米陸軍参謀総長、我々はウクライナで学んだ教訓を受け入れて適応する
https://grandfleet.info/us-related/u-s-army-chief-of-staff-we-accept-and-adapt-lessons-learned-in-ukraine/
『米陸軍参謀総長のランディ・ジョージ大将は「ウクライナとロシアの戦いで戦争の性格が急速に変化しており、我々も変化を認識して適応していかなければならない」と述べ、通常火力戦略の下で海外製自走砲の調達を再推進する可能性があるらしい。
参考:Change of plans: US Army embraces lessons learned from war in Ukraine
参考:Uncertain fate for active protection on Army’s combat vehicles
米陸軍は通常火力戦略の下で実績のある自走砲調達を再推進する可能性がある
毎年大きな注目を集める米陸軍協会の年次総会も「イスラエルとハマスの戦争勃発」で影が薄くなってしまったが、米陸軍参謀総長のランディ・ジョージ大将は「ウクライナとロシアの戦いで戦争の性格が急速に変化しており、我々も変化を認識して適応していかなければならない」と、陸軍の近代化を担当するジェームズ・レイニー大将も砲兵戦略を「ウクライナで何が起こっているのか」と「米太平洋陸軍が通常火器に何を要求しているか」の両方に対応させる必要があると言及した。
出典:Jonathan Mallard / CC BY 2.0
レイニー大将は「我々がウクライナで目撃しているのは精密射撃の有効性や様々な新技術だが、最も多くの敵を戦場で破壊しているのは通常砲=通常火力(榴弾砲のこと)だ。まもなく発表する通常火力戦略には戦場での通常射撃を強化する施策(射程の延長や自動装填装置の採用など)が含まれている」と、陸軍で調達を担当するブッシュ次官補も「通常火力戦略は拡張射程砲プログラムの要件など砲兵戦力の構成に関する重要な決定が含まれている」と述べているのが興味深い。
米陸軍は牽引式のM777更新を検討中で、2021年に最低でも4つの装輪式自走砲(CAESAR、ARCHER、ATMOS、Nora B-52)をテストしたが調達には至らず、独自に装輪式自走砲を開発する方針だと噂されていたが、レイニー大将は「NATO加盟国の中に我々の関心を集める装備をもつ国がある」と述べたため、米ディフェンスメディアも「新たな砲兵装備を迅速に取得するため、通常火力戦略の下で実績のある自走砲調達を再推進する可能性がある」と報じている。
出典:Excalibur Army DITA
さらにブッシュ次官補も「空挺部隊はヘリで移動するためM777を重宝しているが、陸軍の他の部隊は『もっと別の能力』を欲しがるかもしれない。調達の観点から『海外製システムの採用』が受け入れられるなら、新規開発よりも迅速にシステムを取得できるオプションを持っている。とにかく今後も通常の大砲が必要で、ロシアとの戦いでも砲兵が戦場における最高の破壊者であると証明されている」と述べており、NATO加盟国に取得先を絞るならCAESAR、ARCHER、DANA、ZUZANA2、DITA、MORANA、RCH155などがオプションに該当する。
設営に時間がかかる生存性の低い指揮所は時代遅れ、機能を分散して移動可能でなければならない
個人的に最も興味深いのは「立ち上げに2時間も要する戦術作戦指揮所の時代は終わった」という米陸軍参謀総長の指摘だ。
出典:U.S. Army photo by Cecilia Soriano
陸軍は戦場に高度な司令部を設置するため「発電機を備えて空調管理が行き届いた大型テント」を設営してきたが、ジョージ大将は「移動可能で迅速に更新できるオープン・アーキテクチャの必要性が戦場で証明された。設営に2時間もかかる指揮所は時代遅れで、数分で移動でき移動中にも作戦指揮を継続できるシステムが必要だ」と訴え、短期的には今あるものを修正して対応し「将来的には新たなC2(Command and Control)アーキテクチャに移行しなければならない」と付け加えている。
因みにジョージ大将は「5輌のストライカーに分乗する35人だけで旅団戦闘団全体の指揮統制を行っているのを見て衝撃を受けた」とも言及し、市販品のノートパソコン、タブレット、無線通信装置を搭載したストライカーは1つのノードとして作動する戦場ネットワークに接続されているため「物理的な距離を無視して指揮統制を行える能力開発に労力を割くのは間違っていない」と述べた。
出典:U.S. Army photo by Markus Rauchenberger
他にもエイブラムスの新しいアップグレード=M1E3について「兵站上の負担を軽減する重量削減」「徘徊型弾薬やドローンによるトップアタックからの保護」「アクティブ防護システムの統合」が重要になると述べているが、陸上戦闘システムの開発責任者を務めるグレン・ディーン少将は「エイブラムスの暫定的な解決策として導入したトロフィーの性能に満足しているものの、戦車への搭載が大変なので実際の運用・維持が少し難しい」とも言及。
この辺りの問題もSEPv4を中止して「より積極的なアップグレード=M1E3」の開発に踏み切った要因なのかもしれない。
関連記事:米陸軍、エイブラムスは2040年までにハイエンドの戦場で無力になる
関連記事:米陸軍がSEPv4中止とM1E3開発を発表、初期作戦能力は2030年代初頭
関連記事:日本参加が期待される米陸軍の実射試験、フランス製CAESARも参加
関連記事:米メディア、米陸軍の実射試験に「19式装輪自走155mm榴弾砲」参加を期待
関連記事:BAEシステムズ、米陸軍に装輪型の155mm自走砲ARCHERを提案
※アイキャッチ画像の出典:U.S. Army Reserve photo by 1st Sgt. Michel Sauret
シェアする
ツイートする
Twitter で Follow grandfleet_info
Tweet Share +1 Hatena Pocket RSS feedly Pin it
投稿者: 航空万能論GF管理人 米国関連 コメント: 18 』
『 朴秀
2023年 10月 11日
返信 引用
米軍は無駄も多いけど最終的には対応する印象
自衛隊もちゃんと考えているのかな?
