米欧が直面する対イスラエルへの綱渡り外交

米欧が直面する対イスラエルへの綱渡り外交
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/31968

『フィナンシャル・タイムズ紙コメンテーターのギデオン・ラックマンが、10月13日付け同紙論説‘Western diplomats are walking an impossible tightrope with Israel’で、西側はイスラエルとの間で綱渡りの外交をしており、米欧はイスラエルを支持するとともに自制を促していると述べている。主要点は次の通り。

ハマスとの紛争中にイスラエルで犠牲になった人々を追悼するウルスラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長(左)とハイム・レゲフ駐EU・NATOイスラエル代表部大使(ロイター/アフロ)

 イスラエルがガザへの地上侵攻を準備する中、イスラエルを訪問する西側関係者や政治家(ブリンケン米国務長官、フォン・デア・ライエンEU委員長等)は、複雑で矛盾したメッセージを伝えている。彼らはハマスへ反撃しようとするイスラエルに完全な支持を表明したいが、同時にイスラエルに自制を促している。

 欧州連合(EU)は、フォン・デア・ライエンのイスラエル訪問につき、多くの市民の犠牲を招く軍事行動を支持していると受け取られるのではないかと懸念している。大規模な民族浄化の可能性を懸念するEU外交官や、国際人道法の尊重をイスラエルに求めた国連事務総長の呼びかけに賛同すべきだと述べるEU当局者もいる。

 欧州関係者は、この紛争には3つの主要な側面があると述べる。第一は、戦闘そのもの。第二は、中東地域内での反応。そして第三は、西洋以外の反応だ。あるEU関係者は、「われわれは、この紛争によりグローバルサウスで重い代償を支払うことになることを恐れている」と述べる。

 しかし、イスラエルが自制の呼びかけに耳を傾けるか、西側の政府も自信はない。あるEU関係者は、「イスラエルは第二次ホロコーストに等しい事態に直面しており、国家存続のために戦っている。私達の言葉は聞かないだろう」と述べた。

 欧州の関係者達は、イスラエルがガザで拘束されている人質(欧州関係者も含まれている)の命を優先することに余り関心を示さないことに驚いている。 

 中東地域全体のことも、米国の政策の重要な焦点だ。

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 西欧がイスラエルを支持すると共に自制を促すのは正しい。10月20日のバイデンとネタニヤフの電話会談につき、ホワイトハウスの公式発表は「大統領は、イスラエルの自衛の権利と国民保護の義務を再確認するとともに、ハマスが始めた紛争でガザにつかまっている文民の保護を含めて戦争法と整合的な方法で作戦することの重要性を強調した」としている。

 バイデンは、10月19日の国民向け演説で米国の9・11への対応に触れて、「自分はイスラエル政府に憤怒のために盲目にならないように伝えた」と述べた。恐らく米とイスラエルの間では、真摯な、しかし激しい議論が行われているものと思われる。』

『ハマスの突然の、余りに残虐な、大規模な攻撃へのイスラエル国民の憤怒は、理解に余りある。ハマスの行動は、パレスチナ問題の歴史的背景を考えても許されざる行動である。

 しかし、イスラエルは、長期的視野を失わず、出来る限り自制することが重要である。なお、イスラエルの自衛権が安保理決議案の議論等で議論になっているが、同国が自衛の権利を有することは当然だ。昔はイスラエルの生存権が問題になっていたが、今やその議論を聞くことはなくなった。

 バイデン政権は、イスラエルとサウジの関係改善交渉(アコード)を後押してきたが、賢明だったとは思えない。パレスチナ問題を置き去りにして、アコードの既成事実を積み上げるやり方は乱暴であり、地域の持続的安定にも貢献しない。

 パレスチナの反発は容易に予見されたはずだ。ハマスの侵攻につき、バイデンもブリンケンも、ハマスはイスラエル・サウジ交渉を止めようとしたのであろうとの見方を述べている。

 パレスチナ問題は、冷戦後パレスチナ側の優柔不断等もあり和平のチャンスを失い、時の経過とともに「パレスチナ側の土地」は益々狭くなっている。イスラエルとアラブの和解は、パレスチナ解決を含むものでなければならず、少なくともそれと並行して交渉することが不可欠である。

 今回の事件を機に、パレスチナ問題を交渉の土台に戻すべきだ。そして、交渉の触媒を果たせるのは米国しかいない。

困難な〝着地点〟

 米国は、今や中国、ウクライナに加え、ハマスという三つの正面に同時対応せねばならなくなった。今回のハマス侵攻にはイランやレバノンのヒズボラ、シリアも何らかの形で絡んでいるだろう。

 中露は、ハマスの侵攻を非難していない。プーチンは米国に新たな正面が出来たことを歓迎しているだろう。中国も同様だ。

 イスラエルのガラント国防相は10月20日、議会で、ガザへの軍事作戦の目的について三つの段階があると説明した。第一はハマスの軍事拠点を壊滅する段階、第二は残った抵抗勢力の拠点を排除する段階、第三は「新たな安全保障上の現実」をうち立てる段階であるとしている。

 第三段階につき「ガザ地区での生活についてイスラエルは責任を負わなくなる」としているが、その具体的な意味は不明だ。ネタニヤフ首相は10月28日、作戦は第二段階に入ったと言っている。

 しかし、ハマスの壊滅と言っても、地下トンネル(深いので空爆しても破壊できず、ハマス指導部は更に深い地下に居住している)が張り巡らされ、地下には司令部、弾薬庫や兵器製造所等があり、ハマスの壊滅は長期戦にならざるを得ないようだ。ヒズボラは北から越境攻撃を強めるだろうし、イラン等の関与も強まるだろう。

 世界で反イスラエル抗議は拡大する。ハマス的な要素は軍事作戦によっても根絶できないだろう。ハマスは今回侵攻のために最低2年準備したというから、イスラエルからの報復への対応策は作成済みだろう。結局、イスラエルはガザの軍事占領または併合に進むのではないか。』