アメリカ連邦議会議員選挙制度 —中間選挙をめぐる課題一

レファレンス平成27年5月号
アメリカ連邦議会議員選挙制度 —中間選挙をめぐる課題一
国立国会図書館調査及び立法考査局
主幹 政治議会調査室 廣瀬 淳子
https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_9368694_po_077202.pdf?contentNo=1

『 目 次

はじめに
I連邦議会議員選挙制度
1選挙制度の概要
2両院の代表制と選挙制度
π 2014年連邦議会議員選挙の結果
1党派別議席数
2当選者の特性とキャリアパス
3歴史的低投票率
4接戦選挙区の減少と再選率
m選挙区割りをめぐる課題
1下院選挙区の区割りと投票価値の平等
2マイノリティ選挙区
IV選挙制度改革論の動向
1中間選挙の廃止と連邦議会議員の任期の延長
2議員の任期制限
3コロンビア特別区からの下院議員の選出
おわりに

国立国会図書館調査及び立法考査局
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① アメリカでは2014年11月4日に連邦議会議員選挙が実施され、上下両院で共和党が議席
を伸ばした。上院では多数派が民主党から共和党に交代し、下院では共和党が多数派を維持
した。民主党オバマ政権のもとで、大統領と連邦議会の多数党が異なるいわゆる分割政府が
今後2年間継続することとなった。大統領選挙が実施されない年の連邦議会議員選挙(中間
選挙)では、大統領の所属政党が議席を減らす傾向がみられ、大統領の政権運営に対する評
価の側面がある。
② 連邦議会議員の選挙制度は、上院、下院共に小選挙区制を採用している。1913年に上院
議員の選挙制度が州議会による選出から直接選挙に変更されて以降、投票権の拡大を除き連
邦憲法レベルでの基本的な選挙制度の改革は行われていない。連邦議会議員選挙は2年ごと
という主要国と比較しても短いサイクルで実施されること等により、低投票率と高い現職再
選率という特徴がみられる。投票率については、とりわけ若年層やヒスパニック系の投票率
が低い傾向がみられる。選挙で投票するために有権者登録をしなくてはならないことカミ、低
投票率の一因となっている。
③ 下院議員の選挙区割りをめぐっては、ゲリマンダーとよばれる恣意的な選挙区割りが長年
課題となってきた。同一州内の選挙区間の人口格差が小さくなるよう厳密に区割りされる反
面、行政区画や地理的条件は配慮されない傾向がある。マイノリティに不利となる恣意的な
区割りについては、最高裁の判例が蓄積されてきた。区割りは国勢調査の直後に行われてき
たが、近年ではそれ以外の時期にも党派的思惑から実施される例もみられる。
④ アメリカと同じく小選挙区制を採用しているイギリス議会下院議員の選挙制度をめぐって
は、その改革案が2011年に国民投票に付されたが、アメリカにおいては小選挙区制自体を
改革する動きはみられない。長年中間選挙の廃止と下院議員の任期の延長が提案されてきた
が、大統領と連邦議会の権力バランスの観点からの反対論も根強い。近年では議員の任期制
限や首都であるコロンビア特別区からの下院議員の選出も議論されてきた。
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アメリカ連邦議会議員選挙制度
はじめに
アメリカでは2014年11月4日に連邦議会議員選挙⑴が実施され、連邦議会の上院では多数派が
民主党から共和党に交代し、下院では共和党が多数派を維持した。民主党のオバマ(Barack
Obama)政権のもとで、大統領と連邦議会の多数党が異なるいわゆる分割政府(divided government)
が今後2年間継続することとなった。上院で共和党が多数派となるのはブッシュ(George W. Bush)
政権下の第109議会(2005-06年)以来10年ぶりである。下院での共和党の議席は、第80議会
(1947-48年)以来最多となった。
中間選挙では一般的に、大統領の所属政党が議席を減らす傾向がみられ、大統領の業績に対する
評価の側面がある。主要国と比較しても非常に短い2年間隔で連邦議会議員の選挙が実施されるた
め、大統領の任期中であっても連邦議会の多数党が交代する可能性が存在し、アメリカ政治に常に
次の選挙を意識した短期的な政治サイクルをもたらしている。
連邦議会議員の選挙制度は、両院とも基本的に小選挙区制を採用しており、上院議員の選挙制度
が1913年に州議会による選出から直接選挙に変更されて以降、投票権の拡大を除き連邦憲法レベ
ルでの基本的な選挙制度の改革は行われていない②。
選挙をめぐっては、我が国でも選挙権年齢の18歳への引下げ、選挙区への議員定数の配分、議
員定数の削減などが議論されているところである。本稿では、アメリカの連邦議会議員選挙制度の
概要、2014年選挙の結果、その特徴と課題、改革論議等を紹介することで、我が国での論議の参
考とするものである。
I連邦議会議員選挙制度
1選挙制度の概要
連邦議会は上院(Senate)と下院(House of Representatives)の二院で構成されている”’。選挙権年齢は
18歳である⑷。上院議員の被選挙権年齢は30歳以上、9年以上合衆国市民で、選挙される時に選
出される州の住民でなければならない任)。下院議員の被選挙権年齢は25歳以上、7年以上合衆国
市民で、選挙される時に選出される州の住民でなければならない⑹。また、合衆国の公職にある者
は、その在職中いずれかの議院の議員になることはできない⑺。このため、閣僚や公務員と連邦議
会議員の兼職はできない⑻。
・ 本稿におけるインターネット情報の最終アクセス日は、平成27年4月2日である。
(1) 大統領選挙が実施されない年の連邦議会議員選挙は「中間選挙」と呼ばれる。
(2) 憲法修正第17条。以下、単に憲法といった場合は、連邦憲法をいう。このほか主要な改革としては、候補者
の選定に予備選挙が導入されたことと、秘密投票(いわゆるオーストラリアンバロット)の導入が挙げられる。
予備選挙は1960-70年代に候補者選定の主流となった。秘密投票は、1888年にケンタッキー州で最初に採用され、
1950年までに全米で採用されるようになった。
⑶憲法第1条第1節
⑷ 憲法修正第26条
⑸憲法第1条第3節第3項
⑹憲法第1条第2節第2項
⑺憲法第1条第6節第2項
⑻ ただし、憲法第1条第3節第4項の規定により、副大統領は上院の議長となる。
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上院議員は各州から2名が選出され、定数は100名、任期は6年である。。3分の1ずつが2年
ごとに改選され、50州は選挙が行われる時期で3つのグループに分かれている”°)。同じ州から選
出される議員は異なる時期の選挙で選出されるため、1回の選挙では全州を選挙区として1名が選
出される小選挙区制である。
下院議員の任期は2年である皿。全米435の小選挙区から選出される小選挙区制である下
院議員の定数は、かつては人口の増加に応じて増やしていたが、1929年に議席再配分法”Rにより
435に固定された”公。
連邦憲法は、連邦議会の上院議員及び下院議員の選挙を行う時、所及び方法は、各州議会が定め
るとし応、選挙の投票方法等の詳細は、基本的に各州法”で定められ、州ごとに異なっている
ただし、連邦議会は、上院議員の選挙を行う所に関する定めを除き、いつでも法律によって規則を
設け変更することができるとし宙)、1965年投票権法(Voting Rights Act of1965)などのように連邦法
の規定に従って実施されている部分もある。
選挙は、ジョージア州とルイジアナ州を除く各州では相対多数を得た候補者が当選者となる。
ジョージア州とルイジアナ州では絶対多数を得た候補者がいない場合、その後の日程で上位2名に
よる決選投票が実施され、相対多数を得た候補者が当選者となる。
選挙の期日は、偶数年の11月の第一月曜日の翌日の火曜日”切で、両院議員選挙と共に知事選や
州議会選挙などの各種地方選挙も実施される。大統領選挙が実施される年には、大統領選挙も同時
に実施される。2014年の中間選挙は11月4日に実施された。選挙後の連邦議会の新会期は、2015
年1月に開始された。
両院共に各政党の選挙区ごとの候補者選定は、原則として州法の規定に基づく予備選挙(primary)
による°°)。予備選挙の日程は、後述するように州ごとに設定される。
2両院の代表制と選挙制度
連邦憲法制定時に意図された連邦議会上院と下院の代表制や機能は、異なったものであった⑵)。
⑼憲法第1条第3節第1項
(10) 憲法第1条第3節第2項
(11) 憲法第1条第2節第1項
(12) かつては複数の議員を選出する中選挙区制等を採用する州もあったが、1842年議席配分法(CongressionalAp-
portionment Act of 1842) により、下院議員について各選挙区から1名の議員を選出する小選挙区制が規定された。
この規定はその後の議席再配分法に引き継がれ、1967年に再度規定された。2U.S.C. §2c.
