ウクライナ反攻に逆風 欧米で広がる支援慎重論

ウクライナ反攻に逆風 欧米で広がる支援慎重論
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR03BZV0T01C23A0000000/

『欧米でくすぶるウクライナ支援への慎重論が同国の領土奪回に向けた反攻に影を落としている。各国の世論や議会で支援に否定的な意見が強まり、武器や弾薬などの援助額も2023年の月間平均は22年の16%減と伸び悩む。

米国では野党・共和党を中心にウクライナに巨額支援を続けることへの反対論が高まる。米政府閉鎖を回避するため9月30日に成立した「つなぎ予算」に対ウクライナの追加資金は盛り込まれなかった。ウクラ…

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『ウクライナが最も頼みとする米国の軍事援助が今冬にも途絶する懸念がある。

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同日にはウクライナの隣国スロバキアの総選挙で、軍事援助の打ち切りを唱えたロシア寄りの政党が第1党に躍進した。欧州連合(EU)内で軍事援助に否定的な政権が誕生すれば昨年2月のロシアの侵攻開始後で初となり、欧州内に衝撃が広がった。

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EUの世論調査「ユーロバロメーター」によると、ウクライナへの軍事支援に否定的な回答は5〜6月調査では計31%と、1〜2月調査の28%からさらに増加した。ブルガリア、ギリシャ、キプロス、ハンガリー、オーストリア、スロバキアでは否定的な回答が過半数を占めた。

燃料費の高騰などによる高インフレが続くなか、欧州でもウクライナへの支援資金を国民の生活支援に回すべきだとの主張が有権者に評価されやすくなっている。ロシアは各国へのプロパガンダ工作を展開しており、足元でも支援への消極論が加速している可能性が高い。

これまでに各国が表明した支援内容をみても不安材料は少なくない。ドイツのキール世界経済研究所の調査によると、兵器や弾薬の供与量を映す月別の軍事現物援助額は22年12月の230億ユーロ(約3兆5900億円)をピークに減少傾向に転じた。

月間の平均額は支援が本格化した22年3月から12月までは約57億8000万ユーロだったが、23年1〜6月は48億8000万ユーロと16%減った。23年は主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)で加盟各国が追加援助を表明した5月を除けば低調だ。

財政を含む支援総額は23年6月に過去最高の536億ユーロに達したが、これはEUが中長期の財政支援として24〜27年分の計500億ユーロをまとめて表明したためだ。加盟各国で支援への反対論が強まれば履行が滞るリスクも残る。

ウクライナのマルチェンコ財務相は9月下旬、同国メディアに「ウクライナのために資金を提供しようとする人はますます少なくなっている」と述べた。来年にかけて欧米から財政支援を受けられるかについて「容易ではない。これらの国の納税者がどの程度の資金を提供する用意があるのか、多くの疑問が生じている」と語った。

危機感を強めた日本と米国、欧州の同志国首脳は3日、ロシアによる侵攻が続くウクライナ情勢を巡り電話協議した。協議にはG7首脳らのほか、北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長やポーランドのドゥダ大統領らも加わった。日本の外務省によると、各国首脳は「同志国が団結してウクライナに寄り添い、結束して支援を続ける」との方針で一致した。

EUも2日、ウクライナの首都キーウでEU域外で初となる外相会合を開き、ウクライナが勝利するまで欧州が一致して支援を続けることを確認した。

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ウクライナ軍が南部で徐々に領土を奪還し反攻が重要な局面に入っているだけに、EU側は同国への支援の勢いを取り戻そうと躍起になっている。ボレル外交安全保障上級代表は2日、ウクライナに対し新たに4年間で最大計200億ユーロの支援を検討すると表明した。

年末までの支援決定を目指す考えも示したが、実施には加盟27カ国の合意が必要となる。EU高官によると、ハンガリーはすでに反対する意向を示している。ロイター通信は3日、ハンガリーの同意を得るために同国への数十億ユーロのEU補助金の凍結を解除する検討に入ったと報じた。

補助金はEUが重視する司法の独立をハンガリー政府が損なったとして凍結されたが、大きな改善がないまま一部解除に向かうとみられる。EUは「ウクライナのために域内の民主主義が損なわれかねない」(欧州外交筋)というジレンマにも直面している。

(ウィーン=田中孝幸、ブリュッセル=辻隆史)

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