NIDS 防衛研究所 National Institute for Defense Studies
- NIDSコメンタリー
第266号 2023年7月18日
イエメン情勢クオータリー(2023年4月〜6月)
南部分離主義勢力の憤懣と「南部国民憲章」の採択
理論研究部社会・経済研究室研究員 吉田 智聡
http://www.nids.mod.go.jp/publication/commentary/pdf/commentary266.pdf




エグゼクティブ•サマリー
・ フーシー派は4月9日にオマーン・サウディアラビアの代表団とサナアで会談した。同月の捕虜交
換も含め、和平合意に向けた信頼醸成措置が進められた。
他方、5月時点で交渉の進揚は「待機状
態」と評されるなど、足元では停滞しているとみられる。
その一因として「平和でも戦争でもな
い」状態が継続しており、フーシー派にとり交渉を急く、、必要性に欠けていることが考えられる。
- アリーミー政権派は国防省傘下に統合作戦部を創設した。同部長には南部移行会議系とみられる将
官が配置され、指揮命令系統の統一へ向けた試みが続けられている。
大統領ラシャード•アリーミ
ーはアラブ連盟首脳会議に出席するなど大半を国外で過ごし、国内滞在日数は29日であった。
- 南部移行会議は南部諸勢力を集め、南部協議会合を開催した。
この会合で調印された「南部国民憲
章」では、南部が旧南イエメンの地理的区分で独立した連邦国家を目指すとされた。南部独立の主
張は南部の問題が放置されているという現状に対する南部諸勢力の反発であるとともに、アリーミ
一政権や有志連合軍に対して譲歩を求める瀬戸際戦略と捉えられる。
♦ 4月14日から17日にかけて、フーシー派と大統領指導評議会・有志連合軍の間で1,000名近い大
規模な捕虜交換が行われた。今次の交換は各組織の要人解放という成果があった一方、2022年の当
初の合意内容から規模を縮小し、履行までに1年以上を要した。
(注1)本稿のデータカットオフ日は2023年6月30日であり、以後に情勢が急変する可能性がある。
(注2)フーシー派は自身がイエメン国家を代表するとの立場をとるため、国家と同等の組織名や役職
名を用いている。本稿では便宜的にこれらを直訳するが、これは同派を政府とみなすものではない。
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【図1:イエメン内戦におけるアクターの関係】
【外部アクター】 | 【国内アクター】
(注1)大統領指導評議会の中で、サウディアラビアの代理勢力と評される組織を(♦)、UAEの代理
勢力と評される組織を(◊)とした。
(注2)代表的なアクターを記載した図であり、全てのアクターを示したわけではない。
(出所)筆者作成
フーシー派:信頼醸成措置実施も交渉は停滞か
フーシー派は4月にオマーン•サウディアラビアの代表団をサナアに迎え、その後捕虜交換を実施す
るなど和平交渉の進展といえる動きを見せたが、以降、サウディアラビアの和平案に対して具体的な回
答を示していない。
4月9日に大統領マフディー ・マシャート(Mahdi al-Mashat)は駐イエメン・サウ
ディアラビア大使ムハンマド•アール=ジャービル(Muhammad bin SacTd Al Jabir)らと会談し、「公正
かつ名誉ある平和」の実現を要求した1。
フーシー派側の参加者を見ると副首相(防衛担当)ジャラー
ル・ルワイシャーン(Jalal al-Ruwayshan)や治安諜報局長アブドウルハキーム・ハイワーニー(‘Abd al-
HakTm al-Khaywam)などが名を連ねている[表1]。
彼らもフーシー派幹部ではあるものの、軍内の古参
幹部などが参加しておらず、会合に妥当なレベルの幹部の出席に留めたように見受けられる。
和平交渉に際して、サウディアラビアはフーシー派に以下の3段階で構成される和平案を提示したと
される2。
第1段階の信頼醸成措置として6力月の停戦やフーシー派が要求してきた自派公務員への給与
の支払い、道路封鎖の解除などが盛り込まれた3。
