[FT]エルニーニョの脅威再び、大災害に身構える南米

[FT]エルニーニョの脅威再び、大災害に身構える南米
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『南米諸国がエルニーニョ現象の影響に身構えている。洪水や干ばつが激しくなっており、この地域の経済成長に3000億ドル(約42兆9000億円)の打撃を与えると予想されている。

世界が7月初めに「史上最も暑い1週間」を経験するなか、専門家はエルニーニョの再来を宣言した。世界気象機関(WMO)は「生命と暮らしを守るため」行動を起こすよう勧告した。

エルニーニョの影響は地域によってまちまちだ。ペルーとエク…

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『ペルーとエクアドルの太平洋沿岸には大雨、コロンビアとチリの一部には干ばつをもたらす。

インフレ再来、金利上昇の懸念も

コロンビアの金融サービス会社は、ペルーとエクアドルの成長率がそれぞれ1.7ポイントと1.6ポイント、コロンビアが0.6ポイント押し下げられると予想する。食料とエネルギー不足が再びインフレを引き起こし、新たな金利上昇に拍車をかける可能性があるとの見方も強い。

エルニーニョは、ペルーとエクアドル沖の栄養分を豊富に含む寒流フンボルト海流の海水温を上昇させ、世界有数の漁場から魚が逃げ出すことにつながる。ペルーのコンサルティング会社によると、2023年のペルーの漁業生産高は19.3%減少するとみられる。

ペルー政府はエルニーニョ対応のため、11億ドル相当の緊急対策を発表した。衛生当局は、洪水によって、既に悪化しているデング熱の感染がさらに拡大すると懸念する。

1997〜98年のエルニーニョで300人の命が奪われ30億ドルの経済的損失を被ったエクアドルも、農業の混乱に直面している。バナナ生産地約5万ヘクタールが危機にひんしている。政府は被害軽減のため、2億6600万ドルを割り当てた。

コロンビアでは光熱費上昇の可能性

コロンビアでは、干ばつにより、水力発電に頼る同国のエネルギー網の脆弱性が露呈すると予想される。貯水池の水量が減少し、エルニーニョの程度によっては光熱費が50〜100%上昇する可能性があるとしている。

干ばつに苦しんでいたチリでは、最近見舞われた豪雨はエルニーニョと気候変動が組み合わさった結果だと考えられている。当局は、中部2地域で農業緊急事態を宣言し、家畜の給餌支援などの資金を確保した。

ブラジルのアマゾン川流域では、森林火災の発生が懸念される=ロイター

南米最大の国であるブラジルでは、エルニーニョの影響で南部では雨が多くなる一方、北部では降雨量が少なくなり、アマゾンの熱帯雨林で火災発生が危惧される。英オックスフォード大学などで研究を行うエリカ・ベレンゲル氏は、「乾期に気温がすでに2.5度上昇し、降水量が30%減少している地域がある。それにエルニーニョの発生が重なった」と話す。

米ダートマス大学のジャスティン・マンキン氏らは、「異常気象と気候変動のコスト」は、おそらく各国の推定を上回ると述べた。今回のエルニーニョは29年までに全世界で3兆5000億ドルの損失をもたらし、そのうち南米が約3000億ドルを占めると見積もる。

By Joe Daniels, Ciara Nugent, Bryan Harris and Chris Campbell

(2023年7月31日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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