食物規定を有している場合がある。そのため、イスラエルへの日本産品の展開に際して、コ
ーシャ、ハラール等の宗教的な側面も考慮に入れることが日本食普及拡大には重要である
と考えられる。
85
図4-1-1-4:年齢別人口構成(2021年)
※単位:千人
0 100 200 300 400 500
100以上
H 95~99
■■90 〜94
■ー 〜89
■■■W»84
500 400 300 200 100 0
•男性・女性
出所:United Nationsよりみずほ銀行国際戦略情報部作成
図4-1-1-5:民族別人口構成(2021年)
出所:CIAよりみずほ銀行国際戦略,情報部作成
86
図 4-1-1-6:人口予測(IMF)
出所:imfよりみずほ銀行国際戦略情報部作成
(4)農産品の消費と輸出入
イスラエルの食品市場規模は成長を続けており、2021年の規模は約361億ドルであり、
2022年から2027年は年率6.43%の成長が見込まれている。
イスラエルでは、食品消費が家計支出の16%以上と食品に対する支出が大きい傾向にあ
り、経済成長や人口増加に伴い食品市場は着実に成長している。
図411-7:食品市場規模の推移
出所:FAO (Statists)よりみずほ銀行国際戦略,情報部作成
図4-1-1-8:食品市場の内訳(2021年)
水産物,7%
出所:FAO (Statista)よりみずほ銀行国際戦略情報部作成
87
イスラエルはほとんどの食料を自給しており、サウジアラビアやUAEなどと比較して農
産品の輸入規模はio分の1程度である。水や耕地の不足を克服するため、効率的な生産シ
ステムを発展させてきたことにより、国土の半分以上を砂漠が占めているにもかかわらず、
近代的な農業を実現させたことが背景にあり、今では、特に水問題を解決する農業技術が世
界中に輸出されるまでになっている。
図4-1-1-9:食品の輸出入規模(2020年)
※単位:百万USD
出所:イスラエル中央統計局よりみずほ銀行国際戦略情報部作成
図4-1-1-10:食品の輸出入規模(2020年)
※単位:百万USD
險入 的出
食品 5,397 1,700
飲料 430 74
全体 5,827 1,774
出所:イスラエル中央統計局よりみずほ銀行国際戦略情報部作成
日本のイスラエルへの農林水産輸出額は、イスラエルの輸入全体額の0.1%程度と少額で
あり、イスラエルの食品輸入相手国トップ3は、スイス、アメリカ、オランダと欧米勢が占
めている。
88
図4-1-1-11:イスラエルの食品輸入状況(2021年)
645百万USD
(9%、1位)
緊物・カッ
出所:UN Comtrade,〇ECよりみずほ銀行国際戦略情報部作成
(5)農産品の生産
イスラエルの主要農作物はジャガイモ、トマト、みかん、にんじんの順に多く、果物や野
菜が上位を占めている。
食料自給率を見ると、乳製品、青果物、野菜が95%以上である一方、小麦は約8%、牛肉
は約30%、魚は約13%となっており、これらの品目は輸入が中心となっている。
図4-1-1-12:イスラエルの農作物(上位10品目、2020年)
出所:FAO (Statists)よりみずほ銀行国際戦略情報部作成
89
4-1-2 食品製造•流通事情
(1) 食品産業と市場、貿易
イスラエルの食品市場は、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、地元の食料品店
の3つの主要な食品小売のチャネルに加え、生鮮食品や肉、たばこなどの専門店による生
鮮市場があげられる。
大手スーパーマーケットチェーンは基本的にコーシャ認証食品しか扱っていない。同様
に、多くのホテル、レストラン、食品加工会社は、コーシャ認証食品のみを調達している。
これはコーシャに必ずしも沿わない世俗派が多いテルアビブにおいても同様である。
一般にイスラエルの消費者は、他国産の食品への関心が高い。近年、家計支出の16%以
上が食費にあてられているが、所得が増加するにつれ、健康志向も強くなっており、消費者
のニーズが健康的な食品にシフトしている。少し高くてもオーガニック食品を求める傾向
があり、スーパーマーケットにはオーガニックコーナーが設けられている場合もある。
2022年の小売食品の新しい動きとして、イスラエル初となる海外スーパーマーケット
Carrefour (フランスの小売大手)が12月末にオープンした。2022年の夏前からプライベ
ートブランドをYeinot Bitan (イスラエルの主要なスーパーマーケットのひとつ)で展開
し、顧客を掴んでいる。また、2023年1月にセブンイレブン1号店がテルアビブ市内に出
店し、今後5〜6年をかけてイスラエル全土に店舗を展開する準備を進めている。
(2) サプライチェーン
イスラエルのサプライチェーンは発達しており、生産者、食品加工業者、卸売業者、外食
業者、食品輸入業者が関わっている。
大手スーパーチェーンは、輸入食品を扱うために独自の購買部門と輸入部門を持ってお
り、海外から食品を直接輸入している。スーパーチェーンの多くは、さまざまな形態で営業
を行っており、例えば、郊外では大きなディスカウントストアを、都市の中心部では高級な
食料品店を運営するといった具合である。
コンビニエンスストアは、大通りに位置するほか、ガソリンスタンドに併設されている。
都市部のコンビニエンスストアは、地域の住民が抱える満車の駐車場問題の解決に貢献し
ている。
図4-1-2-Iサプライチェーン
出PJr: Euromonitorよりみずほ銀行国際戦略情報部作成
90
図4-1-2-2:イスラエルの食品市場規模(売上ベース、2021年)
※叟位:STdUSD
スーパーマーケッド
3,197 (16%)
■Jzx”スストア
1,486 (8%)
ティスカウントストア
12,134 (62%) 喚のy
出PJr: Euromonitorよりみずほ銀行国際戦略情報部作成
2021年の小売市場全体の売上高はスーパーマーケットチェーン(ディスカウントストア
も含め多角的に展開)が65%以上を占め、そのうち上位3社が市場の半分以上を占める。
図4-1-2-3:主要なスーパーマーケットチエーン
小売業者 説明 r
Shufersa! イスラエル最大の小売グループcスーパーマーケット、 ディスカウントストア、食料品店、コンビニエンスストア、 食品のオンラインショップ、オーガニックストアなどを展開 プライベートブランドに多額の投資を行い、プライベート ブランドのシェアは25%
Rami Levy Chain Stores Hashikma Marketing 2006 スーパーマーケットチェーン2位 ディスカウントストアのチェーンを構築 スーパーマーケット、食品のオンラインショップも展開
Merav – Mazon Koi スーパーマーケットチェーン3位
Yeinot Bitan スーパーマーケットチェーン4位 2022年夏よりCarrefourのプライベートブランド製品の 取り扱いを開始
M. Yochananof & Sons スーパーマーケットチェーン5位
305店舗
53店舗
20店舗
151店舗
35店舗
国内店舗数売上(USD)
4,571M
1,998M
1,351M
929M
l,080M
出所:BDIよりみずほ銀行国際戦略情報部作成
4-1-3 食品関係法令•規制関係
(1)農業・食品関連政府組織
イスラエルの食品、家畜、工場等の施設の安全管理に携わる組織のうち、保健省が食品を
輸出する際の許可業務を担っている。
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図4-1-3-1:食品関連組織
Ministry of Health
食品基・ 現制の策定・採用
食品檢入の許可棄務を担当
農業•囲掴発肖(MOAG)
Mnistry of Agnajkure and Rural Development
イスラエル»格ゆ(SII)
Standards Insutuxe of Israel
•国内の標進化団体
•大企葉や案界団体の代表者にて柳形
働心省
Ministry of Economy and Industry
• IVAHS:動物および畜産物の!ft入規制、
浅留震奏監視を担当
• PPIS :讀物および植物製品のifi入を
許可・管理
•貿易裁を担当
•アルコール飲料の輪入を管お
出所:USDAよりみずほ銀行国際戦略,情報部作成
(2) イスラエルにおける農業•食品政策の位置付け
イスラエルは土地が限られているだけでなく、水資源の乏しさが農業の足かせとなって
いる。そのため、限られた水資源を有効活用するために灌漑技術が発達し、処理水を再利用
する取り組みが進められたことから、果物、野菜、乳製品、家禽•鶏卵の食料自給率は95%
以上である。一方で小麦、牛肉、魚については輸入に依存している。
2021年11月、輸入コストの削減、競争の導入、輸入品目の拡大などを目的として輸入規
制が改正された。食品関連部門においては、一部の食品基準の廃止や並行輸入時の手続きの
簡素化が実施された(2023年1月より発効)。EUがイスラエルの農産物及び食品輸出の最
大市場であることから、イスラエルの食品基準はEU規制に準じる傾向にある。
(3) 食品の輸入に関わる規制
輸入許可における関係省庁は、農業・農村開発省、保健省、経済産業省であり、各省庁が
具体的な品目ごとに対応する。コーシャ認証は、ユダヤ教師最高評議会(The chief
Rabbinate of Israel以後:最高評議会)が所管する。
イスラエルに食品を輸入する際は、FCSに全商品を登録する必要がある。FCSは、全食
品を図4-1-3-2のリストのいずれかにあてはまるセンシティブ食品といずれにもあてはま
らない非センシティブ食品に分類し、各分類に沿った輸入手続きが行われる。非センシティ