給与支払いの原資は大統領指導評議会側の石油・ガス
収入とされる4。
第2段階は3カ月の交渉期間であり、2年にわたる移行期間(第3段階)に関する議論
が行われる。
第3段階として、2年の移行期間中に全関係者による最終的な解決が議論される。和平案
はフーシー派との戦争に疲弊したサウディアラビアにとって、イエメンからの出口戦略の柱である。
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和平案が提示され、捕虜交換が実現しつつも本四半期中の合意には至らなかった。
5月7日にフーシ
一派最古参幹部である軍諜報局長アブドウッラー ・ハーキム(仏bd Allah Yahya al-Wkim)は国連特使軍
事顧問アンソニー ・ヘイワード(Anthony Hayward)と会談した際に、「我々は平和への用意があるが、
また最悪の可能性にも備えている」と発言した5。
さらに6月10日には国営サバ通信から「米国の介入
によるイエメン平和の機会の剥奪」と題する記事が発信され、米国と英国がサウディアラビアの意志決
定を握ってし、るという論旨が展開された6〇
このほかにマシャートは6月22日の軍事パレードに際し
て、「侵略勢力が頑迷(筆者補筆:な態度)を続けるのなら、機会を失うであろう」と述べた7。
いずれ
もフーシー派の和平合意に対する警戒感や期待の薄さを示しているといえよう。
同派としてはいわゆる
「平和でも戦争でもない」状態で生存を脅かされていない現状、交渉を引き延ばしながら譲歩を引き出
そうとする従来の姿勢を維持していると考えられる8。
フーシー派は本四半期も大規模な大衆動員を行った。5月から「サマー ・コース」や「サマー ・キャ
ンプ」などと呼称される年次の教育活動が各地で開かれた。
この活動は支配地域住民に対してクルアー
ン詠唱などの宗教教育や体育、フーシー派のイデオロギー教育を行うものであり、特に青少年の洗脳に
用いられていると国内外から非難されてきた。また5月下旬には各地で反米•反イスラエルを叫ぶ「サ
ルハ周年デモ9」が開催され、参加者はパレスチナへの連帯なども主張した1〇。
【表1サナア大統領宮殿会合におけるフーシー派側出席者】
名前 役職
マフディー ・マシャート 大統領、元帥
ムハンマド・アブドウッサラーム (Muhammad ‘Abd al-Salam) フーシー派側交渉団代表
ジャラール・ルワイシャーン 副首相(防衛担当)、中将 フーシー派側交渉団副代表
アブドウルハキーム・ハイワーニー 内務省治安諜報局長官、少将
フサイン•アッズイー (Husayn al-‘Azzi) 外務副大臣
アブドウルマリク・アジュリー (‘Abd al-Malik al-‘Ajn) フーシー派側交渉団メンバー
アブドウッラー・ヤヒャー.リザーミー (‘Abd Allah Yahya al-Rizaml) 軍.治安委員会委員長、少将
(出所)Wikala al-Anba’ al-Yamamya より筆者作成
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アリーミー政権派:南部勢力との対立は解消されず
大統領ラシャード・アリーミー(Rashad al-cAHmi)は4月27日に2023年大統領令40号を発出し、
国防省内に統合作戦部を創設した11。
統合作戦部長にはサーレハ•アリー •ターリブ(Salih ^AlTTalib,
少将)が指名された。ターリブは南部移行会議系の武装組織「南部軍」の作戦主任を務めていた。
今次
の人事は国際承認政府の課題の1つである軍などの指揮命令系統統一にかかる措置とみられる。
なお、
国際承認政府側の正規軍には戦争作戦部と呼ばれる部署も存在し、統合作戦部創設後も活動している
が、統合作戦部と戦争作戦部の所掌の違いは明らかではない山。
本四半期は大統領指導評議会内の対立が目立った。
4月下旬に同組織メンバーのファラジュ•バフサ
–(Faraj al-Bahsani)は、大統領指導評議会が自身の出身県であるハドラマウト県の問題を放置して
