1度も使用されなかったウクライナ・レンドリース法、ウクライナ側は延長を要求

1度も使用されなかったウクライナ・レンドリース法、ウクライナ側は延長を要求
https://grandfleet.info/european-region/ukrainian-lend-lease-law-never-used-ukrainian-requests-extension/

『2023.07.29

ウクライナのマルカロワ駐米大使は「(もしウクライナ支援の資金確保に遅延や困難が生じた場合)武器・弾薬のリースやレンタルという選択肢をもつのは我々にとって重要で、ウクライナ・レンドリース法を1年延長するため取り組んでいる」と明かした。

参考:Ambassador: Ukraine works to extend US Lend-Lease for another year
使用を前提にしたウクライナ・レンドリース法の期間延長に下院が同意するかは微妙

バイデン政権は2021年8月~2023年7月までの22ヶ月間に「大統領権限(PDA)」によるウクライナ支援を43回(430億ドル以上)も発表、このPDA経由の支援は「米軍備蓄から武器・弾薬を取り出してウクライナに提供する」というもので、企業に発注してウクライナに武器・弾薬を提供する「ウクライナ安全保障支援イニシアチブ(USAI)」とは「提供までにかかる期間」が決定的に異なり、米国は短期的な支援をPDA経由で、中・長期的な支援をUSAI経由で行っている。

出典:Public Domain レンドリース法に署名するルーズベルト大統領

一方で第二次大戦時のレンドリース法を彷彿とさせる「ウクライナ・レンドリース法」は1度も使用されておらず、米ディフェンスメディアは「Lend-Leaseの名に刻まれた精神を受け継ぐための法案だ」と指摘し、まもなく同法案は失効(9月末)する予定だが、ウクライナのマルカロワ駐米大使は「(もしウクライナ支援の資金確保に遅延や困難が生じた場合)武器・弾薬のリースやレンタルという選択肢をもつのは我々にとって重要で、ウクライナ・レンドリース法を1年延長するため取り組んでいる」と明かした。

バイデン政権が議会承認をパスして次々とウクライナ支援を実行できるのは下院が承認した白紙の小切手=累計1,130億ドルの資金がベースで、この資金の3/5=670億ドルは軍事支援に、残りの2/5は政府援助、経済支援、難民支援などに割り当てられており、国防総省は「(政府が容認したウクライナへの軍事支援の資金は)9月末までに底をつく」と予想している。

出典:U.S. Air Force photo by Mauricio Campino

つまり下院が新たな資金供給を承認しなければ「バイデン政権のウクライナ支援は止まってしまう」という意味で、共和党主導の下院は「もう白紙の小切手は認めない」と主張しており、下院のケビン・マッカーシー議長は「中国の脅威に対処するため追加資金を供給すべきだ」と主張、これに賛同した下院軍事委員会のマイク・ロジャース委員長も「この夏の反撃がどの程度有効か、9月末までに停戦などの動きが出てくるかで支援を見直すことになるだろう」と述べ、さらに見直されたウクライナ支援の規模についても「現在よりも遥かに小規模になる」と指摘した。

国防総省も今後のウクライナ支援は予算計上を行わず「必要に応じて議会の承認を得る形になる」と説明しているため、ウクライナ側は「ウクライナ・レンドリース法」を使用する前提で期間を1年延長したと考えているのだ。

出典:Nancy Pelosi

ただ下院を支配する共和党が同法案の延長に同意するかは微妙なところで、象徴的な意味ではなく「使用を前提にした延長」なら尚更だろう。

本当に9月末で「白紙の小切手」の原資が尽きるのか、10月以降のウクライナ支援はどうなるのかは明確に見えておらず、今月末から議会は夏休みに入るため本件の本格的な議論は9月からになる可能性が高い。

関連記事:ウクライナ・レンドリース法案は旧レンドリース法案ほど劇的ではない
関連記事:バイデン政権がレンドリース法でウクライナ支援を行わない理由
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※アイキャッチ画像の出典:Angela Perez ウクライナ・レンドリース法案に署名するバイデン大統領
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投稿者: 航空万能論GF管理人 欧州関連 コメント: 26 』

