中国・オーストラリア首脳が貿易正常化確認 双方に打算
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM061RO0W3A101C2000000/
『【北京=田島如生、シドニー=今橋瑠璃華】中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は6日午後、北京でオーストラリアのアルバニージー首相と会談した。中国による豪州への貿易制限の緩和と正常化を確認した。関係修復の背景には対中包囲網を弱めたい中国と、支持率低下を打開したい豪州の打算がある。
豪州が中国に接近すればインド太平洋での対中抑止力が弱まりかねない。日米は警戒を強めている。
豪首相府によると、習氏は…
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『豪首相府によると、習氏は会談の冒頭で「中豪関係は現在、改善と発展の正しい道を歩んでいる」と述べた。アルバニージー氏は「両国の強固な関係は将来にわたって有益だ」と語った。会談後の記者会見で、習氏を豪州に招待したと明らかにした。
中豪貿易が主な議題になった。中国は豪州産の牛肉やロブスターに高関税などの輸入制限をかけている。アルバニージー氏はこうした貿易制裁は「全面解除が両国の利益になる」と強調した。
中国は2023年に入り豪州産の石炭や大麦、原木への輸入制限を解除し、10月にはワインに課す最大218%の関税を見直すと決めた。中国国営中央テレビ(CCTV)によると、習氏は会談で中豪の貿易拡大に意欲を示した。
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中国が21年に加盟を申請した環太平洋経済連携協定(TPP)も議論した。加盟交渉を始めるには豪州を含む全参加国の承認が必要だ。中国は豪州側に輸入制限を緩める見返りに、交渉入りを認めさせる思惑がある。
アルバニージー氏は記者会見で、習氏が加盟を希望すると発言したと明らかにした。ただ、中国の交渉入りに関しては「(加盟国の)全会一致が原則だ」と話すにとどめた。
安全保障分野では台湾海峡の安定が話題になった。豪州側は現状維持の必要性を訴え、中国による武力統一をけん制した。中国が領有権を主張する南シナ海の情勢も話し合い、アルバニージー氏は会談後「前向きな協議ができた」と振り返った。
人権問題も取り上げ、中国が拘束している中国系豪州人作家、楊恒均氏の解放を求めた。楊氏は中国で外務省に勤務した後、豪国籍を取得したとされ、19年にスパイ容疑で逮捕された。中国に批判的な論評が原因だったとの指摘がある。
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中豪関係は豪州のモリソン前政権が20年4月、中国に新型コロナウイルスの起源を巡る調査を要求したのをきっかけに悪化した。中国は対抗措置として豪州産の牛肉やワイン、大麦の輸入制限に踏み切った。
転機になったのが22年5月のアルバニージー政権の発足だ。同氏は中国との対話を重視し、同年11月に豪首相として6年ぶりとなる習氏との対面会談を実現した。中豪の貿易正常化も進めた。
豪州は今年10月、中国企業による豪北部ダーウィンの港湾への投資を容認すると決定した。同企業は15年に豪州の地方政府と99年間の賃貸契約を結んだものの、安保上の観点から契約の見直しを求める声が出ていた。
中国外務省の毛寧副報道局長は同月の記者会見で、豪州政府が介入しない意向を示したことに「歓迎する」と表明した。
中国側は10月、国家機密を流出させた疑いで20年から拘束していた豪州人ジャーナリストを解放した。改善しつつある中豪関係を踏まえた政治判断だったとの見方がある。
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中豪にはそれぞれ関係改善に動く理由がある。中国は貿易などをテコに豪州に接近すれば、米国が主導する対中包囲網にくさびを打ち込めるとにらむ。習氏は6日の会談で「排他的なグループ形成はアジア太平洋を混乱させる」と訴え、米国などをけん制した。
豪州は日米にインドを加えた4カ国の「Quad(クアッド)」と、米英豪3カ国が安保協力する「AUKUS(オーカス)」にそれぞれ加盟する。いずれもインド太平洋で中国を抑止するための枠組みだ。豪州の果たす役割は大きい。
アルバニージー氏は対中貿易拡大を外交成果として掲げ、低迷する政権の支持率向上を狙う。5日公表の世論調査で与党・労働党の支持率は35%となり、野党・国民党の37%を下回った。』