(13) Reapportionment Act of 1929, 2 U.S .C. § 2a.
(14) 憲法制定時の下院議員の定数は65で、その後人口の増加に対応して定数も増やされ、1913年に435となった。
(15) 憲法第1条第4節第1項第1文
(16) 州法には、各州憲法も含む。
(17) 選挙人の資格についても、州議会の議員数の多い方のー院の選挙人資格とされ、州ごとに異なっている(憲法
第1条第2節第1項、憲法修正第17条第1項)。投票権について詳細は、高橋和之「アメリカにおける選挙権の
観念」樋口陽一ほか編『現代立憲主義の展開 上』有斐閣,1993, pp.407-440参照。
(18) 憲法第1条第4節第1項第2文
(19) 2U.S.C. §7.
(20) 予備選挙ではなく、党員集会による州もある。また、アメリカでは日本のような立候補制度を採用していない
ため、立候補の概念が日本とは大きく異なっている。多くの州では予備選挙等を経て候補者とならなくても、投
票者が当選させたい者の名前を投票用紙に書き込む(write in)ことが可能となっている。
(21) 詳細については、廣瀬淳子「アメリカ連邦議会の二院制の特質ー上院研究の分析ー」浦田一郎•只野雅人編
『議会の役割と憲法原理』信山社,2008, pp.48-59参照。
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アメリカ連邦議会議員選挙制度
両院議員の選挙区や選出方法、定数や任期等を異なったものとすることで、各議院がそれらを実現
することが期待されていた。
連邦憲法を起草するため1787年5月からフィラデルフィアで開催された憲法制定会議では、連
邦議会を二院制とすることには会議の初期から合意が存在していた。。しかし、両院議員の代表制、
選出方法とその任期については会議前のコンセンサスはなく、特に上院議員の代表制と選出方法は
憲法制定会議の最大の論点の一っとなった。
選出方法について、下院議員が直接選挙で選出されることは円滑に可決されため。上院議員の
候補者を各州の立法部が指名し、これを下院が選出する案は否決され山)、直接選挙案も否決され
た(村。上院の機能や性格付けをめぐる様々な議論の後、州議会が選出する案が可決された四。
議員数の問題は、連邦議会における代表制や議員の投票権の問題とも直結して議論された。人口
の多い州は両院議員共に人口に比例した議員数を選出することを主張し、少ない州は少なくともー
院では各州から同数の議員を選出する均等代表を主張して、議論は激しく対立して紛糾した。その
後、いわゆる大妥協と呼ばれる妥協の結果、上院は各州の均等代表、下院については人口比例で合
意が成立し、その後上院議員は各州2名とすることが決まった¢か。上院議員の定数について、各
州!名では欠席等の場合州の代表が不在となり不都合があること、各州3名では今後新たな州が加
わった場合に、上院の定数が多くなりすぎることから各州2名となった。
任期について、上院議員は、3年、4年、5年、7年、9年、終身の各案が検討された。上院議員
の任期を下院議員より長くすることには合意があり、多数派は4年以上の任期を支持していた。ー
度は任期7年が可決されたが、最終的に任期は6年とし、2年ごとに3分の1ずつを改選すること
となった(28)。下院議員については、独立後の13邦の議会の下院の任期は1年のところがほとんど
で㈣、より頻繁に民意が反映され有権者との距離感が短くなりやすい1年任期は広く支持されてい
た0ジェームズ・マディソン(James Madison)やアレクサンダー・ノ、ミルトン(Alexander Hamilton)は、
下院議員の職務にも経験の蓄積が必要として任期3年を支持していた。憲法制定会議では、任期1
年と3年が検討され、妥協の結果任期2年となった前。
上院議員については、州議会が選出することによって、選り抜きの人物が上院議員となり、州政
府の代理や連邦政府との連絡役となること、不適切な立法への防波堤となることが期待されてい
た⑶)。また、上院議員の任期を下院議員より長くし議員数を少なくすること、被選挙権年齢や市
民権の要件を高くすることで、知性と教養、経験を備えた上院議員によって、民主的な下院の暴走
や行き過ぎを抑制する、より安定的な上院となることが意図されていた肉。
•¢40 0 2
22 Max Farrand, ed., The Records of the Federal Convention of/787, Vbl.l, New Haven: Yale University Press, cl 966, pp.45-
46, 48.
ibid., pp.48-50, 353-354.
ibid., pp.51-52.
ibid., pp.155-156.
ibid., pp.397-409.
Max Farrand, ed., The Records of the Federal Convention of1787, Vbl.2, New Haven: Yale University Press, cl 966, pp.13-
14, 84-85.
㉘ Farrand, ed., op.cit.㉒,pp.408-409,421-426.
㉙ 13邦中、任期1年が10邦、半年が2邦、2年が1邦で、任期が短いほうが圧政に陥りにくいと考えられていた。
(3¢ Farrand, ed., op.cit.㉒,pp.353-354.
(31)ジェームズ・マディソン「上院の構成」A.ハミルトンほか著(斎藤眞・中野勝郎編訳)『ザ・フェデラリスト』
岩波書店,1999, pp.277-287.
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しかし19世紀末になると、上院議員も州議会による選出ではなく、直接選挙による選出を求め
る声が高まり、直接選挙を認める憲法修正案が連邦議会下院では繰り返し可決されたが、上院では
審議されなかった囲。その後、州議会が選出する上院議員の候補者を直接選挙で選出するが、州
議会はその候補者を選出することには拘束されないとする仕組みを州法で導入する州が増加し、直
接選挙で選出された候補者が州議会でも選出されるようになった。このような流れのもとで、1910
年選挙では連邦議会上院で改革派が議席を伸ばし、!911年に上院で直接選挙を定める憲法修正案
が可決された。下院でも1912年に可決され、1913年には改正に必要な州の賛成が得られ、憲法修
正第1?条が成立した。
我が国では「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」と憲法上規定され、
両院議員共に全国民を代表する者とされているg。アメリカにおいては、議員の地域代表的な性
格が強く、議員は何よりもまずその選挙区の代表者であるという考え方が、すでに植民地時代に確
立されていた3)。そして、このような代議制観は、今日にいたるまでアメリカの政治制度の特徴
の一つとなっている囲。ただし、上院議員は各州から同数が選出され、州の代表とみなされてい
るカヾ、現代の上院議員は、もはや単なる連邦政府と州政府の連携役や調整役ではない。州代表とし
ての活動だけではなく、州の利害を超えて様々な全国的な政策課題にも対応している⑴)。
π 2014年連邦議会議員選挙の結果
!党派別議席数
2014年選挙の予備選挙、本選挙は表1の日程で予備選挙から本選挙まで、約8か月間にわたっ
て各州で実施された。なお、アメリカでは、日本のような選挙運動期間の定めはない。
選挙後の上院の政党別議席数は、非改選議席も含めて2015年1月6日現在、共和党54名、民主
党44名、民主党系無所属2名である。改選議席(36名、補欠選挙3名を含む)の政党別議席数は、共
和党24名、民主党12名である。共和党は、前議会から9名の増加となり、多数党が民主党から共
和党に交代した。上院で共和党が多数党となるのは、第109議会(2005-06年)以来10年ぶりである。
下院では2015年1月6日現在、共和党246名、民主党188名、欠員1名である。前議会と比較
すると、共和党は13名増加し多数党の座を維持した。共和党の議席数は、第80議会(1947-48年)
以来最大となった。
表2に示すとおり、中間選挙では大統領の政党が議席を減らすのが通例である。1938年から
1994年までの15回の中間選挙では、連続して大統領の政党が議席を減少させる結果となった。過
去に大統領の政党が議席を増やしたのは、戦後では、民主党クリントン(Bill Clinton)政権時の1998
年と、共和党G’W,ブッシュ政権時の2002年の中間選挙である。1998年の中間選挙では、クリン
トン大統領のスキャンダルをめぐって大統領の弾劾裁判を継続するか否かが争点となり、大統領弾
劾を強行した共和党への反発から共和党が議席を減らした。2002年の中間選挙では、2001年9月
32)ジェームズ・マディソン「立法部による権力侵害の危険性」「抑制均衡の理論」同上,pp.225-234, 236-245.
