バフムート方面のロシア軍は大幅に強化され、防衛から積極的な作戦に移行

バフムート方面のロシア軍は大幅に強化され、防衛から積極的な作戦に移行
https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/russian-forces-in-the-bakhmut-area-were-significantly-strengthened-and-shifted-from-defensive-to-active-operations/

『ウクライナ軍の報道官も23日「敵の戦術は根本的に変化しておらずロシア人にとって兵士の命は無価値に等しい。肉弾部隊として知られるストームZやストームV(元捕虜、アルコール、麻薬、命令違反で捕まった軍人などで構成される懲罰大隊)をクピャンスク方面に送り込み続けている。これらの攻撃を全て撃退しているもののロシア人は全土から予備戦力を送り込んで前線突破を試み続けている」と言及していたが、シルスキー大将は30日「東部の状況は依然として困難だ」と述べて注目を集めている。

シルスキー大将は「東部では困難な状況が続いており、敵は目的を達成するため我々の陣地を毎日攻撃している。特にクピャンスク方面では一度に複数の方向へ進もうとしている。バフムート方面の敵も戦力を大幅に強化して防御から積極的な作戦に移行させた。ロシア軍はウクライナ軍の前進を阻止して空挺部隊による失地回復を試みている。また一部地域ではストームZを投入している」と述べ、戦場の攻守(主導権)が入れ替わりつつあることを示唆。

さらに「敵の攻勢は大砲と迫撃砲の集中火力によって支えられており、カミカゼドローン(徘徊型弾薬や自爆型FPVのこと)の使用量も増え続けている」と付け加えたが、ウクライナ軍の抵抗で大きな損害を被り「目的を達成できていない」と強調した。

今のところ「クピャンスク方面の攻勢規模」も「バフムート方面の積極的な作戦が何を意味するのか」も不明だが、ドネツク周辺にも興味深い兆候が観測されている。

出典:GoogleMap ドネツク周辺の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

上記は出番の少ないドネツク西郊外の戦況マップで、黄と赤の丸は10月1日~30日までに登場した視覚的証拠を示し、マリンカ方向よりもノボミハイリフカ方向に視覚的証拠が集中しているのだが、興味深いのはロシア軍の装甲車輌がノボミハイリフカの周辺に出没(赤の丸)している点だ。

ここまで多くの装甲車輌がノボミハイリフカに接近したことは初めてで、矢印方向にロシア軍の地雷処理戦車(戦車にマインローラーを取り付けたもの)が活動しており、最終的にウクライナ軍の砲撃で損傷して放棄されるものの「地雷源に通行可能な道を切り開く」という行為は攻勢の下準備かもしれない。

Shadow drone group observes a russian tank with mine roller plow through minefields until ultimately getting damaged and abandonned SE of Novomikhailivka
Tank Location: 47.831721, 37.531568https://t.co/XPDEkLdv1x@GeoConfirmed @UAControlMap pic.twitter.com/mxV28uRB90

— PJ “giK” (@giK1893) October 26, 2023

ロシア軍はザポリージャや南ドネツクでウクライナ軍の反攻作戦を食い止めつつアウディーイウカ方面で大規模攻勢を開始、さらにクピャンスク方面でも攻勢(規模不明)が始まり、ウクライナ軍が攻勢に出ていたバフムート方面でも「積極的な作戦(内容不明)」に移行し、他の戦線でも攻勢の兆候が観測され、もう「どれだけ削ればロシア軍は止まるのか?」と問いかけたくなる。

因みにTimes紙は侵攻初期「最終的に意思、能力、戦争継続力を低下させて『抵抗する力』をより多く奪った方が戦争に勝利する」と言及し、ロシアには西側が許容できないリスクとコストに耐える「火の玉のような強い意思」があると指摘した。

出典:Генеральний штаб ЗСУ

Times紙は侵攻初期の失敗について「プーチンはロシア人を上回る強い意思をもったウクライナ人に出くわしてしまった。規律正しい軍隊は特定条件下で恐ろしいほど早く崩壊し、このような戦場では兵士の数の差は特に意味を持たない」と述べてウクライナ人を称賛したが、侵攻から約20ヶ月が経過した戦場の様相は「消耗戦を支える兵站の勝負」になっており、今のところロシアの経済力も生産力も人的供給能力も破綻する兆候が見えてこない。

その分野に精通した有識者なら「破綻の兆候」を感じ取っているのかもしれないが、ウクライナ軍の報道官は「依然としてロシア軍は兵力、装備、火力で我々を上回っている」と述べており、この戦争の結末はどこに着地するのだろうか?

追記:ロシア軍は徘徊型弾薬「Lancet」の新しいバージョン=Izdeliye53の使用を開始(テスト目的の実戦投入)したという噂があり、自律的に目標を識別できるAIシステムを搭載し、スウォーム飛行やスウォーム攻撃に対応しているらしいが、弾頭重量は3kg~5kgなので破壊力自体は比較的小さいらしい。

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※アイキャッチ画像の出典:СИРСЬКИЙ
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投稿者: 航空万能論GF管理人 ウクライナ戦況 コメント: 18  』