「反ユダヤ」にマネーで対抗

「反ユダヤ」にマネーで対抗
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO75235200T11C23A0ENI000/

『2023年10月13日 14:30

12日のダウ工業株30種平均は前日比173ドル安で終わった。朝方発表された9月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想を上回り、金利高止まり観測が株式相場に重荷となった。市場ではイスラエルとイスラム組織ハマスとの衝突を受けた地政学リスクの懸念が出ている。反ユダヤ主義を巡るウォール街の投資家たちの論争が過熱し、マネーの動きにも影響しつつある。

「ハーバード大学は手紙に署名した学生の名前を公表すべきだ」。米著名ヘッジファンド投資家ビル・アックマン氏は、ハマスによる攻撃はイスラエルが自ら招いたものだとする米ハーバード大学の一部の学生団体の声明について、賛同して署名した学生の名前を公表すべきだと訴えた。

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アックマン氏は企業経営者らからこうした学生は自分の会社の社員に採用したくないとの指摘が相次いだのを受け、署名したハーバードの学生を採用しないようにするためという。

同大学の学長を務めた経験があるサマーズ元米財務長官は、「ハマス攻撃の直後でまだ情勢が不透明だった段階でよく考えずに突発的に声明に署名した学生の名前を公表することはちょっと行き過ぎ」とした上で、大学側がハマスの攻撃を非難する声明をすぐに発表しなかったことは間違いと指摘した。

近年、米国では反ユダヤ主義を標榜した主張や抗議活動が相次ぎ、ハマスによるイスラエル攻撃を受けてそれは一段と過熱している。こうした状況を懸念、非難する声はとくにユダヤ人経営者の多いウォール街を中心に高まっている。

反ユダヤ主義を否定しない大学には寄付しないとの主張も出た。米投資ファンド大手アポロ・グローバル・マネジメントのマーク・ローワン最高経営責任者(CEO)は、母校ペンシルベニア大学で9月に行われた「パレスチナ・ライツ文学フェスティバル」であったとされる反ユダヤ主義的な発言を学長が非難していないと批判した。

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12日に米CNBCテレビに出演したローワン氏は「政治的な主張ではなくテロリズムへの非難だ」と強調。同大学が反ユダヤ主義を容認しているとの懸念を受け、学長と理事長が辞任するまで寄付を停止するよう卒業生に呼びかけた。

ユダヤ人のローワン氏自身がペンシルベニア大学ウォートン・ビジネススクールに2018年に5000万ドル(約75億円)に上る寄付をしている。同氏によると意見に賛同し寄付をやめる卒業生が急増し、「大学が受け取るはずだった1億5000万ドルの寄付がなくなった」という。

米国の大学は裕福な卒業生からの寄付で運用する大学基金が、奨学金や施設の増設などの主要資金源になっている。寄付の減少は大学経営に大きな打撃だ。

米シンクタンクのアメリカン・エンタープライズ・インスティテュートのシニアフェロー、ナオミ・ライリー氏はCNBCのインタビューで「大学への寄付者は反ユダヤ主義にもっと前から対応して寄付を控えるべきだった」とローワン氏の意見に賛同した。

混迷する中東情勢は地政学的リスクといったマクロ要因だけでなく、ウォール街のマネーが直接、大学基金など機関投資家の資産運用を通じて市場に波紋を広げつつある。

(ニューヨーク=伴百江)』