いると非難し、会合への参加停止を伝えたとされる吃
また6月には大統領指導評議会メンバー(兼巨
人旅団最高指導者)のアブドウッラフマーン・ムハッラミー (“Abd al-Rahman al-Muharram!,通称「アブ
一 •ザラア」)が首相マイーン•アブドウルマリク(MaFn,Abd al-Malik SaFd)を「言葉は多く、成果は
少ない」と非難した叱
この背景には、南部で公共サービスの改善が見られないことに対する地域住民
の不満の高まりがあるとされる。アリーミー自身はアラブ連盟首脳会議に参加するなど、大半の時を海
外で過ごした。本四半期の国内滞在日数は29日であった。
南部移行会議:「南部国民憲章」の採択と幹部人事の刷新
南部での勢力拡大に関して、南部移行会議には進展が見られた。5月8日、南部諸勢力はアデンでの
5日間の南部協議会合を経て「南部国民憲章」を含む諸合意の調印式に臨んだ”。
合意された内容やその
政治的影響については後述するが、調印された書類の中には南部が目指す政体など重要な事項が多数含
まれている。
今次会合は35以上の組織および330名以上が出席する大規模なものとなり、会合を主導
した南部移行会議の力を見せつける形となった。
なお、会合が行われた5月4日から8日までの間アリ
ーミーはアデンに留まっていたものの、合意に反対する声明などは発出されなかった。
南部協議会合で採択された主要4文書の内、最も重要なものが南部国民憲章である括。
この文書は序
文に加えて「一般的統治基盤•原則」、「南部人民の問題」、「一般規定」の3本柱で構成され、この中に
は南部国民の望みとして「1990年5月22日以前の政治的•地理的境界に従った南部国家の回復」とい
う南部独立を示す文言が含まれている17。
なお6月下旬に最高指導者アイダルース•ズバイディー
(‘Aydarus Qasim al-Zubaydi)はチャタムハウスのイベントに出席し、南部独立宣言のための一方的な措
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置は講じないとしつつも、「我々は国連の監督下で、平和的行動を通して独立実現に取り組む」と独立
を目指すことを再度強調した目。
南部の政治的文脈では、南部協議会合と諸文書の締結には2つの側面がある。
1つ目は、乱立する南
部諸勢力の中で抜きん出た力を持つ南部移行会議が主導する形で、南部の将来像が示されたことであ
る。
その像は主権を持つ独立した連邦国家であり、地理的枠組みは1990年5月22日の南北統一以前
(旧南イエメン)とされた。
南部独立と連邦制の採用は、南部移行会議の目標の追求と同組織の影響力
が浸透していない南部諸県への配慮が同時に窺われる内容といえる。
例えばハドラマウト県などの東部
には旧南イエメン時代に冷遇されたという意識があり、独自の歴史や文化を持つことも相まって、南部
移行会議と一定の距離を置く傾向が見られてきた。
南部国民憲章の中では、地域のアイデンティティや
特色は南部全体の国家アイデンティティの枠組みにおいて尊重されるものとされ、これはハドラマウト
県単体での分離などを避ける狙いがあると考えられる。
2つ目の側面は、南部諸勢力の不一致である。
南部協議会合に多くの組織•人物が参加したのは確か
である一方、参加を拒否した組織も一定数存在した。
これらの中には、ハドラマウト最大の組織「ハド
ラマウト包括会議(Mu5tamar Hadramawt al-Jamic) Jや、2014年に採択された「国民対話文書」を南部問
題解決の方法と位置付ける「南部国民連合(al-Utilafal-WatanTal-Janubi)Jなど、一定の影響力を持つと
みられる組織も含まれる吃また南部の政治派閥には大別して「ズムラ派閥(Junah al-Zumra) Jと「卜
ウグマ派閥(Junah al-Tughma) Jと呼ばれるものがあり、その起源は旧南イエメンにおける1986年のイ
エメン社会党内の権力闘争に遡る2〇。
この内紛で敗北したズムラ派閥はアブヤン県やシャブワ県出身者
