英都市バーミンガム破綻 同一賃金軽視、10年のツケ

英都市バーミンガム破綻 同一賃金軽視、10年のツケ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR1107P0R10C23A9000000/

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 ※ そうすると、「ガチョウ自体」が、弱って死んでしまう…。

『ロンドンに次ぐ英国第2の都市バーミンガムが事実上の財政破綻を宣言した。産業革命の中心地として栄えた同市は10年前から市職員の不平等賃金をめぐる時限爆弾を抱えていた。

「6億5000万ポンド(約1200億円)を超える同一賃金債務に見あう財源がない」。バーミンガム市議会は5日、地方財政法に基づく事実上の破綻通知を出した。人口114万人の中核都市の破綻を英メディアは大々的に伝えた。

職員からの請求膨張

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『唐突にみえる破綻は10年前からささやかれていた。

同市はかつてごみ収集や道路清掃などを担う男性職員にボーナスを払い、教育助手や給食、介護などの女性職員に支給しなかった。約5000人の女性職員らが不当だとして訴訟を起こし、雇用審判所は2010年4月に市に支払いを命じた。

さらに退職から6カ月とされた請求期間の延長をめぐって裁判は続いた。12年10月の最高裁判決で請求期間は6年と確定し、市は膨大な請求を受けることになった。

翌月の12年11月、市議会は支払いが少なくとも7億5700万ポンドにのぼると明らかにした。当時の報道には「破綻」の文言が飛び交った。

その後は不要不急の歳出を減らすものの、職員側の勝訴が新たな請求を呼び込むいたちごっこだった。訴訟を支援する労働組合は不平等の原因を根絶するための職務評価の枠組みが未整備だと主張する。

11億ポンドを支払った現在も7億ポンド規模の負債が残り、新たに毎月500万〜1400万ポンドの負債が生まれる。年間予算が30億ポンド台の市財政には大きすぎる負担だ。

歳入の多くを占める英政府からの補助金は10年ごろから削られた。IT(情報技術)システムの導入費用の膨張も追い打ちをかけた。

今月1日、外部監査で過年度に計上した同一賃金請求の引当金が過少だと指摘を受けた。市議会の財務責任者は「決算を承認できない」と破綻宣言を余儀なくされた。

英国は欧州共同体(EC)加盟のため1970年に男女の同一賃金法を整備した。だが実態は格差が残り、労働組合の後押しを受けた女性職員らが勤め先の自治体を相手取り訴訟を起こすケースが00年代から相次いだ。バーミンガムはこうした運動の中心地となった。

職員と和解を選んだ自治体もあったが、バーミンガムは顧問弁護士の助言もあって最後まで戦った。よもや負けるとは思っていなかった。

事実上の破綻を宣言した同市は社会的弱者の保護や教育、ごみ収集など法定サービス以外の歳出を止めた。25日の臨時議会で財政再建策を示す。緊縮下でも未払い賃金の支給は優先されるとみられるが、市議会の担当者は「現段階で言えることは何もない」と話す。

他の都市も苦境に

バーミンガムのような特殊事情を抱えていない英自治体も財政の厳しさは共通する。

英メディアによると、地方財政法に基づく最初の破綻は00年のハックニー、しばらくあいて18年にノーサンプトンシャーが続いた。ここ数年は毎年破綻が起きている。

英シンクタンク地方自治体情報ユニットのジョナサン・カーウェスト氏は「中央政府からの資金の削減に加え、高齢化や支援を必要とする子どもの増加、インフレも重なり、最悪の状況になった」と指摘する。「事実上の破綻宣言に向かう自治体の行列ができている」と警鐘を鳴らす。

ロンドンの東に位置する22年に破綻したサロックの議員は公共放送BBCに「道は汚れ、草刈りの頻度は下がり、補助を受けるバス路線は止まった」と変化を語った。10%上げた地方税を再び増税する見通しだという。

バーミンガム在住の20代の男性教師は「子どもたちがメンタルヘルスや人間関係に関する相談を受けられなくなるのを心配している」と語った。

前首相が財源の裏付けのない減税策を打ち出し英国財政の信認が揺らいだトラス・ショックからまもなく1年。今度は地方財政をめぐる不安が英国に広がっている。

(ロンドン=江渕智弘)

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