ブ食品は、輸入に必要な書類をオンラインで提出することが可能だが、センシティブ食品は、
FCSより事前に承認を受ける必要がある。
センシティブ食品は、公衆衛生保護(食品)リスト(2019年)に基づいている。
92
図4-1-3-2:センシティブ食品
センシティブ食品
1 乳成分を含有する乳製品及び乳製品代替品
2 肉・家禽肉製品
3 魚類及び水産物(軟体動物、甲殻類、及び棘皮動物群の海洋動物を含む)
4 卵と卵製品
5 はちみつ・はちみつ製品
6 ゼラチンやコラーゲンを含む製品
7 弱酸性の缶詰の食品(PH立45)
8 8°C未満であることを条件に、保存、保管または輸送されなければならない食品
9 グルテンフリー表示されているものを除く、栄養補助食品等
10きのこ類及びきのこ類の混合物(きのこ類を主成分とする製品を含む)
11食品産業での使用または最終製品として使用するための微生物
12瓶入り飲料水、ミネラルウォーター及びミネラルウォーター系飲料
13食用色素
14カートの葉(。歯むためのもの)
出所:公衆衛生保護(食品)リスト(2019年)よりみずほ銀行国際戦略,情報部作成
図4-1-3-3:イスラエルにおける主な輸入規制
食品の主な輸入規制
動物検疫
植物検疫
•牛肉:コーシャ認証が必要
•鶏肉:コーシャ認証が必要
•豚肉:輸入が認められない
•水産品:コーシャ認証が必要
日本で食されている籍、鮪、鯛、鮭およびイクラはコーシャとして認められている一方、カジキ
マグロ、鯨、ウナギ、アナゴ、貝・甲殻類、タコ、イカ、ウニなど認められていない品目も存在
出所:USDAよりみずほ銀行国際戦略,情報部作成
図4-1-32:食品関連の規格(ホームページはヘブライ語のみ)
食品関連
規格基準および登録措置 番号、詳細参照先
包装食品のフベル表ホ 1145
包装及び容器の使用規制 5113
食品添加物規制 イスラエル環境保護省HP参照
食品と飼料中の汚染物および毒素 農業省HP参照
食肉・家禽製品のと殺場の登録 農業省HP参照
出所:USDAよりみずほ銀行国際戦略,情報部作成
93
図4-1-3-5-i!関手続き
事前登録 輸入手続き
•輸入業者のFCS登録
•食品のFCSへの登録
•輸入許可(ライセンス)の取得
•書類提出
•輸入業者証明書
•すべての食品についてFCSへ申請書を提出
•センシティブ食品に該当する場合、輸入に関する事前承認が必要
•肉類、酒類等の一部品目は、輸入許可証の取得が必要
申請先は品目ごとに経済産業省、保健省、農業省
ライセンスは通常10日ほどで発行
必要書類:
・ラベルのコピー(原産国およびイスラエルのもの)
•食品成分、出荷ロットの食品適合性(こ関する証明書類
•健康・衛生証明書(自由販売証明書、健康証明書、
GMP(適正機製造規範)
•出荷書類(輸入申請書、出荷小名称、船荷証券、
パッキングリストなど)
•商業インボイスは既定の様式はないが、原産地、日付、
売り手と買い手の名前、住所、品目の説明、量や大きさ、
取引価格、支払方法の記載は必須
検 査 手 続 き •食品技術者(こよる書類審査 •必要と認められた場合、イスラエル のラボにおける検査 •食品技術者による書類審査は、規制等の法律(こ基づき行われる •輸入業者は、生鮮食品であれば最大12時間以内にラボにサンプル を送って検査、生鮮加工食品であれば車前入業者が選択した認証 検査機関にて検査 •承認されると署名入りの輸入許可証が送付される (期限は1年、4年まで延長可能)
通 期
閏 手 •書類提出 必要書類は、輸入手続きの項を参照
続 き
出所:USDA、JETROよりみずほ銀行国際戦略情報部作成
(4)日本や他国との協定状況
日本とイスラエル間の協定の状況については、2017年10月5日に「投資の自由化、促
進及び保護に関する日本とイスラエルとの間の協定(略称:日•イスラエル投資協定)」が発
効した。これは、締約国間における投資の自由化、促進及び保護を図るため、一方の締約国
の投資家(企業等)が他方の締約国において投資を行う際の投資活動と投資財産への待遇
(投資参入段階及び参入後の内国民待遇及び最恵国待遇、公正•衡平待遇、特定措置の履行
要求の禁止、収用の際の補償の条件、送金の自由、紛争の解決手続等)について定めるもの
である。
貿易の自由化を含む経済連携協定の交渉は、2022年11月22日に日本政府とイスラエル
政府間で日・イスラエル経済連携協定(EPA)に関する共同研究会を立ち上げることで一致
94
したばかりであり、今後の進按は日本・イスラエル双方の事業者より注目されている。
イスラエルは1962年7月5日からGATTのメンバーであり、1995年4月21日にWTO
へ正式に加盟した後、WTO協定に則り、自由貿易を推進している。複数の国とFTAを締
結しており、イスラエルへの2019年の牛肉輸出額上位3カ国である、アルゼンチン(輸出
国に占める割合:30.9%)、パラグアイ(21.3%)、米国(3.2%)はいずれもFTA締結国であ
る。
イスラエルのFTA締結状況は以下のとおり。
• EFTA (スイス、アイスランド、ノルウェー)(1993年1月発効)
• 米国(1995年8月発効)
• カナダ(1997年1月発効)
• トルコ(1997年5月発効)
• EU (2000年6月発効)
• 南米南部共同市場(メルコスール)(ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、アル
ゼンチン)(2009年12月〜2011年9月発効)
• パナマ(2020年1月)
• コロンビア(2020年8月)
• ウクライナ(2021年1月発効)
• 英国(2021年1月発効)
• 韓国(2022年12月発効)
(5) 食品の輸出に関わる規制
食品について輸出禁止品目はないが、一部の食品、生鮮農産品は輸出フィセンスの取得が
必要である。
(6) コーシャ規制に関するまとめ
コーシャの語源は旧約聖書の食事規定である「カシュート」であり、ユダヤ教では、食べ
てよい食物と食べてはいけない食物が聖典に書かれている。コーシャとはヘブライ語で「適
正」を意味し、ユダヤ教の戒律に基づく食事規定に適合した、食べてよい食物のことをいう。
コーシャ認証は、ユダヤ教の聖典である旧約聖書に基づいたもので、専門の「ラビ」と呼
ばれる宗教指導者が原材料、製造工程の実地検査を行った上で判断される。
なお、コーシャと認められない代表的な食品としては、豚肉やひれとうろこを持たない魚
介類、昆虫•爬虫類などがあり、肉と乳製品を一緒に調理されたものも含まれる。
95
図4-1-3-6:食品群ごとのコーシャ
□ ーシャ認証の対象となりうる食品 コーシャと認められない食品
畜産物 以下の家畜のうち、専門のと殺者がユダヤ教 の戒律に従ってと殺•処理したものであり、 乳製品と一緒に摂取しない場合 •「ひづ、めが分かれ、そのひづ、めが完全に 害1]れているもの、また、反芻するもの」 (牛、羊、山羊、鹿の類) •「植物、海藻等を食用とする鳥」 (鶏(ニワトリ)、七面鳥、ガチョウ) 豚肉由来の食品 ゼラチン、ラードも対象 左記の肉のうち、乳製品と一緒に調理 されたもの。 猛禽類、ダチョウ
乳製品 肉と一緒に摂取しないもの 肉と同じ調理器具で調理されていないもの 肉と一緒に調理されたもの
魚介類 「ひれとうろこを持つもの」 サケの卵、タイ、マグロ、イワシ、サケ、サワラな ど 「ひれとうろこを持たないもの」 イカ、タコ、エビ、カ二、貝、サメ、エイ、 ウナギ、ナマズ、ヤツメウナギ
その他 酒類、野菜、果物、ナッツ類 昆虫、爬虫類、齧歯類、両生類
出所:国土交通省、農林水産省よりみずほ銀行国際戦略情報部作成
コーシャ認証は、専門のと殺者がユダヤ教の戒律に従ってと殺•処理される必要のある肉
製品を除けば、輸入食品に関し法的な要件となってはいない。ユダヤ教徒も正統派、保守派、
世俗派など宗派が分かれており、コーシャ食品にこだわらないユダヤ教徒も存在すること
から、コーシャ認証を取得しなくてもイスラエル市場には輸出が可能である。もっとも、大
手スーパーマーケットやレストランの食材のほとんどがコーシャ認証を受けた食品¢といわ
れている。
また、イスラエルでコーシャとして販売される輸入食品はすべて、同国における政府の宗
教サービス局にあたる最高評議会より認可を受けたラビよりコーシャ認証を受ける必要が
ある。
図4-1-3-7:イスラエルにおけるコーシャ対応
出所:調査に基づきみずほ銀行国際戦略情報部作成
96
「コーシャ認証」を発行する期間・団体は世界に1,400ほどあるといわれているが、イス
ラエル政府公認のコーシャ認証団体以外の認証はイスラエルでコーシャと認められない場
合もある。世界的に知られるコーシャ認証団体であるOU、OK、KLBDはスーパーコーシ
ャ、これらにStarKを加えた認証団体はトップ4と呼ばれ、どの市場でも通用し、互換性
もある。
図4-1-3-8:主なコーシャ認証団体の概要
認証機関/認証名 本拠地 概要 認証企業
Orthodox Union Kosher (OU) /Orthodox Union Kosher (OU)シンボル 米国 世界103カ国で5500社 が認証を取得。 特に本拠地である米国では 最大の認証機関。 伊藤園グループ、森永乳業、 東亜食品、愛南漁業協同 組合、前原製粉、桜井食 品、佐々本製茶、杉本商 店、京屋酒造、菊水酒造、 静パッ久ハラダ製茶、丸山 製茶、レキオスジャパン等
Kosher London Beth Din (KLBD) /KLBDシンボル 英国 世界70カ国、2000社が 認証を取得。EUでの認証 マーケットシエアは45%であ り、欧州最大のコーシャ言忍 定団体。 玉之光酒造、九重味醐、 タカショ久田中酒造、やまま 満寿多園、Ferme du SoleiUx関谷醸造、きちみ 製麺、JA市川、当栄ケミカ ル、三菱ケミカル等