関下院では、1893年、1894年、1898年、1900年、1902年に可決された。
(34)日本国憲法第43条第1項
関 田中英夫『アメリカ法の歴史 上』東京大学出版会,1968,p.17.
W 同上,p.18.
励 現代の上院議員の活動の詳細については、Ross K. Baker, House and Senate, 3rd ed„ New York: W.W. Norton, c2001;
Lewis L. Gould, The Most Exclusive Club: A History of the Modem United States Senate, New York: Basic Books, ¢2005 参照。
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アメリカ連邦議会議員選挙制度
表12014年連邦議会議員選挙予備選挙、本選挙の日程
日程 州(予備選挙の種類)
3月4 0 (火) テキサス(上院、下院)
3月18日(火) イリノイ(上院、下院)
5月6日(火) インディアナ(下院)、ノースカロライナ(上院、下院)、オハイオ(下院)
5月13日(火) ネブラスカ(上院、下院)、ウェストヴァージニア(上院、下院)
5月20日(火) アーカンソー(下院)、ジョージア(上院、下院)、アイダホ(上院、下院)、ケンタッキー(上院、下院)、 オレゴン(上院、下院)、ペンシルベニア(下院)
5月27日(火) テキサス(上院決選投票、下院決選投票)
6月3日(火) アラバマ(下院)、カリフォルニア(下院)、アイオワ(上院、下院)、ミシシッピー(上院、下院)、モンタ ナ(上院、下院)、ニュージャージー(上院、下院)、ニューメキシコ(上院、下院)、サウスダコタ(上院)
6月10日(火) メイン(下院)、ネバダ(下院)、サウスカロライナ(上院、下院)、ヴァージニア(下院)
6月24日(火) コロラド(下院)、メリーランド(下院)、ミシシッピー(上院決選投票)、ニューヨーク(下院)、オクラホ マ(上院、下院)
7月15日(火) アラバマ(下院決選投票)、ノースカロライナ(下院決選投票)
7月22日(火) ジョージア(上院決選投票、下院決選投票)
8月5日(火) カンサス(上院、下院)、ミシガン(下院)、ミズーリ(下院)、ワシントン(下院)
8月7日(木) テネシー(上院、下院)
8月9日(±) ハワイ(下院)
8月12日(火) ミネソタ(上院、下院)、ウィスコンシン(下院)
8月19日(火) アラスカ(上院、下院)、ワイオミング(上院、下院)
8月26日(火) アリゾナ(下院)、フロリダ(下院)、オクラホマ(下院決戦投票)、バーモント(下院)
9月9 0 (火) デラウェア(上院)、マサチューセッツ(下院)、ニューハンプシャー(上院、下院)、ロードアイランド(下院)
11月4 0 (火) 連邦議会議員本選挙
12月6日(土) ルイジアナ州本選挙決選投票
(注)•予備選挙の日程は、二大政党の日程である。
•無投票となった予備選挙と、補欠選挙(special election)の予備選挙の日程は除いた。
(出典) Federal Election Commission, **2014 Congressional Pre-Election Reporting Dates.M 等を基に筆者作成。
1I日同時多発テロの翌年ということもあり、大統領と結束してテロに立ち向かうという全国的な
気運があり、共和党が議席を伸ばした。
中間選挙で大統領の政党が議席を減らすことは、大統領の政権運営に対する信任投票的な意義の
ほかに、大統領と連邦議会のイデオロギー的バランスを取る理論や、大統領のコートテールの消失
理論で説明されている岡。バランス理論では、中間選挙では有権者が大統領の政策やイデオロギー
的立場を抑制するように大統領とは異なる政党に投票する傾向がみられることから説明する例。
コートテールとは、大統領選挙の年には大統領候補の人気により大統領の所属政党の議席が上積み
される効果を意味し、コートテール消失理論では次の中間選挙ではこれがなくなるため議席が減少
すると説明する。下院は全員が同時に改選されるのに対して上院は3分の1ずつ改選されるため、
ある政党の支持が高くなっても、上院では多数党の交代が下院より遅れて出現する傾向がみられる。
2014年中間選挙の際の出口調査血)の結果からは、共和党が両院で議席を伸ばした主な要因とし
0$) Robert S. Erikson and Gerald C. Wright, Voters, Candidates, and Issues in Congressional Elections,M Lawrence C. Dodd
and Bruce I. Oppenheimer, eds., Congress Reconsidered, 10th ed., Washington, D C.: Sage, 2013, pp.96-97.
