プリゴジン氏のワグナーがロシアで内乱の動き。

プリゴジン氏のワグナーがロシアで内乱の動き。
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/31828859.html

『プーチン氏の私兵と言われていた、民間軍事会社のワグナーの代表であるプリゴジン氏が、公然とロシア国防省に反旗を翻して、モスクワに向かって進軍するという予想外の展開が起きました。ロストフ州の州都が既に制圧され、FSB、国防軍州本部、警察署などの主な施設が占拠された模様です。プーチン大統領という名前を出して、反逆をしているわけではなく、あくまでも内乱の理由としては、「ロシア国防省が、国の利益を害している。これを正す」という名目です。ロストフ州の州都は100万人都市で、決して小さな都市ではありません。そして、ここにはウクライナ侵攻の国防省の拠点が設置されていたと言われています。

現代戦においても、「歩兵の質」というのが、いかに大事かが判ります。ミサイルや遠隔兵器で、攻撃は無人で出来ますが、結局のところ、占領は歩兵が現地に行って、制圧を完了させないと成立しないので、紛争地域を渡り歩いてきたワグナーと、基本的に弱いものイジメしかしてこなかったロシアの国防軍では、比較にならないようです。ただし、今回のクーデターもどきは、余りにも抵抗が無くワグナーの進軍ができているので、恐らく単純な話ではなく、裏では様々な話が出て、予め打ち合わせもできていたのではないかという気がします。つまり、プリゴジン氏が、ある程度の成功を納めるように、ロシア内部で協力した人物がいて、ロシア国防省を本気で牽制したかった勢力があるのではないかという事です。つまり、本人が出演している投稿映像による演出と違って、恐らく本格的にロシア国防軍と戦闘をする気はないんじゃないかと思っています。プリゴジン氏の立場を確立する為の、ある意味茶番の可能性があります。もちろん、国防軍側の了解を取り付けていない、権力争いとしての茶番です。

ロシア国防省とワグナーは、バフムト侵攻を巡って、仲が本気で悪くなっていたようです。一部で身内同士で銃撃があったとか、ワグナーの撤退路に国防軍が地雷を設置したとか、かなり剣呑な話も出てきていまして、単に手柄を競うというより、お互いの排除を念頭に入れた争いが起きていたとされています。なので、プリゴジン氏の演説映像でも、「国防軍がプーチン大統領を騙して、国を戦争に巻き込んだ」という言い方をしています。ついでに、ロシアがウクライナ侵攻の理由にしていた、同国内のロシア系住民に対するウクライナ軍による攻撃も無かったと言い切っていて、そもそも侵攻の原因さえ国防省の捏造という言い方をしています。

この投稿をしている6月25日の時点では、モスクワまで200キロの地点まで進軍した後、ベラルーシのルカシェンコ大統領の説得を受けて、進軍を止め、ベラルーシへ撤退を始めたという報道が出ています。と同時に、ロシア大統領府からは、「プリゴジン氏の功績を考えて、今回の件で罪に問われる事はない」という声明も出ていますので、結果だけ見ると、かなりガチめのプロレスに見えなくもありません。ただ、ロシア行政府が予想したり、仕組んだ内乱劇では無かったようです。プーチン大統領もプリゴジン氏を名指しをしませんでしたが、「裏切り者は許さない。処罰する」と、事件が起きた直後は発表していましたので、仕組まれた事ではなかったようです。

今回の件で重要なのは、手駒が何も考えずに手駒のままでいるわけではないという事を、広く世界に示した点です。ワグナーは、いわばロシア政府を雇い主とする傭兵部隊なので、本来は楯突くという事は起きてはならない事です。それが起きたという事は、有能な戦闘集団は、権力争いに明け暮れる無能な政府の言いなりにはならないという実例を示した事になります。これ、地味に効いてくるのが、中国の習近平氏だと思います。

スターリンが晩年に、散々に粛清をしまくったせいで、誰も身近に信じられる人間がいなくなり、毎晩、眠る寝室を宮殿内で変えて、命の危険に怯えていたという話は、以前にも投稿した事がありますが、独裁者というのは、権力の維持が自身の生命線になっているので、それを失う事態に対して、無限に想像力が膨らみ、恐怖に襲われるものです。一時期は、盟友という扱いで、子飼の部下だったプリゴジン氏が、「大統領は、奸臣に騙されている」という体を取っているものの、反旗を翻したという事実は、自身の権力基盤に疑念を抱くには十分な理由になります。

習近平氏の権力の源泉は、国家公安部であって、人民解放軍ではありません。公安の密偵を根拠に、軍の幹部や将官を数千人単位で汚職で逮捕もしています。つまり、恐怖心で軍を従えているわけで、軍の出身でもなければ、何かしらの基盤があるわけでもないのです。軍が習近平氏に忠誠を捧げるのは、自分の立場が危うくなると、粛清されるからであって、慕っているからではありません。つまり、とても裏切りに合いやすい立場なわけで、クーデターが起きれば、抑える力を持っていません。

かつて、スターリンも、革命を成功させた直後、具体的に自分を排除する力を持った、軍の将校を大量に粛清して、シベリア送りにしました。その前にヒットラーと結んだ独ソ不可侵条約を信じた結果、軍を意図的に弱体化させたのですが、あっさり裏切られて、侵攻され初戦で軍の統制が崩壊していたので、連戦連敗を重ねて、モスクワの直前まで攻め込まれています。つまり、軍に権力基盤の無い独裁者が最初に疑心暗鬼に囚われるのは、軍事力を統制している自国の軍隊なのです。

いったん国政が混乱すると、最終的に決定権を持ってくるのは、軍事力を保持している軍隊です。政治も、混乱が極みに達すると、「喧嘩の強い奴」が、全てを掌握するのです。「アラブの春」と言われた、中東の民主化運動も、何人かの独裁者が失脚しましたが、その後の政権運営を巡って、様々な部族が利権で対立し、結局のところ実権を握ったのは、その国の政府軍が支持を表明した政治勢力です。暴力は最終的に全てを解決するは、現実レベルで真実です。

ロシアは、その暴力で他国の領土を奪う事を、既成事実化しようとして、大混乱に陥っているので、その暴力によって、現体制が崩壊するのも、可能性として、全然ありです。ベクトルが、どこに向くかという話であって、暴力の本質は、何も変わりません。自分の保持している暴力は、外に向かうばかりではなく、自分に向かってくる事もある。これが、事実として出てきているだけで、かなり習近平氏の心中は穏やかでは無いはずです。』