トップのご機嫌取りで国家の政策が決まる独裁国家

トップのご機嫌取りで国家の政策が決まる独裁国家
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/32062095.html

『交戦中であっても、ウクライナがアフリカへ向けて輸出している農産物について、人道的な観点から、これを妨害しないというロシアとウクライナの取り決めがあるのですが、これからロシアが一方的に抜けると言い出しています。それと同時に、先日の記事にも書きましたが、18世紀に建造されて、ユネスコ遺産にも登録されている大聖堂が攻撃され、破壊されました。また、アフリカ向けの穀物が保管されている港湾の倉庫に向けてミサイル攻撃を仕掛けています。

これは、恐らく、プーチン氏が、クリミア大橋に2度目の攻撃を受けた事と、南アフリカで開催されるBRICSの会合に、南アフリカからオンラインミーティングで参加してくれと言われているのに、ゴリ押しで訪問とようとして、結局は阻止された事に対する腹いせと思われます。つまり、国際的に恥をかいたので、壁殴りをする引き篭もりよろしく、身近な対象にあたったという事です。クリミア大橋は、ロシアが占領地に無断で作った違法建築物ですし、南アフリカがプーチン氏の訪問を断ったのは、彼が戦争犯罪によって国際指名手配されている戦争犯罪者だからです。協定により、結んでいる国は、本人が入国したら逮捕する義務が発生します。だから、来るなと言っているのに、ジャイアン行為で大国意識を満足させたいプーチン氏は、無理やりにでも参加しようとしたのですね。こういうヤンキーみたいな事を、国家がするのが独裁国家です。

当然ながら、プーチン氏の機嫌はいたって悪いわけで、本人が命じたか、取り巻きが忖度したのか判りませんが、溜飲を下げる為に、ウクライナの文化遺産を破壊し、アフリカ向けの農産物をダメにして、嫌がらせをしたわけです。長期的には判りませんが、戦局とは、まったく関係の無い攻撃行為です。こういう事をやるので、ロシアとは何の約束をしても、守ると思ってはいけないのです。

これを、ロシアの国営テレビが、どう伝えているかと言うと、ウクライナの穀物をダメにした事で、世界のアチコチで飢饉が起きる。そこで、ロシアが穀物を放出し、世界を飢餓から救う。世界はロシアに感謝し、欧州に対して非難をするだろうと、「頭大丈夫か?」と言いたくなるような電波を飛ばしています。そもそも、食料危機が起きるなら、その原因を作ったのは、お前らだろうという事です。そして、面子を守る為に、取り決めを一方的に破棄したり、約束を守らないのもお前らだろうという事です。

このように、独裁者が居座ると、面子と政治の為に色々な事が動きます。無駄な攻撃、意味不明な行動、現実の捻じ曲げ、狂った解釈などです。それを、大真面目に取り上げないと、自分の身が危ういので、どこでも、「これが真実です」みたいな報道をします。何しろ、「ウクライナの家屋から見つかった、連中が悪魔崇拝をしている証拠」として、鉤十字のシャツを着たテディーベアを撮影して、放映したくらいですからね。作り話をするにしても、子供だましも良いところです。

そもそも、バフムト攻撃に1年を費やし、おそらく万人単位の死傷者を出したのも、それが侵攻作戦の政治的な象徴になったからですね。唯一、西側陣営からも、「素晴らしい指揮だ」と称賛された撤退戦を指揮し、一時期ウクライナ侵攻の総指揮官にも就任したスロビキン上級大将は、プリゴジン氏に近かったという理由で、今は拘束されていると言われています。つまり、有能な現場叩き上げの指揮官が冷や飯をくらって、指揮所にいた事はあっても、戦場に出た事の無い指揮官が総大将になる政治が戦争に持ち込まれるのが、ロシアという国です。権力闘争をしているなんて、本当に勝つ気があるのか疑わしくなります。

独裁者の趣味嗜好が嫌らしいレベルで出るのは、中国の習近平氏も同じです。先日、日本でG7首脳会議が行われましたが、それに対して金で参加国を集めた中国主催の中央アジア・サミット会議というのが開催されました。この会議の豪華絢爛さと、会議の為に規制された開催地の様子は、漫画みたいです。様式としては、中国が最大領土を獲得した王朝の様式を再現し、まるで皇帝にかしずく家臣のように、参加国の代表を従えて、どう考えても不必要にでかい円形テーブルで、隣同士で会話もできないくらい離れた席で習近平氏の一方的な演説を聞くという、まるで、「ジャイアン独唱会」のような内容です。まぁ、金の為に我慢したのでしょうが、参加した各国首相には、ご苦労さまでしたと言いたいです。

独裁国家は見栄えが全てなので、より豪華により大規模に何事も行いますが、中身がありません。独裁者でも、トルコの建国の父であるケマル氏のように、現場で自らを危険に晒して陣頭指揮を取り、軍人らしい合理性を第一にイスラム国家にありがちな旧弊を徹底的に排除し、商交の要衝としてのトルコという国家を、現実路線で作り上げた人物もいます。彼の欠点と言えば、酒豪であった事で、結果的に寿命を縮めています。命を燃やすように激務を遂行した結果とも言われています。何しろ、スルタンなどの特権階級が廃止された他、自国の文字をアラビア文字からアルファベットに変えて、「商業国家として必要な意識の近代化」を、剛腕でやりとげました。なので、今、イスラム原理主義者が復興してきているトルコと、建国当時のトルコは別の国と言ってよいくらいです。一応、トルコ軍の一部が、クーデターを起こして抵抗したのですが、エルドアン大統領の巧みな戦略で、抵抗勢力はほぼ壊滅しています。

まぁ、自国を傷つけて、自尊心を満足させる分には、生暖かい目で見ていればよいのですが、彼らは実際に他国の市民を傷つけ、世界に混乱を持ち込みます。そして、何も生み出さない。彼らにとっては、「偉大な業績」かも知れないですが、関係の無い国から見れば、ただの独善的な暴走です。ある一面において、独裁者は異常に優秀です。物事を断行するのに、躊躇が無いし、犠牲を気にしないからです。なので、国家改革を実際に達成してしまったりします。その時には、称賛を浴びたりします。問題は、その気性が、数十年という統治の間に、向かう方向を見失って、誇大妄想に取り憑かれた時です。』