ロシア穀物合意停止、食料高に懸念 「困窮者に打撃」

ロシア穀物合意停止、食料高に懸念 「困窮者に打撃」
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『【ニューヨーク=大島有美子】ロシア政府が17日に、ウクライナなどとの黒海穀物合意の停止を決めたことを受け、波紋が広がっている。国連のグテレス事務総長は「深く失望した」と声明で述べた。シカゴ穀物市場での小麦相場は落ち着きを取り戻したものの、市場関係者は合意停止が長引くことに懸念を深める。

2022年の穀物合意では小麦の一大産地であるウクライナ産小麦について、ロシアが封鎖した黒海で例外的に穀物船は出入りできるようにした。ロシアのペスコフ大統領報道官は17日、同日に期限切れとなる合意を延長せず停止すると明らかにした。

ロシアの措置を受け米シカゴ市場の小麦先物価格は17日に一時前日比で4%ほど上昇した。市場では合意延長を巡る不透明感を受けて上昇基調が続いており、その後は利益確定の売りが出て下げに転じた。

国連食糧農業機関(FAO)によると、ロシアは小麦輸出量で世界1位、ウクライナは5位だ。米金融情報サービス会社、ストーンXグループのチーフ商品エコノミスト、アーラン・スーダマン氏は17日、ロシアが安価な小麦を市場に供給していることを踏まえ「まだ小麦の供給不足が差し迫っているわけではない」と述べた。

一方で交渉が難航し、合意停止が長期にわたれば「他の主要産地で生産問題が発生した場合のリスクが残る」として、相場が不安定になる可能性を指摘した。

17日に国連で開かれた安全保障理事会に前後して、各国からはロシアへの非難が相次いだ。米国のトーマスグリーンフィールド国連大使は「世界で最も弱い立場にある人々に打撃を与える残酷な行為だ」とロシアを非難した。

国連のグテレス事務総長は、ロシアの説得を続けてきたトルコ政府について「努力を高く評価したい」と述べた。ロシアの対応は「困窮している人に打撃を与える。解決の道筋を見いだすことに専念する」として、交渉を続ける姿勢を示した。欧州連合(EU)のスコーグ国連大使も「妥協点を見いだす」と述べた。

ロシアのポリャンスキー国連次席大使は同日の安保理会合で「具体的な成果が得られれば合意再開を検討する」と述べた。具体的な内容は明らかになっていないが、欧米による対ロシア金融制裁の緩和や、自国産農産品の輸出で有利な条件を求めているとみられる。

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村上芽
日本総合研究所創発戦略センター エクスパート
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ひとこと解説

エネルギーや主食源を握って、その影響力の大きさに基づく責任を果たすべき国が逆方向に振れているこの2年。「他の主要産地で生産問題が発生した場合のリスクが残る」と文中にありますが、昨今の貧困や飢餓の原因は、「紛争、気候変動、パンデミック余波の労働・経済状態悪化」のトリプルパンチにあるとされます。気候変動・異常気象の発生状況は周知のとおりであり、相当悪くなることを覚悟せねばならないでしょう。その時、日本のように食品ロスがまだ大量にある国が、きちんと他国を援助する力が十分あることを祈るばかりです。
2023年7月18日 8:26

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植木安弘
上智大学グローバル・スタディーズ研究科 教授
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分析・考察

今回のロシアの決定は、プーチン大統領がワグネルの反乱で傷ついた威信を国内外で取り戻そうという極めて政治性の高いものだと言える。反転攻勢が続いているウクライナの経済を困窮させ、西側諸国で食料の物価高を引き起こし、経済制裁を克服する突破口にするといった意図が垣間見える。ただ、これは途上国の反発も予想されることから、ロシアにとってはいずれ何らかの妥協を探らざるを得ない。でないと自ら自分の首を絞めることになる。
2023年7月18日 9:35 (2023年7月18日 9:41更新) 』