テロ・憎悪犯罪懸念、世界で深刻化 中東情勢悪化が波及
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR16A9S0W3A011C2000000/
『イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの衝突以降、世界各地でテロやヘイトクライム(憎悪犯罪)が頻発している。イスラエルがガザへの地上侵攻を始めれば、暴力や社会不安が一気に拡大する恐れがあると各国当局は警戒を強めている。中東情勢の緊迫が世界の社会不安の火種となっている。
ブリュッセルで16日夜、男が発砲し、スウェーデン人2人が死亡した。地元メディアによると、容疑者の男はS…
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『地元メディアによると、容疑者の男はSNS(交流サイト)で過激派組織「イスラム国」(IS)に影響を受けたと主張した。
ベルギーの捜査当局は17日、逃走中だった男が逮捕の際に警察による銃撃で死亡したと明かした。今後詳しい動機やISとのつながりなどを調べる。
欧州ではここ数日、イスラム過激派とみられる犯人による殺人事件が相次ぐ。仏北部アラスでも13日、高校教師がロシア南部チェチェン系の20代の男に刺殺される事件が起きた。仏当局は男をイスラム過激派の危険人物として監視していたが、事件を防げなかった。
ベルギーとフランスの両政府は対テロの警戒を最高レベルに引き上げた。学校の校外活動が見送られるなど市民生活にも影響が出ている。フランスでは14日、爆発物がしかけられた疑いなどでルーヴル美術館やベルサイユ宮殿から見学者を退避させる騒ぎも起きた。
仏メディアによると、マクロン大統領は16日、閣僚に対しテロには容赦ない姿勢で臨むべきだと指示した。
フランスでは2015年にパリの同時多発テロで130人が犠牲になった。20年には別のイスラム過激派の男が高校教師を殺害する事件も起きており、宗教を口実とした暴力への国民の不安は根強い。
欧州にはおよそ130万人のユダヤ教徒が暮らすとされる。移民の流入によりイスラム教徒の人口も推計2580万人と急速に拡大している。ハマスとイスラエルの衝突に伴って宗教対立や過激派の活動が強まれば、治安悪化と社会の分断に直結する恐れがある。
こうした懸念が移民規制の強化につながる可能性もある。
仏上院は11月に移民法の改正審議を始める予定だ。改正案では人手不足の分野で働く外国人の滞在許可取得を促進する一方、公共の脅威と判断された外国人の国外追放も容易になる。右派の共和党は事件を受け、外国人の受け入れ拡大を改めて否定し移民規制強化のみを実施するよう求めている。
中東情勢の緊迫が過激派によるテロ実行の格好のきっかけになるとの懸念は米国でも強い。米連邦捜査局(FBI)のレイ長官は15日、「ハマスやその他の海外テロ組織が、この紛争を利用して支持者に米国内での攻撃を呼びかける可能性は否定できない」と述べた。
宗教対立とみられる憎悪犯罪も増えている。米中西部イリノイ州のシカゴ郊外では14日、イスラム教徒の男児が大家の男に殺害され、母親も重傷を負う事件が起きた。イスラエルとハマスの衝突をきっかけとした憎悪が背景にあるとみられる。
ドイツではユダヤ人が暮らすとみられる家の玄関にユダヤ教の象徴「ダビデの星」が落書きされる事件が相次いでいる。ナチスドイツによる迫害をほうふつとさせる行為に当局は神経をとがらせ、ユダヤ教関連施設の警備を強化している。
(パリ=北松円香、ブリュッセル=辻隆史、ベルリン=南毅郎)』