(30) Joseph Bafiimi et al., *Balancing, Generic Polls, and Midterm Congressional Elections,M The Journal of Politics, 72(3), July 2010, pp.705-708. レファレンス 2015.5 29 表2政権と政党別議席数 議会期 年 大統領 政党 上 院 下 院 民主 共和 無所属 欠員 民主 共和 無所属 欠員 80 1947- 1948 トルーマン 民主 45 51 188 246 1 81 1949 -1950 54 42 263 171 1 82 1951-1952 48 47 1 234 199 2 83 1953 -1954 アイゼンハワー 共和 46 48 2 213 221 1 84 1955 -1956 48 47 1 232 203 85 1957- 1958 49 47 234 201 86 1959 -1960 64 34 283 153 87 1961-1962 ケネディ 民主 64 36 262 175 88 1963 -1964 ケネディ/ジョンソン 民主 67 33 258 176 1 89 1965 -1966 ジョンソン 68 32 295 140 90 1967- 1968 64 36 246 187 2 91 1969 -1970 ニクソン 共和 58 42 243 192 92 1971-1972 54 44 2 255 180 93 1973 -1974 ニクソン/フォード 共和 56 42 2 239 192 1 3 94 1975 -1976 フォード 61 37 2 291 144 95 1977- 1978 カーター 民主 61 38 1 292 143 96 1979 -1980 58 41 1 276 157 2 97 1981-1982 レーガン 共和 46 53 1 243 192 98 1983 -1984 46 54 268 166 1 99 1985 -1986 47 53 252 182 1 100 1987- 1988 55 45 258 177 101 1989 -1990 G.W.H.ブッシュ 共和 55 45 259 174 2 102 1991-1992 56 44 267 167 1 103 1993 -1994 クリントン 民主 57 43 258 176 1 104 1995 -1996 47 53 204 230 1 105 1997- 1998 45 55 207 227 1 106 1999-2000 45 55 211 223 1 107 2001-2002 G.W.ブッシュ 共和 50 50 211 221 2 1 108 2003 – 2004 48 51 1 205 229 1 109 2005 -2006 44 55 1 201 232 1 1 110 2007 -2008 49 49 2 233 202 111 2009-2010 オバマ 民主 55 41 2 1 256 178 1 112 2011 -2012 51 47 2 193 242 113 2013-2014 53 45 2 200 233 2 114 2015-2016 44 54 2 188 246 1 (注)•議員数は、各議会期初日の議員数。分割政府の議会期はグレー。 •無所属には、二大政党以外の政党も含む。 (出典)“Table 1-20: Political Parties of Senators and Representatives, 34th-113th Congresses, 1855-2014,w Norman J. Ornstein et al., Vital Statistics on Congress, Brookings Institution, 2014 . を基に筆者作成。 30 レファレンス2015.5 アメリカ連邦議会議員選挙制度 て、オバマ大統領の政権運営に対する否定的なムードや不満があったことが示されている。下院選 挙への投票理由として、オバマ大統領は要因ではないとするものは45% (このうち共和党への投票者 43%、民主党55%)、オバマ大統領への反対を表明するためが33% (共和党92%、民主党5%)、オバマ 大統領への賛成を表明するためが19% (共和党6%、民主党93%)となっている。また、全般的に国 は正しい方向に向かっているとしたものは31% (共和党17%、民主党82%)、深刻なほど悪い方向に 向かっているとしたものは65% (共和党69%、民主党28%)であった。国の経済については、非常に 良い又は良いとしたものは29% 供和党24%、民主党74%)、あまり良くない又は悪いとしたものは 70% (共和党64%、民主党33%)であった。“” これまでの中間選挙でも、世代、人種、性別(ジェンダー ・ギャップ)、年収などの特性によって 政党支持に違いがみられる傾向が指摘されてきた。2014年の中間選挙でもこれまでの選挙と同様 の政党支持の傾向がみられ、出口調査の結果からは、高齢者、白人、男性、高収入の者で共和党の 支持が民主党の支持より高くなる傾向が読み取れるの。 2当選者の特性とキャリアパス (1)出身職業とキャリアパス 第114議会(2015-16年)の議員の、主要な出身職業で最も多いのは公務員と政治家で、ビジネス マンや法曹がこれに次いでいる列。 上院議員出身の下院議員が存在した事例としては、19世紀には、第13議会(1813-14年)に5名、 第16議会(1819-20年)に5名、第23議会(1833-34年)に6名が存在した。しかし、20世紀に入 ると下院議員から上院議員になるパターンが一般化し、1936年から1950年まで上院議員を務めた クロード・ペッパー (Claude Pepper)議員が、1963年から1988年まで下院議員を務めたのを最後に、 以後は存在しない伽)。下院議員出身の上院議員の割合は、19世紀から20世紀にかけてほぼ20% から45%の範囲であったが、第109議会(2005-06年)には初めて50%を超えて、第114議会(2015-16 年)では53%に上っている同。これらの上院議員の、下院議員としての平均在職年数は、9.1年で ある岡。 典型的な議員のキャリアパスとしては、地方議員などの公職や弁護士から連邦議会下院議員とな り、下院議員から上院議員又は州知事へ、そして上院議員から州知事や大統領を目指すというコー スである。 (40) Edison Media Researchにより実施された出口調査。 01) Emily Chow et al., “Exit Polls,w Washington Post, November 6, 2014. 02 Jocelyn Kiley, “As GOP celebrates win, no sign of narrowing gender, age gaps, November 5, 2014. Pew Research Center Website http://www.pewresearch.org/fact-tank/2014/ll/05/as-gop-celebrates-win-no-sign-of-narrowing-gender-age-gaps/ 03)複数回答で上院では公務員•政治家60名、法曹60名、ビジネスマン42名、下院議員では公務員•政治家271 名、ビジネスマン231名、法曹174名、教育関係80名となっている。4Demographics-Congress by the Number,w CQ
Weekly, November 6, 2014, p.58.
(44) Matthew Eric Glassman and Amber Hope Wilhelm, **Congressional Careers: Service Tenure and Patterns of Member Ser-
vice, 1789-2015,w CRS Report for Congress, R41545, January 3, 2015, p.12. http://fas.org/sgp/crs/misc/R41545.pd¢
05)ibid., p.10.
06)ibid., p.ll.
レファレンス 2015.5
31
(2)マイノリティ議員数
マイノリティの議員数は、両院のいずれにおいても長期的には増加傾向にある。
女性議員数は2015年1月現在で、上院で非改選議員も含めて20名(20%、共和党6名、民主党14
名)、下院議員は84名(19.3%、共和党22名、民主党62名)である応か。2013年1月時点と比較する
と増加しており、女性議員数は、一貫して増加する傾向にある。しかし、小選挙区制を採用してい
るアメリカでは、比例代表制を採用しているヨーロッパ諸国や女性議員の増加を目的としたクオー
タ制など何らかの措置を採用している諸国と比較すると、女性議員の割合は低くなっている(48) * 50 51 * * * * 56 57。
黒人の議員数は2015年1月現在で、上院で非改選議員も含めて2名(2%、共和党1名、民主党1
名)、下院議員は44名(10.1%、共和党1名、民主党43名)である物。
ヒスパニック系の議員数は2015年1月現在で、上院で非改選議員も含めて4名(4%、共和党3名、
民主党1名)、下院議員は32名(7.4%、共和党9名、民主党23名)である例。
アジア系・太平洋諸島出身議員は、上院議員1名(1%、民主党)、下院議員!1名(2.5%)である⑸)。
ネイティブアメリカンの議員は、下院議員2名(0.5%、共和党2名)である(紛。
⑶平均年齢と平均在職年数
平均年齢は、上院議員61.0歳、下院議員57.0歳である。新規当選議員の平均年齢は、上院議員
50.7歳、下院議員52.3歳である例。1980年代以降では、両院議員共に平均年齢が上昇する傾向が
みられる㈣。
平均在職年数は、上院議員9.7年、下院議員8.8年である3)。長期的にみると、両院議員共に平
均在職年数は増加し、上院議員の在職年数のほうが下院議員よりも長くなる傾向にある㈤。
3歴史的低投票率
2014年中間選挙の投票率は、第二次大戦後では最も低い36.4%となる見通しであったことが報
じられた品。図1に示したように、一般的に中間選挙の投票率は30%から40%台と大統領選挙が
行われる年と比較すると低くなる傾向がみられる。予備選挙の投票率は、本選挙に比べると非常に
07)Jennifer E. Manning, **Membership of the 114th Congress: A Profile,w CRS Report for Congress, R43869, January 22, 2015,
p.7, http://fas.org/sgp/crs/misc/R43869.pdf
姻 OECD加盟国34か国の下院議員比率では、第26位となっている。IPU, “World Classification,” Women in National
Parliaments,1 January 2015. より 算出0
09)Manning, op.cit.卸
(50) ibid., p.8.
(51) ibid.
62 ibid.
(53)2015 年1月現在。ibid., p.2.
M Alex Lowe et al., “The Capitols Age Pyramid: A Graying Congress,M Wall Street Journal,
(50 2015 年1月現在。Manning, op.cit•姐),p.6.
(56) 各議会期初日での平均在職年数が最も長くなったのは、上院議員では、13.4年(第111議会(2009-10年))、下
院議員では10.3年(第102議会(1991-92年)、110議会(2007-08年)、112議会(2011-12年))である。Glassman
and Wilhelm, op.cit.^, pp.2-4.
