トランプ陣営が大統領選で有権者の心をハッキングした手法

トランプ陣営が大統領選で有権者の心をハッキングした手法 ; 橘玲 公式BLOG
https://www.tachibana-akira.com/2023/10/15071

 ※ ケンブリッジ・アナリティカ話しの続編みたいな話しだ…。

 ※ 個人データ+コンピューティング+富豪の財力…、が揃うと、どういうことができるのか、戦慄の内容となっている…。

 ※ いやはや全く、自分じゃ「オレは、オレだ…。自律的な、自分らしい判断ができている…。」と思っていても、その「自律的なオレ様」自体が、「巧妙に操られたオレ、巧妙に洗脳されたオレ」かもしれないぞ…、という話しだな…。

 『コジンスキーの手法は、ネット経由で少額の仕事を発注できるAmazonのメカニカル・タークを使って、1ドルから2ドルの謝礼を支払うことで、フェイスブックのユーザーに心理テストを受けさせることだった。

ユーザーが回答すると、「友だちAPI」というアプリケーションによって、ユーザーだけでなく登録されている「友だち」の個人情報も一括して収集することができた。

これはカイザーも強調しているが、この時点では、許可なくユーザーの個人情報にアクセスすることはフェイスブックの規約で認められていた。

ケンブリッジ・アナリティカは、コジンスキーがやったことをより大規模に行なったのだ。』

『2014年6月、ワイリーたちは10万ドル(約1100万円)の予算でこのプログラムを実行した。全員が見守るなか、最初はなにも起こらなかったが、ニックスが「どうなってるんだ、これは」と文句をいいはじめてすぐに最初のヒットがあった。その後は、洪水のようにデータが押し寄せてきた。

データ・サイエンティストの一人が、個人情報が追加されるたびにビープ音がする仕掛けをつくっていた。たちまちビープ音が止まらなくなり、数字の桁数がつぎつぎと大きくなっていく。わずか数時間で、数百万人分の個人情報がコンピュータに収められた。

ワイリーはこのとき、チーフ・テクノロジー・オフィサーがサーベルを使って、器用に祝杯のシャンパンの栓を抜く場面を描写している。リトアニアの極貧の農家に育った彼は、イギリスで自らを「ケンブリッジ・エリート」につくり変えようとしていた。常にイギリス上流階級のダンディーな身なりを崩さない彼のモットーは、「今日を楽しめ。明日は死んでいるかもしれない」だった。』

『「すべてのひとのデータ・プロファイルをコピーし、社会全体をコンピュータのなかに置き換えることができるなら――ゲームの「シムシティ」のようだが、実在のひとびとのデータが使われている――これから社会や市場でなにが起きるのかシミュレーションし、予測することが可能になる。

これこそがマーサーが目指すゴールなのだ」とワイリーは書く。

マーサーはコンピュータ・エンジニアからソーシャル・エンジニアになり、コンピュータの内部構造を変えるように社会をリファクタリングし、大衆を「最適化」しようとしたのだ。

これは、マーサーやピーター・ティールのようなきわめて知能の高い大富豪が、なぜトランプを支持するのかのきわめて説得力のある説明になっている。

一般に内向的で神経質傾向が高いと、混乱や無秩序を不安に感じて回避しようとする。

そこに極端に高い論理・数学的知能が加わると、自分が安心して住めるよう社会を「改造」するというSF的なビジョンに魅力を感じるようになるのかもしれない。』