北朝鮮衛星再発射「ロシア支援で大詰め」 韓国情報機関
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM014Z40R01C23A1000000/
『【ソウル=甲原潤之介】韓国情報機関の国家情報院は1日、北朝鮮が軍事偵察衛星の再発射に向け大詰めの準備をしているとの見方を示した。北朝鮮が予告していた10月中の発射は延期されたが、ロシアの技術支援を受けて成功確率が高まると予測した。北朝鮮がロシアに100万発以上の砲弾を提供したとする分析も示した。
国会の国政監査で国情院が説明した内容を出席議員が明らかにした。
北朝鮮は5月と8月に2度にわたり軍事…
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『北朝鮮は5月と8月に2度にわたり軍事偵察衛星を発射し、いずれも失敗した。8月の発射時、原因究明をしたうえで10月に3回目の発射を断行すると朝鮮中央通信を通じて公言していた。新型ロケット「千里馬1」型の飛行性能に何らかの問題があると指摘されてきた。
2回目の失敗後の9月、金正恩(キム・ジョンウン)総書記は極東ロシアでプーチン大統領と会談した。プーチン氏は会談後、北朝鮮の衛星開発を支援する考えを示唆していた。
韓国国情院は、北朝鮮が最近になってエンジンと発射装置の点検に取り組んでいると明かした。ロシアの支援によって短期間で飛行性能の問題を改善させた可能性がある。
韓国外務省出身で北朝鮮の核・ミサイル問題に詳しい世宗研究所の李容濬(イ・ヨンジュン)理事長は「衛星の失敗は特定の部分の問題があったはずで、ロシアが積極的に協力し、技術を提供すれば早い時期に克服することは可能だろう」と話す。
韓国国情院は北朝鮮からロシアに対する支援の動向も言及した。8月初旬以降、ロシアの船舶や輸送機を使って軍需物資を10回あまりにわたりロシアに運び込んだと説明した。ロシアがウクライナ侵攻で2カ月以上使える量と分析する。需要に応えるため北朝鮮の軍需工場はフル稼働しているという。
ロシアと北朝鮮の軍事協力によって衛星発射が成功すれば、日米韓にとって安全保障上の新たな懸念になり得る。韓国政府は戦闘機など航空機の運用や通常兵器の現代化支援に協力分野が広がる可能性を警戒する。
韓国国情院はさらに、イスラム組織ハマスとイスラエルの衝突を受けて金正恩氏がパレスチナを包括的に支援する案を検討するよう指示を出したとも明らかにした。第三者を介した兵器取引も注視する。
韓国と米国は核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に軍事的な圧力を強めている。
10月には米軍の原子力空母が釜山に入港し、核兵器を搭載できる米戦略爆撃機「B52」も韓国内の空軍基地に着陸した。B52が日韓の戦闘機と共同飛行する異例の訓練も展開した。
韓国軍は10〜11月に陸海空軍を総動員した大規模野外訓練「護国訓練」を実施中だ。空軍は11月3日までに米空軍とあわせて130機あまりを動員した共同訓練を計画。圧倒的な軍事力を見せつけ、北朝鮮を抑止する姿勢を鮮明にする。
米韓は22年も今年と同様に野外訓練を含む軍事演習を活発に展開した。北朝鮮はそれに反応し弾道ミサイルの発射を繰り返したほか、軍事境界線付近で大量の砲弾を海に向かって撃つなど緊張を高めた。今年はこうした反応がみられず、対ロ支援と衛星開発に資源を集中させているとの見方がある。』