現代の魔女狩り。J.K.ローリング氏

現代の魔女狩り。J.K.ローリング氏
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/32212197.html

『魔女狩りというと中世の事だと思われています。魔女と言っても、実際に行われていた迫害は、女性に限った話ではなく、男性も含まれていました。悪魔と契約し、世の中に悪害を為す者を全て「魔女」と呼んだわけです。魔女認定するマニュアルが整備され、審問官という容疑者を追求・認定する役職が出来てから、社会的な浄化運動として、大々的に行われました。多くは密告で逮捕され、自白するまで拷問で責め、それをもって死刑にするという何とも理不尽な制度です。被告の財産は没収する事ができたので、横領する目的でも行われ、社会秩序は改善されるどころか、大きく乱れました。

背景には、疫病に対する恐怖があります。細菌やウィルスという存在や、感染という概念が無かった為、まさに大流行する疫病は、悪魔の仕業であり、何かしら原因を押し付ける対象が必要だったのです。また、家畜の病死、農作物の天候によらない不作も、常に生活を脅かす脅威でした。人が抗しきれない現象に対して、憎しむ対象をでっちあげて、罪を全乗せする事で、社会の均衡を保つというのは、歴史上で良く起こります。民族差別も、ようは、これですからね。そして、これは「多様性」の名の元に、現代でも大々的に行われています。

ハリー・ポッターの作者で知られるJ.K.ローリング氏ですが、彼女は過去の自身の体験から、男女共同トイレや更衣室の社会による強制に対して異議を唱えていて、それによって女性の性被害が増える事に対して抗議的な発言を自身のSNSのアカウントで行っています。欧米のトランスジェンダー啓蒙というのは、そうじゃない人が実際に被害を受ける程度まで進行しています。少年による少女に対する性暴行は増えていますし、その場所というのが、社会が要求するままに「多様性」を認める為に作られた、こういいう性差を禁ずる施設です。

一つの考え方として、当たり前の事を言ってるだけなのですが、これがトランスジェンダー差別だと言われて、物凄いバッシングを受けています。既に社会的に性差を徹底的に排除する方向が定まっているので、それに抗する考え方は、悪になってしまったのですね。「心は女性」と認定されれば、ヒゲ面のおっさんが、女性用トイレも使えるし、女子更衣室にも入れるという社会の多くの人の精神的な苦痛と引き換えに、トランスジェンダーが優遇される事が「正しい」とされています。

以前の記事でも書きましたが、「多様性」と言いつつ、実は「正しい」認定された考え方以外は、徹底的に排除し攻撃するのが今のポリティカル・コレトクネスです。発言すら許さず、J.K.ローリング氏が攻撃対象になるのは、社会的な知名度があるからです。社会に影響力のある人物は、トランスジェンダー支持で無ければならないというのは、思想統制的な恐怖さえ感じます。

ちょっと前の難民・移民に寛容でない人は、差別主義者だみたいな論調と同じです。全ての人が同じ方向を向く事を強制するわけですね。実際に難民の大量受け入れをやってみたら、社会が壊れ始めたので、別のステージとしてトランスジェンダーに目を付けたと言えます。いや、目的を達成したので、別のテーマを見つけたと言った方が良いかもですね。とにかく、「革命」をやりたい人にとって、既存の社会を壊す事は、何でも正義です。

共産主義という、国政の根幹を為す制度で、成果を出す事ができなかった「革命」で問題解決をしようと頭が固定されている方々は、「多様性」と「環境保護」という新しいテーマを見つけました。運動の動機に関する正しさが保障されていて、それに対して批判はしずらい事を最大限に活用して、実用面で社会規範や社会に対して要求を受け入れさせるという運動に転嫁したわけです。

ただし、表向きの態度は別にして、世界中で人気な「ハリー・ポッター」というコンテンツでは、金儲けがしたいわけです。なので、博物館で開催されるハリーポッターを題材にした展示会から、作者のJ.K.ローリング氏の名前を消すという、あからさまに、これこそ差別と言わざるを得ない事が起きています。集客はしたいけど、作者は「差別主義者認定」されているので、名前は出しませんという事ですね。心から、そう考えているなら、そもそも企画を止めろという事ですが、そうじゃないんですね。

私は、今の攻撃的なトランスジェンダー擁護活動の中で、本当に賛同している方は、思いの外少ないんじゃないかと思います。ようは、相乗りすると、成功者を好き放題に言葉でリンチできる。断罪する事で、何となく自分の立場が上がったような気がする。今までに存在しなかった施設を建設する事で、金になる。組織を立ち上げれば、寄付金が集まり金になる。選挙で争点にすれば、革新的な政治家っぽい演出ができて、得票を稼げるあたりが動機で支持している人が多いと思われます。

以前、実際に世の中を大きく変えたキング牧師の無暴力黒人差別抗議運動について解説しましたが、彼は思想的な信念から無暴力を唱えたわけでもありません。絶対的な人口比率で、白人は黒人を大きく上回っていました。なので、黒人差別を社会から無くすには、白人を敵に回すのではなく、賛同者を増やさないと実現が不可能なのですね。理性的に考えれば、自明の理です。なので、抗議はするけど、白人社会を攻撃しなかったわけです。理解してもらう事に集中したわけです。そして、白人の中でも、黒人差別は間違っていると考える支持者が増えたので、今があるわけです。まあ、今でも完全には払拭できていませんが。

つまり、トランスジェンダーが、革命運動として「イケテル」ので、担ぐ人間が多いだけだと思っています。こういう薄っぺらい、本心の伴わない運動というのは、一種のカルトなので、いずれ社会規範がボロボロになった頃に、それこそ独裁者の革命によって、巨大な暴力で払拭され、ガチガチの統制国家が生まれる揺りかごになると思います。そこそこ西洋化が進み、女性も大学で学問を学び、ビジャブの着用も強制されなかったパーレビー国王時代のイランは、結局イスラム社会の反動で革命に倒れ、宗教が国の頂点に立つイスラム原理主義国家に逆戻りしました。

世の中が良くなったと大方の賛同を得ない、理屈に基づく革命というのは、実際に暮らしを圧迫する為、いずれは非合法な暴力、つまり、推進者が大好きな革命によって、独裁者に倒されるのです。これは、皮肉ですね。それは、何も西洋的な価値観ではかる善悪には依らないという事ですね。』