ポーランド政府、ウクライナへの武器供給は契約分と事前合意分のみ実行
https://grandfleet.info/european-region/polish-government-will-only-supply-weapons-to-ukraine-with-contracts-and-advance-agreements/#comment_headline
『ポーランドのモラヴィエツキ首相が「自国の軍事力を強化するためウクライナへの装備提供を現在は行っていない」と述べ注目を集めていたが、政府のミュラー報道官は「ウクライナへの武器供給は契約締結分と事前に合意された武器・弾薬の納入のみ実行している」と説明した。
参考:Rzecznik rządu: Polska realizuje wyłącznie uzgodnione wcześniej dostawy amunicji oraz uzbrojenia dla Ukrainy
ポーランドメディアにはウクライナを批判する記事が続々と増えており、もうタガが外れてしまった感がある
ゼレンスキー大統領は国連総会の演説の中で「欧州の一部の人々が政治的な舞台で(我々との)連帯を演じ、穀物からスリラーを作っているのを見るのは憂慮すべきことだ。彼は自分達の役割を演じているように見えるかもしれないが、実際にはモスクワの役者のために舞台を用意する手助けをしているのだ」と発言、これは穀物輸出を巡る問題で「独自の輸入禁止措置」を導入したポーランド、ハンガリー、スロバキアを遠回しに批判する内容で、シンプルに言えば「ロシアが食料を武器化するのをポーランド、ハンガリー、スロバキアが助けている」という意味だ。
出典:Jarosław Wolski/CC BY-SA 4.0
ポーランドのモラヴィエツキ首相は「今後もウクライナに軍事的な支援を行うのか?」というメディアの質問に「自国の軍事力を強化するためウクライナへの装備提供を現在は行っていない」と述べたため、海外メディアは「穀物輸出でウクライナと対立するポーランドが武器支援を停止した」と報じて注目を集めていたが、政府のミュラー報道官は首相の発言について「ウクライナへの武器供給は契約締結分と事前に合意された武器・弾薬の納入のみ実行している」と説明した。
契約締結分とはウクライナが発注した155mm自走砲「KRAB」×54輌、装甲兵員輸送車「ロソマク」×100輌~150輌、自走式迫撃砲「M120Rak」×54輌以上、携帯式防空ミサイル「ピオルン」×100基などのことで、事前に合意された武器・弾薬の詳細は不明だが、ミュラー報道官は「ウクライナ側から絶対に受け入れない発言やジェスチャーが相次いでおり、このような不当な行為をポーランドは容認しない」と強調したため、首相の言及は「新たな装備提供には応じない」という意味なのかもしれない。
出典:Kancelaria Prezesa Rady Ministrów
因みにポーランドメディアにはウクライナを批判する記事が続々と増えており、もうタガが外れてしまった感がある。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Army photo by Kevin Sterling Payne
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投稿者: 航空万能論GF管理人 欧州関連 コメント: 85 』
『 kame
2023年 9月 21日
返信 引用
不満が溜まってたんだろうなぁ。というのが印象に残る内容でした。
契約した分は履行するけど、今後、ポーランドからの支援は絶望的。最悪の場合、欧州全体に脱ウクライナ支援の流れが出来上がってしまうようだと、更にアメリカへの依存度が高くなるが、肝心のアメリカも先日、新たな支援内容を発表したばかりだし、本格的な冬が到来すると支援自体が継続できるかも怪しくなりそうだ。
17
古銭
2023年 9月 21日
返信 引用
ここから黒海輸送分の産品を強引に雪崩れ込ませて東欧の市場と輸送インフラを破壊でもしない限り、今後の支援が絶望的とまではいかないのでは。
