米下院がイスラエル支援法のみを可決、ウクライナ支援継続は不透明
https://grandfleet.info/us-related/u-s-house-of-representatives-passes-only-israel-aid-bill-continued-support-for-ukraine-remains-unclear/
※ ハマスvs.イスラエル紛争のおかげで、ここに来て急にウクライナ支援の行方が、怪しくなって来た…。
※ 下記あ氏の分析は、穏当なものと言えよう…。
※ しかし、いずれロシアは、回復して、再び周辺国を侵略しにかかる…、という危険性は、ぬぐい切れない…。
※ このリスクを、どの程度見積り、その対策をどの程度立てるのか…が、悩ましいところだろう…。
『米下院は143億ドルのイスラエル支援法案を226(民主党議員12名が賛成)対196(共和党議員2名が賛成)で可決、バイデン政権が要求したウクライナ支援資金=600億ドルは審議対象にもなっておらず、2024年のウクライナ支援は全く目処がついていない。
参考:House passes $14.3 billion in Israel aid, setting up showdown with Senate
このまま追加資金の獲得が出来ないと2024年春の攻勢準備が全く進まない
バイデン政権は先月20日「米国の安全保障ニーズに資金を供給するため緊急予算を議会に要請する」と発表、この内訳はウクライナ支援に600億ドル、イスラエル支援に140億ドル、ウクライナ・イスラエル・ガザに対する人道支援に90億ドル、米原潜の即応性を高めるためのインフラ整備に30億ドル、インド太平洋地域の同盟国支援に20億ドル、国境警備と移民問題に110億ドル、発展途上国支援に20億ドル、フェンタニル対策に10億ドル、移民支援に10億ドル、児童労働対策に1億ドルで、緊急予算の総額は1,000億を越えている。
出典:pixabay
バイデン政権はウクライナ支援をイスラエル支援など他の要求に混ぜたワンパッケージで議会を突破し、大統領選挙が終わるまで「ウクライナ支援資金の問題から解放されたい」と考えているのだが、ジョンソン下院議長は「ウクライナ支援とイスラエル支援は切り離して審議すべき」という立場を表明、下院の共和党もイスラエル支援に143億ドルを供給する独自の法案を提出した。
ホワイトハウスは下院の動きについて「共和党が安全保障政策を政治の道具にしている。ウクライナ支援を除外した法案は受け入れられない」と非難していたが、下院はイスラエル支援法案を226(民主党議員12名が賛成)対196(共和党議員2名が賛成)で可決、上院も可決すれば大統領の署名をもって同法案は成立することになる。
出典:PRESIDENT OF UKRAINE
上院ではウクライナ支援に対する超党派の支持があるものの、下院は予算に関する優越を有しているため「上院が独自の予算案を下院に送る」ということは難しく、残念ながら「ウクライナ支援を継続するための追加資金獲得」は全く目処がついていない。
ウクライナ支援資金の残高は約50億ドル(10月末時点)なので、全額をエネルギーインフラの戦い=防空システムや迎撃弾の供給に突っ込めば冬場を乗り切れるかもしれないが、このまま追加資金の獲得が出来ないと2024年春の攻勢準備が全く進まない。
出典:ArmyInform/CC BY 4.0
因みにホワイトハウスのカービー報道官は2日、Economist紙の記事について「我々がウクライナ支援を継続する重要を浮き彫りにしている」と言及した。
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※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ
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投稿者: 航空万能論GF管理人 米国関連 コメント: 2 』
『 あ
2023年 11月 03日
返信 引用
上院では共和党側もウクライナ支援を含めた予算案を主張しているくらいだから、当然上院で可決される可能性は高くない。
日本や多くの西側諸国にとっては、南部反攻の失敗と米議会の状況を見たウクライナ国民が、全土奪還を諦めて、西側(NATO)による安全の保障があれば現状のラインでの停戦を受け入れる、くらいの世論に変化してくれればありがたいのではないかと思う。
ロシアが停戦を受け入れず攻勢を継続するにしても、西側の軍事支援の性質が「支援しなければウクライナが全土を奪還できない」というものから、「支援をやめればウクライナが国家として崩壊して、ロシアに全土が制圧されるかロシアの傀儡国家になる」というものになるし、防御はなんとかできる程度のレベルの支援で済むことになる。
よく言われる一種のドミノ理論のような、「ロシアの侵略を成功させてはいけない」というのも、実際は現状で達成されているだろう。
中国がロシアを見て台湾攻撃を決めるとすれば、それはロシアが侵略を成功させたからではなく、アメリカの台湾防衛が手薄になったからとなるはずだ。冷静な中国がロシアの現状を見て、長期的視点で正確な損得分析を出来ないとは思えないというより思いたくない。
ロシアが得たものはルハンシク州全土とドネツク州の半分〜6割(侵攻開始前から1/3保持)、ヘルソンとザポリージャ州の州都を含まない半分くらい。
本来の主敵であるNATOの兵士に損害を与えることは無く、優秀な契約軍人が死傷。装備の損耗は西側が送った西側製装備の数とはとても釣り合わない。
NATOはむしろ拡大した。
戦後状況によってはウクライナがNATOに加盟するか、長期的に支援を受けるということもあり得るだろう。
長期的に見ればさらに深刻で、ロシアに残された優位は広い領土と資源と核兵器。人口は1.4-1.5億で、一国としてはそれなりに多いが西側とは比べるまでもない。高齢化と人口減少も普通に進んでいる。
先進技術はとても西側や中国と勝負出来るレベルでは無い。西側との貿易で経済発展していく路線から外れてしまった。
大量の資源を売れるのが現状の強みだが、西側だけでなく中国までが長期的には化石燃料からの脱却を進めていくことを表明している。
アフリカなどのグローバルサウスはむしろ気候変動で西側諸国よりも被害を受ける国々で、気候変動対策を求める声は強い。
30年後や50年後、ロシアには何が残されているのだろうか?温暖化によって農業適地が増えることくらいがロシアにとっての明るい要素か。農業国として中国やアフリカに食料を輸出するだけの国に成り下がるつもりなのか。
ロシア自身が大国であると自認して、西側対ロシアの構図を主張しているが、西側対ロシアの構図ではとてもじゃないが侵攻が成功とは言えない。
ウクライナ対ロシアとして見れば、人口も経済規模も遥かに小さいウクライナが受けた人的・経済的ダメージはロシア以上だが、それは侵攻の成功を意味するのだろうか?
ロシアの未来を犠牲にウクライナの未来を潰してそれで「成功」というのなら、ロシアはもはやNATOに対峙する大国という意識を捨て去り、ウクライナと対峙するレベルの国になるということ。』