が多く、敗北後に北イエメンへ亡命したという経緯から、北部政治勢力とのつながりが見られる21。
他方、内紛を制したトウグマ派閥はダーリウ県やラヘジュ県出身者が多く、1990年の統一後から南部が凋
落したという歴史認識を持ち、分離主義的傾向が強いとされる。
南部の政治的文脈とは別に、イエメン内戦全体の文脈では、南部国民憲章の採択は南部移行会議の瀬
戸際戦略と捉えられる。
バフサニーカヾハドラマウト県の問題への対応への不満を理由に大統領指導評議
会の会合への不参加を表明したように、南部の政治勢力にはアリーミー政権に対する不満が鬱積してお
り、政治的譲歩を求めているとみられる。足元の両者の衝突の理由に鑑みて、具体的な内容として第1
軍管区駐留部隊の交代や、新設の大統領直轄部隊「祖国の盾」の活動抑制などが考えられる22。
また、
サウディアラビアは南部移行会議系部隊に給与を支払うことになっているが、不払いや遅延が報告され
ており、対サウディアラビアの瀬戸際戦略という側面もあるといえよう23。
南部国民憲章の調印と同日の5月8日に、ズバイディーは2023年南部移行会議長令2号を発出し、
同組織の幹部人事を刷新した24。この中で注目に値するのが、副議長にバフサニーとアブー •ザラアが
選出されたことである。
バフサニーは第2軍管区司令官やハドラマウト県知事を務めた人物であり、ハ
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ドラマウト県に基盤を有する人物である。南部移行会議とアリーミー政権派は同県の支配を巡り争って
いることから、バフサニーの幹部就任は南部移行会議に利するものであったとみられる。
アブー •ザラアは巨人旅団の最高指導者であり、同組織は2018年のホディダ奪還戦や2022年のシャ
ブワ防衛戦で成果を挙げてきた。
巨人旅団はサラフ主義の組織であり、イエメンのサラフ主義の中には
政治への関与を否定する系譜があることも相まって、従来親政権派とみられてきた25。
大統領指導評議
会内でアりーミーに最も近いと評されてきたアブー •ザラアが南部移行会議寄りの立場を取ったこと
は、大統領指導評議会内のパワー ・バランスを変化させたと考えられる。
【図2 :本四半期の1枚(南部国民憲章の調印式)】
(出所)al-Majlis al-Intiqall al-Janilbi より弓|用26
国民抵抗軍:支配地域外への支援供与と闘争継続の主張
国民抵抗軍は支配地域外の支持拡大を図りつつ、フーシー派に対する闘争の継続を訴えた。国民抵抗
軍はジャウフ県とマアリブ県へ食料物資を積載した車列を派遣し、地域住民に対する食糧支援を行った27〇
両県は(フーシー派支配地域を除くと)アりーミー政権派の支配下にあり、マアリブ県はアリーミ
一政権の最後の拠点ともいわれる。国民抵抗軍はUAEからの豊富な資金力を背景に、拠点である西海
岸地域以外への支援を通して支持拡大を図っているとみられる。
同組織は構成員への給与の支払いが比
較的安定し、水準も高いとされ、過去には未払いが横行したハーディー (‘Abd Rabbuh Mansur Hadi)政
権の兵士が流出したとみられている。このような大統領指導評議会内での経済的手段を用いた競争は、
アリーミーの国内における支持や支配の正統性を傷付ける可能性がある。
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本四半期は国民抵抗軍にとって重要行事が連続した。
2023年4月19日は国民抵抗軍の軍事作戦開始
(ホディダの戦い)から5周年であった28。
同年5月14日は最高指導者ターリク・サーレハ(Tariq
Muhammad Salih)の父の命日、同月22日は1990年の南北イエメン統一から33周年の節目であった2%
これらに共通して、国民抵抗軍は「平和であれ戦争であれ」フーシー派に対する闘争を継続するという
メッセージを発した。
戦争も辞さないという強気な言説の裏には、国民抵抗軍を含む大統領指導評議会
各組織のフーシー派•サウディアラビア間の交渉に対する不安があるとみられる。
反フーシー派諸勢力