(57) Jose A. DelReal, **Voter turnout in 2014 was the lowest since WW ロ,” Washington Post, November 10, 2014. ここで投票率と
は、投票可能人口 (voting-eligible population)の投票率である。
32
レファレンス2015.5
アメリカ連邦議会議員選挙制度
図1下院議員選挙の投票率
&L〇ペ年
OON (
€0〇〇&
9〇〇(n
•寸〇〇ペ
ペ〇〇ペ
O〇〇ペ
866 L
*966 L
寸66L
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〇66L
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986 L
•寸 86L
招6L
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82.6 L
*92.6 L
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&Z6L
02.6 L
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996 L
•寸 96L
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17Lr)6L
&ln6L
0IO6L
*8寸6L
(注)・のついている年は大統領選挙も実施された年。
(出典)”Table 2-1: Turnout in Presidential and House Elections, 1930-2012/ Norman J. Ornstein et al., Vital Statistics on
Congress, Brookings Institution, 2014. を基に筆者作成。
低くなっており、一般的には本選挙の半分以下の投票率であるとされている例。
2010年までの投票率を年代別にみると、18歳から20歳の若年投票率が最も低くなっており、年
代が上昇するにつれて投票率も増加する傾向がある。教育年数別では、年数が長くなるほど投票率
は増加する。人種別では、白人の投票率が最も高く、黒人がこれに次ぎ、アジア系、ヒスパニック
系の投票率は白人の約半分程度となっている。例
日本では、選挙管理委員会が住民登録制度に基づき住民基本台帳に記録されている者で資格を有
する者を職権で選挙人名簿に登録するため、有権者自身は選挙人登録手続を行わなくとも投票が可
能となっている。アメリカにおいては、住民登録制度がないため、選挙で投票するためには、事前
に有権者が自ら有権者登録を行わなければならない。1993年には、全米有権者登録法により運
転免許更新時等に有権者登録を可能とする手続の簡便化が図られている。また、一部の州では、事
前だけではなく選挙当日の有権者登録が認められている。
有権者登録は、政治意識の高い有権者のみが選挙に参加することにより、投票や政治の質の向上
に寄与すると考えられてきた。他方で、諸外国と比較して例をみない低投票率をもたらしている。
2010年までの中間選挙の有権者登録率は60%程度で、年代別、教育年数別、人種別の有権者登録
率は、投票率と同様の傾向がみられる⑹)。
また、2年ごとという頻繁な選挙、連邦議会議員と同時に選挙される公職の数が非常に多く選挙に
時間がかかること、火曜日という平日に選挙が行われることも、低投票率の原因と考えられている。
(5$) Roger H. Davidson et al., Congress and Its Members,11 ed., Washington, DC.: CQ Press, 2008, p.68.
(50 ProQuest, “Table 418: Voting Age Population-Reported Registration and Voting by Selected Characteristics: 2000 to 2012」’
ProQuest Statistical Abstract of the United States 2015, Lanham: Bernan, 2014, p.272.
統 National Voter Registration Act of 1993, P.L. 103-31.いわゆるモーターボーター法。
(61) ProQuest, op.cit.&%
レファレンス 2015.5
33
4接戦選挙区の減少と再選率
投票率の低下と密接に関係しているもう一つの要因が、選挙での競合性の低下で、過去50年間
で接戦選挙区の減少の面からも、議員の再選率の高さからもその低下が指摘されている物。下院
議員選挙で、55%以下の得票で議員が選出される接戦選挙区の割合は、1998年選挙では59.1%で
あったが、2006年選挙では16.1%、2012年選挙では17.9%(63)となっている。2014年中間選挙の際
の各種の選挙予想でも、下院で接戦選挙区とされていたのは全選挙区の10-20%という少数に限ら
れていた初)。
小選挙区制に特有の課題とされている得票率と議席率のかい離は、アメリカの場合は小さく、ほ
ぼ問題となっていない国。これは、ほぼ完全な二大政党制のもとで候補者の所属政党がほぼ二大
政党に限られていることと、安定選挙区が多く、一方の政党へのわずかな支持の増加が議席の大幅
な増加につながることが起こりにくいことに起因していると考えられる。
図2下院の安定選挙区の割合
(注)安定選挙区の割合とは、再選をめざした現職下院議員のうち多数党の60%以上の得票で選出された議員
の割合。
(出典)“Table 2-12: House Elections Won with 60 Percent of Major Party Vote, 1956-2012/ Norman J. Ornstein et al.,
Vital Statistics on Congress, Brookings Institution, 2014. を
基に筆者作成。
@2 Alan I. Abramowitz et al., “Incumbency, Redistricting, and the Decline of Competition in U.S. House Elections,M The Jour-
nal of Politics, 68(1), February 2006, p.75.彼らは、低下の原因を党派的分極化、現職の優位性、選挙区の区割りの
影響の各要因から検証し、区割り以外の要因の影響が大きいと結論付けている。
僞 “Table 2-14: Marginal Races Among Members of the 113th Congress, 2012,” Norman J. Ornstein et al., Vital Statistics on
Congress, Brookings Institution, 2014. なお、1998 年、2006 年のデータ
については、Norman J. Ornstein et al., Vital Statistics on Congress, Washington, D C.: AEI Press, 1997-1998,2005-2006 年版。
(6¢このような選挙情勢を公表しているものとしては、The Cook Political Report Website (会員制ウェブサイト);
POLITICO Website http://www.politico.com/ 参照。
(65)下院の2012年選挙における民主党の候補の得票率と議席率のかい離は、-2.3%、共和党のかい離は+6.0%となっ
ている。戦後でみると、最も下院選挙のかい離率が高くなったのは1964年選挙で、民主党+10.9%、共和党
-10.2% であった。“Table 2-2: Popular Vote and House Seats Won by Party, 1946-2012,M Ornstein et al.,s爾•(63)
34
レファレンス2015.5
アメリカ連邦議会議員選挙制度
他方、再選を目指した現職議員の再選率は、図3に示したように、上院議員、下院議員共に近年
では90%前後の高い水準にある。安定した選挙区の現職には、通常強力な対抗馬は立たない。現
職に有力な候補が挑戦し不利が予想されると、引退を選択する同。また、現職の知名度や政治資
金の集めやすさも再選率を高めている。
下院議員の現職再選率は、一般に上院議員の現職再選率より高くなっている。これは次章で述べ
る下院選挙区の区割りとも関係がある。
m選挙区割りをめぐる課題
1下院選挙区の区割りと投票価値の平等
憲法及び1929年議席再配分法の規定に従い、10年ごとに実施される国勢調査による人口切に基
づき、国勢調査局(Bureau of the Census)は各州に下院議員の定数を均等比例方式”で配分(apportion-
ment) する物。憲法の規定により、各州には最低1議席は配分される物。下院議員の定数が固定さ
れているため、配分される議席数が増える州があれば、削減される州が出る。
配分された議席数に基づき、各州は選挙区の再区割り(redistricting)を実施する如。下院の選挙
区は、州境を越えることはできない。州内の選挙区割りは、州法の規定に従って州議会が決定する。
図3現職再選率
666666666666666666666666666 〇〇〇〇〇〇〇
1- 1—T—1-T—1- I-1- I-T—1—T—1— I-1— I-T—1—T—1— I-1— I-T—I-T-I-C| C| C| C\1 C| C\1 C|
(年)
(注)現職再選率とは、再選を目指した現職議員のうち当選したものの割合をいう。
(出典)”Table 2-7: House Incumbents Retired, Defeated, or Reelected,1946-2012″, **Table 2-8: Senate Incumbents Retired,
Defeated, or Reelected, 1946-2012,” Norman J. Ornstein et al., Vital Statistics on Congress, Brookings Institution, 2014 .
を基に筆者作成。
(66) 予備選挙で敗退する議員数よりも、弓|退する議員数のほうが多くなる傾向がみられる。
(67) 人口は、外国人等を含む全年齢の人口である。
(68) ヒル式又はハンチントン式と呼ばれる方式で配分する。なおこの配分方式については、改革論もある。詳細につ
いては、Royce Crocker, “The House of Representatives Apportionment Formula: An Analysis of Proposals for Change and
Their Impact on States,w CRS Report for Congress, R41382, April 26,2010. 参照。
紛 2U.S.C. §2a(a).
