欧州委員長「海上安保で協力強化」 フィリピンで表明

欧州委員長「海上安保で協力強化」 フィリピンで表明
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『【マニラ=志賀優一】フィリピンを訪問した欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は31日、同国のマルコス大統領と会談した。ロシアによるウクライナ侵攻以降、世界各地で国際秩序が揺らぎかねない状況にあると説明。南シナ海で中国と領有権問題を抱えるフィリピンと「海上安全保障分野で協力を強化する準備ができている」と表明した。
欧州委員長がフィリピンを訪問するのは約60年の外交関係で初めて。フォンデア…

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『欧州委員長がフィリピンを訪問するのは約60年の外交関係で初めて。フォンデアライエン氏はマルコス氏と首都マニラのマラカニアン宮殿(大統領府)で会談したあと、共同記者発表を実施した。

ウクライナ侵攻を発端に穀物やエネルギー価格が高騰したことを引き合いに「欧州の安全保障とインド太平洋地域の安全保障は分断できない。相互につながった世界でルールに基づく秩序への挑戦は全ての人々に影響を与える」と語った。

EUとフィリピンは情報共有やフィリピン沿岸警備隊の能力向上などを通じて連携を深めるという。フォンデアライエン氏は「EUは自由で開かれたインド太平洋を支持する。インド太平洋が脅威から解放されることは我々の安定、平和、人々の繁栄のカギとなるからだ」と述べた。中国の海洋進出が念頭にあるとみられる。

南シナ海問題についてフィリピンの立場を支持した。国連海洋法条約に基づくオランダ・ハーグの仲裁裁判所は2016年7月、中国の南シナ海における領有権の主張を否定する判決を下した。ただその後も中国の海洋進出は継続し、フィリピン船が中国側から妨害を受ける事案が相次ぐ。

フォンデアライエン氏は中国の国名は直接明言しなかったが「EUは、16年の南シナ海に関する判決は法的拘束力があり、当事者間の紛争を平和的に解決する基礎だと強調する」との立場を示した。フィリピンは軍事同盟国の米国や日本に加えて、欧州からも支持を取り付けた格好だ。

経済協力では、フィリピンとEUの間で自由貿易協定(FTA)締結に向けて取り組むことを表明した。マルコス氏は「22年にブリュッセルで始まったフォンデアライエン氏と私の継続的な交流は両国・地域の関係を引き上げたい思いの表れだ」と語った。』