Organized Kashrut (OK) /OK Kosher Certification 米国 世界115カ国で認証。 大関、Beyond Meat、 西本、Wismettac (Shirakiku)等
Star K 米国 イスラエルのほか、英国、イ ンド、南米に拠点 江井ケ嶋酒造株式会社、 アサヒビール株式会社等
出所:各種公開情報よりみずほ銀行国際戦略情報部作成
日本国内で国際認証団体によるコーシャを取得する場合、米国• OK Kosherの日本支部
もしくは、米国・OU、英国・KLB Dの日本代理店などに依頼する必要がある。
日本で取得可能な主なコーシャ認証は下表のとおり。
97
図4-1-3-9:日本で取得可能な主なコーシャ認証の概要
国内の支援団体 認証名 概要
コーシャジャパン KJ認証 1999年(こ創設された日本初の コーシャ認定機関
ヤマミズラ OU (Orthodox Union)シンボル KLBDシンボル 世界最大のコーシャ認定団体及び 欧州最大のコーシャ認定団体の 日本事務所
OK Kosher日本事務所 OK Kosher Certification Super Kosherの一つである〇K Kosherのグローバルオフィス
出所:各種公開情報よりみずほ銀行国際戦略,情報部作成
4-1-4 食事情•健康食品
⑴ イスラエルにおける食に関する習慣
イスラエルの特徴として、摂取する食品のうち肉類が35%、乳製品が16%と高く、さら
に肉類のうち牛肉が30%を占めていることがあげられる。
イスラエルと日本を比較すると、日本は肉類、穀物、水産物が20%程度とバランスよく
食品が摂取されており、肉類の内訳をみると鶏肉の比率が高く、次いで豚肉、牛肉の順とな
っている。日本は肉類のうち豚肉が35%を占めているのに対し、イスラエルは宗教的な理
由により豚肉を食べない人口が多く 2%以下となっており、肉類の内訳にも各国の特徴が見
て取れる。
図4-1-4-1:イスラエルおよび日本の食品群別摂取割合
出所:FA〇よりみずほ銀行国際戦略,情報部作成
98
(2)イスラエルの健康食品市場と流通状況
イスラエルの健康食品市場については、近年若者を中心としたダイエットブームを契機
に、ベジタリアンやビーガン人口が増加するなど、健康意識が向上し、健康食品への関心も
高く、健康食品全体の売上は上昇傾向にある。
図4-1-4-2:健康食品の種類別売上
※単位:百万USD
■ MB** 化3糸 w その<t
出m: Euromonitorよりみずほ銀行国際戦略情報部作成
健康食品の購入場所は、ディスカウントストアやスーパーマーケットが7割程度を占め、
通常の食品と同じ場所で購入されている。
図4-1-4-3:健康食品の販売場所(2021年)
その他
6%
小規模食料品店ー —
8%
Eコマースー
9%
コンビニエンスストび
9%
出PJr: Euromonitorよりみずほ銀行国際戦略情報部作成
99
イスラエルでは経済成長に伴い、食に対して量よりも質を重視する傾向となったと言わ
れており、実際に高品質の食品への支出が増加傾向にある。特に、伝統的に油の多い肉料
理が多いため、消化機能が高まる食品への関心が高まっている。また、ビーガン志向の高
まりを受け、オーガニック等の自然系食品の需要も増加している。
現地大手卸売業者によると、日本食材の購入者は主にイスラエル人である。こうした背
景には、日本産食品は健康への効果が高く、高品質であり、安全であるというイスラエル
の消費者の持つイメージがあると推察される。イスラエルでは、コロナ禍以前から健康へ
の意識が高まっており、今後もその傾向はさらに強まっていくと考えられる。
100
4-2 イスラエルへの日本企業の参入分野について
4-2-1牛肉
近年、牛肉の需要が増加傾向にあるイスラエルでは、生体輸入を最小限に抑えつつも、需
要を踏まえ市場での供給量を増やすために、冷蔵牛肉の輸入増を行うなど、さまざまな措置
を講じている。イスラエル農業・農村開発省は、公衆衛生への配慮、動物の健康と福祉、食
料安全保障、環境、農業、入植政策(settlement),消費者主義(consumerism)のバラン
スを取りながら、牛肉市場を管理していく方針である。
(1)イスラエルの牛肉市場について
①イスラエルの牛肉市場動向
イスラエル農業•農村開発省による2022年3月のプレスリリースによると、イスラエル
で消費される牛肉は、イスラエル国内でと殺された国産牛肉(40%)と海外でと殺された輸
入牛肉(60%)に大別される。
国産牛肉の供給源は、欧州やオーストラリアから輸入された仔牛(71%)、乳業者から供
給された牛や仔牛(17%)、国内生産の放牧牛(12%)に分けられる。
輸入牛肉を冷凍牛肉(約76.7%)と冷蔵牛肉(約23.3%)に分けると冷蔵牛肉は、多くを
南米からの輸入に依存している(アルゼンチン(31%)、ブラジル(28%)、ポーランド(23%)、
フランス(13%))〇冷凍牛肉も同様に南米からの輸入に依存しており、冷蔵肉よりも欧州比
率が低い傾向にある(アルゼンチン(30%)、パラグアイ(24%)、ブラジル(22%)、ウル
グアイ(16%)、ポーランド(8%))。
イスラエルの小売店で販売されている国産牛肉価格は、79.90-129シェケル/kg (約3,211
〜5,185円/kg)であったが、アルゼンチン産が79.90~89.10シエケル/kg (約3,211〜3,581
円/kg)、米国産79.90シェケル/kg (約3,211円/kg)であり、国産品よりも輸入品の方が安
価であった。
イスラエルにおいて生体の仔牛を輸入し、国内で一定期間肥育した牛肉の生産の割合が
高いのは、国産牛肉は生産コストが高く、海外産の牛肉を輸入した方が廉価のものの、イス
ラエルに輸入できる肉製品はコーシャ認証を必須とされているためと推察される。
ただし、生体牛の輸送の難しさ及び牛への負担削減から、イスラエル農業•農村開発省は
真空パックの冷蔵肉(vacuum packed chilled meat)の輸入を奨励している。冷蔵肉の保存
期限/賞味期限(the shelflife)を「と殺から85日間」へ延長する施策も(2017年)、物理
的な距離によらずより多くの冷蔵肉を輸入するための支援措置であると推察される。なお、
2022年6月22日には農業・農村開発省と財務省が家畜生産団体(the Cattle Breeders’
Organization)と合意に至り、2022年7月10日には生体牛のみではなく牛肉の輸入にか
かる関税が全面的に撤廃された。
101
図4-2-1-1イスラエルで消費される牛肉の市場構造
出所:イスラエル農業・農村開発省よりみずほ銀行国際戦略,情報部作成
② イスラエルの牛肉消費動向について
イスラエルの1人当たりの牛肉消費量は年間19.6kgであり、2015年と比較して6年間
で50%増加した。世界平均である14.4kgより5kg多く、牛肉の需要は比較的高い国の一つ
である。
図4-2-12イスラエルの牛肉消費量の推移(2015-2021年)
出所:イスラエル農業・農村開発省よりみずほ銀行国際戦略情報部作成
102
牛肉の消費は全食品支出の6% (161シェケル/月)を占めており、世帯の1か月の全支出
の1%にあたる。なお、羊や家禽の消費金額は全食品支出の10%、牛乳及び卵は全食品支出
の12%である。
イスラエル中央統計局によると、イスラエルの食品支出は、家族当たり平均2,838シエケ
ル/月(約114,065円湧)であり、総消費支出の17%にあたる。OEC D加盟国平均消費量と
比較しても牛肉を含む肉製品の消費量の多い国である。
図4-2-1-3:各国牛肉消費量及びOECD加盟国平均消費量
kg/人 ・牛肉と子牛肉 ◊豚肉 X家禽肉 口羊の肉
70 w
X・ 0— アルゼンチン
X 8 口米国
ロブラジル
‘ ‘ ♦ • ‘¢イスラエル
- — チリ
•< カザフスタン
X 8 •ロ オ|ストラリア
X •ロカナダ
X—〇 ・ ロ OECD 倉
X – • – Q 南アフリカ
<X • ロ ノルウエ|
◊ ロスイス
◊ X • ロ韓国
◊ •一口パラグアイ
X . • 〇 ニュIジIランド
X • 00トルコ - <X— 英国
X ◊ • ロ ロシア
◊ X ・nベトナム
・ 〇—〇 コロンビア
X 〇・♦ Iロ メキシコ
X • 9エジプト - ロ日本
バキスタン
X イラン
¥vfo世界
X マレ—シア
X – ◊ •ロウクライナ
X , • サウジアラビア
OX ¢ブリックス
・ 〇□ペル|
X- .•中国
XV ¢フィリビン
8エチ否ア
X—^2インドネシア
^0タイ
Qナイジェリア
・インド
出所:OECDよりみずほ銀行国際戦略情報部作成
なお、JETRO「イスラエルの消費市場とビジネスグループ」によると、「イスラエル人が
食品を購入する際は、品質を重視し、品質の良い食料品に対しては割高でも購入する傾向に
ある」とされている。
このようにイスラエル国内では牛肉消費が増加傾向にあり、また、品質を重視する近年の
市場動向は、品質が高い牛肉にとっては追い風であると推察される。
③イスラエルにおける牛肉価格
2021年時点で、国産牛肉の平均価格は70〜74シェケル/kg程度(約2,813〜2,973円/kg)
であり、過去4年間で価格は上昇傾向にある。最も高い部位は臀部である。
103
図4-2-1-4イスラエル国産牛肉の平均価格の推移(2018-2021年)
トン 臀部(バックパーツ) 新シ功ル/kg
2,000 80
出所:イスラエル農業•農村開発省よりみずほ銀行国際戦略情報部作成
他方、実際にテルアビブのスーパーマーケットで販売されているイスラエル産牛肉の価
格は、約79.9-129シェケル/kg (約3,211〜5,185円/kg)であり、最も安いものから、ミン