(70)憲法第1条第2節第3項
レファレンス 2015.5
35
州議会による区割りは、州議会で多数党となっている政党と同じ政党に所属する候補者や現職議員
にとって有利に行われる傾向があり、接戦選挙区の減少をもたらす要因とも指摘されている(か。
現在では州内の選挙区間の人口の格差はなるべく小さくするように区割りをし、実際にも格差は
ほとんど存在しないが、各州の人口にかかわりなく最低1議席を配分する(かことから、州と州の
間では選挙区の人口の格差が生じる。2010年の国勢調査に基づく再区割りの結果、全米で平均す
ると人口約71万人に1議席が配分され、人口最小の選挙区はロードアイランド州の第1区、最大
の選挙区はモンタナ州の全州区で、人口の格差は約1.88倍となった岡。州と州の間の選挙区の人
ロ格差については、問題とされていない。
1960年代までは州内の選挙区間にも、大きな人口格差が存在していた。これは州内の人口移動
にもかかわらず、区割りの見直しが長期間行われない州があったためである。連邦最高裁はこのよ
うな状況に対して、選挙区割りは政治的な問題であり、裁判所が入り込むべきではないとの立場を
とっていた岡。
しかし、テネシー州議会の選挙区割りに対する1962年の判決㈤で最高裁は従来の区割りの問題
は司法審査に適さないとの立場を覆し、連邦裁判所は、憲法修正第14条の平等保障条項に基づき、
州議会の定める区割りを審査する権限を有するとした。
1963年の最高裁判決°かでは、初めて1人1票の基準が明らかにされた。ジョージア州の連邦下
院選挙区に関する1964年の最高裁判決物では、憲法は連邦議会議員選挙についてある者の投票は
他の者の投票と実現可能な限り同じ価値でなければならないとし、州内の区割りについては、可能
な限り人口の格差が小さくなるようにしなければならないとした。これらの判決により1人1票の
原則が確立し、1960年代には各州で選挙区間の人口の格差を是正するように区割りの変更が実施
された。その後も、厳密な選挙区間の人口の平等を求める判決が続き物、選挙区間の人口格差を
1%以内に収めるよう区割りされるようになった。
他方で、人口の基準を満たすため、地理的な条件を無視したり、地域の伝統的なつながりや行政
区画を越えた選挙区割りもされるようになった。州議会で多数派を占める政党や現職議員、特定の
人種に有利となる恣意的で奇妙な形状の選挙区割り、いわゆるゲリマンダー (Gerrymander)を誘発
する結果ともなった。
党派的ゲリマンダーでは一般的に、ある政党の支持者の居住地域を分断したり、逆に集約したり
(71) 19世紀末までは国勢調査の直後ではない時期にも区割りが実施されていた。また近年でも国勢調査の直後では
ない時期に区割りが実施された事例がある。
(72) 詳細については、森脇俊雅「2000年代の議員定数再配分と選挙区画再編成ーアメリカと日本における諸問題ー」
『法と政治』58(2), 2007.7, pp.1-32;上田路子「2010年の連邦下院議席配分と選挙区区割り見直し作業ー2012年以
降の選挙に与える影響一」吉野孝•前嶋和弘編著『オバマ政権と過渡期のアメリカ社会ー選挙、政党、制度、メ
ディア、対外援助ー』東信堂,2012, pp.117-14I参照。
(73) !議席のみ配分されているのは、アラスカ、デラウェア、モンタナ、ノースダコタ、サウスダコタ、バーモント、
ワイオミングの、7州である。
(如)United States Census Bureau,M2010 Apportionment Results.w
(75) Colegrove v. Green, 328 U.S. 549 (1946).
(76) Baker v. Carr, 369 U.S.136 (1962).
(77) Gray v. Sanders, 372 U.S. 368 (1963).
(78) Wesberry v Sanders, 376 U.S.1(1964).
(79) ニュージャージー州の連邦議会下院選挙区について、0.7%の最大格差が違憲とされた判例もある。Karcherv. Daggett,
462U.S. 725 (1983).
36
レファレンス2015.5
アメリカ連邦議会議員選挙制度
するように選挙区割りをする。集約する場合は、少数の選挙区に恣意的に野党の支持者が圧倒的に
多くなるように区割りし、野党の候補者当選に必要な得票より相当多くの票が集まるようにして実
質的に不要な票を多くし、与党にとっては安定選挙区とはなるが当選に必要以上の得票は少なくな
るような選挙区をなるべく多数作るように選挙区を区画する。
インディアナ州議会の区割りに対する1986年の最高裁判決・°)で、特定の政治的集団に対する意
図的な差別及びその集団に対して実際に差別的な効果があったことが証明された場合、党派的なゲ
リマンダーは人口格差の要件を満たしていたとしても連邦裁判所による違憲審査の対象となるとさ
れた。しかし、どのような区割りが違憲となる党派的なゲリマンダーに該当するかについての明確
な基準は示されず、以後の判決でも示されていない。
2000年代に入り10年に1度の国勢調査の直後ではない時期に、特定の政党の議席を大きくする
ためとされる再区割りが実施されるようになった。これまでこのような区割りが実施されたとされ
る事例としては、コロラド州、ジョージア州、テキサス州がある。
テキサス州の再区割りについての最高裁判決®)では、政治的ゲリマンダーの司法判断適合性は認
めたが、どのような党派的な区割りが違憲となるか明確な基準は示されず、再区割りは容認された。
ゲリマンダーを防止するため、州議会ではなく第三者機関によって選挙区画定を行う州が増加す
る傾向がみられる®)。2010年の国勢調査後の再区割りで第三者機関が区割り案の作成をしたのは、
アリゾナ、カリフォルニア、ハワイ、アイダホ、ニュージャージー、ワシントンの各州である陽)。
第三者機関の委員の選任には、州議会が関与する場合が多い。
2マイノリティ選挙区
人種的なマイノリティの投票権については、1870年成立の憲法修正第15条第1節で、人種、肌
の色、又は以前に奴款であったこと等によりこれを奪い又は制限することが禁止された。しかし、
この規定にもかかわらず人種的マイノリティ、特に黒人への差別は続き、南部の州では1950年代
まで黒人に読み書きテストを課すなどして、実質的に有権者登録ができないようにし、黒人が投票
権を行使できない状態が続いていた。
1964年の憲法修正第24条で、人頭税等の不払いによる投票権のはく奪が禁止され、さらに1965
年投票権法が制定され、黒人の投票権を実質的に保障することが目指された。同法の第2条物で、
投票権について人種又は肌の色での差別的な行為を禁止し、第5条的の規定により、歴史的に人
種差別の激しかった地域については、区割りの変更や投票手続、投票資格等の変更には事前に司法
省の承認が必要とされた。人種的マイノリティの投票率の低い地域の選挙区割りに連邦政府が介入
することにより、人種的マイノリティがその代表を選出する機会を保障されることが求められ、黒
人を中心とする人種的マイノリティの政治参加の途が大きく拡大された。1975年には、言語的な
マイノリティにも対象が拡大された。それでも同法の成立後も人種的マイノリティの居住地区を分
W Davis v. Bandemer, 478 U.S.109 (1986).
(81) League of United Latin American Citizens v. Perry, 548 U.S. 399(2006).判例についての詳細は、東川浩二「最近の
判例」『アメリカ法』2007(1),2007.12, pp.125-130参照。
82 Royce Crocker, **Congressional Redistricting: An Overview,M CRS Report for Congress, R42831, November 21,2012.
網 ibid., pp.16-18.詳細については、Redistricting Law 2010, National Conference of State Legislatures, 2009 参照。
M 52U.S.C. § 10301(a).