はアフガニスタンのアシュラフ・ガニー政権のように、頭越しの和平合意によって見捨てられることを
恐れていると考えられる。
その他:赤十字国際委員会と国連による捕虜交換の実施
4月14日から16日にかけて、赤十字国際委員会および国連の仲介の下で869名の捕虜交換が行われた3〇。
さらに翌1?日にサウディアラビアが独自に104名の捕虜解放に踏み切ったことから、2020年10月以来の約!,000名規模での捕虜交換が行われた。
もっとも、捕虜交換は2018年のストックホルム合意
の一部であり、2022年3月に締結された当初の合意が約2,000名規模での交換であったことに鑑みる
と、履行に1年以上を要しかつ規模を半減させての捕虜交換であったともいえる31。
以下では今次の捕虜交換で解放された主要人物を紹介したい。
フーシー派に引き渡された主要人物として、サミーラ・マーリシュ(SamiraMansh)が注目された。
同氏は「ムハンマシーン(muhammashin)」と呼ばれる低社会階層出身の女性であり、ジャウフ県におけ
る即席爆発装置を用いたテロの実行犯とされる。
イマーム制復古主義者と批判されるフーシー派にと
り、マーリシュはイエメン人の抵抗運動というプロパガンダの対象となってきた。
彼女らの解放を祝し
て、フーシー派の「女性局」が記念行事を開催し、最高指導者アブドウルマリク•フーシー(‘Abdal-
Malik Badr al-DTn al-Huthi)の姉妹ブシュラー ・フーシー (Bushra Badr al-DTn al-Huthi)が登壇した’2。ブ
シュラーはマーリシュが「侵略勢力に抑圧されたイエメン人女性のモデル」であると発言した。
大統領指導評議会側では、ハーディーの弟ナースイル(Nasir Mansur Hadi)などが解放された。
また
元国防大臣マフムード・スバイヒー (Mahmud Ahmad al-Subayhi)の釈放に際して、南部移行会議は彼の
取り込みに失敗したとみられる33。
スバイヒーは1994年内戦にて南部分離主義勢力に加担したものの、
その後は大統領顧問や第4軍管区司令官を務めるなど中央政府を支持してきた34。
国民抵抗軍関係者で
は、ターリク・サーレハの息子アッファーシュ(‘AffMshTariq Salih)や兄弟ムハンマド(Muhammad
Muhammad Salih)が解放され、リヤドへ送られた。
このほかに若干名のサウディアラビア人およびスー
ダン人捕虜が解放された。
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「イエメン情勢クオータリー」の趣旨とバックナンバー
アラビア半島南端に位置するイエメンでは、2015年3月からサウディアラビア主導の有志連合軍や有
志連合軍が支援する国際承認政府と、武装組織「フーシー派」の武力紛争が続いてきた。
イエメンは紅
海・アデン湾の要衝バーブ・マンデブ海峡と接しており、海洋安全保障上の重要性を有している。
しかしなカヾら、イエメン内戦は「忘れられた内戦」と形容され、とりわけ日本語での情勢分析は不足している。
そのため本「イエメン情勢クオータリー」シリーズを通して、イエメン情勢に関する定期的な情報
発信を試みる。
・ ノヾツクナンノヾー
吉田智聡「8年目を迎えるイエメン内戦一リヤド合意と連合抵抗軍台頭の内戦への影響ー」『NIDSコメンタリー』第209号、
防衛研究所(2022年3月15日).
—-「イエメン情勢クオータリー(2023年1月〜3月)ーイラン・サウディアラビア国交正常化合意の焦点としてのイエ
メン内戦? ー」『NIDSコメンタリー』第258号、防衛研究所(2023年4月20日).
1″al-Ra’is al-Mashat Yastaqbil al-Wafdayn al-‘UmanT wa al-Su’udT fi al-Qasr al-Jumhurl bi San’a’,” Wikala al-Anba’al-Yamariiya, April 9,
2023, https://www.saba.ye/ar/news3233686.htm.
