米国、クラスター弾をウクライナに初供与 反攻後押し

米国、クラスター弾をウクライナに初供与 反攻後押し
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『【ワシントン=中村亮】米国防総省は7日、ウクライナに殺傷性の高いクラスター(集束)弾を供与すると発表した。2022年2月に始まったロシアによる侵攻以降でクラスター弾の供与は初めて。ウクライナの反攻を後押しするため供与に慎重な立場を転換した。

米政府は7日、ウクライナ向けの武器を追加供与すると発表し、クラスター弾を盛った。

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クラスター弾は、1つの「親爆弾」の中に数十から数百の「子爆弾」を内蔵する構造だ。空中で親爆弾から子爆弾を広範囲に放出し、「点」ではなく「面」で攻撃を実行する。

子爆弾が空中で放出される高度などによって攻撃範囲は異なり、1発のクラスター弾で数万平方メートルを攻撃できるケースが多い。塹壕(ざんごう)をつくってウクライナの反攻に備えるロシア軍に対して効果的だとの見方が多い。

サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は7日の記者会見でウクライナへ供与するクラスター弾に関し、不発弾の発生率を2.5%以下にできる種類に絞ると説明した。ロシア軍が使うクラスター弾は同30〜40%だと主張した。

ロシアとの違いを強調するのは国際社会の懸念に配慮するためだ。クラスター弾は子爆弾を大量に使うため民間人に被害が及んだり、不発弾が発生したりしやすい。クラスター弾の製造や使用を禁止するオスロ条約が2010年に発効している。

サリバン氏は「ウクライナが十分な砲弾を保持できずにロシアが進軍し領土を奪ってウクライナ国民を支配すれば、一般市民に被害が及ぶリスクが大きい」と話した。ウクライナが自衛を目的としてクラスター弾を使うのは正当化できると言及した。

ウクライナのゼレンスキー大統領は7日、米国によるクラスター弾の供与についてツイッターで「タイムリーで強く必要とされていた防衛援助のパッケージだ」と投稿し、バイデン米大統領らに謝意を示した。「ウクライナの防衛能力の拡大は、我々の土地の占領解除と平和を近づけるための新たな手段を提供するだろう」とも強調した。

バイデン氏は11〜12日にリトアニアの首都ビリニュスで開く北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で各国に理解を求めるとみられる。

フランスやドイツ、イタリアはオスロ条約の締約国だ。米国やロシア、ウクライナは参加していない。

ドイツはクラスター弾の供給に否定的な姿勢を示している。ロイター通信によると同国のピストリウス国防相は7日、ドイツがオスロ条約に署名していることを理由に「(供給は)選択肢ではない」と語った。

国連の報道官は同日、グテレス事務総長はクラスター弾の使用に反対していると述べた。
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神保謙
慶應義塾大学総合政策学部 教授
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分析・考察

ウクライナ軍の反転攻勢は、ロシア軍の防御ラインに阻まれ、未だ目立った成果を挙げていない。クラスター弾は広範囲の塹壕に潜むロシア軍に対し、短時間で面的制圧を行うことができ、戦術的には有効と考えられる。ただクラスター弾禁止を謳ったオスロ条約を主導したベルギーやノルウェーをはじめ、NATO内でも多くの国が否定的反応を示しそうだ。またクラスター弾によって戦局を優位に展開できたとして、その後のオスロ条約の目指す規範を揺るがすだろう。現在は戦争中であり、あまり綺麗事は言っていられない。しかし戦車や戦闘機と同様に、ウクライナへの供与を渋っていた米国が戦局の膠着打破のために逐次投入するという構図は一緒である。
2023年7月8日 7:01 (2023年7月8日 7:09更新) 』