第2期トランプ政権が起きた時の外交政策の懸念

第2期トランプ政権が起きた時の外交政策の懸念
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/31734

『フィナンシャル。タイムズ紙国際政治コメンテーターのJanan Ganeshが、9月26日付け同紙に「第2期トランプ政権から世界は何を期待すべきか。ウクライナを見捨てること、条約の焼却、しかし多分中国についてのサプライズ」との論説を寄せている(‘What the world should expect from a second Trump term’)。その論旨は、次の通り。
(Maksym Kapliuk/gettyimages・dvids)

 トランプのもとで、米国は対露制裁の規模を減少させるだろう。またウクライナへの物資の流れも遅くなるだろう。

 これらは「米国第一主義」を根拠に正当化されるだろうが、効果は反対である。第1次湾岸戦争以来、米国の世界的な影響力にとりウクライナへの支援以上に役立ったものはない。

 トランプは米国の国際条約への脅しを強めるだろう。安全保障面では、これは北大西洋条約機構(NATO)と韓国と日本への2国間保証が標的となろう。これらは信頼に依拠しているので、彼が完全に条約から脱退しなくとも、米国の約束への疑念を広げるだけでも、致命的たりうる。経済では世界貿易機関(WTO)が自然な標的になる。

 対中政策が最重要だろう。中国に対するトランプの不満は経済的分野に限られていた。米中間の口論を大戦略(アジアの海の支配)と政治哲学(民主主義は専制主義より良いか)に拡大したのは、他の人々の(ポンペオ国務長官、バイデン大統領、政治・ビジネス・エリート)の仕事である。

 トランプが貿易面で尊重されていると感じた場合、中国「封じ込め」への関心を失うだろう。台湾がこの点をはっきりさせる。トランプの台湾防衛についての考えは今なお不明だ。

 ワシントンは、もし米国が介入しないならば同盟国が米帝国への信頼をなくすと恐れている。しかしトランプがこの「米帝国」を愚行と考えているならどうか。トランプの視野の狭さは、台湾についての彼の発言、半導体生産をマスターして「われわれのビジネスを取った」に表れている。

 第2期目にわれわれを驚かすのは、トランプ主導の米中デタントかもしれない。』

『この論説の筆者ガネシュは、英国のエコノミスト誌の記者をした後、フィナンシャル・タイムズ紙の政治論説員をしている人である。かなりしっかりした論説の書き手である。ガネシュはそれなりの取材もしてこれを書いたものと思われる。

 彼がトランプ第2期政権の外交政策としてありそうなこととしているものはそれぞれ今までの米国の政策を大きく変えることであり、今の国際情勢を大きく変えることになる。
 米国のウクライナ支持が規模的に小さくなるだけでも大きな影響があり、違法な侵略者であるロシアを利することになる。また、NATO、日米安保条約や米韓条約への米国のコミットメントの信頼度が下がるだけでも、われわれは困った状況に置かれることになる。

 日本周辺の安全保障環境は、中国の軍備拡張、ロシアと北朝鮮との軍事協力の拡大、台湾をめぐる情勢で、厳しさが増している。トランプが当選するようなことがあった場合は、日本も、米国の変化を踏まえて、その外交防衛政策を真剣に再考する必要があるように思われる。

トランプ当選は現実性があるのか

 米大統領選については、トランプは共和党の候補には指名されるだろうが、本選挙ではバイデンが無党派層の支持も得て勝つと今のところ見ておいてよさそうである。ただ、世論調査ではトランプ勝利との結果になっているものも出てきている。

 先日退任したミリー統合参謀本部議長について、トランプは最近「処刑されるべき」と述べた。この発言だけをとっても、トランプは正常な良識のある人間ではない。

 彼が米国民の多くの支持を集めていることはカルト現象だと言う人が多いが、小集団のカルト現象はそれなりに理解できるが、国家規模ともいえる米国の有権者の多くによるカルト現象は理解しがたい。

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