北朝鮮、軍事境界線越えた米兵を追放 米国の保護下に
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『【ワシントン=坂口幸裕、ソウル=甲原潤之介】北朝鮮の朝鮮中央通信は27日、7月に軍事境界線を越えて韓国から北朝鮮に入った米兵の追放を決定したと報じた。米政府高官は同日、米兵がすでに米国の保護下にあると明かした。北朝鮮と国交があるスウェーデンが仲介し、北朝鮮と国境を接する中国に移送された。
米ホワイトハウスのサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は27日の声明で「外交的役割を果たしたスウェーデン…
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『米ホワイトハウスのサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は27日の声明で「外交的役割を果たしたスウェーデン政府、円滑な移送を支援してくれた中国政府に感謝する」と記した。中国を離れ、米兵は米軍基地に向かっている。
解放されたトラビス・キング米陸軍2等兵は軍事境界線にある板門店の共同警備区域を見学中、許可なく北朝鮮側に渡った。朝鮮中央通信によると「米軍内での非人間的な虐待と人種差別による反感、不平等な米国社会に対する幻滅から不法侵入したと自白した」という。
米高官は27日、記者団に「9月初めにスウェーデンを通じて北朝鮮がキング氏の解放を望んでいると知った。スウェーデンが重要な役割を担った」と説明した。
スウェーデンは北朝鮮と国交がある。過去にも北朝鮮に拘束された米国人の解放に協力した経緯がある。日本と北朝鮮の両政府による2014年のストックホルム合意もスウェーデンで交わした。同合意で北朝鮮は拉致被害者らの安否再調査を約束した。
米兵の身柄移送に中国の後押しがあったと謝意を示しつつ「(中国が)仲介したわけではない」と明言した。北朝鮮との交渉で米国側は何らかの譲歩案を提示したのかと問われ「何もなかった」と述べた。
21年1月に発足したバイデン政権の下で米朝協議は滞っており、北朝鮮が米国を揺さぶる交渉カードに利用する可能性が取り沙汰されていた。
同高官は「米政府は北朝鮮との外交にオープンだ」と指摘。キング氏の解放を受け「(米朝関係)緊張下にあっても意思疎通のパイプを維持するのが重要だ」と話した。北朝鮮は米国による前提条件なしの対話の呼びかけを無視し続けている。
米メディアによると、在韓米軍所属のキング氏は暴行事件を起こし、警察車両を損壊したとして韓国の裁判所から罰金を科されていた。米国に戻るため韓国の空港に付き添いと訪れたが、搭乗せずに板門店の見学ツアーに参加。米国に戻れば追加の懲戒処分を受ける予定だった。
米政府が保護したキング氏の健康状態は「良好」(同高官)で、米本土に移送後に医療機関で健康診断を受ける。その後に処分の検討を含む軍の手続きに入る見通しだ。
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