チ肉(79.9-89.8シェケル/kg)、肩肉(95.8シェケル/kg)、仔牛フィレ肉(99.8シェケル
/kg)、仔牛リブロース(111.8シエケル/kg)、サーロイン(129シェケル/kg)であり、統計
情報よりも更に高い価格で販売されていた。
ただし、外国産WAGYUを含む和牛の生鮮肉に関しては、現地のスーパーマーケット等
での販売は本調査の限りでは確認されておらず、アンガス牛等の赤身肉の価格である。
④イスラエルの肉牛生育動向
乳牛の生産は歴史も長く自給率が100%以上であるが、牛肉の生産は約60年前にイスラ
エル北東部のBeit She’an Valleyで開始された。現在も同地域を中心に肥育されている。
2021年のイスラエルの国産牛肉用の牛は約255,000頭であるが、図4-2-1-5のとおり
65%は仔牛を生体輸入したものである。図4-2-1-2のとおり、イスラエルで消費される牛肉
の約39%がイスラエル国内でと畜されたものであり、うち国内仔牛が35%であることを勘
案すると、イスラエル国内で消費される牛肉の約86%が生体輸入又は牛肉輸入の形で海外
に依存していると推察される。
生体牛のみではなく牛肉の輸入にかかる関税の撤廃は、イスラエルの牛肉市場へ進出す
る好機であるが、イスラエル国内の牛肉畜産農家に対する支援も増強される見込みである。
イスラエル農業・農村開発省は7年間で4億2,000万シェケル以上の投資を国産牛肉産業
へ投資する見込みであり、国内畜産産業の安定化、国内放牧産業への外国人労働資本の増加、
104
国産肉のマーケティング・ブランド化等を推進することが見込まれている。
図4-2-1-5:イスラエル国産牛肉の供給源(2021年)
出所:イスラエル農業・農村開発省よりみずほ銀行国際戦略,情報部作成
⑤イスラエルの牛肉流通動向
JETRO「イスラエルの消費市場とビジネスグループ」によると、2000年以降、青空市場
や近所の小規模食料品店での食品購入という伝統的な流通経路に代わり、スーパーマーケ
ット等の大規模食料品店での食品購入が増加したとされている。また、今般の新型コロナ禍
を機に食品のネット販売が急拡大したと言われている。USDAによると、大手小売チェー
ンの売上の約20%がネット販売となっており、生鮮食品の需要拡大への対応に向けて、大
手小売チェーンではコールドチェーン用のトラックやドライバーへの投資を増加させてい
る。
ただし、牛肉については比較的消費期限が長い加工肉であっても、2021年の売上高の約
85%が小売店で販売されており、Eコマースの利用は全体の14%程度であった。食料品を
販売する小売店の売上高のうち約81%がスーパーマーケット等の近代的な商業施設で販売
されていることを考慮しても、Eーコマースでの生鮮食品の購入傾向は開始されたばかりで
あり、冷蔵・冷凍の牛肉に関しても小売店での販売が主流であると推察される。
105
図4-2-1-6:イスラエルにおける加工肉流通形態(2021年)
販売形態 小売店の営業形態
出m: Euromonitorよりみずほ銀行国際戦略,情報部作成
(2)イスラエルへの牛肉輸出にかかる規制等について
① イスラエルへの牛肉輸出にかかる制度
イスラエルへ牛肉を輸入する際には、以下の承認が必要となる。
く個人輸入の場合>
•イスラエル農業•農村開発省:獣医サービス室(The Veterinary Service)の承認
く商業輸入の場合>
•イスラエル農業•農村開発省:獣医サービス室(The Veterinary Service)の承認
•イスラエル保健省:食品管理局(National Food Services)の承認
•イスラエル主席ラビ(Israel Head Rabbinate):コーシャ認証(Kashruth certificate)
食肉加工を行うと殺場(動物をと殺、解体、冷却、または貯蔵する施設)は登録される必
要がある。そのため、食肉製品をイスラエルへ輸出する際にも、と殺場がイスラエル獣医サ
ービス室(Israeli Veterinary Service)からの認可を受ける義務がある。認可を受けるため
には、獣医局への申請が必要である。
食品輸入者がイスラエルへ食品を輸入する際には、FCSに輸入食品を登録する必要があ
る。輸入食品が登録されると、FCSがセンシティブ食品(Sensitive food)と非センシティ
ブ食品(non-sensitive food)のいずれかに分類する。なお、肉製品はSensitive Foodに含
まれている。
イスラエルの農産物及び食品の最大の供給元はEUであるため、イスラエルの食品関連
法や基準はEUスタンダードとの親和性を有するように変わりつつある。2023年1月1日
からは、改正「公衆衛生保護法(Public Health Protection Act (Food)) Jが施行され、輸
106
入に係る規制を緩和・軽減される見込みである。化学物質、生物学的汚染、及び残留農薬に
ついてEU基準に則った基準を採択しているが、精肉への適用は除外される。
② 関税制度
牛肉(HSコード:0201,0202)にかかる関税は無税。
イスラエルへの食品輸入手続きが複雑であるため、手続き自体が非関税障壁となってい
たが、イスラエル政府は簡素化等を目指し、輸入手続きを大幅に改定している。そのため、
2023年1月以降の更新に関しては随時情報を注視する必要がある。
③ コーシャ認証等への対応
1994年の食品法に定められたとおり、イスラエルに輸入される肉製品はすべてコーシャ
認証を取得する義務がある。現時点では、コーシャ基準を満たすためには、1983年のコー
シャ不正防止法(Prevention of Fraud in Kashrut)に基づき、最高評議会のみがイスラエ
ルで消費される食品をコーシャであると認証できる。ただし、最高評議会の認可を受けたラ
ビのいる認証団体は代理として認証する権限を有する。
実際に、日本産和牛を輸出する際の障壁として、コーシャ認証を取得するためのと殺方法
も課題となっていると言われており、現地大手卸業者も、肉にかかるコーシャ認証取得の難
易度が高いことについて今後の日本産和牛の取扱いの障壁になると述べている。
④ その他の輸出障壁
現在、衛生面における二国間協議が未実施であることから日本産牛肉を輸入出来ない。
また、日本食レストランの中には、神戸牛などの和牛を取り扱いたいと考えている事業者
もいるが、移送にかかるコスト及び品質の保持に懸念をもっている。
以上より、日本産の和牛に関しては、二国間協議に加え、コーシャ認証や輸入に係る手続
きコスト等が課題となっていると推察される。
(3)イスラエルにおける日本産牛肉の期待値について
日本産牛肉の認知度は高く、現地事業者からの日本産和牛への要望も多い。実際に、日本
食材のみを取り扱う専門卸業者には、オーストラリア産のWAGYUだけでなく日本産和牛
の取扱いの拡大を要望している事業者も存在する。こうした背景には、イスラエルの人々が
日本や欧米などで日本産和牛を体験し、日本産和牛の認知度が向上していることやオース
トラリア産WAGYUの仔牛を輸入し、イスラエルで肥育した牛肉をコーシャWAGYUとし
て提供するレストランの存在も関係していると推察される。
107
4-2-2 酒
(1)イスラエルの酒市場について
本項における酒類の定義は、特に記載のない限り下表のとおりとする。
図4-2-2-1酒類の定義
HSコード
ビール 2203.00
ワイン 2204.10 2204.21 2204.22 2204.29 2204.30 2205.10 2205.90
醸造酒 2206.00
蒸留酒 2208.20 2208.30 2208.40 2208.50 2208.60 2208.70 2208.90
①イスラエルの酒類市場動向
酒類のうち、イスラエルの輸入額が最多なのはウィスキーを含む蒸留酒(HSコード
2208)であり、全輸入額の6割弱を占める。近年では、ワイン(HSコード2204、2205)
及びビール(HSコード2203)の輸入額も増加傾向にあり、2012年には、1億834万米ド
ルであったが、2021年には酒類の輸入額は過去10年で約4倍の4億1,051万米ドルとな
った。
図4-2-2-2:イスラエルの酒類輸入額の推移 3此・エ|5
•ピーノレ ・ワイン ロ險る沼 薫佃酒
出所:ITCデータよりみずほ銀行国際戦略,情報部作成
日本酒を含む醸造酒(HSコード2206)の輸入額は酒類全体においては約2%となってお
り、イスラエルの酒類市場におけるシェアは小さい。ただし、醸造酒の輸入額も増加傾向に
あり、2012年は130万米ドルであったが、2021年には約5倍の618万米ドルとなった。
108
2021年のイスラエル向け醸造酒の輸出額が最も高い国は、ベルギー(約19%)で、イタリ
ア(約19%)、日本(約10%)が続く。日本からの輸出額も増加傾向にあるが、特に顕著な
のはベルギーからの輸入額の増加である。なお、ベルギーの主要な輸出品目は、ミード、り
んご酒、梨酒、イタリアの主要な輸出品目はミードである。
■ ベけー ・イタリア ・日本 その他
出所:ITCデータよりみずほ銀行国際戦略情報部作成
②イスラエルの酒類消費動向について
図4-2-2-4をみると、イスラエルにおける2021年の消費者支出に占める嗜好品(アルコ
ール及びタバコ)の平均割合は約2.79%であり、中東諸国においてはエジプト、ヨルダン、
イラクに次いで嗜好品への支出割合が高い。ただし、2021年の平均消費者支出は、25,044
米ドルであり、消費者支出金額が同程度の国々においては嗜好品支出の割合が低く、食品支
出の割合が高いといえる。
図 4-2-2-5
図4-2-2-5をみると、2019年のイスラエルの15歳以上の年間アルコール消費量は、3.1
