プリゴジン氏死亡か ロシアで自家用ジェット機墜落

プリゴジン氏死亡か ロシアで自家用ジェット機墜落
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR23D160T20C23A8000000/

『【ロンドン=江渕智弘】英BBCなどは23日、ロシアの民間軍事会社ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジン氏が飛行機事故で死亡した可能性があると報じた。モスクワ北部でプライベートジェットが墜落し、搭乗者リストに同氏の名前が含まれていた。ロシア非常事態省が墜落を認めた。

乗客10人が搭乗した自家用ジェット機がモスクワ近郊で墜落した=Ostorozhno Novosti・ロイター

ロシアメディアによると、乗客10人が搭乗した自家用ジェット機がモスクワ近郊のトベリ地方にモスクワ時間の午後6時40分ごろに墜落した。ジェット機はモスクワからロシア北部のサンクトペテルブルクに向けて飛行していた。

乗員3人を含む搭乗者全員が死亡したという。墜落現場で8人の遺体が発見された。自家用ジェット機は爆破されたとの見方が出ている。

モスクワ北部の墜落現場では8人の遺体が確認された=Investigative Committee of Russia・ロイター

ロシアの航空当局はプリゴジン氏らが搭乗していたと公表した。救助隊が捜索活動に取り組んでいるという。

ワグネルに近い通信アプリチャンネルはプリゴジン氏が亡くなったと23日夜に投稿した。
米国家安全保障会議(NSC)のワトソン報道官は23日の声明で「報道を認識している。(事実だと)確認されても誰も驚かないはずだ」と指摘した。

自家用ジェット機は2020年にワグネルのグループ会社が購入した機体とみられ、モスクワとサンクトペテルブルクの間を定期的に運航していた。

ワグネルは6月23〜24日にロシアで武装蜂起した。ワグネルの部隊は首都モスクワまで一時200キロメートルほどの地点に迫ったが、ベラルーシのルカシェンコ大統領の仲介で進軍をやめた。ワグネルの戦闘員の多くは受け入れ先のベラルーシに移動していた。

プリゴジン氏は反乱鎮圧後、ロシア国外を拠点に活動しているとみられていた。同氏は8月21日、ワグネルに近いとされる通信アプリのチャンネルに動画メッセージを投稿し、ワグネルの主要活動拠点の一つであるアフリカで活動していることを明かしていた。

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滝田洋一
日本経済新聞社 特任編集委員
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ひとこと解説

①誰も驚かないはずだ――。米国側の反応ですが、プリゴジン氏は知りすぎた男。プーチン氏には最も都合の悪い存在。「Mission completed(任務完了)」とばかりに爆殺されたなら、背筋の凍る話です。
②折しもロシア軍のスロビキン上級大将が宇宙軍総司令官から解任、とロシア国営メディアが23日に伝えました。スロビキン氏は6月にワグネルが起こした軍事反乱の協力者とされ、当局による拘束も取り沙汰されています。
③要人が突然姿を消すといえば、中国の秦剛外相の解任と消息不明劇。識者がBRICSをはやすのも結構ですが、プーチン氏のロシアと習近平氏の中国。強権体制の実像を見て見ぬフリするのは禁物でしょう。

2023年8月24日 6:59 (2023年8月24日 8:06更新)

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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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ひとこと解説

すでに映像も流れているが、プリゴジン氏やワグネル幹部ウトキン氏が搭乗しているビジネスジェットは、地対空ミサイルで撃墜された。プリゴジン氏の死亡を確認との報も流れている。プーチン大統領による一種の「公開処刑」と言えそう。裏切者は消すという脅しをかけることにより、24年3月の大統領選に向けて、指導層の内部で権力を固め直す意図もありそうだ。

2023年8月24日 7:40 (2023年8月24日 7:41更新)

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田中道昭
立教大学ビジネススクール 教授
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ひとこと解説

WSJでは、「これが故意に撃墜されたとするとプリゴジン氏の公開処刑だろう」と述べています。またNATOの制裁文書等では、プリゴジン氏はワグネルのスポンサーで、首謀者で最高司令官はアトキン氏であるとされてきましたが、同氏も墜落機に同乗していたと報じています。アフリカ等海外でのワグネルの利権や資金の流れが複雑であることから、プーチン氏はプリゴジン氏をすぐには処罰しないだろうと米国シンクタンク等は見てきましたが、海外利権の捕捉が完了したタイミングだったのかもしれません。ワグネル反乱を事前把握していたとされるスロビキン氏も同時期に解任されたなか、ロシアは新たなフェーズに入っていることを感じます。

2023年8月24日 7:23 (2023年8月24日 7:26更新)

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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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分析・考察

ロシアらしい「事故」である。反乱に失敗したプリゴジン氏はなぜロシア国内で活動するのか。KGB出身のプーチンは同氏を野放しするはずがない。しかも、プリゴジン氏を一罰百戒しないと、プーチン自身が危なくなる。これはロシアという国である

2023年8月24日 7:03 』