7
hogehoge
2023年 10月 11日
返信 引用
欧米の常設編成は大隊の混成である旅団が基幹となっていることが多いですが、
陸自の基幹的編成は中隊の混成となる連隊(戦闘団)形態なので、前線の指揮系統はもっと細かいですね。
また800両以上の大量調達する予定のパトリアAMVは防護性能に実績がありますし、これの指揮特化タイプも調達します。
(細かい不安は尽きないですが)即応機動連隊など、予定の大枠ではかなり先進的な構造になるかと。
9 』
『 2023年 10月 11日
返信 引用
誤解を招きそうなので一応前置きとして自衛隊は大変役立っているという前置きをしておいて、その上で。
アメリカと日本で大きく違うのは、軍事力が国家の地位に与える影響ではないでしょうか。アメリカの経済力さえも含めて、その軍事量が圧倒的だからこそ今の地位があり、それを維持できるのであって、今回のようにその保有戦力が一気に陳腐化しうる事態になればそれこそ死活問題。対して日本では、確かに一大事ではあるが立場的にはアメリカほど影響は受けないわけで、どうしても本気度が変わってしまうのかと。国内世論も違いますしね。
1 』
『 TKT
2023年 10月 11日
返信 引用
むしろ昔の陸上自衛隊、北海道重視で、対ロシア軍を重視した訓練や装備だった、敵制空権下での作戦を想定していた昔の陸上自衛隊の方が上手く対応していた、適合していたかもしれません。
泥濘期での戦闘を考えると、機動戦闘車のような装輪装甲車よりも、戦車のような装軌車両の方がよく、歩兵支援が中心であれば、74式戦車のような105㎜砲でも十分かもしれません。
市街地での対ゲリラ戦、離島奪回のための上陸作戦、のための訓練や装備などが、今のウクライナでの戦訓に合わないのは当然ですが、かといって一方では中国のような脅威もあり、ハマスのような脅威も実際にあり、防衛の対象を一つに絞るのも難しいと言えます。
指揮所がムダにでっかくて豪華で人が多すぎるのはアメリカ軍だからで、陸上自衛隊の設備や施設は、もとから米軍のものより簡素で小さいわけです。
いちいち大きな発電機や空調装置が必要なのは、電子化や自動化のやりすぎ、ムダな金、予算のかけすぎのためではないでしょうか。むしろ昔のアナログな指揮所に少し戻せば、今よりずっと簡素で小さい指揮所になるでしょう。』
『 BC
2023年 10月 11日
返信 引用
陸自は戦車・火砲の定数を削減した状態のままで
12式改誘導弾やトマホーク等の長距離対地・対空ミサイルの増強を進めるが
ウクライナ戦争や今回のイスラエル戦争でも
(正規軍同士の対称戦でも民兵レベルの非対称戦でも)
完全装甲化され自走化され、継続的に戦場に展開し、迅速な配置転換が可能な
戦車や自走榴弾砲・ロケット砲の存在は極めて重要であることは証明された
一方で戦車も自走榴弾砲もドローンによるトップアタック能力に対する
上部装甲の脆弱性も改めて証明され、この対策は必須であることも判明した
一発一発が高価な誘導弾は精密でありながら、再生産に時間がかかり
誘導弾より大量生産が迅速に可能な戦車砲弾や榴弾・迫撃砲弾と
それを発射する戦車・自走火砲の数は誘導弾と並んで陸上戦力の両輪だ
トップアタック対策と自走化を施した上で戦車・自走砲の増備も必須だ
2
2023年 10月 11日
返信 引用
自走砲は増やすべきですね。とはいえ政府としては基本的にまずは初期の電撃戦への対応を今は重視してるのかなとは。全部同時には難しいので…特にこの国では、
1
Whiskey Dick
2023年 10月 11日
返信 引用
防衛費と若者人口に限界がある以上、陸自の増強は止めた方が良い。
(敵が核兵器を使わなければ)とりあえず敵の上陸を阻止できればこちらの勝利なのだから、陸上で戦う武器より上陸を事前阻止を優先すべきである。現代の大砲は射程が精々30km程度であり、敵の艦艇及び航空機はこれ以上の長射程兵器を使用すると思われるので、大砲なんかより対船舶ミサイル(射程100km以上)を増強した方が良い。
地上の損害を減らしたいのであれば陸自を減らした分、海自・空自を増強して積極的に敵を狩るようにすべき。
※西南諸島の中国軍対応はどうするのかという話なら、島の大きさを考えれば敵も大重量の兵器を持ち込むとは考えにくい。精々水陸両用車と重迫撃砲程度あれば十分でしょう。それ以上の火力支援は航空機と軍艦にやらせればいいのだし。』