米国、弾薬不足で「禁じ手」 ウクライナにクラスター弾
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN078CW0X00C23A7000000/
『【ワシントン=中村亮】米国のバイデン政権が殺傷性の高いクラスター(集束)弾をウクライナに供与する立場に転じた。非人道的な兵器との批判に配慮してきたが、弾薬不足を補うため「禁じ手」に踏み込む。欧州との結束維持に向けて対話を進める。
「とても難しい決断だった」。バイデン大統領は7日、CNNテレビのインタビューでクラスター弾の供与についてこう語った。「同盟国や議会の友人と話し合った」と強調し、供与を決めるまで時間をかけたと説明した。
米政府は7日、ウクライナに8億ドル(約1150億円)分の武器を追加供与すると発表し、その一部としてクラスター弾を盛った。ロシアが2022年2月にウクライナへ侵攻してから同国にクラスター弾を供与するのは初めて。
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米国がクラスター弾を供与する理由は2つある。一つは6月上旬ごろに始まったウクライナの反攻が想定より進んでいないことだ。
コリン・カール米国防次官(政策担当)は7日の記者会見で、ウクライナ軍は多くの戦力を残しているとしつつ、反攻に関し「一部の人が期待したよりも進捗はやや遅い」と言及した。
クラスター弾は、1つの「親爆弾」の中に数十から数百の「子爆弾」を内蔵する構造だ。空中で親爆弾から子爆弾を広範囲に放出する。「点」ではなく「面」で攻撃を実行できるため打撃能力が増す。
ロシア軍はウクライナ東部や南部で広範囲に塹壕(ざんごう)を整えたり、地雷をまいたりしてウクライナ軍を待ち構える。ロシア軍に接近するリスクが高いなかで、ウクライナ軍はクラスター弾を使ってロシア軍の戦力低下を狙うとみられる。
一般的に攻撃側の戦力は守り手の3倍以上が必要だとされる。領土奪還を目指すウクライナ軍が戦果を急ぎ、塹壕での戦いを挑んで消耗戦になれば将来的に戦闘で不利になるリスクがある。
もう一つの理由は弾薬の不足だ。サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は7日の記者会見で「我々の弾薬生産が拡大するまでの間は供給の空白を埋めることが極めて重要だ」と力説。クラスター弾の供与を正当化した。
ウクライナ軍は155ミリりゅう弾砲を使ってクラスター弾を発射する見通しだ。ウクライナ軍は23年春時点で155ミリ砲弾を1日6000〜8000発使ったとみられる。ロシア軍が防衛を固めるなかで高水準の使用量が続いている公算が大きい。
米戦略国際問題研究所(CSIS)のマーク・カンシアン上級顧問は1月のリポートで米国によるウクライナへの155ミリ砲弾の供与は100万発を超えたと指摘。生産規模を年24万発と6倍に増やしても米国が在庫を補充するのに少なくとも5年程度かかると推計した。
米軍は侵攻が長引くにつれて、ウクライナ軍のヘリコプター部隊や歩兵隊、情報収集部隊などが連携を高めて作戦の効率を上げる訓練に力を入れた。目的の一つが弾薬の使用量を抑えることだった。
バイデン政権は欧州を中心に国際社会の理解を求める。クラスター弾の使用や製造を禁じるオスロ条約に100カ国以上が参加し、フランスやドイツ、イタリアなどが締約国に含まれる。
サリバン氏は「ウクライナ政府から一般市民へのリスクを最小にできるよう極めて注意深く使うと書面の保証を得た」と明らかにした。ウクライナ軍は人口密集地区で使わず、使った場合には場所を記録する。
ウクライナへ供与するクラスター弾に関し、不発弾の発生率を2.5%以下にできる種類に絞るとして一般市民への被害を抑えるとも説明した。ロシア軍が使うクラスター弾は同30〜40%だと主張した。
バイデン大統領は11〜12日にリトアニアの首都ビリニュスで開く北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席する。クラスター弾の供与がテーマの一つになるとみられる。
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前嶋和弘
上智大学総合グローバル学部 教授
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サリバン補佐官の記者会見を見ましたが、「ウクライナ軍は防御的に使用する」というのはなんとも苦しい説明。禁じ手の解禁は、それだけ事態が切迫しているのかと思います。
2023年7月8日 11:43 (2023年7月8日 12:04更新)
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高橋杉雄
防衛研究所 政策研究部防衛政策研究室長
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ひとこと解説
米国はクラスター爆弾禁止条約に署名してないので国際法違反にはなりませんが、国防歳出法で、不発率1%以上のクラスター弾の外国への供与は禁止されてます。しかし、Foreign Assistance Actに基づき、米国の死活的な安全保障上の利益に関わる場合には大統領の決定が歳出法に優越するとして供与に踏み切ったようです。
https://www.washingtonpost.com/national-security/2023/07/06/biden-cluster-bombs-ukraine/
それだけ戦場が切迫しているということでもあります。このために、ここしばらく議会根回ししていたようですね。
ロシアがクラスター爆弾禁止条約に署名しておらず、大量に戦場で使っているわけですが、中国も北朝鮮も署名していません。
2023年7月8日 9:47 』