PiSが前のめりであっただけで、単純にポーランドの国力的な支援限界は近付いていたというのもありますし。
6 』
『 gepard
2023年 9月 21日
返信 引用
ポーランドは旧ソ製155mm砲弾や各種東側弾薬などウクライナが継続して戦うために必須な装備を生産する貴重な支援国の一つであり、弾薬も既存の契約・生産分を最後に差し止めとなればその影響は早期に必ず現れる。
ウクライナ軍はロシアの火力に対抗する手段を事実上失いかねない重大な事態である。
防空ミサイル誤爆事件など伏線はかなり前からあったが、ゼレンスキー政権の舌禍がポーランド人の怒りを招いたとすれば外交政策の致命的な誤りだ。
29
くらうん
2023年 9月 21日
返信 引用
まず旧東側の榴弾砲は155mmではなく152mmですね。書き間違えなら失礼。
また、それらを使用する榴弾砲は現在はウクライナの主力ではなくなっています(詳細は失念しましたが、ここの記事で春ごろに書かれていました)。
あとこれはJSF氏の引用ですが、ポーランドは既に供与できる武器はあらかた出しきっていて、どのみち今までのような大規模な武器支援はほぼ期待できないようです。私も軽く調べただけですが、ポーランドが新たに出せる装備ってそんなに無さそうなんですよね。
なのでモラヴィエツキ首相の「自国の軍事力を強化するため」提供を行っていないというのは、実際そうなのでしょう。
まあ、かといってこの一連のゴタゴタがプロレスだとは思わないし、ポーランドのその他の支援が必要であることは変わりないと思いますが、両国で問題解決を模索するということで一先ずトーンダウンしたようなので、この件はまだ様子見したほうが良さそうです。
31
gepard
2023年 9月 21日
返信 引用
旧ソは152mmでしたね、これは失礼。
榴弾砲の主力は確かに西側の物が多く使われるようになりましたが、それでも大半が置き換わったという状況ではないと思うので、支援が事実上終了となれば大きな影響を免れないでしょう。
更に戦車の修理や補修のハブはどうなるのかという問題もあります。
情勢の展開次第ではドミノ式に同じ穀物問題を抱える東欧諸国の支援縮小につながりかねず、ゼレンスキー政権は本当に致命的なタイミングでミスをしたという感想です。
14
uu2gp
2023年 9月 21日
返信 引用
ウクライナとポーランドは穀物輸出に関する共同解決策を見出すことで合意したので、単なる外交の駆け引きだったと思いますね。
12
くらうん
2023年 9月 21日
返信 引用
>更に戦車の修理や補修のハブはどうなるのか
ここは私も疑問で、ポーランドが公式アナウンスする際の武器支援のリストには入っていないものの、広義の武器支援と言えるので、微妙なところですよね。
古銭さんが前の記事で仰っていたように、PiSの選挙を見据えたパフォーマンス的側面もあるようなので、修理のような目立たない・且つ物質的な制約の少ない支援は継続するのではないかとも考えます。
ゼレンスキー大統領の「ロシアを助けている」発言は完全な悪手だと私も思っています。よりにもよって対露で結束した仲なのに、余りにも言葉選びがひどい。ただ、WWⅡの頃の連合国側のあの顔ぶれでも協力できた事を考えると、まだ挽回のできる段階かと思います。実際その兆候があるようですし。
なので、私はこの件はまだ予断せず様子見しようと思っています。
24
gepard
2023年 9月 21日
返信 引用
そうですね、古銭さん指摘の通り「法と正義」はポピュリスト政党なので選挙向けな部分はあると思います。
ただ、管理人氏の記事にある通りポーランドメディアが一斉に批判を開始した=ポーランド人の怒りが噴出し始めた情勢ですのでまだまだ波乱は続くと思います。
まずはポーランドの選挙までこの騒動が続くのか、その後関係改善と支援再開に舵を切るのか、それとも更なる火種が生まれてこじれるのか、こうした点に注視していこうかなと思っています。
6 』
『 名無し
2023年 9月 22日
返信 引用
戦場でダメージ受けた戦車の修理に関してはポーランドはドイツと揉めてて上手くいってないみたいな記事を以前見たけど
一方でチェコはデンマークとノルウェー合同のプロジェクトを発足してT72とレオパルト1を改修して供与を発表したばかり