『 幽霊
2023年 7月 29日

返信 引用 

ウクライナ支援で使ったお金は最終的にウクライナが払うの?
それとも支援国による自国負担?
3

    Whiskey Dick
    2023年 7月 29日
    返信 引用 

戦争前から西側及びロシアに乞食していたほどだから、ウクライナが返済することはほぼ不可能でしょう。ウクライナの完全勝利(国内からロシア軍を全て撤退させる、かつロシアに親欧米政権が樹立する)が現実的でなく、中途半端な状態で停戦すれば戦後復興を担う若者は国外に逃げ出し、経済成長はますます困難になる。兵器や金銭よりかけがえのない人命を削ってウクライナは戦っているのだから、「NATO諸国が兵器を供給し、ウクライナに戦争をアウトソーシングしている」ぐらいの連帯感を西側は持つべきだと思います。
27
        nachteule
        2023年 7月 30日
        返信 引用 

     その考え方をする必要があるのかは大いに議論すべきだと思う。現在未来含めてNATO加盟国が自分達のためにロシアの犠牲になってくれていると考えられるのかは悪魔の証明でしかないと思うし。
    1
    匿名
    2023年 7月 29日
    返信 引用 

基本的にはウクライナ国民が稼いで納めた税金からウクライナ政府が返済することになりますけど誰も返済能力有ると思ってない(はず)ですから債務再編(借金の棒引き)は必須とされてますね
17
        ABC
        2023年 7月 30日
        返信 引用 

    ソ連が崩壊した時の膨大な対外債務は各共和国の連帯債務だったけど、最終的にロシア連邦が全部負担して長い間掛けて完済した。 今回もロシアに押し付けるつもりなんだろうかね? まあロシアは絶対に支払わないだろうから、棒引きにするしかないだろうな。
    19
            あ
            2023年 7月 30日
            返信 引用 

        その言い方だと全額完済したみたいに聞こえて誤解しそう。
        ソ連/ロシアはゴネて結局20億ドルは返さずにたった7億ドルポッチだけ返済した。

        >1943年のテヘラン会談で、ジョセフ・スターリンはウィンストン・チャーチルとフランクリン・ルーズベルトに「アメリカの物資がなければ戦争には勝てないだろう」と語った。
        >レンドリースプログラムは1945年8月に停止された。第二次世界大戦の終わりまでに、ソ連は米国に27億ドルの債務を負っていた。長い交渉の間に、金額は7億2,200万ドルに減額された。

        初期にゴールドでちょびっと払って、あとは踏み倒したとよく言われてます。
        5
                あ
                2023年 7月 30日
                返信 引用 

            さらに戦争直後の急激なインフレがあるから実質1億ドルだったというはなしもある。
            ただソ連は大きく見せていたけど、実質フランス程度の国力しかなく大国ではあるけれど、超大国レベルの国でなかった。
            だから払えなかったと言えるかもしれない。
                    ポンポコ
                    2023年 7月 30日
                    返信 引用 

                読んでみると

                ABCさんが言っているのは、ソ連が崩壊した後に各共和国の連帯債務を結局ロシアが払ったという話で、

                あ さんが言っているのは、第二次大戦のソ連の債務をソ連が払わなかったという話ではないでしょうか。

                たぶん、関係ない話では?
                9
                        あ
                        2023年 7月 30日
                        返信 引用 

                    一応その債務に対米債務も含まれていると思われ、偉そうに肩代わりして完済したと言っているように読めてしまったので。。。
                    ロシア下院議長ボロジンのテレグラムでは、2006年に支払い完了だそうです。

                    >ロシア下院議長ボロジンは、レンドリースプログラムがウクライナを債務の落とし穴に導き、米国軍事産業の利益が数倍になると表明した。「レンドリース法は商品ローンであり、安くはない。米国が供給するすべての弾薬、装備、食料について、将来の多くの世代のウクライナ国民がそのツケを支払うことになる」と語った。
                    >ボロジンは、ソ連の米国に対する債務は、第二次世界大戦の終結から61年後に返済されたことを想起した。「私たちは長年にわたって債務を返済した。相互決済で米国にプラチナ、金、木材を供給し、米国の船を無料で修理した。そして大勝利からわずか61年後の2006年に支払いを完了した」とテレグラムに書いている。
                    3
                        匿名11号
                        2023年 7月 30日
                        返信 引用 

                    まあでも、「各共和国の連帯債務だったけど、最終的にロシア連邦が全部負担して長い間掛けて完済」については、同じような胡散臭いカラクリがありそうですけどね。
                    2 』