® 52U.S.C. § 10304.
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断するように区割りし、マイノリティの代表が選出されにくくすること、いわゆる人種的ゲリマン
ダーが行われていた。
このため、1982年の同法第2条の改正で、人種的マイノリティの投票勢力を弱めることを意図
したり、そのような効果を持つような区割り法は禁止された3©°マイノリティ議員を選出するため、
マイノリティ人口に対応した選挙区割りカヾ行われるようになった。
1986年の最高裁判決”かで、投票権法について区割りを人種的に差別的にすることだけではなく、
故意ではなくとも人種的マイノリティに不利にならないよう区割りをすべきと解釈した。この判決
は、居住パターンから可能な限り、人種的マイノリティが多数派となるような選挙区画をしなけれ
ばならないと解された伽)。このため、非常に奇妙な形の選挙区が作られるようになった。1993年
の最高裁判決的では、人種的なマイノリティが多数派となるように集約した非常に不自然な形の
選挙区豚は、白人の投票権を侵害し違憲とされた。さらに1995年の最高裁判決。0では、人種のみ
を主要因とする奇妙な形の選挙区は、憲法の投票の平等の保障を犯し違憲と判示した例。
マイノリティ選挙区の問題は党派の支持とも関連している。伝統的に黒人は民主党支持者が圧倒
的多数であるため、人種的マイノリティが多数派となる選挙区を作ることは、民主党支持者を集約
した選挙区を作ることになり、結果として隣接する選挙区では共和党に有利となったとされている例。
近年では、ヒスパニック系人口が急増しているが、ヒスパニック系議員の数がそれに対応して選
出されていない点が課題となっている。1990年の国勢調査後、投票権法に基づきヒスパニック系
議員を増加させるような再区画がなされた。この結果、ヒスパニック系の議員は増加する傾向にあ
る。2012年ではヒスパニック系は投票権年齢の人口では15%を占め黒人の12.3%を上回ってお
り皿)、今後も増加が予想されている。しかし、前述のように投票率は白人や黒人の半分程度で、
下院議員数でも黒人を下回っている。
下院の選挙区割りをめぐっては様々な課題があるため、連邦法により改革を試みる法案はこれま
でもたびたび提出されてきたが、大きな改革は行われていない㈣。
IV選挙制度改革論の動向
連邦議会議員の選挙制度をめぐっては、中間選挙の是非や議員の任期等についてこれまで様々な
改革提案がなされてきた。本章では、戦後の主要な論点を概観する。
W 52U.S.C. § 10301(b).
W Thornburg v. Gingles, 478 U.S. 30 (1986).
網)Gary C. Jacobson, The Politics of Congressional Elections, 7th ed., New York: Pearson, 2009, p.13.
89) Shaw v. Reno, 509 U.S. 630 (1993).
(90) いわゆるmajority-minority選挙区。詳細については、湯浅墾道「マイノリティ・マジョリティ選挙区割の形成
-1980-90年代の動向を中心に一」『九州国際大学法学論集』13(1),2006.9,pp.119-164a照。
(91) Miller v. Johnson, 515 U.S. 900 (1995).
(92) 投票権の保障について詳細は、駒村圭吾「アメリカにおける投票権保障ー差別の歴史と未完の民主化革命ー」
『論究ジュリスト』No.5,2013.春,pp.116-123参照。
(93) John R. Petrocik and Scott W. Desposato, “The Partisan Consequences of Majority-Minority Redistricting in the South,
1992 and 1994,” The Journal of Politics, 60(3),1998.8, pp.613-633.
細 ProQuest, op.c〃.(59)
(95)主要な提案については、Crocker, op.cit岐pp. 18-22参照。
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レファレンス2015.5
アメリカ連邦議会議員選挙制度
1中間選挙の廃止と連邦議会議員の任期の延長
下院議員の任期を延長する憲法修正案は、これまで繰り返し提出されてきた。下院議員の任期2
年は、表3に示したように、先進民主主義国の中では最も短い任期となっている。下院議員の任期
に対応する議会期と通年会期制を採用し、2年間の議会期の間は議案が継続するが、予算法案等は
毎年成立させる必要があり、選挙の年の実質的な審議期間の短さや、短期的な政治サイクルが課題
となっている。
1966年にジョンソン(Lyndon Johnson)大統領は、下院議員の任期を4年に延長し、大統領選挙と
同時に全員を選挙することと、下院議員が上院議員選挙に立候補する場合には少なくとも選挙の
30日前までに辞職することを提案した例。連邦憲法制定時と比較して連邦議会の業務量が大幅に
増大し国政課題も非常に複雑化しているため、4年任期とすれば国家の将来や経済成長、社会福祉
などの重大な課題について最良の判断をできるよう十分な期間を得られること、2年ごとに選挙運
動を行う負担や増大する選挙運動費用の削減につながること、最良の人材を候補者にできるように
なること等をその理由としていた。また、大統領選挙と同時に実施することで投票率の向上も期待
できるとしていた。
しかし、この提案を実現するための憲法修正案は、下院司法委員会で廃案となった。司法委員会
では、任期は4年に延長するが2年ごとの半数改選が支持されたためである。大統領選挙と同時に
下院議員も選挙すると、下院議員選挙への大統領選挙候補者の影響が強くなり、大統領を支持する
下院の多数派が形成されやすく、大統領に対して相対的に下院の力が弱まり従属的な関係となるこ
とが懸念されていた㈣。
現職議員や元議員、有識者で構成され、アメリカの統治システムの課題を憲法レベルで検討し憲
法修正案を提案した憲法システム委員会(卵)は、下院議員の任期を大統領と同じく 4年任期とし、
上院議員を8年任期として半数ずつ改選することを提案していた㈣。大統領と議員の任期を一致
表3主要国の下院議員の任期
国 任期(年) 解散制度の有無
日本 4 有
アメリカ 2 無
イギリス 5 有
フランス 5 有
ドイツ 4 有
イタリア 5 有
カナダ 4 有
オーストラリア 3 有
(出典)各国憲法等を基に筆者作成。
させることで、政党内の結束が高まり、分割政府
が発生しにくくなること、両者の対立による政治
的な行き詰まりが減少すること、選挙の頻度が減
ることにより議員の選挙運動の負担が減り立法活
動により多くのエネルギーを注げるようになるこ
と、実質的な立法活動可能な期間が長くなり、よ
り長期的な視点から立法活動がなされること、選
挙運動に必要な資金を減少させこれにより候補者
が増加すること、大統領の執政の責任を中間選挙
により連邦議会に問うという、制度的な矛盾を解
消することカヾ期待されていた”°°)。
的 Lyndon Johnson, MSpecial Message to the Congress, Proposing Constitutional Amendments Relating to Terms for House
Members and the Electoral College System,M January 20,1966.
@。 James L. Sundquist, Constitutional Reform and Effective Government^ Washington, D C.: Brookings Institution, cl986,
pp.61-64.