2 Patrick Wintour, “Saudi Arabia Makes Peace Proposal for Yemen after Houthi Talks/1 2 * * 5 6 7 8 The Guardian. April10, 2023,
https://www.theguardian.com/world/2023/apr/10/saudi-arabia-makes-peace-proposal-for-yemen-after-houthi-talks.
3和平交渉やイエメン情勢の展望については、以下も参照されたい。
吉田智聡「「忘れられた」イエメン内戦はどこへ向かうかーイエメン情勢を左右する3つの要因ー」『季刊アラブ』第184号、
近刊。
4サナア戦略学研究所は月刊の情勢分析(6月22日発行)にて、和平案を提示したサウディアラビアがフーシー派の給与支払
い要求を拒否しているという見立てを示しており、和平交渉の具体的な内容や争点については公開情報では不明な点がある。
“Southern Transitional Council Resurgent/5 Sana “a Center for Strategic Studies. June 22, 2023, https://sanaacenter.org/the-yemen-
review/may-2023/203 86.
5 ccal-Liwa? al-Hakim YaltaqT al-Mustashar al-“Askarili al-Mumaththil al-Umami al-Khass ila al-Yaman,” Wikala al-Anba,al-Yamaniya.
May 7, 2023, https://www.saba.ye/ar/news3238650.htm.
6 “Inhisar Furas al-Salam fT al-Yaman bi Sabab al-Tadakhkhulat al-Amnklya,55 Wikala al-Anba}al-Yamaniya. June 10, 2023,
https://www.saba.ye/ar/news3245517.htm.
7 “al-Ra’is al-Mashat: Idha Istamarra al-cAduw fi cInad-hi fa Huwa YudTc al-Furas wa alladhT Yu’rad calay-hi al-Yawm Lan Yunal Ghad,”
Wikala al-Anba”al-Yamamya. June 22, 2023, https://www.saba.ye/ar/news3247897.htm.
8 「平和でも戦争でもない」状態(Hala al-La Salm waal-LaHarb)とは、2022年10月の停戦合意失効以後、停戦合意の再開や
和平合意の実現には至らないものの(平和でもない)、空爆や越境攻撃のような大規模な軍事衝突も再開していない(戦争でも
ない)状態を指す。
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9 「サルハ(sarkha)」はアラビア語で「叫び」を意味する語であり、フーシー派の場合は「神は偉大なり、米国に死を、イス
ラエルに死を、ユダヤ人に呪いを、イスラームに勝利あれ」という同派のスローガンを叫ぶことを指す。
10 “Masira Jamahiriya Kubra fi al-‘Asima San’a5 bi al-Dhikra al-SanawTya li al-Sarkha,^^ Wikala al-Anba’al-Yamaniya, May 24, 2023,
https://www.saba.ye/ar/news3242342.htm.
11″Qarar Ra’is Majlis al-Qiyada al-Ri’asi al-Qa?id al-Acla li al-Quwat al-Musallaha bi Insha5 Hay5a al-cAmalTyat al-Mushtarika/5 Wikala al-
Anba ‘al-Yamamya. April 27, 2023, https://www.sabanew.net/story/ar/97205.
12 “Hay’a al-cAmalTyat bi Wizara al-Difac TuqTm Warsha “Amal bi “Unwan al-Fdad Tariq al-Nasr,55 Wikala al-Anba’al-Yamaniya. May 2,
2023, https://www.sabanew.net/story/ar/97285.
13 “Al-Bahsani Suspends His Participation in PLC’s Meetings/5 South 24, April 20, 2023, https://south24.net/news/newse.php?nid=3302.
