米・イスラエル、両刃の軍事協力 国務長官きょう訪問

米・イスラエル、両刃の軍事協力 国務長官きょう訪問
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN11DQR0R11C23A0000000/

『2023年10月12日 2:18 (2023年10月12日 5:07更新)

【ワシントン=坂口幸裕】ブリンケン米国務長官は12日からイスラエルを訪問する。イスラム組織ハマスに攻撃を受けた同国への軍事協力をすり合わせる。報復を容認する米国がイスラエルに肩入れしすぎれば、他の中東諸国から反発が出て緊張が高まるリスクがあるなど、もろ刃の面もある。米国がめざす地域の安定へ正念場を迎えている。

米国務省のミラー報道官は10日の記者会見で、ブリンケン氏のイスラエル訪問について「連帯…

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『米国務省のミラー報道官は10日の記者会見で、ブリンケン氏のイスラエル訪問について「連帯と支援のメッセージになる」と述べた。「イスラエルの指導者から直面している状況について直接話を聞き、何を必要としているのか、我々が提供できる追加支援について話す」と話した。

バイデン米大統領は10日の演説で「イスラエルは悪意ある攻撃に反撃する権利と責務がある」と踏み込み、報復への支持を明確にした。

すでに弾薬や迎撃ミサイルの供与を始めた。ハマスや親イラン民兵組織ヒズボラからの攻撃に対処する狙いだ。連邦議会に対イスラエルの追加予算を認めるよう要請する方針で、イスラエルを全面支援する構えだ。

イスラエルに寄り添う米国の姿勢がどこまで中東各国から受け入れられるかは見通せない面もある。

同胞が多く住むパレスチナに同情的で、イスラエルによる占領をかねて非難してきた。イスラエルはハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザへの地上侵攻を検討しており、米政府がどこまで関与するかも焦点になる。

米国が後押ししてきたイスラエルとサウジアラビアの関係正常化交渉に影響する可能性もある。米国とイスラエルが対立するイランの包囲網を築くとともに、アラブの盟主を自任するサウジを通じて中東の安定につなげる思惑があった。

ハマスによる攻撃の背景には関係正常化交渉が進むことへの焦りがあったとみられる。パレスチナ奪還を掲げるハマスは、両国が関係改善に向かうことでパレスチナ問題が棚上げされることに危機感を強めていた。

米国は引き続き交渉の進展をめざす方針だ。ミラー氏は「サウジとだけでなく、イスラエルと地域の他の国々との関係を正常化することが安定や平和、繁栄をもたらす。これは我々が追求し続ける道だ」と強調した。ブリンケン氏はイスラエル訪問で対処方針を協議するとみられる。

米国が派遣した原子力空母ジェラルド・フォードを中心とする空母打撃群は東地中海に到着した。ヒズボラやイランなど中東情勢の不安定化の隙を利用しようとする勢力を抑止する狙いがある。

米政府はシリアやイラクといった中東に駐留する米軍がイランやヒズボラの標的になる事態も「懸念している」(米国家安全保障会議のカービー戦略広報調整官)。ブリンケン氏はハマスを軍事面で支えるイランの動向を巡っても意見を交わす可能性がある。

米国は中国抑止を最重要課題と位置づけており、ロシアの侵攻が続くウクライナへの支援と並行して中東への本格的な対応を迫られる事態は避けたいのが本音だ。中東が不安定化すれば、米国が描く世界の安全保障戦略は再考を迫られかねない。』