2023年ノーベル化学賞は量子ドット、医療やディスプレー発色改善に貢献
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/16042/

『スウェーデン王立科学アカデミーは2023年10月4日、同年のノーベル化学賞受賞者として、米Massachusetts Institute of Technology(MIT)教授のムンジ・バウェンディ氏、米コロンビア大学 教授のルイス・ブラス氏、ロシア出身で現在は米Nanocrystals Technologyの元チーフサイエンティストであるアレクセイ・エキモフ氏の3氏を選出したと発表した(図1)。授与理由は、「量子ドット(Quantum Dot、QD)の開発」である。
図1 2023年のノーベル化学賞受賞者
(出所:スウェーデン王立科学アカデミー)
QDは、硫化カドミウム(CdS)やセレン化カドミウム(CdSe)、硫化亜鉛(ZnS)といったありふれた半導体材料から成る微粒子である(図2)。具体的には直径が10ナノ(n)m前後の微粒子で、通常の材料特性とは異なる特性を発揮する。半導体のバンドギャップの大きさなどが、QDの粒子径によって変化するのである。これは「量子サイズ効果」と呼ばれる。その変化を定量的に示した式は今回の受賞者のブラス氏にちなんで「Brus方程式」と呼ばれる。
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図2 量子ドット(QD)のイメージと量子サイズ効果による発色の例
(出所:日経クロステック)
エキモフ氏が1970年代末~1981年に塩化銅のQDと量子サイズ効果を発見。1982~1984年に上述のようにブラス氏の研究グループがQDのサイズとバンドギャップの関係を定式化した。そして1993年にバウェンディ氏の研究グループがその効率的な量産手法を開発した。
当初の応用は生化学や医療だった。がん細胞にQDを取り込ませて、そこに光を照射して画像化するという使い方である。
最近の応用例の1つが、QDをディスプレーの発光色の改善に用いた例だ。QDに外部から光を照射、あるいは電流を流すと、そのQDごとに特定の、しかも色純度の高い色(波長)で発光する。同じ材料の量子ドットでも直径を小さくすると次第に赤色から青色、そして紫色へと短い波長で発光するようになる。
今後のディスプレーの主流の1つに
QDで液晶ディスプレーの発色を改善したテレビなどは以前から発売されており、最近はQDをカラーフィルターに用いた有機ELテレビなどが発売された。シャープは、QDを有機ELの有機半導体材料に代わる材料として用いる「nanoLED」を開発中だ。
今後、本格的に登場する見込みのマイクロLEDディスプレーと並んで次世代ディスプレーの柱の1つになっていく可能性が高い。 』