精密誘導兵器は、非核弾頭では、都市に対して、小さな損害しか与えられない。

ミサイルであれ、ドローンであれ、精密誘導兵器は、非核弾頭では、都市に対して、小さな損害しか与えられない。
https://st2019.site/?p=21377

『Edward Luttwa 記者による2023-8-10記事「Why Ukraine’s offensive has stalled  There is only one route forward」。

     ミサイルであれ、ドローンであれ、精密誘導兵器は、非核弾頭では、都市に対して、小さな損害しか与えられない。
 敢て言う。小さな損害と。

 比較せよ。WWII中の英国の体験と。

 1942-3から、英空軍のボマー・コマンドは、「ランカスター」四発重爆を飛ばしている。この飛行機は爆弾を6.4トンも搭載できた。最初のランカスターによる夜間都市空襲は、延べ400機。つまり2560トンもの爆弾を落としたことになる。

 この重量は、2022-2-24以降、ロシアとウクライナが発射したすべての巡航ミサイルの総計よりも、大きいのである。

 こうした四発重爆による都市空襲(米軍は昼間爆撃、英軍は夜間爆撃)を猛烈に続けた結果、1945までに、ドイツの主要都市は焼け野原になるか、瓦礫山と化す大破壊を蒙った。

 それと同じことは、今のキエフには起きていない。つまりは対都市攻撃力の桁が違うのである。今時のミサイルによる対都市空襲なんてものは、ちゃんちゃらおかしいレベルの損壊しか敵にあたえられないもので、それでぎゃあぎゃあさわぐ者は、過去の都市空襲史を学び直した方がいい。

 今、ロシアはほんのわずかの「戦略爆撃機」しか保有しておらず、それも、前へ出せばSAMに墜とされるから、敵国上空へは飛ばせない。ウクライナ軍にはそもそも戦略爆撃機はゼロである。

 WWII中に英ボマーコマンドが1回の夜間空襲でドイツの都市に落としてやった焼夷弾の量の方が、いま、全世界に存在する攻撃型無人機の総装薬量よりも、大きいのだ。比較にもならないのである。

 なぜ今、機動戦は不可能か。機動戦の大前提は、奇襲にある。奇襲の前提は、敵のISRにこっちの作戦前の準備移動を偵知されないことにある。それは今日、可能か? たった1両の戦車の動きでさえ、偵察衛星に見られてしまうだろう。合成開口レーダー衛星なら、密雲も暗夜も関係ないのだ。

 1944-6-6のノルマンディ上陸を成功させるためには、連合軍はカレーに上陸すると敵をして誤断させる必要があった。それはうまくいった(パットンの偽司令部が囮に対岸に置かれ、ダブルエージェントが偽情報をしきりにドイツ側へ流した)。

 ノルマンディ作戦はドイツにとっては奇襲だったのである。だから成功した。

 今、このような大掛かりな奇襲(欺騙)は可能か? まず無理なのだ。

 ※ルトワックのとっつぁんは、レオ2はイスラエル製の「トロフィー」のようなアクティヴ防禦装備がないからダメなんだと説明している。つくづく人間の理性は有限だ。ある方面ではシャープなのに、同時に別な方面では、至ってシンプルな勘違いを維持し続ける。レオ2にトロフィーをつけてやったって、何も変わりゃせんよ。』