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この項目では、ハンガリー語圏の慣習に従い、名前を姓名順で表記していますが、インド・ヨーロッパ語族風にヴィクトル・オルバーンと表記することもあります。(Template:ハンガリー人の姓名)
ハンガリーの政治家
オルバーン・ヴィクトル
Orbán Viktor
Slovesnost ob zaključku izgradnje in začetku rednega obratovanja električnega daljnovoda Cirkovce-Pince – 2. 12. 2022 – 52537859666 (cropped).jpg
オルバーン・ヴィクトル(2022年)
生年月日 1963年5月31日(60歳)
出生地 ハンガリーの旗 ハンガリー、セーケシュフェヘールヴァール
出身校 エトヴェシュ・ロラーンド大学
オックスフォード大学ペンブローク・カレッジ
前職 弁護士
所属政党 フィデス=ハンガリー市民同盟
配偶者 レーヴァイ・アニコー(1986年 – )
公式サイト orbanviktor.hu Orbán Viktor honlapja
ハンガリーの旗 ハンガリー共和国
第三共和国第4代首相
在任期間 1998年7月6日 – 2002年5月27日
大統領 ゲンツ・アールパード(英語版)
マードル・フェレンツ
ケヴェール・ラースロー(英語版)(代行)
ハンガリーの旗 ハンガリー共和国
第三共和国第8代首相
在任期間 2010年5月29日 – 現職
大統領 ショーヨム・ラースロー
シュミット・パール(英語版)
アーデル・ヤーノシュ
ノヴァーク・カタリン
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オルバーン・ヴィクトル(ハンガリー語: Orbán Viktor、1963年5月31日 – )は、ハンガリーの政治家、元民主運動家[1]。民主化闘士として国内の改革派若手グループを率いた経験を持ち[1]、1998年から2002年まで首相を務め、2010年5月から再び首相を務めている。
日本語表記において「オルバン」[2]や「ビクトル」という表記揺れも見られるが[3]、ハンガリー語は(日本語と同様に)短母音と長母音を区別し、エーケゼット付きの母音は必ず規則通りに長母音で発音されるため、日本の外務省の公式サイトでも「オルバーン」と記載されている[4]。
来歴
ハンガリー中部のアルチュートドボズ(首都ブダペスト近郊)で貧しい家庭に生まれた。父は共産党員のエンジニアだった。少年時代はサッカー選手を目指し、国内有数のユースチームに属した。
民主運動家時代
エトヴェシュ・ロラーンド大学(ブダペシュト大学)で法律を学び、在学中で東欧革命前夜の1988年、青年組織「フィデス」の設立に参画し、社会主義・共産主義体制への抵抗運動を始める。1989年6月、ハンガリー動乱で失脚、処刑されたナジ・イムレの再埋葬式で、社会主義政権打倒を訴える演説を行い、民主化の旗手として名を高めた[2]。
政治家時代
米国のジョージ・W・ブッシュ大統領と(2001年)
1989年10月23日共産党政権崩壊によるハンガリー共和国建国後、1990年の総選挙でフィデス=ハンガリー市民同盟から立候補し、当選。1993年には同党の党首に就任した。1990年代半ばの党内抗争で自党を離脱したグループが当時の中道左派政権に合流すると、オルバーンはフィデスを右派政党へ転換させた。宗教に無関心だったのが、1990年代後半にキリスト教教会へ通うようになったのも、右派層の支持獲得のためとみなされている[2]。
1998年の総選挙でフィデスが勝利すると、中道右派政党との連立政権で首相に就任した。当時35歳で、ヨーロッパ最年少の首相であった。2000年に党首の職を辞し、後任にはケヴェール・ラースロー(英語版)が就いた。2002年の総選挙では過去最多の議席数を確保したが、社会党に僅差で敗れ退陣した。2003年にフィデス党首に復帰したが、2006年の総選挙でも社会党に敗れた。
再執権後
しかし、その後の経済危機で左派連立政権が崩壊するなど混乱があり、2010年4月の総選挙でフィデスは議会の3分の2の議席数を確保する地滑り的勝利を収めた。同年5月29日に、8年ぶりに首相に就任した。
2014年4月6日の国民議会選挙において、フィデスは圧勝し、オルバーンは首相に再選された。2018年4月8日の国民議会選挙(英語版)でも圧勝。2022年4月3日の国民議会選挙でも与党が勝利し、同年5月16日に通算5期目の政権がスタートした[5]。