リットル/人であり、OEC D加盟国においては、トルコに次いで2番目に低い水準となって
いる。平均OECD加盟国(38カ国)の平均が8.7リットル/人であるため、世界的にみても
低い水準であると言える。ただし、2009年時点では2.9リットル/人であったため、消費量
はio年間で増加傾向にある。
以上よりイスラエルでは、酒類の消費額、消費量ともに世界的な水準よりは低いが、過去
io年の間に増加傾向にあると推察される。
109
図4-2-2-4:消費者支出20,000-30,OOOUSD/人の嗜好品支出の割合(2021年)
艮ロロ (%) 嗜好品(酒、タバコ) (%) 消費者支出 (米ドル)
シンガポール 8.4 2.0 22,639
イスラエル 16.0 2.8 25,044
日本 16.7 3.0 20,724
オランダ 12.1 3.3 24,167
スウェーデン 12.7 3.4 25,826
ドイツ 12.0 3.5 24,189
オーストリア 11.3 3.6 26,409
ベルギ_ 13.5 4.0 24,189
英国 8.7 4.0 27,934
フランス 14.1 4.1 22,996
カナダ 10.0 4.1 27,705
イダリア 15.5 4.4 20,439
フィンランド 12.0 5.0 26,195
ニュージーランド 12.2 5.2 28,553
アイルランド 9.2 5.5 23,241
出所:USDA ERSよりみずほ銀行国際戦略情報部作成
図4-2-2-5 OECD加盟国における15歳以上のアルコール消費量(2009年及び2019年比
較)
- 9•二
〇•こI
•寸•二
二
1.二,
80•二
〇・二 8
• 801
• 801
Z 018
8 961
寸•01
•寸・〇1
• E.0I
・卜.6
8F6
8S.6
♦ 6
8Z.6
6 8・ー
♦ 88
- ■
3E 8
0—•’00
ms
♦08
卜・&
卜・&
gL
♦ I.卜
・ミ
•ミ
ラトビア
チェコ
才|ストリア
フランス
ハンガリ|
リトアニア
スロバキア
ルクセンブルク
ポ|ランド
ロシア
アイルランド
スペイン
ドイツ
エストニア
ポルトガル
スロバキア
英国
才|ストラリア
デンマ—ク
スイス
ベルギ|
米国
ニュ|ジ|ランド
OECD38
uv国
フィンランド
オランダ
カナダ
イタリア
アイスランド
南アフリカ
日本
スウエ| 一!>ン
チリ
ギリシャ
ブラジル
ノルウエ|
中国
メキシコ
コロンビア
コスタリカ
イスラエル
インド
•e.-トルコ
1.0・インドネシア
8642086420
6異
類の8割以上は小売店での販売を通じたものである
110
小売店の中でも、フォアコート小売、コンビニ、小規模小売店など、比較的小規模な店舗
での購入が多い。前述のとおり、OECD加盟国の中では比較的酒類の摂取量が少ないこと
も、大型店舗で大量に購入する形態よりも小型店舗が選択される理由の一つであると推察
される。
図4-2-2-6:イスラエルの酒類流通形態(2021年)
販売形態 小売店の営業形態
出m: Euromonitorよりみずほ銀行国際戦略,情報部作成
(2)イスラエルの酒類輸出にかかる規制等について
① イスラエルへの酒類輸出にかかる制度
イスラエルの規制に則ったヘブライ語による栄養表示•ラベルの作成が必要である。イス
ラエルでは、過度のアルコール消費を減らし、公衆衛生を保護するため、2013年7月より
度数の高いアルコール飲料の容器には警告文を記載することを義務化している。アルコー
ル度数が15.5%を超えるアルコール飲料の容器には「警告:アルコールの過剰摂取は生命を
脅刀、し、健康| こ有害です ! (Warning: Excessive consumption of alcohol is life threatening
and is detrimental to health!) Jと表記する義務がある。また、アルコール度数が!5.5%以
下のアルコール飲料の容器には、「警告:アルコールが含まれています-過度の摂取を控える
ことをお勧めします (Warning: Contains alcohol- it is recommended to refrain from
excessive consumption) Jと表記する義務がある。また、アルコール等に関する広告表示す
る際にも警告を示す必要がある。紙面広告の場合は、広告面の5%以上に警告を表示する必
要があり、背景と対照的な目立つ色で表記する義務がある。音声広告の場合は、広告の本文
と同等以上のボリュームではっきりと読み上げられる義務がある。電子媒体の広告におい
ては、広告放送中に5秒以上、表示または音声で読み上げる義務がある。
食品輸入者がイスラエルへ食品を輸入する際には、FCSに食品を登録する必要がある。
輸入食品が登録されると、FCSによってセンシティブ食品(Sensitive food)と非センシテ
111
イブ食品(noirsensitive food)の2つ分類されるが、酒類はSensitive Foodに含まれてい
ない。
日本からの輸入に対しては最恵国待遇(MFN)が適用されるため、日本酒を含む醸造酒
(HSコード:2206)の関税はかからないが、ワイン(HSコード:2204、2205)には関税が
かかる。ワインにかかる主な関税率は12%である。また、アルコール飲料の輸入には、通関
の際に原産地証明書とイスラエル経済産業省が指定する内容物証明書の提出が必要である。
ただし、上記情報は2022年末のものであり、2023年1月以降の更新に関しては随時情
報を注視する必要がある。
②コーシャ認証等への対応
実際に現地卸売業者にヒアリングを実施したところ、非コーシャ酒を取り扱っている卸
売業者であっても、非コーシャ酒ではなく、コーシャ製品の拡大を検討しているとのことで
あった。ただし、近年は非コーシャ酒の需要が増加傾向にあり、富裕層向けスーパーマーケ
ットでは非コーシャ酒も取り扱っている。
日本酒をコーシャとして認証するためには、材料の開示が必要である。ヒアリングによる
と、認証に際しては原材料の生産状況、酵母の水管理の方法、製造機器の衛生状況、製造場
所の衛生状況など様々な観点で確認が実施される。また、コーシャ日本酒として認められる
ためには、ラビによる年1回以上の工場訪問を受けなければならない。
⑶ イスラエルにおける日本産酒の期待値について
① 日本からの酒類輸出動向
財務省貿易統計によると、2021年に日本からイスラエルに輸出された酒類のうち、最も
金額および数量が高いのは日本酒(HSコード2206.00-200)であり、総額4,741万6千円
であった。
実際にイスラエルで日本酒の取扱いを目にする機会は増えており、その他にもウィスキ
ー、梅酒なども市場で見かける機会が多くなっている。
② 日本酒の市場動向
ヒアリング調査によると、日本酒は日本食レストラン等の外食産業で提供されているほ
か、現地の食料品店でも販売されている。ただし、販売時にポップなどを用いた追加的な情
報提供は行われていない。
現地大手卸業者は、日本酒(大関、白鶴)及びウィスキー(山櫻)などを取り扱っており、
すべてコーシャ認証を取得している。ただし、日本の酒人気が高まっているとは感じていな
いため、現時点では拡大を検討しておらず、ジュースなどの別の飲料の拡大を検討している。
別の大手卸売業者は、日本産の酒はコーシャ・ノンコーシャともに扱っており、日本酒、
焼酎、ビール、ウィスキー、リキュール等多岐に渡る。日本の商社を経由して購入しており、
112
各酒に関する情報も商社を経由して入手している。
現地大手卸業者では、コロナ禍以前は日本食のプロモーション活動として、HoReCa業界
(ホテル、レストラン、カフェなど食品サービス業界)の人々を招待したセミナー及び試食
会の開催、並びに大使館主催のイベント及びアルコール飲料の見本市などへの参加を行っ
ていた。
日本食レストランA社(客単価8,000円程度)は、現地卸売業者を通じて日本酒の仕入
れも行っており、日本酒の選定にあたっては、卸売業者からの情報を参考にしている。イス
ラエル人と観光客が日本酒を飲むが、イスラエル人はイスラエルワインを好む傾向にあり、
このようなレストランでは日本酒の人気が特筆すべきものではないので、ラインナップの
拡大は検討していない。
他方、高級日本食レストランB社(客単価!2,000円程度)では、日本食の本当のおいし
さが利用するイスラエル人の間で広まってきていることもあり、日本酒の注文も拡大して
いる。そのため、オーナーはコーシャ日本酒の取扱いを拡大したいと考えている。また、日
本酒の選定には自ら生産地等の情報を収集して取り組んでいる。
バー形態のレストランC社(客単価4,000円程度)も同様に、4, 5年前は日本酒の人気
は低かったが、近年イスラエル人も日本酒を評価し始めていると感じており、今後も人気が
高まると予測している。そのため、取扱いも増やす見込みである。なお、日本酒の選定には
レストラン自ら生産地等の情報を収集して取り組んでいる。
ヒアリング先は限定的であるが、自ら情報を収集しているレストランでは日本酒の取扱
い拡大への意欲がみられた。また、いずれのレストランにおいても日本酒の取扱い縮小は検
討していない。
4-2-3 外食産業
⑴ イスラエルの外食産業について
①外食市場規模の推移
イスラエルの外食産業は、アジア料理レストラン、ステーキハウスなどの北米料理レスト
ランが店舗数、売上で上位となっている。歴史的な背景から多国籍な文化が交わっており、
外食産業も多角化、日本食レストランの数も増加傾向にある。
113
図4-2-3-1:レストランの種類別店舗数の推移(2021年)
※単位:店舗数
出PJr: Euromonitorよりみずほ銀行国際戦略情報部作成
図4-2-3-2:レストランの種類別売上と店舗数(2021年)