(9& Committee on the Constitutional System. 1982 年に設立された民間の委員会。
紛 Donald L. Robinson, ed., Reforming American Government: The Bicentennial Papers of the Committee on the Constitu-
tional System, Boulder: Westview Press, cl985, p.175.憲法システム委員会は、連邦議会議員の選挙を大統領選挙と同
時ではなく、大統領選挙の2-6週間後に実施することを提案していた。
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2議員の任期制限
前述のように連邦議会議員の再選率が高いことと、1990年代の政治スキャンダルによる政治不
信を契機に、連邦議会議員の任期制限をめぐる議論が活発化した。1990年にコロラド州で初めて、
州法による連邦議会議員の任期制限が、住民発議で提案され住民投票の結果可決された。下院議員
は6期12年、上院議員は2期12年に任期が制限された。1995年までに州法による何らかの任期
制限は、23州に拡大していた。しかし、:1995年の最高裁判決(で、連邦憲法上州が連邦議会議員
の任期を制限することはできず、連邦議会議員の被選挙権の要件を変更するには、連邦憲法の修正
によらなければならないとされ、任期を制限する州法は違憲とされた。以後、連邦憲法修正による
任期制限が提案されている。
1995年には、共和党の議会改革の一環”°2)として両院議員の任期制限が提案されたが、下院議員
の任期は生涯合計で12年までとする憲法修正による任期制限案は、下院を通過しなかった。上院
でも上院議員の任期を2期12年に制限する憲法修正案は、上院を通過しなかった。1997年にも再
度憲法修正案が下院に提出されたが、十分な賛成票を集めることができなかった。
アメリカでは植民地時代からの直接民主主義的な伝統もあり、当選回数を重ねた職業政治家を良
しとしない傾向がある。任期制限には、議員が長期間その職にあることで利権との結びつきが強ま
ることを防止したり、新しい議員が選出される機会が増加する効果がある。他方、議員の在職期間
は有権者が選択するべきことで任期制限の一律の規定により選択肢を狭めるべきではないこと、議
員の職務には経験の蓄積が必要であり経験の蓄積はより良い立法につながること、再選の可能性は
腐敗を防止する効果がある、等の主張もある。
州議会議員の任期制限については、カリフォルニア州等で1990年から導入が始まり、2015年現
在で15州の州議会で導入されている。
3コロンビア特別区からの下院議員の選出
アメリカの首都であるコロンビア特別区(ワシントンD.C.)は、いずれの州にも属さない特別区
であり、憲法上、連邦議会がいかなる事項に関しても専属的な立法権を行使すると定められている(1〇3,〇
上院議員の選出は認められておらず、下院には本会議での投票権を持たない派遣委員(Delegate)’爾
が1名選出されている。コロンビア特別区には約65万人の住民がおり、連邦税の納税義務があり
ながら連邦議会議員を選出できないため、下院議員の選出を可能とする改革が論点となってきた。
1978年には、下院議員の選出を可能とする憲法修正案が連邦議会両院を通過したが、修正に必
要な38州のうち16州の賛成しか期限内に得られず廃案となった。以後も、憲法修正案や、各種改
革法案が繰り返し提出され、第113議会(2013-14年)にも複数の法案が提出された”。カ。
(100) 湖んpp.175-177.なお、同委員会の委員であったジェームス•サンドクイスト(James L. Sundquist)氏も同様の
中間選挙廃止の提案をしている。Sundquist, op.cit.^), ch.5.
(101) U.S. Term Limits v. Thornton, 514 U.S. 779 (1995).
¢102) 「アメリカとの契約」(Contract with America)と題された一連の改革案のうちの一つ。下院で常任委員長等の3
期6年の任期制限は下院規則に盛り込まれたが、2009年に廃止された。
¢103)憲法第1条第8節第!7項
¢M)法案を提出したり、委員会の委員となり委員会の表決に参加することはできる。なお、大統領選挙については、
憲法修正第23条の規定に基づき、3名の大統領選挙人が配分されている。
¢05)これまでの改革提案としては、下院議員の定数を増やしコロンビア特別区から下院議員1名の選出を可能とす
るだけでなく、コロンビア特別区を州とするものや、隣接するメリーランド州の一部に組み込む提案も議論され
てきた。
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レファレンス2015.5
アメリカ連邦議会議員選挙制度
憲法上の論点としては、コロンビア特別区を、憲法を修正して州と同等の取扱いとするか、憲法
修正によらずに法律により下院議員の選出が可能か、などがある的)。また、コロンビア特別区は
黒人人口の割合が高く伝統的に民主党支持が強いことから、下院議員の選出を認めることは民主党
の議席増加につながるとされるなど、党派的な論点の性格もある(皿)。
おわりに
アメリカの連邦議会議員の選挙制度は、小選挙区制という基本的な制度の面では、連邦憲法制定
以来維持されており非常に長い歴史を持っている。小選挙区制という選挙制度は、二大政党制と共
にアメリカの政治制度の大きな特徴を構成している。
アメリカと同じく伝統的に小選挙区制の下で二大政党が政権交代を繰り返すイギリスの下院選挙
制度については、単純小選挙区制からより有権者の選好を反映しやすい小選挙区選択投票制3®へ
の移行を問う国民投票が2011年5月に実施された。結果は否決されたものの、今後第三党以下の
政党がさらに勢力を伸ばせば、単純小選挙区制改革への議論が再燃する可能性もある。二大政党制
についても、第三党との連立政権が誕生するなど変化がみえる。
本稿でみたように、アメリカの連邦議会議員選挙、とりわけ下院議員選挙をめぐっては、選挙区
の再区割りに伴う課題、歴史的な低投票率、高い再選率、接戦選挙区の減少など多くの課題が示さ
れている。小選挙区制の改革については、民主制の観点から下院に比例代表制を導入し、上院につ
いても議員定数の人口比例での配分を主張する論者がいないわけではない伽。しかし、議論は広
がりを持っているとは言い難い状況である。
小選挙区制に固有の課題については、選挙制度の異なる我が国の衆議院の小選挙区制とは議論の
枠組の異なる部分も存在するが、我が国においてもアメリカの今後の議論の展開は興味深いものと
なろう。
(106)憲法上の論点については、“Statement of Kenneth R. Thomas Legislative Attorney, American Law Division, Congressio-
nal Research Service Before Committee on Homeland Security and Governmental Affairs United States Senate, September 15,
2014, on S.132, the New Columbia Admissions Act. https://norton.house.gov/sites/norton.house.gov/files/CRS.pd£; Mark S.
Scarberry, **Historical Considerations and Congressional Representation fbr the District of Columbia: Constitutionality of the
D C. House Voting Rights Bill in Light of Section Two of the Fourteenth Amendment and the History of the Creation of the
District,w Alabama Law Review, 60(4), Summer 2009, pp.783-894, ; Aijun Garg, “A Capital Idea: Legislation To Give the District of Columbia a Vote in the House of
Representatives,M Columbia Journal of Law and Social Problems, Vbl.41, Fall 2007, pp.1-51. 参照 0
¢07)第111議会(2009-10年)には、共和党の地盤とされ2000年の国勢調査で人口が増加したユタ州にも1議席を
配分し下院議員の定数を437に増加させる法案(S.160)カヾ提出され、上院のみを通過した。
(108)小選挙区選択投票制とは、選挙区の候補者に優先順位を付して投票する制度で、オーストラリア下院議員選挙
で採用されている。
¢09) ロバート• A.ダール(杉田敦訳)『アメリカ憲法は民主的か』岩波書店,2003, pp.58-66, 68-74 (原書名:Robert A.
Dahl, How Democratic is the American Constitution ? 2nd ed.)•上院議員が州の人口に関係なく 2名ずつ選出されている
ことから、人口が少ない州が相対的に過剰代表となり人種的な多数派や保守派が有利となっている点が指摘され
ている。John D. Griffin, M Senate Apportionment as a Source of Political Inequal ity,w Legislative Studies Quarterly, 31(3),
August 2006, pp.405-432.また、小州に連邦補助金が過分に配分される傾向も指摘されている。Frances E. Lee and
Bruce I. Oppenheimer, Sizing Up the Senate: The Unequal Consequences of Equal Representation, Chicago: The University
of Chicago Press, 1999.
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参考文献

  • Guide to U.S. Elections, 6th ed., Washington, D C.: CQ Press, 2010.
    •初宿正典•辻村みよ子編『新解説世界憲法集 第3版』三省堂,2014.
    (ひろせじゅんこ)
    42
    レファレンス 2015.5 』