マレーシア首相、パレスチナに肩入れ 支持者へアピール

マレーシア首相、パレスチナに肩入れ 支持者へアピール
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB0168S0R01C23A1000000/

『イスラエルが攻撃するパレスチナ自治区ガザを巡り、マレーシアのアンワル首相がパレスチナ支持を打ち出している。同国はイスラム教徒が多いうえ、それ以外の人々も親パレスチナの人が多い。このため、野党を含め、有権者の支持を集めるために同問題への取り組みをアピールしている。

イスラム組織ハマスによる攻撃の翌日から、マレーシアはイスラエルを厳しく批判している。声明では戦闘の原因を「占領者としてのイスラエル」に…

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『声明では戦闘の原因を「占領者としてのイスラエル」にあると述べた。アンワル氏はクアラルンプールの大規模なパレスチナ支持集会で演説したほか、トルコのエルドアン大統領やエジプトのシシ大統領と会談するなど積極的な外交を繰り広げた。

オーストラリア・タスマニア大のジェームズ・チン教授は、アンワル氏のパレスチナへの関心は大学時代にまでさかのぼると説明する。「政治的に冷遇されていた際もパレスチナを常に支持しており、(ハマスの母体となったイスラム原理主義組織)ムスリム同胞団のメンバーにも会ったことがある」という。

与野党の主導権争いに利用していると指摘する識者もいる。マレーシアのUCSI大学のタジュディン・ラスディ教授は「パレスチナ支持の集会は、与野党のどちらがよりイスラム的かを競っているように見える」と語った。

アンワル氏は10月下旬、1万6000人以上が集まった国内最大の親パレスチナの集会に参加した。一方、野党関係者は米国大使館前で別の親パレスチナ集会を開き、1万人規模の支持者を集めた。

マレーシア国民大学民族問題研究所のシャムスル・アムリ・バハルディーン教授は、与野党が共に「マレー系ムスリム票を必要としている」と指摘する。「アンワル氏と与党は、前回の総選挙、州選挙、予備選挙を合わせると、マレー系イスラム教徒の約15%の票を獲得している」ためだ。

タスマニア大のチン氏はアンワル氏が自身の師匠的な存在であるマハティール元首相に対抗しようとしている可能性を指摘した。マハティール氏はイスラエルへの批判や反ユダヤ主義的な言動で知られる。

チン氏はアンワル氏らの行動が、有権者の対立をあおりかねないとの懸念も示した。「(アンワル氏は)このようなことがすぐに手に負えなくなることを理解していない。ほんの少しのきっかけで、若者は過激化してしまう」

(クアラルンプール=エイミー・チュウ)』