イスラエルが戦闘休止、人道目的で1日4時間 米高官
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN09E3A0Z01C23A1000000/
『2023年11月10日 1:18 (2023年11月10日 4:59更新)
【ワシントン=坂口幸裕】米政府高官は9日、イスラエルがパレスチナ自治区ガザ北部で人道支援を目的に同日から1日4時間程度の戦闘休止を始めると明らかにした。「イスラエルはガザ北部で(戦闘の)一時休止を開始し、その間は軍事作戦を実施しないと聞いている。このプロセスは今日から開始される」と語った。
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官が9日、記者団に「イスラエルがガザ北部で毎日4時間の一…
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『米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官が9日、記者団に「イスラエルがガザ北部で毎日4時間の一時停止を始めると理解している」と話した。米政府はイスラエルにイスラム組織ハマスが実効支配するガザでの戦闘を一時休止するよう求めてきた。人質解放や戦闘地域からの市民の退去などにつなげる狙いがある。
パレスチナ自治区のガザ北部から南部へ避難するパレスチナ人(9日、ガザ中心部)=ロイター
バイデン米大統領は9日、イスラエルによる一時的な戦闘休止について「期待していたより少し時間がかかっている」と言及。首都ワシントン近郊で記者団の質問に答えた。イスラエルには3日間の攻撃休止を要請していたのかと問われ「3日以上の休止を求めた。さらに長い休止を要請した」と明言した。
カービー氏は戦闘を休止する3時間前に事前通告されると説明した。「これは重要な一歩だ。必要な限り続けてほしい」と述べた。一方、いつまで継続するかについては言及を避けた。物資搬入や戦闘地域からの退去を可能にするため、数日前にイスラエルがガザ北部に2つの人道回廊を開設したとも表明した。
これまでイスラエル側は一時的な戦闘休止に慎重な姿勢を示してきた。同国のネタニヤフ首相は6日、米ABCテレビのインタビューで「人質の解放なくして、ガザでの停戦はありえない」と表明。一方、人道物資の搬入や人質解放を可能にするため、過去に複数の場所で局所的に1時間のみ「戦術的な休止」に踏み切ったケースに触れていた。
米政府はかねてアラブ諸国などが要求する「即時停戦」を否定しつつ、人道目的での戦闘の一時停止(pause)が必要との立場を取ってきた。人道物資の搬入や人質脱出を可能にするため攻撃休止の期間や対象地域は限定的にすべきだと唱え、当事者間の対話につながるガザ全域での戦闘中断を想定した「停戦(cease-fire)」と区別する。
カービー氏は「現時点で停戦が適切だとは考えていない。10月7日にイスラエルを奇襲攻撃したハマスの行動を正当化することになる」と重ねて主張した。同国が戦闘休止を容認した要因を巡り「実現へ多くの議論を重ねた結果だ」と発言した。
バイデン氏やブリンケン米国務長官はネタニヤフ氏に人道目的の戦闘休止を受け入れるよう直接働きかけてきた。背景にはハマスへの過剰な報復に伴う犠牲者拡大に反発するアラブ諸国を含む国際社会への配慮がある。
イスラエルによるガザ攻撃に伴うパレスチナ側の民間人死者は1万人を超え「この戦争が自衛であるとは認めない」(ヨルダンのサファディ外相)などと非難の声が強まる。米国はイスラエル支持一辺倒では、中東地域で同国が孤立すると懸念する。
24年11月の大統領選まで1年を切り、国内世論も意識する。米CBSテレビなどが10月30日から11月3日に実施した世論調査によると、バイデン氏の地盤である民主支持層の意見は割れる。イスラエルとパレスチナそれぞれに同情するとの回答が8割で拮抗する。
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植木安弘
上智大学グローバル・スタディーズ研究科 教授
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ひとこと解説 ガザ地区の人道状況が生と死を分ける事態の中で国際社会の圧力にイスラエルが部分的にでも譲歩せざるを得なくなった。また国内での人質の解放要求も一段と強くなっている。G7だけでなくアラブ諸国の懸念と要求もその要因だ。まだ第一歩に過ぎないが、この戦闘の部分的停止をさらに拡大するよう一層の国際的努力が必要だ。
2023年11月10日 6:54いいね
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池内恵
東京大学先端科学技術研究センター 教授
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ひとこと解説 米国が妥結を印象づけたい「休止」と、イスラエルが実際に行う「休止」には隔たりがある。イスラエル側は限られた場所で数時間戦闘を中止すれば「休止」を履行したと主張するだろう。むしろ「休止」の期間に避難誘導をしたとして、その後の大規模攻撃のためのステップとなる。シリアのアサド政権の反体制勢力への包囲攻撃の際の「休戦」と同じ構図になってきた。
2023年11月10日 12:06いいね
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鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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ひとこと解説 バイデン政権の一つの特徴は自分たちの実現したい政策が実現しそうな時に過剰に反応し、それを表に出して既成事実化するという点があるが、まさにこれはそのパターンだと思われる。イスラエル側からの発表はないし、もう少し言えばハマス側の発表もない。バイデン政権が何とか人道的な「一時休止」を勝ち取りたいと思っている気持ちはわかるし、その可能性はあると思うが、これは現時点では希望的な観測に過ぎない。
2023年11月10日 3:08いいね
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菅野幹雄
日本経済新聞社 上級論説委員/編集委員
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ひとこと解説 イスラエル政府自身の声明ではなく、米NSCのカービー戦略広報官が「聞いている」と説明しての戦闘一時休止のアナウンスです。
イスラエルによる「やったふり」の疑いや、1日4時間という戦闘休止の曖昧さに対する不安はあります。同時に8日まで東京で開いたG7外相会合で今回の戦闘開始後で始めて「人道的な休止(pause)」という一致したメッセージが出せたことの成果ともいえます。
やはり、こうしたアプローチは効くのですね。過度の楽観は禁物ですし、ガザの状況が4時間の休止で飛躍的に改善するとも思えません。とはいえ、外交努力を通じて当事者に呼びかけることは必須です。本紙社説にあるように、今後の行動が大切です。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK0927V0Z01C23A1000000/
2023年11月10日 2:02 』