トルコ大統領、プーチン氏と会談 穀物合意の溝埋まらず
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR0336Y0T00C23A9000000/
『【イスタンブール=木寺もも子】トルコのエルドアン大統領は4日、ロシア南部ソチを訪れてプーチン大統領と会談した。ロシアが7月に停止した、ウクライナ産穀物を黒海経由で輸出するための合意枠組みへの復帰を直接働きかけたが溝は埋まらなかった。関係国間で交渉を続ける。
プーチン氏は会談終了後の記者会見で「西側諸国がロシア産農産物の輸出を妨害している」と対ロシア制裁を続ける米欧を改めて批判した。農産物を運ぶ輸…
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『農産物を運ぶ輸送船への保険を禁じる措置などが解除されれば「直ちに穀物合意へ復帰する」と従来の主張を繰り返した。
「穀物合意の打ち切りが世界の食料市場に影響を及ぼしていないことは明らかだ。穀物価格は下がり続けている」と述べ、ウクライナ産穀物の輸出を再開する必要性に疑問を示した。
エルドアン氏は「国連と相談のうえ、重要な進歩がある新たな提案を用意した」と説明した。具体的な内容は明らかにしていない。ウクライナから黒海経由で安全に輸出する「穀物回廊」の再開に向けた交渉の妥結に意欲を示した。
「ウクライナ産穀物の7割が途上国ではなく欧州などの高所得国に輸出された」とロシアが問題視していることを念頭に「ウクライナは(交渉を進展させるために)軟化する必要がある」と指摘した。
両首脳はカタールの金融支援を受けて100万トンのロシア産穀物をトルコで加工し、最も必要としているアフリカの国々に供給することで合意した。ロシアが8月末、「黒海穀物合意に代わる実務的選択肢」として提案していた。
首脳会談は2022年10月以来。トルコは8月にプーチン氏を招こうとしたが実現せず、エルドアン氏がソチを訪問することになった。
ロシアは7月、ウクライナ産の穀物を運ぶ貨物船の安全な航行を保証する、ウクライナと国連、トルコとの合意を停止した。黒海に面したウクライナの港はロシアが封鎖しており、合意なしに貨物船が航行するのは難しい。
プーチン氏は7月、ロシアが穀物合意に復帰する条件として①制裁対象になっているロシア農業銀行の国際的な決済システムへの再接続②農業用機械などのロシアへの供給再開③ロシアの食料品などを運ぶ輸送船への保険を禁じる措置の解除――などを挙げた。
もっとも、自国の農産物輸出が妨げられているとするロシアの主張は実態と異なる。米農務省によると、22?23年度のロシアの小麦輸出は前年度比で4割増えたとみられる。ロシアは合意停止で欧米やウクライナを揺さぶる狙いがあるとみられる。
欧州連合(EU)や国連は農業銀行に子会社を設立させて決済システムに接続するなどの案を示したが、ロシアは受けいれていない。
ウクライナは、EU諸国などと共にドナウ川など代替ルートの拡大を進めている。ルーマニアは8月、同国経由の輸送量を現在の月200万トンから400万トンに拡大する計画を発表した。
ただ9月も連日、モルドバ、ルーマニアとの国境に近いドナウ川の拠点港がロシアのドローン(無人機)で空爆されるなど、安全の確保が課題になっている。
東欧を通じた陸路輸送も、貨物船より高コストになる問題がある。ウクライナ農業政策食料省によると、ロシアが合意を停止し、黒海ルートが封じられた7月の穀物等輸出量は338万トンと、6月から4割減、侵攻後ピークの3月からは半分以下に減った。
トルコは北大西洋条約機構(NATO)加盟国ながらウクライナ、ロシア双方と一定の友好関係を維持する。7月にスウェーデンのNATO加盟を容認するなど、足元ではやや欧米寄りの姿勢に傾いている。今回の会談にはロシアとの関係を再確認する狙いもある。
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