やせ我慢が透けて見えるロシア経済
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『 ロシアの通貨であるルーブルですが、硬貨であった5ルーブル、10ルーブルが紙幣になりました。これが何を意味するかと言うと、「紙幣のほうが費用負担が軽いので、硬貨から紙幣に替えた」という事が透けて見えます。以前にも投稿した事がありますが、国にとって通貨の発行・流通・管理というのは、とても手間と費用がかかる分野です。特殊印刷になるので、印刷した紙と言っても、そこらの複写機で簡単に偽造できるもので発行するわけにもいかず、海外での紙幣の扱いというのは、とても雑な為、かなり頻繁に入れ替えないと汚い紙幣だらけになります。
以前の記事にも書きましたが、イギリスは財政難の為、エリザベス女王が逝去されて、チャールズ皇太子が王に昇格したのですが、未だに紙幣の額面はエリザベス女王の肖像のままです。紙幣を入れ替える費用が捻出できないので、記念紙幣みたいな形で部分的に発行はするものの、不都合が生じないので、このまま紙幣の入れ替えはしないそうです。それくらい、紙幣の発行というのは、国にとって負担です。なので、デジタル化は、ある意味必然です。しかし、いわゆる管理者のいない仮想通貨ではなく、国が価値を担保する暗号資産として流通する事になるでしょう。
で、ロシアには、国家運営の財源が枯渇しつつあるという事です。更に言うならば、硬貨に使う金属が惜しいので紙幣にしたのではないかという話もあります。日本でも戦時中に銅が足らなくなって、日本中の鐘を接収して、溶かして使用するなんて事をしていましたが、ロシアでも硬貨に使用する各種金属が貴重になって、紙幣にする事で弾丸なんかに流用しているのではないかという説です。真実はたしかめようも無いですが、財政的に厳しいのは確実に言えるでしょう。
ルーブルの為替レートが安定していたので、案外ロシア経済は強固なのではないかという言説が流れた事もありますが、安定していたのは、法律で強要する事によって、為替レートに変動が起きないように、ルーブルの流動性を絞ったからです。具体的には、ロシアの民間企業に対して、外貨収入の80%を3日営業日以内にルーブルに替える事を義務づけています。これは、外貨の割合が減るので、企業にとっては迷惑極まりないのですが、こういう強制力で、ルーブルの価値の下落がシステム的に起きないようにしています。また、当然ながらロシア国民に対して外貨交換や外貨購入を制限しています。つまり、ルーブルの売買に大きな変化が起きないように、法律で規制しているから外から見ると安定して見えるというだけです。
相当に不自然な仕組みで市場に参加している事になるので、いずれ破綻は見えています。その為、目端の効く両替商は、銀行の為替レートより高いレートで、ドルを買い取っています。持って寝かしておけば、いずれ数倍に高騰すると踏んでいるわけです。また、ロシア政府も、このところ、金の購買量を増やしています。この理由については、諸説ありますが、恐らくは経済破綻に備えて、価値が担保できる金の資産比率を増やしているのではないかという予測が立ちます。
かつて、ロシアがディフォルトして、ルーブルが紙くずになりかけた時、外国製の高級車が売れるという現象が起きました。これは、景気が良いからではなく、価値が担保できる物に替えておかないと、ルーブルの価値が下落するので、資産が減ってしまう為にロシア市民が買いまくった結果です。今、ロシアの銀行から大量の預金が引き出されています。これは、預けておくより、ありったけの所有している現金を、後に換金の効く資産価値のあるモノに替える為です。つまり、いずれルーブルの価値が下落する事は、経済の解っているロシア市民すら認めているのです。
この状況は、皮肉な事に資本主義に戦いを挑んだ革命家のレーニンが、かつて語った事と一致します。「資本主義を破壊する最善の方法は、通貨を堕落させる事だ」。これは、計画経済で失敗し、不完全な形で資本主義経済を取り入れた現代ロシアにも、当てはまるようです。レーニンの描いた共産主義社会では、通貨は、それほどの意味を持たないはずで、平等に労働者に分配され、貧富の差は少ないはずでした。しかし、そうはならなかった。当時も今も、ロシアの支配層は宮殿みたいな屋敷に住んでいますし、金持ちがやりそうな、ありとあらゆるモノを所有しています。むしろ、さして高いとも言えない給料と引き換えに、ロシア市民が兵隊として命を賭ける社会になりつつあります。』