14 “Qal inna-hu bi La Hiss Watani.. Abu Zara” a al-Muharrami Yashunn Hujum Ladhi” “ala Ra5Ts al-Hukuma Ma’in ° Abd al-Malik,55 Sihafa
al- ‘Arab. June 13, 2023,
https://www.sahafahh.net/story/16640264/%D9%82%D8%A7%D9%84-%D8%A5%D9%86%D9%87-%D8%A8%D9%84%D8%A7-%D8
%AD%D8%B3-%D9%88%D8%B7%D9%86%D9%8A-%D8%A3%D8%A8%D9%88-%D8%B2%D8%B1%D8%B9%D8%A9-%D8%A7
%D9%84%D9%85%D8%AD%D8%B1%D9%85%D9%8A-%D9%8A%D8%B4%D9%86.
15 “al-Ra’is al-Zubaydi Yashhad Marasim al-Tawqic cala al-Mithaq al-Watani al-Janubi,55 al-Majlis al-Intiqali al-Janubi. May 8, 2023,
https: // stcaden.com/ news/20976.
16 Tian al-Mithaq al-Watani al-Janubi wa Shakl al-Dawla al-Qadima,55 South 24, May 8, 2023,
https: // south24. net/news/news. php?nid=3 329.
17南部国民憲章本文については、以下を参照した。
ccal-Umana, Net Yanshir Nass al-Mithaq al-Watani al-JanUbi,” al-Umana ‘Net, May 8, 2023, https://al-omana.net/ni/details.php7idn99550.
18 “al-Ra’is al-Zubaydi fTNadwa bi “Chatham House’: Na’mal cala Istiqlal al-Janub Salmi taht Ishraf al-Umam al-Muttahida,” al-Majlis al-
Intiqali al-Janubi. June 22, 2023, https://stcaden.com/news/21449.
19 “‘Ajil Mu’tamar Hadramawt al-Jamic Yusdir Bayan Hamm hawl al-Liqa’ al-Tashawuri li al-Mukawwinat al-Janubiya fi al-Rabic min
Mayu,” Shamsan Net. April 29, 2023, https://www.shmsan.net/news/30278.; ccal-I’tilaf al-Watani al-Janubi YuC1 in “Adam Musharaka-hi fT al-
Liqa’ al-Tashawuri Alladhi Da”a la-hu al-Intiqali,” al-Harf 28. May 3, 2023, https://alharf28.com/p-86875.
20旧南イエメンの派閥形成の過程や対立構造については、以下が詳しい。
Fred Halliday, Revolution and Foreign Policy: The Case of South Yemen 1967-1987. Cambridge: Cambridge University Press, 1990.
21ズムラ派閥の代表格として、元南イエメン大統領アリー・ナースイル・ムハンマド(cAli Nasir Muhammad,アブヤン県出
身)やハーディー(アブヤン県出身)が含まれる。
22第1軍管区はハドラマウト県北部を管轄しており、南部移行会議は敵対する「イスラー八」系部隊の同区からの撤退と自組
織系部隊への交代を要求している。祖国の盾については、以下の拙稿を参照されたい。
吉田智聡「イエメン情勢クオータリー(2023年1月〜3月)ーイラン・サウディアラビア国交正常化合意の焦点としてのイ
エメン内戦?—」『NIDSコメンタリー』第258号、防衛研究所(2023年4月20 H).
23給与などの支援を通したサウディアラビアの対イエメン南部の戦略については、以下を参照。
Elenora Ardemagni, “Saudi Arabia’s Proactive Military Strategy in Southern Yemen Is a Risky Gamble,” Middle East Institute. January 31,
2023, https://www.mei.edu/publications/saudi-arabias-proactive-military-strategy-southern-yemen-risky-gamble.
24 ccSudur Qarar Ra’Ts al-Majlis al-Intiqali al-Janubi Raqm 2 li “Am Alfayn wa Thalatha wa “Ishrm bi Fada TashkTl Hay’a Ri’asa al-Majlis
al-Intiqali al-Janubi,” al-Majlis al-Intiqali al-Janubi. May 8, 2023, https://stcaden.com/news/20984.