公共事業の多くがオルバーンに近い企業に発注され、金額の一部がフィデスへの裏金になっていると報道されている。欧州不正対策局(OLAF)が不正を指摘したケースもあるが、検事総長が政府に任命されるハンガリー検察は捜査をほとんど行っていない[6]。
2020年3月30日、ハンガリー議会において、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行拡大へ対応するための措置として、首相の権限を期限を定めず大幅に拡大する法案が可決される[7]。しかし、国内外から「独裁的」と批判されたこともあって同年6月16日に議会で撤廃された[8]。
主張・政策
ハンガリー民族主義
2011年の改正ハンガリー憲法で「ハンガリー政府は国境を越えてハンガリー系住民の運命に責任を持たなければならない」と規定し、ウクライナ西部などに住むハンガリー系住民への援助と市民権・選挙権付与を行った。これは在外ハンガリー人を票田にすることと、国内での民族主義を鼓舞して自らへの支持を高める狙いがあると分析されているが、ウクライナ政府との軋轢を招いた[9]。この問題の歴史的背景については「ハンガリー王国の歴史的地域」も参照。
2022年には、オルバーンが公の場でオーストリア=ハンガリー帝国時代の地図をあしらったマフラーを着用していたことにウクライナ政府が抗議、謝罪を要求した[10]。
移民・難民
欧州連合加盟国の中で移民・難民に対し最も強硬な政府指導者で知られ[11]、「民族が混ざりすぎると問題が起こる」「移民は毒」と発言したこともある[12]。移民・難民を貨物コンテナに収容する法案も成立させている[13]。
少子高齢化対策
オルバーンは移民に頼らない人口増加を重視し、第三子出産以降の所得税免除や不妊治療の無償化など徹底的な少子高齢化対策を行った[14][15]。
ロシア・中国との接近
ロシアのプーチン大統領とクレムリンで会談(2022年2月1日)
2014年に「国を成功させるのはおそらく民主主義ではない。成功者はシンガポール、中国、ロシアなどだからだ」と語り、国家による統制を重視する中ロに接近している[16]。特にロシアのウラジーミル・プーチン大統領とは長年親密な関係にある[17]。
「東方開放政策」[18]として中国との関係を重視して他の中東欧諸国(後に非旧共産圏のギリシャも参加する[19])とともに16プラス1(英語版)を首都ブダペストで2012年より立ち上げており[20]、イスラム教徒の移民に極めて敵対的なのに対して中国人富裕層の移住は歓迎している二重基準を指摘されている[21]。ハンガリーとギリシャを結ぶブダペスト・ベオグラード・スコピエ・アテネ鉄道(英語版)の建設を中国の援助で推し進め、一帯一路に賛同[22]してハンガリーをアジアインフラ投資銀行(AIIB)に加盟させ、一帯一路国際協力サミットフォーラム(英語版)にも出席している[23]。補助金配分をめぐってEUに対して「資金を出せないなら、中国に頼る」と発言しており[24]、中国政府の人権弾圧や南シナ海での立場に抗議したEUの声明への同意を拒否している[25]。また、ハンガリーは欧州で初めて中国のBBIBP-CorVとロシアのスプートニクV COVID-19ワクチンを承認し、オルバーン自身も中国製ワクチンのBBIBP-CorVを接種した[26]。
2022年のロシアによるウクライナ侵攻の際には、他の欧州諸国は武器提供などを行いロシア包囲網を敷いたが、オルバーンは戦争への関与を否定し、軍や兵器の提供はしないと明言した[17]。
家族
妻レーヴァイ(写真左)と共に
夫人のレーヴァイ・アニコーとの間に5人の子供が誕生している。レーヴァイ・アニコーもオルバーンと同様にエトヴェシュ・ロラーンド大学を卒業しており、弁護士の資格を持つ。
脚注
^ a b “世界が無視できない「権威主義的ポピュリズム」、こんな人たちが支えている:朝日新聞GLOBE+”. 朝日新聞GLOBE+. 2022年4月11日閲覧。
^ a b c 『毎日新聞』朝刊2019年12月25日(国際面)【ハンガリー「闘士」の変節】(1)サイド記事「変幻自在 オルバン氏」
^ 「シリアでは死に直面…有刺鉄線など怖くない」ハンガリーに入る難民たちAFPBB
^ オルバーン・ハンガリー首相の訪日
^ “Ez az évtized a veszélyek, a bizonytalanság és a háborúk korszaka lesz – jelentette ki Orbán Viktor hétfőn az Országgyűlésben, miután a parlament újraválasztotta miniszterelnöknek.”. Híradó. (2022年5月16日) 2022年5月17日閲覧。
