米ターゲット、万引き被害拡大で9店舗閉鎖 対策に苦慮

米ターゲット、万引き被害拡大で9店舗閉鎖 対策に苦慮
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN27CYP0X20C23A9000000/

『【ニューヨーク=弓真名】米小売り大手のターゲットが国内4州の9店舗を閉鎖すると発表した。万引きや転売を目的とした組織的な犯罪が増え、業績に悪影響を与えているためだ。米国では小売店を狙った窃盗被害が拡大しており、各社はセキュリティー強化などの対応に追われている。

ニューヨーク州で1店舗、ワシントン州で2店舗、カリフォルニア州は3店舗、オレゴン州では3店舗を閉める。声明で「窃盗や組織犯罪が増加し、安全面と業績への影響を考慮すると、引き続き店舗を経営していくことが困難だと判断した」と説明した。

ターゲットのブライアン・コーネル最高経営責任者(CEO)は8月の決算説明会で「残念なことに治安環境は悪い方向に進んでいる。今年に入ってからの5ヵ月間で、暴力や脅迫を伴う盗難事件が120%増えた」とコメントしていた。

店内の監視要員を増やしたり、盗難防止ツールを導入したりと対策を打ってきたが、被害状況は改善されなかったとしている。

米小売り各社は盗難や災害による在庫損失を「シュリンク(shrink)」という言葉で表現する。すべてを犯罪とは断定できないが、全米小売業協会が26日に発表した調査によると、2022年度の小売企業の「シュリンク」のうち、盗難被害によるものが65%程度を占めていたという。

同調査の推計によると、米小売企業は22年度にシュリンクによって1121億ドル(約16兆7000億円)の損失を出した。前年度の939億ドルから19%増加した。

米国の消費を支える小売企業で被害が拡大していることをうけ、米国各地で窃盗などを取り締まる法律の整備が進んでいる。米CNBCによると、22年以降で少なくとも9つの州が組織的な犯罪に対して厳罰を科す法律を可決した。

直近では、米連邦議会がオンラインで製品を販売する際に売り手の身元情報を明確にする法律を可決した。販売者についての情報開示を求めることで、盗難品を売る犯罪者を取り締まる狙いがある。』