25 “Yemen: Who Are the UAE-Backed Giants Brigades?,” Middle East Eye. January 12, 2022, https://www.middleeasteye.net/news/yemen-
giants-brigades-uae-backed-who.; “Truce Extended, but under Strain,” Sana Center for Strategic Studies. September 8, 2022,
https://sanaacenter.org/the-yemen-review/august-2022/18642.
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NIDSコメンタリー第266号
26 “al-Ra’is al-ZubaydT Yashhad Marasim al-TawqTc cala al-MTthaq al-Watam al-Janubi/5 al-Majlis al-Intiqali al-Janubi. May 8, 2023,
https: // stcaden.com/ news/20976.
27 “TanfTdh li TawjThat al-‘Amid Tariq Salih.. al-KhalTya al-Insaniya Tudashshin Barnamij al-Musacadat al-Ghadha^ya fT al-Jaw£” Wikala
al-Tham min Disambir, April11,2023, https://2dec.net/news59943.html.;cTTdTyu: ^nsamya al-Muqawama al-Wataniya Tudashshin
TawzT’ al-Musacadat al-Ghadha^ya fT Ma’rib,” Wikala al-Tham min Disambir. May 6, 2023, https://2dec.net/news60434.html.
28 “Ashad bi Dawr al-Muqawama al-JanubTya.. al-Maktab al-SiyasT: Intilaq ‘AmalTya al-Muqawama al-Wataniya Tahawwul JidhrT fi Masar
al-Ma’raka al-Wataniya,55 Wikala al-Tham min Disambir, April19, 2023, https://2dec.net/news60lll.html.
29ターリク・サーレハの父、ムハンマド・サーレハ(Muhammad c Abd Allah Salih)は内務省傘下の中央治安隊司令官を務め
た。
“al-°Amid Tariq Salih fi Dhikra Rahil Walid-hi: al-Nidal wa al-Kifah min Ajal al-Watan Mabadi5 Ghuris-ha fi Nufus-na/5 Wikala al-Tham
min Disambir, May 14, 2023, https://2dec.net/news60584.html.
30 “Yemen and Saudi Arabia: Families Reunited as More Than 970 Conflict-Related Detainees Released in Two Operations over Four Days,55
International Committee of the Red Cross (ICRC). April17, 2023, https://www.icrc.org/en/document/yemen-and-saudi-arabia-families-
reunited-more-than-970-conflict-related-detainees-released.
31捕虜交換の詳細については、下記のコラムが詳しい。
“An Unfinished Deal: Yemen5s Prisoner Exchanges,55 In: Ryan Bailey, William Clough, Casey Coombs, Yasmeen Al-Eryani, Tawfeek al-
Ganad, Andrew Hammond, Khadiga Hashim, Abdulghani Al-Iryani, Yazeed Al-Jeddawy, Maged Al-Madhaji, Elham Omar, Ghaidaa Al-
Rashidy, Osamah Al-Rawhani, Miriam Saleh, Maysaa Shuja Al-Deen, Lara Uhlenhaut, Ned Whalley, and the Sana’a Center Economic Unit,
The Yemen Review April 2023, Sana’a Center for Strategic Studies, May 15, 2023, pp. 30-32.
32 “al-Hay’a al-Nisa’Tya al-cAmma TahtafT bi al-Ifraj “an al-Usra wa al-Mukhtataffa Samira Marish,” Wikala al-Anba”al-Yamamya. April19,
2023, https://www.saba.ye/ar/news3235487.htm.
33 Baily et al., The Yemen Review April 2023, p. 6.
34 “Man Huwa Mahmud al-SubayhT WazTr al-Difac al-Jadid (Sira DhatTya),” ‘Adan al-Ghad. November 7, 2014,
https: // adengad. net/public/posts/131692.
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Tokyo Japan
NIDS防衛研究所 National Institute for Defense Studies
NIDSコメンタリー
第266号 2023年7月18日
PROFILE
吉田智聡
理論研究部社会•経済研究室 研究員
専門分野:中東地域研究(湾岸諸国およびイエメンの国際関係•安全保障)、イエメン内戦
本欄における見解は、防衛研究所を代表するものではありません。
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