※単位:店舗数
※単位:百万USD
aam • jtt(e^uso)
出m: Euromonitorよりみずほ銀行国際戦略情報部作成
イスラエルにおけるチェーン店の外食産業の割合は増加傾向にあるが、チェーン産業よ
り独立店舗の売上が3倍程度となっており、イスラエルの主要な外食形態は独立店舗型で
あると考えられる。
114
図4-2-3-3外食産業の形態別売上高の推移(2016-2021年)
※単位:%
2016 年 2018 年 2019 年 2020年 2021年
・チェーン店•独立店舗
出所:Euromonitorよりみずほ銀行国際戦略情報部作成
②レストラン設置(現地法人設立)等にかかる規制
イスラエルで外国人が事業を行うことは難しいと考えられる。理由としては、イスラエル
人でないと事業許可が下りづらいことが挙げられる。また、土地の取得はイスラエル人のみ
に許可されており、労働ビザも外国人には許可が下りにくい実態がある。
そのため、イスラエルで事業を行う際の理想的な方法としては、現地での法人設立よりも
現地パートナーを見つけて製品販売を行うのが基本的な形態となると推察される。
(2)イスラエルの外食動向
平日、週末を問わず、夜に友人とカフェ、バー、レストラン等へ出かけ談笑することが娯
楽の一つであり、外食文化が根付いている。
イスラエルでは日本文化の一環として日本食は非常に人気があり、日々の食事からデー
卜や大人数のパーティーなどシーンによらず利用されている。
5、6年前は、日本食は珍しく特別なものだったが、日本食は高級なものというイメージ
から、日常的な食事という認識が強くなってきている。現在は一部の高級なレストランを
除けば、日本食はスーパーを含めどこでも購入できる日常的な食事となった。
外食において顧客が日本食に求めるものは、美しさ、品質、健康の3点であり、細部にま
で気を使った食事であるというイメージを持たれている。また、調理過程も含めた見た目の
美しさも求められており、オープンキッチンで調理過程を見せるのがとても効果的である。
ヒアリング先は限定的であるが、顧客単価は、飲み物抜きでバー形態であれば100シエ
ケル(約4,000円)程度、高級レストランであれば300シェケル(約12,000円)程度であ
る。
日本食を中心にアジア料理全般を提供する現地日本食レストランでは、顧客の大半がイ
スラエル人である。ラーメン、寿司、餃子などを取り扱っているが、最も人気のある料理は
ラーメンである。特に欧米や中東料理と異なり、種類が豊富であるところが魅力である。例
えばラーメンでも様々な味付けがあり、顧客もメニューに飽きることがない。
115
イスラエルでも代表的な日本食といえば寿司であり、日本食レストランの多くが寿司を
提供している。イスラエルには元々魚文化があるが、生魚を食べる文化はなく、生で提供さ
れる寿司ネタの多くがマグロとサーモンである。また、イスラエルの人々が日本食に初めて
触れる機会は訪日時ではなく他国訪問時であることから、カリフォルニアロールのような
裏巻きの寿司を寿司と認識しており、握り寿司を提供すると寿司ではないという反応をさ
れることもある。
(3)イスラエルにおけるティクアウトの動向
コロナ禍以降、宅配やテイクアウトの割合が増加。イスラエルで最も使用されている宅配
サービスは、フィンランド発のフードデリバリーアプリWolt (ウォルト)であるとされてい
る。
宅配はコロナ禍以前と比較して4倍以上となっている。寿司などは冷たいことが前提で
ありデリバリーに向いていることから、宅配サービスの拡大が寿司の人気を高めた一因と
も考えられる。
図4-2-3-4:外食産業の売上の推移(2016-2021年)
出所:Euromonitorよりみずほ銀行国際戦略情報部作成
116
4-3 日本企業にとっての商機
4-3-1 日本本食普及•日本産食品輸出の現況
(1)日本食普及動向
イスラエルにおいて、日本食レストランの数は増加傾向にあり、巻き寿司を提供している
レストランを日本食レストランと含めた場合の日本食レストランの数は世界で3番目に多
いとされている。
イスラエルのスーパーやコンビニにはアジアンコーナーがあり、寿司人気を受け、巻き寿
司を作るための海苔や醤油、みりん、巻き寿司を巻くための巻きすなども販売する店舗が見
られた。また、アジアンスーパーでは、日本産のお菓子や調味料、カップ麺などを購入する
ことができる。
大型スーパーでもアジアンコーナーにて日本食品を購入することが出来る。日本産酒類
も販売されていたが、大きな販売面積を占めるワインやビールなどの酒類コーナーでは確
認できなかった。
牛肉については、現地でも日本産牛肉の輸出が解禁された際には日本食レストラン以外
においても是非取り扱いたいという声があり、日本とイスラエルとの二国間協議が進んだ
際には輸出が期待される。他方、コーシャ認証の難しさから実現しないのではとの声もあっ
た。
(2)日本産食品輸出動向
寿司を中心に日本食の認知度向上、日本食レストランの増加に伴い日本産食品の輸出額
は年々増加傾向である。
2021年の品目別では、調味料の輸出額割合が6割程度と高く販売額が伸びており、全体
輸出額を押し上げている。
図4-3-2-1:イスラエルへの日本産食品輸出額の推移
※単位:百万JPY
500
400
300
200
100
0
28
26
44
2018 年 2019 年 2020年 2021年
•その他の弱製食料晶 ・清涼飲料水•酒類 ・果実及び野菜 殺物及び向弱黑品 その他
出所:財務省よりみずほ銀行国際戦略情報部作成
117
4-3-2 輸出拡大に向けた戦略提案
(1) 日本産食品の現状分析
イスラエルにおいて、少なくともユダヤ教徒は、家庭食事での食事規範の方が外食時より
も厳しいと推察される。実際に2014年〜2015年に実施された調査によると、全体の63%
が家庭での食事においてはコーシャを遵守していると回答した。なお、外食時にはコーシャ
を遵守しているのは、全体の52%であった。
また、日本食は外食としても非常に人気がある。日々の食事からデートや大人数のパーテ
イーなどシーンに寄らず利用されている。スーパーマーケットのデリカテッセンとして寿
司が販売されるなど、日本食はスーパーマーケット等でも購入できる日常的な食事となっ
ている。
加えて、イスラエルの健康ニーズを考慮に入れて日本食の輸出を推進することは、日本
産食品の新規参入拡大に資すると考えられる。
以上を踏まえて、日本産食品としては、健康意識の高まりも踏まえた食材を、まずは外食・
中食産業での利用を見据え、現地レストラン等の食材としての提供から導入することが望
ましいと推察される。
(2) 参入分野別の輸出戦略
① 牛肉
日本産牛肉の認知度は高く、現地卸売事業者及び現地レストランの中には、神戸牛などの
日本産和牛を取り扱いたいと考えている事業者もおり、日本産和牛への要望は多いと言え
る。他方、衛生面における二国間協議の実施、コーシャの取得等、輸出にかかる課題は残さ
れているため、日本産和牛は流通していない。
イスラエルへの輸出が可能となった際には、コーシャ認証を取得した少量の牛肉から輸
出を行うことで、希少性の高さを活かすことができるものと推察される。希少性の高いブラ
ンド肉として定着を促しつつ、日本食レストランに限らず幅広い外食産業において取り扱
われることを目指すことが望ましいと推察される。
また、肉製品をイスラエル国内に輸入する際には、複数の当局への書類手続き及びコーシ
ャ認証の取得手続きが必要性となることから、輸入手続きを熟知した事業者との連携を行
うことが推奨される。
高級食品である和牛の卸売先としては、レストラン等での消費者への提供が想定される
ことから、輸入にかかるライセンスを有し、現地日本食レストランや和牛の取扱いレストラ
ン等とのチャネルを有す卸売業者を通じた流通経路の開拓が必須であると考えられる。
② 酒
現地レストラン等では日本食の本当のおいしさがイスラエル人の間で広まってきており、
日本酒の注文も拡大している。取扱量の拡大を検討しているレストラン等もおり、今後、日
118
本酒の市場の拡大が期待される。ただし、コーシャを遵守しているイスラエル人にも提供で
きるコーシャ認証を受けた日本酒への要望が高い。
イスラエルでは、日本酒は日本食レストラン等の外食産業で提供されているほか、現地の
食料品店でも販売されているが、販売時にポップなどを用いた追加的な情報提供は行われ
ておらず、日本酒を認知していない消費者への店頭での訴求方法が確立されていない。
他方、外食産業において、自主的に日本酒に関する情報を収集しているレストランでは日
本酒の消費が増えているため、取扱量の拡大を検討していると述べている。
そのため、消費者へ日本酒を提供する小売店やレストラン等の事業者が日本酒への知識
を増やし顧客へ訴求できるようにすることが、日本酒の取扱量を増やすために重要である
と推察される。
実際に、コロナ禍以前は日本食のプロモーション活動として、HoReCa業界(ホテル、レ
ストラン、カフェなど食品サービス業界)の人々を招待したセミナー及び試食会の開催、並
びに大使館主催のイベント及びアルコール飲料の見本市などが実施されており、イスラエ
ルで日本酒の取扱いを目にする機会は増えているとされている。
また、外食産業においては、酒類が豊富であることも日本食の魅力であるとされており、
近年イスラエルでの輸入が増えている蒸留酒や梅酒なども合わせて“日本産の酒”として種
類の豊富さをアピールすることも一案である。
加えて、健康的であると認識されている日本料理との相性の良さをアピールして販売促
進することも良いと考えられる。
119
第5章コーシャ市場の拡大動向
5-1 イスラム主要国におけるコーシャ市場
(1)コーシャ市場の現況
イスラエルとの「アブラハム合意」後、イスラエルから、周辺イスラム教国への観光客の
