2024年に無人機工場が完成、ロシア軍に供給される無人機の規模は桁違い

2024年に無人機工場が完成、ロシア軍に供給される無人機の規模は桁違い
https://grandfleet.info/us-related/the-unmanned-aerial-vehicle-factory-will-be-completed-in-2024-and-the-scale-of-the-unmanned-aerial-vehicles-supplied-to-the-russian-army-is-incomparable/

『2023.07.26

米当局者は「ロシアはイランの協力を得て無人機工場を建設している。この工場が稼働すればイラン調達分とは『比べ物にならない数』の無人機をロシア軍に提供できるだろう」と明かし、このウクライナとロシアの戦争に大きな影響を与えると警告した。

参考:Iran helping Russia build drone stockpile that is expected to be ‘orders of magnitude larger’ than previous arsenal, US says

予想される課題を解決する最善策は「生産拠点への攻撃」で、次善策は「レーダーと連動した対空砲の供給」だ

ロシア軍が初めてインラ製無人機=Shahed-136をインフラ攻撃に使用したのは2022年9月22日で、極超音速ミサイル、弾道ミサイル、巡航ミサイルと組み合わせた空からの攻撃はどんどんエスカレートし、ゼレンスキー大統領は昨年10月「ロシアがイランに発注したShahed-136の数は2400機だ」とG7の首脳に訴え、西側製防空システムの提供を強く要請した。

出典:President of Ukraine

これまでにロシア軍が使用したShahed-136の数は1,564機(7月26日時点)なので、ゼレンスキー大統領の話が本当なら「ロシアはイランからShahed-136をあと1,000機受け取る予定」という意味だが、ロシア国内ではShahed-136を製造する工場を建設中だ。

米当局者はCNNに対して「ロシアはイランの協力を得て国内に無人機工場を建設している。この工場はアラブガ経済特別区内に建設中で2024年初頭までに完成する可能性が高く、イラン調達分とは『比べ物にならない数』の無人機をロシア軍に提供できるだろう」と明かし、この工場が稼働すればウクライナとロシアの戦争に大きな影響を与えると警告した。

出典:IMA Media 演習に登場したShahed-136

米当局者は建設中の工場で生産される無人機の詳細には触れなかったものの、ここで生産されるのは「オリジナルのShahed-136」か「改良を加えたShahed-136のカスタムバージョン」である可能性が高く、本当にイラン調達分を超える数を供給できるなら、ウクライナ軍に深刻な問題を突きつけるだろう。

ウクライナ空軍は発射された1,564機中1,420機を撃ち落としたと主張(迎撃率90%)しているため「設定された目標」への到達能力は低いと言えるが、ウクライナ軍も防空システムの数が足りないため都市上空での迎撃を余儀なくされている(防空システムを都市から離れた場所に配備できない問題)ため、Shahed-136を迎撃しても残骸が都市に落下して無視できない規模の被害が生じている。

出典:U.S. Marine Corps photo by Lance Cpl. Rachel K. Young スティンガー

そもそもShahed-136の誘導システムは簡素な慣性航法装置とGLONASSの組み合わせで「固定目標を精密攻撃できるほどの誘導精度はない」と言われており、ロシア軍がShahed-136で達成したい戦術的な目的は「人口密集地に向けて発射してウクライナ軍に迎撃を強制する=高価な地対空ミサイルの消耗(米空軍のブレマー大佐曰くミサイルやドローンを使用した世界初の空中消耗戦)」である可能性が高く、Shahed-136の取得コストは1機あたり1万ドル~5万ドルらしい。

Shahed-136をゲパルトで迎撃できればコスト面で消耗するのはロシアだが、1発12万ドルのスティンガー、1発43万ドルのIRIS-T、1発118万ドルのAIM-120、412万ドルもするPAC-3MSE弾でShahed-136を迎撃すれば消耗するのはウクライナと西側諸国で、有効射程が短いゲパルトで広範囲をカバーするのは現実的ではないため「撃ち落とした1,420機の何割か」は高価な地対空ミサイルで迎撃しているはずだ。

出典:Lockheed Martin

この問題が難しいのは「費用対効果を無視できる購入資金があっても地対空ミサイルによる持続可能な迎撃を維持することが困難」という点で、スティンガーの年間生産量は480発(米陸軍が2022年に発注した1,700発は生産ラインの拡張に時間がかかるため納品開始は2026年から)、PAC-3MSE弾の年間生産量は500発(2023年末まで+50発増産体制が整う予定)に過ぎず、戦時体制でもない米防衛産業界は持続可能な範囲でしか設備投資を行わないため、仮に無限の購入資金があってもShahed-136の物量に対抗するだけの地対空ミサイルをウクライナに供給してくのは難しいだろう。

つまり2024年以降も戦争が継続される場合「Shahed-136の数は大幅に増える可能性がある=防空システムにかかる負担が大幅に増える」という意味で、予想される課題を解決する最善策は「生産拠点への攻撃」で、次善策は「レーダーと連動した対空砲の供給」だが、Shahed-136の問題をコストの高い空から解決しようとすればロシアの思うつぼだ。

関連記事:米空軍大将、NATO加盟国の兵器備蓄量は危険なほど少なくなっている

※アイキャッチ画像の出典:dalکاخ/CC BY-SA 4.0
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投稿者: 航空万能論GF管理人 米国関連 コメント: 65  』


MAX
2023年 7月 26日

返信 引用 

NATO側に同規格の安価な長距離自爆ドローンが無いのホントきつい
砲兵不足もそうだが全ては空軍力に胡坐をかいた結果ですわ
15

    ふむ
    2023年 7月 26日
    返信 引用 

そもそも経済的に西側に安価な製品を供給する能力が…
製造業からサービス業中心に移行してしまったので、GDP上の経済力的優位は購買力メインなんですよね
自前で作るとどうしても高く付く
25
        Authentic
        2023年 7月 27日
        返信 引用 

    >製造業からサービス業中心に移行してしまったので

    経済学を齧っていたので分かるんですが(といっても経済史ですけど
    圧倒的主流派の新古典派経済学では経済を市場での交換価値でしか見ないので
    経済学の貿易理論では靴や服を作ってる国も半導体や工作機械を作ってる国も市場での交換価値の総和が等しければ等価と見做すんですよね

    常識で考えれば靴や服を作ってる国と半導体や工作機械あるいは戦闘機やミサイルを作ってる国のどちらが国際政治の中でパワーが大きいかは明らかなんですけど

    経済学の世界観は全ての国が自由に貿易して経済利益を極大化してる世界では紛争は起きないという(“合理的経済人“が住む)予定調和の世界観なのでそもそもパワーや権力という概念がないんです

    だから経済学者の言うとおりにしてると実物の財は生産しないが稼ぐだけなら一番効率がいいサービス業ばかりになってどんどん工業が空洞化していく
    18 』