「フレンド」供給網、難航も 米財務長官がアジア歴訪
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2102P0R20C23A7000000/
『イエレン米財務長官は13〜21日の日程でインドとベトナムを訪問した。友好国と供給網を再構築する「フレンドショアリング」への協力を呼びかけた。ただ両国はそれぞれ中国やロシアとの関係悪化が懸念材料で、目立った成果が出るには時間がかかりそうだ。
「ベトナムはフレンドショアリングのパートナーだ」。イエレン氏は20日、首都ハノイで会談したファム・ミン・チン首相にこう明言した。「今後数カ月、数年で経済・安全…
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『「今後数カ月、数年で経済・安全保障面での結びつきを深めることは、わが政権の優先事項だ」とも訴えた。
ベトナム行きは5月にも新潟で開かれた主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議に合わせて検討したが、米国内で政府債務の上限引き上げ問題が難航して頓挫。再度日程を組んだ米財務省には強いこだわりがあった。
QUICK・ファクトセットによると、ベトナムから米国への輸出額は2022年に1200億ドル(約16兆8000億円)を超え、5年で2.7倍になった。米地質調査所(USGS)によるとベトナムはレアアースの埋蔵量が世界2位で、全体の2割近くを占める。
レアアースはスマートフォンや電気自動車(EV)などに必要だが、需要の7割を中国に依存する。ベトナムの鉱山資源をフレンドショアリングに引き込めれば、サプライチェーン(供給網)の脱中国が大きく前進する。
6月下旬、ベトナムを訪問した韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領はレアアース鉱山の採掘における技術協力で合意した。帰国の翌日、ベトナムのチン首相は中国・北京に降り立って習近平(シー・ジンピン)国家主席、李強(リー・チャン)首相と相次いで会談した。
ベトナムのレアアース採掘は、中国の縄張りをおかしかねない。チン氏にとって就任後初の訪中で、中国との友好を演出する狙いがあったとみられる。ベトナムは米中対立の渦中で絶妙なバランス外交に腐心する。
イエレン氏は6〜9日に中国を訪問し、供給網の再構築は中国を切り離すデカップリング(分断)ではないと対話の継続を求めた。「あくまで調達先の多様化が目的」(米財務省高官)という主張だ。
ただイエレン氏の背後には中国に強硬な米議会がにらみをきかせている。中国が半導体素材のガリウムやゲルマニウムの輸出制限を表明するなど、溝は深いままだ。
インドも同様だ。シタラマン財務相は17日にイエレン氏と並んで共同会見を開き、モディ首相の6月の訪米が「パートナーシップをより大きな高みに押し上げた」と強調した。一方でインドはロシアとも伝統的な友好関係を維持している。
日米豪印の枠組み「Quad(クアッド)」を通じた連携も深めてきたが、ジャイシャンカル外相は対立する隣国・パキスタンに対する米国の軍事支援には不快感を示してきた。
同氏は自著で、ある分野では競いつつ別の分野では協力する「フレネミー(友と敵の造語)」が今後の国際関係で増えていくと指摘している。
米国に近づきすぎると、別の「友達」を失うことになる。両国の高官と笑顔で写真に収まりながら大きな成果を出せなかったイエレン氏の歴訪は、その警戒感の強さを示す結果となった。
(ワシントン=高見浩輔、プノンペン=新田祐司、ムンバイ=花田亮輔)』