小麦価格急騰、ウクライナ港攻撃で 上昇率は侵攻後最大

小麦価格急騰、ウクライナ港攻撃で 上昇率は侵攻後最大
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN19E520Z10C23A7000000/

『【ワシントン=竹内弘文】19日のシカゴ穀物市場で小麦先物相場が急伸した。9月物の清算値は前日比8.5%高の1ブッシェル7.27ドル台に上昇した。ウクライナの穀物輸出拠点である同国南部のオデッサ港がロシア軍の攻撃を受け、輸出が停滞するとの懸念が浮上した。

ロイター通信によると、小麦先物(中心限月)の1日における相場上昇率としてはロシアが2022年2月にウクライナ侵攻を開始して以来、最大を記録した。

ロシア軍は18、19日と2日連続で、ミサイルやドローン(無人機)でオデッサ港を攻撃した。ウクライナ南部のクリミア半島とロシアを結ぶクリミア橋への攻撃に対する報復としている。ロシアは14年にクリミアを併合し、占領下においている。

ウクライナ産穀物の黒海輸送を巡る合意停止も小麦高につながっている。22年7月に国連とトルコの仲介で成立した合意はロシアの延長反対で18日に停止した。米欧からの金融制裁の緩和を復帰の条件としており、穀物回廊の再開に不透明感が漂う。

【関連記事】ロシア、ウクライナへ入港認めず 穀物合意停止でけん制

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植木安弘
上智大学グローバル・スタディーズ研究科 教授
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分析・考察

ロシアのオデッサ港攻撃で、ロシアの意図がより明確になったと言える。反転攻勢を続けているウクライナの経済に打撃を与え、小麦価格の上昇により西側経済に影響を与え、途上国には国内で膨らんでいる在庫を無料で放出して政治的支持を得る。そして、西側の経済制裁解除への突破口とする、といったものである。ロシアの行動は、ウクライナや西側諸国の反発を招き、ロシアの思惑通りに行く保証はなく、むしろロシアの穀物輸出にも影響が出る可能性がある。いずれにしても、ウクライナ戦争の余波は暫く続きそうである。
2023年7月20日 10:17

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永浜利広
第一生命経済研究所 首席エコノミスト
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別の視点

なお、昨年10 月の政府小麦売り渡し価格はロシアのウクライナ侵攻の影響を受けて2割以上引き上がることになっていましたが、岸田政権が価格を据え置きました。
ただ、今年4月の政府小麦売り渡し価格は通常13.1%上昇するところを5.8%抑制したものの、岸田政権は上昇を容認しました。
このため、今回の小麦価格急騰が反映される今年10月の政府小麦売り渡し価格はさらなる上昇が容認される可能性があり、年末以降の食料品価格の値上げに反映される懸念があることには注意が必要でしょう。
2023年7月20日 9:01

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志田富雄
日本経済新聞社 編集委員
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ひとこと解説

米農務省はウクライナの小麦輸出量について2021~22年度の1884万トンから今23~24年度は1050万トンまで減少すると予測しています。これが、さらに落ち込むことになるか。
昨年、空前の豊作だったロシアは国内の在庫も膨らんでいるとみられ、今年の輸出は4750万トン(21~22年度は3300万トン)まで拡大すると予想しています。本当にこれだけの量が供給されるのか。世界の小麦輸出量は計2億1000万トン程度なので、両国の存在はきわめて大きいのです。
2023年7月20日 6:57 』