ウクライナ戦争終結のカギを握るプーチン大統領。その後継者は子分か闇ビジネス仲間か、それともイエスマンか
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『長期化するウクライナ戦争の終結は、今後のロシアがどうなるか、つまり、プーチン政権がどう終わるかにかかっていると言っても過言ではない。では、プーチン政権後のロシアの覇権を握る後継者は誰か。
【画像】2023年9月2日のNYタイムズスクエアでの抗議デモ
プーチン大統領に関する翻訳書を手がけてきた山形浩生氏と軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏による対談を『プーチン重要論説集』 (星海社新書)より一部抜粋してお届けする。
ウクライナ戦争の今後はどうなる
山形 プーチンのパーソナリティからしても「やっぱやめます」でウクライナから撤退するわけにもいかないわけで、今後の情勢はどうなるんでしょうか。膠着状態になるのか、あるいは他の可能性もあるのか……。
黒井 プーチンはメンツを大事にする人なので、今さら自分の言ったことを撤回できず、できることは陰謀論をひたすら言い続けるくらいしかないと思っています。停戦は最初から無理だと判断していました。かといってウクライナ側も自国からロシアを追い出すまでは停戦できないわけで、公式な停戦は難しいでしょう。山形さんのおっしゃるように膠着状態になるのが現実的な見通しかと思います。ウクライナの人もいつまでも戦争に耐えられませんから、押し返すことが大切です。ウクライナからすれば開戦前、2月24日のラインまでは持っていきたいでしょう。そこまできたら、NATO公式の支援はロシアを刺激するので難しいとしても、いろいろな国が二国間での支援という形でなし崩しでウクライナに入っていって停戦を既成事実化する、というのが現実的なところでしょうか。ただ、時間がかかる話ではあります。
それからプーチンが「西側のこういう行為はけしからん」と表明したことをやってしまうと、メンツを潰されたプーチンが立場上報復をしないといけなくなるので、ロシアの動きには注目しておく必要があります。プーチンの手には核兵器がありますから。
山形 「ロシアは経済制裁で物資がなく、ジリ貧になっている」という楽観論も出てきていましたが、この見立ては甘いのでしょうか。』
『ロシアをあなどれない2つの軍事力
黒井 軍事面でロシアのあなどれない点は二つあって、まずは火力です。ハイテクなミサイルのストックは減っても、昔ながらの誘導しない砲弾などを作る力は低くありません。そして戦車など、ソ連時代のストックが山ほどあります。火力はウクライナの何倍もあり、継戦能力はまだまだあります。逆にウクライナは戦車はあっても弾薬が不足していたりします。
もう一つは空軍力ですね。この点ではロシアの戦力はウクライナの10倍くらいあります。
なので、現在でもウクライナが一方的に勝てているわけではなく、ロシア軍もまだまだ強いといえます。
山形 もし停戦が実現したとして、その後のロシアは国際社会でどのような立ち位置になると思われますか。
黒井 それは戦争の趨勢次第ですよね。ウクライナ側に立って戦うロシア人の部隊、自由ロシア軍団のスポークスマンが先日「プーチンを倒さないとこの戦争は終わらない」と言っていて、確かにそうだと思いました。プーチンが権力を握っていて戦況が互角の間は先細りしつつも現状維持でしょう。戦況が不利になると、地方のヤバい国として中国など他国の擁護も減って孤立していくと思いますが。
プーチン政権が倒れてロシアが敗戦したら、状況が変わるのは確実ではありますが、どうなるかは誰にも予測できません。それより今後しばらくは、プーチン体制が存続し、中国、イラン、シリア、北朝鮮ら独裁政権の陣営が連携するという脅威に世界は備える必要があると思います。
プーチンの後継者は誰か?
山形 プーチンの後継者、ということを考えるとどうでしょうか。一時期はメドベージェフが後継者になるかとも思われましたが……。
黒井 メドベージェフはサンクトペテルブルク時代からのプーチンの子分なんですよね、主人であるプーチンに一生懸命付き従う奴隷のような。現在のナンバー2はパトルシェフですが、同世代なので後継者という感じではありません。今のプーチンの側近は昔からの人ばかり、レニングラード時代のKGBの仲間と、サンクトペテルブルク副市長時代に闇ビジネスをやってきた仲間ばかりです。
山形 新しいのはショイグくらいですよね。
黒井 ショイグはイエスマンなので、プーチンに意見できる立場ではないんですよね。ラブロフもそうです。結局みな子分ではあるけど、後継者かというと疑問の余地があります。憲法上、何かあったときに大統領の代理を務めるのは首相ですが、今の首相のミシュスチンはただの経済官僚で、有事に動くのはパトルシェフでしょうね。もっともパトルシェフはプーチン以上に好戦派です。
山形 いずれにせよ、今後のロシアがどうなるかはプーチン政権がどう終わるか次第、ということですね。
山形浩生(やまがた ひろお)
翻訳家。1964年東京生まれ。東京大学工学系研究科都市工学科修士課程、マサチューセッツ工科大学不動産センター修士課程修了。大手調査会社に勤務する一方で、科学、文化、経済、コンピューターなどの幅広い分野で翻訳・執筆活動を行っている。著書・翻訳書多数。著書に『たかがバロウズ本。』(大村書店、2003年)、訳書にピケティ『21世紀の資本』(みすず書房、2014年、共訳)、フィリップ・ショート『プーチン』(白水社、2023年、上下巻、共訳)などがある。
黒井文太郎(くろい ぶんたろう)
福島県いわき市出身/フリーライター(スパイ+テロ+紛争+情報戦+インテリジェンス情報分析の専門誌元編集長)。 在モスクワ日露関係ライターを経て現在は主にアサド&プーチン戦争犯罪ライター。NY・カイロを拠点に各地の戦争取材も。
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