これは勝手な推測だけど、ウクライナに供与された物のうちウクライナに到着したけど改めて自分たちで修理しないと使えないぐらい悪い状態の物が多い
とアメリカのメディアは記事にしてたが
ポーランドはその筆頭だったんじゃ
2 』
『 panda
2023年 9月 21日
返信 引用
ウクライナ・ポーランド両国は農産物の交易問題について解決策を模索する方向で一致しています
ポーランド国民の心証が大きく悪化した事は懸念点ですが、これ以上の関係悪化は避けられるんじゃないかと期待してます
19
匿名
2023年 9月 21日
返信 引用
貿易紛争における互いに譲歩点を引き出す為のチキンレースで終われば良いのですが、「泣かない赤ちゃんはミルクをもらえない」を体現する様な政治的駆引は、適切な距離感を明確に見せつける必要がある事を学ばさせてくれますね。
14
鹿角
2023年 9月 21日
返信 引用
>「泣かない赤ちゃんはミルクをもらえない」
なるほど見事な比喩ですね。流石ここの掲示板の方はレベルが高い。
ウクライナも元々ソ連構成国ですし、いわゆる西側との成立基盤の違いを垣間見ることも度々です。腹が座って勇壮という長所はありますが外交や汚職問題で軋轢が生じるたびに様々と考えさせられますね。
7 』
『 無明
2023年 9月 21日
返信 引用
本当にウクライナの言動に対して堪忍袋の緒が切れたのか
それとも選挙を前にして、白紙の小切手を渡すことはないという厳しめの姿勢を示すことで、支援に疲れた国民の票が逃げるのを避けようとしてるのか
どっちなんだろ
15
せい
2023年 9月 22日
返信 引用
政治家の思惑はともかく、一般のポーランド人からしたら生活に直結する問題な上にあんな演説かまされては許しがたいでしょうな。
選挙を見据えるなら甘い結論にはならんでしょう。
8 』
『 TKT
2023年 9月 21日
返信 引用
そもそもポーランドは、歴史的にも必ずしも反ロシア一辺倒というわけではなく、反ドイツ感情も非常に強く、またバンデラ主義のような民族主義に対しては、警戒感も強い、反ウクライナ感情もあります。
もちろんロシアに対する警戒心も非常に強いわけですが、同時にドイツやウクライナに対する警戒心も歴史的に非常に強く、必ずしも東西のどっち寄りとは限らない、ある意味で自主的な立場、あるいは政治的には日和見の部分もあります。
スラブ民族という面では、言語的、文化的にはウクライナ人に近いと同時に、ロシア人にも近く、宗教的にはロシア人とは違うと同時に、ウクライナ人とも違います。
いずれにしても、流れ的にはこれ以上のウクライナに対する武器支援はもうやらん雰囲気になりつつあり、またあるいは実際にやりたくても物理的にもうやれん、ということかもしれずハンガリーやスロバキアもそうかもしれません。
NATOや英米も、これ以上当てにはできんぽい、みたいな雰囲気にもなってきましたし、このままじゃ外交的にいかん、やばい、あかん、勝てん、という風になりつつあるのかもしれません。
穀物輸出の問題は、武器の支援を切るための、正当化するための、上手い言い訳、口実ということかもしれません。
16 』
『 古銭
2023年 9月 21日
返信 引用
今のところ交渉の場を設けることそのものの合意だけに見えますね。
スロバキアが事実上のルーマニア方式を選択したので、ポーランドやハンガリーもインフラ事情による差は出しつつも最終的にはそこに落ち着くのではないかと思いますが。
17 』
『 ななし
2023年 9月 21日
返信 引用
スロバキアとウクライナ、穀物の禁輸の代わりに貿易ライセンス制度を作ることで合意
リンク( http://www.ukrinform.jp/rubric-polytics/3764286-surobakiatoukuraina-gu-wuno-jin-shuno-daiwarini-mao-yiraisensu-zhi-duwo-zuorukotode-he-yi.html )
早晩同様のライセンス契約とWTO提訴中止がポーランドからも発表されるでしょう
ポーランド国民の不満のガス抜きの側面もあるんでは』