南シナ海問題、残る不信感 中国念頭「言葉より行動を」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM0644M0W3A900C2000000/


『【ジャカルタ=志賀優一、新田裕一】7日に閉幕した東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議では、一部加盟国と中国が領有権を巡って対立する南シナ海問題に糸口は見えなかった。
偶発的な衝突を回避するための「行動規範(COC)」がまとまる兆しもなく、一方的に領有権を主張する中国への不信感が残った。
「南シナ海の平和と安定を確保する究極の手段は言葉ではなく、行動だと言うことは強調してもしきれない」。フィ…
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『「南シナ海の平和と安定を確保する究極の手段は言葉ではなく、行動だと言うことは強調してもしきれない」。フィリピンのマルコス大統領は5日、ASEAN首脳会議でこう述べ、膠着状態が続く南シナ海問題にいらだちを見せた。
一部の加盟国と中国は西沙(英語名パラセル)諸島や南沙(同スプラトリー)諸島などの領有権を巡って対立する。8月下旬にも中国が南シナ海の大半を中国領とした地図を公表し、マレーシアやベトナム、フィリピンなどが一斉に反発したばかりだ。
一部のASEAN加盟国と中国は南シナ海問題で対立する(6日、インドネシア・ジャカルタ)=ロイター
マレーシアのアンワル首相は5日、中国の新地図について「南シナ海問題は対話と協議を通じた平和的かつ合理的方法で管理されなければならない」と批判した。
中国は軍事拠点化を軸に、領有権を既成事実化しようとしてきた。AP通信は8月、西沙諸島のトリトン島で中国が新たな滑走路を建設していると報じた。南沙諸島ではフィリピン船が中国船からレーザー照射や放水銃を受けるなどの妨害行為が続く。
国連海洋法条約に基づくオランダ・ハーグの仲裁裁判所は2016年、中国が南シナ海で主張する領有権を否定する判決を下した。それでも中国は海洋進出を継続しており「ほとんどの首脳が国際法への信頼と敬意を維持することが重要だと述べた」(インドネシアのルトノ外相)という。
対立が先鋭化すれば、偶発的な衝突が発生するリスクも高まる。「新たな紛争や緊張、戦争を作り出さないために同じ責任を負っている」(インドネシアのジョコ大統領)。ASEANと中国は偶発的な衝突を避けるためのルール(COC)作りに13年に着手したが、10年たっても合意に至っていないのが現状だ。
18年には中国の李克強(リー・クォーチャン)首相(当時)が交渉を「3年以内に完了させたい」と言及したこともあった。マルコス氏は6日、李強(リー・チャン)首相が出席した中国とASEANの首脳会議で「国際法に準拠した効果的で実質的なCOCの早期妥結がASEANにも中国にも目標であり続ける」とクギを刺した。
バイデン米大統領はASEAN関連首脳会議を欠席した。米中対立にASEANが巻き込まれることを警戒する向きもある。シンガポールのリー・シェンロン首相は6日、「緊張はこの地域の火種を容易に引き起こし、数十年にわたり享受してきた平和や繁栄、安定を弱体化させかねない」と語った。
ジョコ氏は同日の中国・ASEAN首脳会議の冒頭で「信頼と具体的な協力があってこそ、地域の安定と平和に向けた積極的な力となる」と述べた。信頼を醸成するために重要なのは「国際法を尊重することだ」と強調した。 』