行き来が始まった。2020年10月20日、アブダビ政府観光局は、すべてのホテルとホテル
内の飲食店に対し、コーシャ食品の選択肢を用意するように通達を出し、UAEを訪れるイ
スラエル人観光客受け入れのための体制を推進しており、2022年2月時点で、イスラエル
からの訪UAE人口は計25万人と言われている。
そのため、コーシャ認証を取得している事業者はホテルや外食産業の比率が圧倒的に高
い。実際に、UAEの主要な観光名所でもある宿泊施設のエミレーツ・パレスでは、コーシ
ャ食品の提供を開始している。また、ブルジュ・ハリファ内に立地するアルマーニ・ホテル
では、コーシャ専門レストランがオープンしている。
図5-1-1 EAKCによるコーシャ認証取得企業
SHERATON
ABU 0HA8I HOTCL & RSSOAT
<®>
CROWNE PLAZA
NOVOTEL
ホテル等
ORYX
GAANO CONTINENTAL
FLAMINGO HOTEL
Klialkli>n
TBYP
ARMANI
Hotel Duh»
Ret aria
Emirates Palace
什 Holiday Inn
Saddiydt
Retana
MARRIOTT
AL FORSAN
ABU DHABI
z
W Southern Sun
Hilton
©
SHERATON
出
MERIDIEN
HAWTHORN (Xayhaan golden tulips
$U(TES BY WYNDHAM ノ
Cristal 1以祕!X
出所:EAKCよりみずほ銀行国際戦略情報部作成
ただし、2022年には、ドバイ及びアブダビにおいて、オンラインでコーシャ認証を取得
した肉製品を販売するBassarがオーブンし、2022年12月にはRimonというペルシャ湾
岸では初のコーシャスーパーがドバイにオーブンするなど、在住者向けのコーシャ食材を
販売する体制も整いつつあり、今後は在住者向けのサービスも拡充すると推察される。
120
(2)コーシャ認証の動向
2015年に設立されたUAEで唯一のコーシャ認証機関であるEmirates Agency for
Kosher Certification (EAKC)が国内の食品メ ーカー及び外食産業におけるコーシャ認証
の取得を促進している。
2020年には、アブダビ首長国政府とOrthodox Unionがコーシャ認証を行っている。 2021
年には、アブダビ農業食品安全庁(ADAFSA)によって、「アブダビ首長国の食品における
コーシャの製造及び取扱いの要件及び条件に関する指針(A Guideline Concerning the
Requirements and Conditions for the Production and Handling of Kosher Foods in the
Emirate of Abu Dhabi) Jが公表され、この指針にはコーシャ認証として認められるための
輸入条件、掲示条件等が含まれている。
121
5-2 イスラエルにおけるコーシャ市場
(1)コーシャ市場の現況
イスラエルの人口の約8割を占めるユダヤ人は、その宗教的なアイデンティティにより、
①超正統派(Haredi : Ultra – orthodox)ヽ②宗教的(Dati: Religious)ヽ③保守的(Masorti:
Traditional)、及び④世俗派(Hilloni: Secular)の4つのグループに分けることができる。
図5-2-1:ユダヤ教徒の宗教的なアイデンティティの割合
そ教
3%
出所:CBSデータ(2019)よりみずほ銀行国際戦略,情報部作成
イスラエル人のコーシャの遵守度は個人によって異なっており、各宗教アイデンティテ
イに合わせたコーシャ食品の選択にかかる段階がある。2014年〜2015年に実施された調
査によると、全体の63%が家庭での食事においてはコーシャを遵守していると回答した。
なお、外食時にはコーシャを遵守しているのは、全体の52%であった。
最も人口の多い世俗派に限定すると、コーシャを遵守しているのは、家庭食で33%、外
食では21%であった。経済・文化の中心地であるテルアビブの在住者には世俗派が多数お
り、テルアビブの住民はコーシャ認証の有無についてはあまり気にしていないと言われて
いる。実際に、テルアビブにはコーシャ食品以外の店舗もあり、富裕層向けスーパ—一
ケットではコーシャ以外の製品も取扱いを行っている。
122
図5-2-2:宗教アイデンティティ別の家庭食時のコーシャ遵守状況(2014-2015年時点)
出所:Pew Research Center (2016)よりみずほ銀行国際戦略情報部作成
図5-2-3宗教アイデンティティ別の外食時のコーシャ遵守状況(2014-2015年時点)
出PJr:Pew Research Center (2016)よりみずほ銀行国際戦略情報部作成
ユダヤ教徒の4グループ及びその他の宗教等による1か月の平均的な収入及び食品支出
は下図のとおり。世俗派が最も収入が高く、超正統派が最も収入が低い。また、食品支出が
最も多いのはその他の宗教等であり、次いで世俗派であった。
123
図5-2-4宗教アイデンティティ別の1か月の平均的な収入及び食品支出割合
出所:CBSデータ(2019)よりみずほ銀行国際戦略,情報部作成
以上のとおり、ユダヤ教徒のうち5割を占め、世帯収入の高い世俗派の約6割が家庭で
も非コーシャ製品を摂取しており、約7割が外食では非コーシャ製品を摂取している。
単純な比較は難しいが、人口の割合を勘案するとコーシャ製品を必須としている市場
は、人口の4割程度と推察される。
さらに、イスラエルへ輸入される食品のうち、肉製品以外の食品はコーシャ認証の取得は
法的な要件ではないため、法律の観点からもコーシャ認証の取得が必須ではない。
ただし、コーシャ食品であることを重視する宗教観を持つ消費者にとって、コーシャ認証
は必須である。例えば、超正統派は、コーシャメノ、ドリン(mehadrin)という最も厳しい
とされるコーシャ認証を取得している食品しか摂取しないと言われている。なお、コーシャ
メノ、ドリン認証の食品は価格が高い。
コーシャ認証を取得した食品の方が非認証の食品よりもアプローチできる層が広がる。
大手スーパーマーケットチェーンなど小売店によっては非コーシャ認証製品の取扱いをし
ていない場合もあるため、コーシャ認証の取得は販売対象の拡大に寄与すると考えられる。
(2)コーシャ認証の動向
イスラエルの法律では、製品がコーシャであるかどうかを決定する責任を負う唯一の機
関は、最高評議会であると規定されている。そのため、イスラエルでコーシャとして販売さ
れる輸入食品は最高評議会が認めたラビによるコーシャ認証を受けなくてはならないとさ
れている。
他方、現在イスラエルでは最高評議会が唯一のコーシャ認証の基準を作ることができる
機関であることに対する批判も集まっており、今後は最高評議会が認めたラビ以外による
コーシャ認証も視野に法律の改正が実施される見込みである。
124
第6章「中東地域への食品輸出拡大に関するセミナー」開催報告
6-1セミナーの目的・概要
「中東地域への食品輸出拡大に関するセミナー〜農業•食料分野の最新の現地情報の提
供(ハラール・コーシャマーケットへの参入及びビジネスの動向)と輸出先国の商習慣や
規制等の輸出促進のための現地情報の提供〜」を12月5日に東京の会場で対面にて、ま
た、WEBにて同時配信し、ハイブリッド形式で開催した。本セミナーには、69の企業・
団体、75名(うち、対面参加は32の企業•団体、33名)が参加した。
本セミナーは、中東地域(サウジアラビア、UAE、イスラエル)への参入方法や市場規
模のほか、ハラール・コーシャ市場におけるビジネスとしての可能性や各認定制度の最新
情報を提供することにより、日本企業の中東地域に関する理解を深め、食品の輸出意欲を
醸成することを目的として開催した。
セミナーの概要は、以下のとおりである。
図6-1-1:「中東地域への食品輸出拡大に関するセミナー」概要
1日時 式次第 概要
12月5日 13:00 「開場」 (場所)みずほ銀行丸の内本部ビル —
13:30 「開会挨拶」 農林水産省 輸出・国際局 国際地域課 課長黒井哲也 —
13:35 「中東地域(こおける日本産食品の輸出実態と ビジネス機会」 みずほ銀行国際戦略情報部 調査役宗像朋之 •中東地域と各国(サウジラビア、UAE、イスラエル) の概要 •輸出規制、ハラール・コーシャの概略 •日本産食品の輸出実態とビジネス機会
14:05 「アラブ首長国連邦の日本食市場の現状と 今後の展望」 ksnコーポレーションコンサルティング事業部 部長石橋哲也氏 -UAE市場とUAE市場(こおける日本食の状況 ・今、日本食品の輸出促進を検討する理由 • UAE(こおける先端ビジネス事例
14:50 「ケーススタディで学ぶ サウジアラビア王国ビジネスの成功と失敗」 Wakameレストラン・ブランド大使 佐藤たき氏 •サウジアラビア(こおける食品ビジネスの注意点 •サウジアラビアの規制緩和の動向 •日本食普及への期待
15:20 「イスラエルにおける日本産食材の ニーズについて」 飛當単高山フードバリアフリー協議会 五十嵐優樹氏 ・コーシャについて •イスラエル市場における日本食•日本食品の実態
125
日時
式次第
微要
