ベトナム、米国との外交関係「最上位」に 中国と同格
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM0928N0Z00C23A9000000/
『【ハノイ=新田祐司】ベトナムは米国との外交関係を最上位に引き上げる。ベトナム共産党の最高指導者チョン書記長(79)が10日、バイデン米大統領(80)との会談で合意した。ベトナムは米国との外交関係を中国と同格とみなすことになる。南シナ海問題などを巡り、米国の影響力拡大を嫌う中国の反発を招く可能性がある。
バイデン氏は会談後に首都ハノイでチョン氏と共同記者会見に臨んだ。バイデン氏は「この訪問は両国関…
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『バイデン氏は「この訪問は両国関係だけでなく、インド太平洋と世界にとっても歴史的な意義がある」と強調した。チョン氏も「ベトナムと米国はお互いの違いを乗り越え、過去ではなく未来に目を向ける」と話した。
ベトナムは米国との外交関係を「包括的戦略的パートナーシップ」へ格上げする。原則で3段階あるベトナムの外交関係の最上位になる。これまで、米国は最下位の「包括的」だった。昇格は1段階ずつが通例で、2段階の格上げは異例だ。
ベトナムが最上位の外交関係を持つ国は中国、ロシア、インド、韓国の4カ国だけだ。同じ社会主義で伝統的につながりの深い中国とは2008年に「包括的戦略的」な関係を結んでいた。
インド太平洋で中国包囲網を築くにあたり、米国はベトナムとの協調を重視してきた。22年にはハリス副大統領がハノイを訪れ、今年3月末には両首脳が電話協議に臨んだ。その後も国務長官や財務長官らを派遣。大統領の訪越はその総仕上げといえる。
同盟国・友好国でサプライチェーン(供給網)を再編する「フレンドショアリング」や中国の圧力が強まる南シナ海問題の対応にはベトナムとの協調は欠かせない。ベトナムによる海上警備能力の向上を支援するため、米国製船舶や武器の輸出が進む可能性もある。
チョン氏によれば、両者はお互いの政治制度や独立、主権を尊重することに同意したという。ベトナムの政治体制は共産党による一党独裁だ。民主主義や人権尊重を掲げる米国の価値観外交にそぐわず、体制維持を最優先とする共産党が米国を警戒する一因になっていた。チョン氏は「お互いの利益を尊重し、内政に干渉しないことが重要だ」と念押しした。
ニューサウスウェールズ大学キャンベラ校のカーライル・セイヤー名誉教授は「ベトナムが参加する米国主導の『インド太平洋経済枠組み(IPEF)』は進捗が遅い。経済成長のためには、米国との二国間関係を強くする必要があった」と指摘する。今回の関係強化で「最新技術にアクセスできる手段を手に入れた」と話す。
バイデン氏は11日にもチン首相やトゥオン国家主席との会談を予定する。半導体の生産や人材育成のほか、中国依存度の高さが課題になっているレアアース(希土類)について意見を交わすとみられる。
ベトナムの書記長と米国大統領の会談は4年ぶりだ。現役大統領の訪越は、ベトナム戦争後では4人目となる。
バイデン氏はインドのニューデリーで開いた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)から駆けつけた。9月5?7日の東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議は欠席したが、ベトナムには立ち寄った。米国がベトナムを重視する姿勢がうかがえる。
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渡部恒雄
笹川平和財団 上席研究員
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分析・考察 バイデン大統領は、民主主義サミットという枠組みを開催していて、ベトナムのような社会主義国を招待せずに、これらの国家を中国側に追いやるのではということで、インド太平洋戦略としては建設的ではないという批判を受けてきました。
一方で、米国は、今回のようなベトナム重視という現実的な姿勢も継続しています。
今回、中国が南シナ海沿岸国を刺激するような地図を発表し、国内だけを見ているとしか思えない「内向き外交」姿勢を示していることにも助けられ、ベトナムとの間で外交成果を上げたと思います。このような外交の積み重ねで、長期的に中国を周辺国の主権や国際ルールに配慮するような方向に誘導できればいいと思います。
2023年9月11日 9:10いいね
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高橋徹
日本経済新聞社 編集委員・論説委員
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ひとこと解説 外交関係は時間をかけてステップ・バイ・ステップで緊密化していくのが通例で、今回の米越のように一気に2段階も格上げするのはあまり聞いたことがありません。
かつてベトナム戦争で相まみえた敵国同士、しかも民主主義と共産党一党独裁という「水と油」の国同士であることを考えれば、なおさら驚きです。
中国とロシアとの戦略的競争を考えると、米国にとってそれだけベトナムが価値を持っているということなのでしょう。
バイデン氏は今回、インドネシアでのASEAN首脳会議に欠席し、インドでのG20からの帰途にベトナムにだけ立ち寄りました。この判断が、今後の米国の地域戦略にどう影響していくのかも注目です。
2023年9月11日 7:28 』