^ 『毎日新聞』2019年12月26日(国際面)【ハンガリー「闘士」の変節】(2)EU資金 政権の「裏金」
^ “ハンガリーの首相権限、無期限に拡大 「独裁」か”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2020年3月31日) 2020年4月18日閲覧。
^ “「独裁的」なハンガリー緊急事態法、撤廃へ 類似の新法可決に懸念”. AFPBB. (2021年6月18日) 2021年4月7日閲覧。
^ 『毎日新聞』朝刊2019年12月25日(国際面)【ハンガリー「闘士」の変節】(1)「民族主義利用 支持固め/オルバン政権 隣国住民に投票権」
^ “ウクライナ、ハンガリー首相に謝罪要求 西部地域の自国領扱いで” (2022年11月24日). 2022年11月25日閲覧。
^ “難民を迫害し、排外主義的傾向を一層強めていくハンガリーのオルバン政権”. ハーバービジネスオンライン (2015年9月12日). 2017年12月5日閲覧。
^ “「民族が混ざりすぎると問題が起こる」ハンガリーのオルバン首相、移民流入に強硬反対”. ハフポスト (2013年11月21日). 2013年12月24日閲覧。
^ “ハンガリー、移民や難民を貨物用コンテナのキャンプに拘束する法案を可決”. ハフポスト (2017年3月14日). 2017年12月5日閲覧。
^ “人口増加に執念、ハンガリーの「すごい」少子化対策”. JBpress (2021年1月4日). 2021年4月7日閲覧。
^ “ハンガリー、国営医療機関での不妊治療を無償化へ 人口減少対策の一環”. AFPBB (2021年1月10日). 2021年4月7日閲覧。
^ 『毎日新聞』朝刊2019年12月27日(国際面)【ハンガリー「闘士」の変節】(3)深まる露との「蜜月」
^ a b “ハンガリー、ウクライナ戦争に関与せず=首相”. ロイター. (2022年3月16日) 2022年3月16日閲覧。
^ “The Eastern Opening Policy Doesn’t Appear to Be Profitable for Hungary”. Hungary Today (2018年10月10日). 2018年11月12日閲覧。
^ “中国経済協力にギリシャも 旧共産圏外で初 中東欧との「16+1」”. 朝日新聞 (2019年4月13日). 2019年4月13日閲覧。
^ ‘16+1’ mechanism set to bolster China-Europe ties, on the china-ceec.org web (2018/07/10)
^ “アングル:ハンガリーの表と裏、難民拒み中国富裕層は歓迎”. ロイター (2017年3月14日). 2018年11月12日閲覧。
^ “Hungarian PM Viktor Orban supports China's Belt and Road Initiative”. 新華社 (2017年4月26日). 2018年11月12日閲覧。
^ “http://japanese.china.com/news/china/politics/317/20170513/964900.htm”. 中国網 (2017年5月13日). 2018年11月12日閲覧。
^ “EUが補助金配分でハンガリーなど東欧に圧力”. 中国網 (2017年5月13日). 2018年11月12日閲覧。
^ “中国の覇権戦略、欧州まで影響力拡大「ロシアより一枚上」=報告書”. ロイター (2018年2月16日). 2018年11月12日閲覧。
^ “ハンガリー首相が中国製ワクチン接種 EU首脳で初”. テレビ朝日 (2021年3月1日). 2021年3月5日閲覧。
外部リンク
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公職
先代
ホルン・ジュラ ハンガリーの旗 ハンガリー首相
第4代:1998年 – 2002年 次代
メッジェシ・ペーテル
先代
バイナイ・ゴルドン ハンガリーの旗 ハンガリー首相
第8代:2010年 – 現職 現職
党職
先代
結成 フィデス党首
1993年 – 2000年 次代
ケヴェール・ラースロー
先代
アーデル・ヤーノシュ フィデス党首
2003年 – 現職 現職
表話編歴
欧州連合の旗 欧州理事会
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最終更新 2023年5月26日 (金) 22:19 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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