15:50 「質疑応答」 Q1-1:現在、他国で展間しているプ[□ジェクトに携わっているが、サウジアラビアで倉品(肉・魚•野菜)を 一括して的出するブ日ジェクトは受け入れられるか A1-1:サウジアラビア政府は、観光や国民のエンターティメントに関わるものを優先している印象 Q1-2 : SNSでマーケティングを行う際の籍意点はあるか A1-2:ポイントを抑えれば麗しくない Q2 :日本食の普及は、UAE周辺国およびヨノレダンにおいても同じ状況なのか A2 : UAEは進んでいる。サウジアラビアは遅れているとの説明もあったが、他の国が限定的であることを 考意すると進んでいる印象 Q3 :ハラーノ典証を行う先はどこか A3 : UAEはMOIAT、サウジアラビアはSFDAと国の機関がハラーノL認証団体を登録する。各政府機開が認証 した先についてはホームページで確始可0ハラールについては、国ごとに蛤!!をとる必要がある。 コーシャは、メガコーシャで認証取得していれば世界共通で通用する特撤がみられる Q4 :ケーススタディで日本産列味料が晚出できなかった事例があったが外的な要因があったのか A4 :洋細は回答できないが、後日蛉出できるようになった
16:10 「ご挨拶」 農林水産省 勝俣季明割大臣 一
16:15 「お知らせ」 •宜民ミッションの募集について (2023年2月5日から2月10日で真於予定)
出所:セミナーを基にみずほ銀行国際戦略,情報部作成
126
6-2 アンケート結果
セミナー参加企業に対し、以下の質問をアンケート形式で投げかけた。
(質問内容)
質問1.本日の講義内容について
質問2.各国(サウジアラビア、UAE、イスラエル)の食品分野における事業可能性に
ついて感じたこと
質問3.各国(サウジアラビア、UAE、イスラエル)における事業に取り組むにあたり
望ましい支援やサービスについて
その結果は以下のとおりである。アンケートは、75名中49名の方から回答を得た。
図6-2-1:本日の講義内容について
•大変参考になった .参考になった
あまり参考にならなかった
出所:アンケートを基にみずほ銀行国際戦略情報部作成
図6-2-2:サウジアラビアの食品分野における事業可能性について感じたこと
(複数回答可、回答数)
出所:アンケートを基にみずほ銀行国際戦略情報部作成
127
図6-2-3:UAEの食品分野における事業可能性について感じたこと
(複数回答可、回答数)
出所:アンケートを基にみずほ銀行国際戦略,情報部作成
図6-2-4:イスラエルの食品分野における事業可能性について感じたこと
(複数回答可、回答数)
図6-2-5:サウジアラビア事業に取り組むにあたり望ましい支援やサービスについて
(複数回答可、回答数)
出所:アンケートを基にみずほ銀行国際戦略,情報部作成
128
図6-2-6:UAE事業に取り組むにあたり望ましい支援やサービスについて
(複数回答可、回答数)
出所:アンケートを基にみずほ銀行国際戦略情報部作成
図6-2-7:イスラエル事業に取り組むにあたり望ましい支援やサービスについて
(複数回答可、回答数)
出所:アンケートを基にみずほ銀行国際戦略情報部作成
129
6-3 セミナー総括
本セミナーついて「大変参考になった」「参考になった」と回答した人が96%を占めてお
り、参加者の満足度は、非常に高かったといえる。本セミナーに参加した企業は、食品分野
における事業可能性について、サウジアラビア、UAE、イスラエルの3カ国いずれも、1位
に「事業機会があると感じた」、2位に「新たな事業に取り組みたい」と前向きな回答をし
ており、多くの企業が事業可能性を感じていることがわかった。また、上記3力国において
事業を行うにあたり望ましい支援やサービスについても3カ国いずれもトップ3にあがっ
たのは、1位に「現地規制•制度情報の提供」、2位に「事業パートナー発掘支援」、3位に
「市場情報の定期的なアップデート」となり、食に関わる日本企業が現地の最新情報を求め
ていることがわかった。
130
第7章 「官民ミッション」実施報告
7-1 官民ミッションの目的
実際の輸出促進に繋げるために、サウジアラビア、UAE及びイスラエルに、我が国の
農林水産業•食品関連企業を主体とする官民ミッションを派遣し、日本産食品の取扱いに
興味を持つ現地の流通業者や卸売業者等とのビジネスマッチングイベントを実施するとと
もに、現地におけるハラール、コーシャマーケットを視察、関係者との意見交換等にょ
り、実情を把握する。
7-2実施結果
本ミッションは2023年2月5日(日)〜2月10日(金)の計6日間にかけて、官民
合わせて20名程度からなるミッション団により、3都市(サウジアラビア:リヤド、アラブ
首長国連邦:ドバイ、イスラエル:テルアビブ)に訪問し、面談21件、市場視察17件を行っ
た。
図7-2-1:官民ミッション全体工程
サウジアラビア日程表
2023年2月5日(日)
2023年2月6日(月)
開始 終了 行程 場所
9:00 9:35 集合・挨拶 出発 voco Riyadh Hotel
移動
10:00 11:00 JETR〇ブリーフィング J ETRO Riyadh
移動
11:10 11:35 スーパーマーケット視察 KOREAN SUPERMARKET
移動
11:45 12:10 スーパーマーケット視察 JAPANESE & KOREAN MART
移動
12:30 13:50 昼食 TOKYO
移動
14:30 15:45 Arabian Food Corporation 面談 Mizuho Saudi Arabia
移動
17:30 20:30 日本国大使館• LOTUS 面談・夕食 LOTUS
移動
21:00 解散 voco Riyadh Hotel
開始 終了 行程 場所
9:20 9:30 集合 出発 voco Riyadh Hotel
移動
10:00 11:30 Forsan面談 Forsan Groceria
移動
11:45 12:30 スーパーマーケット視察・ 昼食(各自) Riyadh Avenue Mai! (LuLu)
移動
13:00 15:00 SFDAブリーフィング Saudi Food and Drug Authority
移動
16:00 解散•出国検査 キング・ハ一リド空港
131
アラブ首長国連邦日程表
2023年2月7日(火)
2023年2月8日(水)
開始 終了 行程 場所
8:20 8:50 集合・挨拶 出発 ibis One Central
移動
9:00 10:30 Simply Gourmet 面談・ 視察 Simply Gourmet
移動
11:00 12:00 JFC • TruebeH 面談 JFC • TruebeH
移動
12:50 14:10 昼食 Fujiya(ドバイ富士屋)
移動
15:00 16:45 Summit Trading 面談■ 視察 Summit Trading
移動
17:00 17:30 スーパーマーケット視察 WE MART
移動
18:00 18:30 スーパーマーケット視察 Dubai MaH (WAIT ROSE)
移動
19:00 解散 ibis One Central
開始 終了 行程 場所
9:00 9:10 集合 出発 ibis One Central
移動
10:00 11:00 JETR0ブリーフィング J ETRO Dubai
移動
11:20 12:10 スーパーマーケット視察 Deans Fujiya
移動
12:30 13:30 昼食 TOMO
移動
14:00 16:00 UAE F&B Manufacturers Group面談 商工会議所
移動
16:30 17:15 スーパーマーケット視察 CITY CENTRE (カルフール)
移動
18:00 解散•出国検査 ドノヾイ国際空港
イスラエル日程表
2023年2月9日(木)
2023年2月10日(金)
開始 終了 行程 場所
9:30 集合・挨拶 Crowne Plaza Tel Aviv City Center
移動
10:00 11:30 Yama Vakedma 面談 Crowne Plaza Tel Aviv City Center
移動
12:00 13:00 昼食 MINATO
移動
13:40 14:20 スーパーマーケット視察 Go Japan
移動
15:00 17:00 Diplomat面談・視察 Diplomat
移動
17:50 18:15 スーパーマーケット視察 MUNDO
移動
18:45 19:00 スーパーマーケット視察 セブンイレブン
移動
19:30 解散 Crowne Plaza Tel Aviv City Center
開始 終了 行程 場所
9:00 9:10 集合 出発 Crowne Plaza Tel Aviv City Center
移動
9:30 10:30 日本国大使館面談 在イスラエル日本国大使館
移動
11:00 13:45 昼食 Yakimono
移動
15:00 解散 ベン・ガーオン国際空港
移動
15:30 16:00 スーパーマーケット視察 Stop Market
移動
16:30 解散 Crowne Plaza Tel Aviv City Center
出所:官民ミッションを基にみずほ銀行国際戦略,情報部作成
132
7-3 官民ミッション総括
本ミッションにおいては、サウジアラビア、UAE、イスラエルの3カ国を訪問し、市場
視察17件、面談21件を実施した。本事業の仕様書に記載されていたとおり、民間企業の
参加者については、当初は少なくとも“5社10名以上”と見込んでいたが、結果的に10
社14名が参加することとなった。本ミッションの目的である、ビジネスマッチングおよ
び実情把握を、想定よりも多くの日本企業に認知していただくことが出来た。
今回の訪問相手の中には、アポイントを取得することが難しい現地企業(大手、財閥系
など)とも面談を行えたことに加え、民間企業単独のアレンジではアポイントが難しいと
されている政府機関高官とも意見交換をすることができた。またミッション参加企業の中
には、現地企業に対し商品サンプルを渡し、商談を進めている例もあった。今後の具体的
な進出検討にも資するネットワーキングが達成できたという観点でも、意義高いミッショ
ン内容であったといえる。
133 』